北海道歯学雑誌;第31巻 第2号

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家兎下顎骨骨空洞の治癒過程におけるPLGA・コラーゲン・ハイブリッドメッシュの有用性の検討

野呂, 洋輔;大廣, 洋一;鄭, 漢忠;吉村, 善隆;出山, 義昭;飯塚, 正;鈴木, 邦明;戸塚, 靖則

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/45800
KEYWORDS : PLGA;骨再生;生体材料;外骨膜

Abstract

顎骨含む悪性腫携の治療においては,欠損に対し骨移植を行うこともあるが,新たな手術侵襲を患者に与えるため,生体材料の応用が試みられている.本研究では,生体内で溶解かつ吸収される特徴を持つpoly(DL-lactic-co-glycolic acid) (PLGA) とコラーゲンのハイブリッドメッシュの骨再生における有用性を明らかにすることを目的に,雄の成熟家兎の下顎骨体部頬側に外骨膜ごと切除した骨空洞を形成し,ハイブリッドメッシュで骨空洞を被覆した際に骨形態の回復が得られるかを形態学的に検索した.さらに,in vitroにおいてハイブリッドメッシュの培養細胞への影響を検討した. 1)骨空洞形成から10日目に,対照群では切除された骨膜外側の軟組織の侵入が著明であるのに対し,ハイブリッドメッシュ使用群では軟組織の侵入を防ぎ,舌側皮質骨からの新生骨の形成を認めた.ただし,ハイブリッドメッシュと接する軟組織中には炎症細胞の侵潤を認めた.30日目には,対照群では顎骨内に軟組織が残存し陥凹した形態であったのに対し,ハイブリッドメッシュ使用群では顎骨形態が回復していた.60日目には,ハイブリッドメッシュ使用群ではハイブリッドメッシュの溶解ならびに貧食細胞による吸収を認めた. 2)ハイブリッドメッシュをC57BL/6マウスの背部皮下に移植し,14日目まで観察したが,ハイブリッドメッシュと接する軟組織中に炎症細胞の浸潤は認めなかった. 3)C57BL/6マウス由来の培養骨芽細胞であるMC3T3-E1細胞とハイブリッドメッッシュを共培養したところ,ハイブリッドメッシュの有無にかかわらず細胞は増殖可能であった.しかし,25日以上の長期培養の結果,PLGAの加水分解による培養液のpHの低下に伴い細胞は増殖不可能であった.以上より,PLGA・コラーゲン・ハイブリッドメッシュは生体においては,種特異的な炎症反応を惹起する可能性があるものの,顎骨の形態を保持しながら骨を形成するには有用であること,ならびに短期間の培養であれば細胞増殖に影響を与えないことが示唆された.

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