2024-03-28T23:08:44Zhttps://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace-oai/requestoai:eprints.lib.hokudai.ac.jp:2115/892862023-05-19T17:14:17Zhdl_2115_81775hdl_2115_28085hdl_2115_54822hdl_2115_54823hdl_2115_20124Molecular detection and characterization of tick-borne pathogens of domestic animals in Malawiマラウイの家畜におけるマダニ媒介性病原体の分子学的解析Chatanga, Elisha大橋, 和彦今内, 覚山岸, 潤也中尾, 亮野中, 成晃open access649マダニは人や家畜の病原体を含む多様な微生物を保有している。特にAnaplasma属、Babesia属、Ehrlichia属、Hepatozoon属、Theileria属に属するダニ媒介性病原体は、熱帯地域における重要なダニ媒介性動物感染症の原因である、家畜の生産に悪影響を及ぼしている。ダニ媒介性感染症の疫学情報は、自然界での感染動態や伝播経路を監視するのに役立ち、病原体制御法を構築するために重要である。マラウイ共和国では現在、家畜のダニ媒介性病原体に関する分子疫学データは限られている。本論文は、マラウイの牛、羊、山羊、犬の原虫およびリケッチア病原体を、分子技術を用いて検出し、その特徴を明らかにすることを目的としている。
第一章では、マラウイの牛に流行するダニ媒介性病原体の検出を分子診断技術により実施した。PCRにより検査した191頭の牛の血液由来DNAサンプルのうち、合計177頭(92.7%)が少なくとも1つのダニ媒介性病原体に陽性であった。塩基配列解析の結果、Anaplasma bovis、Anaplasma marginale、Ananplasma platys-like、Anaplasma sp.、Babesia bigemina、Ehrlichia sp.、Theileria mutans、Theileria parva、Theileria taurotragi、Theileria veliferaが検出された。また、152頭(79.6%)では2つ以上の病原体の共感染が確認された。本研究により、マラウイの牛におけるダニ媒介性病原体の感染率は非常に高いことが明らかとなった。さらに、病原体の種類によって異なる治療法が必要となるため、高い共感染率はダニ媒介性感染症の診断と治療を困難とする一因であることが示された。
第二章では、牛のCD8陽性T細胞により認識されるTheileria parva 抗原遺伝子Tp1とTp2をマーカーに、マラウィに流行するTheileria parvaの遺伝的多様性を調査した。検査した446頭の牛のうち、254頭(54.5%)がTheileria parva種特異的PCRが陽性であった。塩基配列解析の結果、Tp1遺伝子に比べTp2遺伝子ではより高い遺伝的多様性が認められた。すなわち、Tp1では14箇所(3.65%)、Tp2では156箇所(33.12%)に一塩基多型が認められ、さらにTp1では塩基欠失があった。その結果、Tp1とTp2の遺伝子にはそれぞれ6個と10個のアミノ酸バリアントが存在した。ほとんどの配列は、Theileria parva弱毒ワウチンを構成するMuguga株およびKiambu 5株と同一または類似していた。このことは、ワクチン株がワクチン未接種の牛群に感染拡大したこと、あるいはワクチン株と類似の遺伝子型を持った原虫がマラウイに存在していることを示唆している。本研究は、マラウイにおけるTheileria parvaの防除にMugugaカクテル弱毒ワクチンを使用することが有効であることを支持するものである。
第三章では、マラウイの中央部と南部にある6つの地域から採集した牛血液サンプルを材料に、サテライトマーカーによるTheileria parvaの集団遺伝構造を調査した。解析の結果、マラウイの牛には少なくとも2つのTheileria parva遺伝集団が感染していることが明らかとなった。一方の遺伝集団は、全ての採集地点から検出され、弱毒ワクチン株の一つであるMuguga株を含む優占集団であった。もう一方の集団は、そのほとんどが中央部の農場からのサンプルで構成されていた。本研究によりマラウイにおけるTheileria parvaの流行株の大半が、Muguga株と近縁であることが明らかとなった。
第四章では、マラウイの羊と山羊のダニ媒介性病原体の検出を分子診断技術により実施した。マラウイ中央部と南部の2つの農場から採取した8頭の羊および99頭のヤギの血液DNAサンプルを収集した。PCRの結果、79頭(73.8%)が少なくとも1つのダニ媒介性病原体に感染しており、そのうち47頭(43.9%)で2つ以上の病原体の共感染がみられた。塩基配列解析の結果、Anaplasma ovis、Babesia gibsoni-like、Ehrlichia ruminantium、Ehrlichia canis、Theileria mutans、Theileria ovis、Theileria separata、Theileria sp. MSD-likeが検出された。本研究は、小型反芻家畜に感染するダニ媒介性病原体の実態を分子技術を用いて確認した、初めての試みである。
第五章では、マラウイにおける犬のダニ媒介性病原体の検出を分子診断技術により実施した。マラウイの主要都市であるBlantyre、Lilongwe、Mzuzuで採取した209頭の犬の血液DNAサンプルを用いた。調査された犬のうち、93頭(44.5%)が少なくとも1つのダニ媒介性病原体に感染していた。そのうち16頭(7.8%)では、少なくとも2つ以上の病原体の共感染がみられた。配列解析の結果、マラウイでは初めてAnaplasma platys、Babesia rossi、Babesia vogeli,Ehrlichia canis,Hepatozoon canisに犬が感染していることを分子レベルで明らかにした。
これら一連の研究は、マラウイの家畜におけるダニ媒介性病原体の高い感染状況を示している。調査したすべての動物種で複数の病原体による混合感染率が高かったことから、マラウイにおけるダニ媒介性感染症の適切な管理のためには、マダニ媒介性病原体の診断法を改善する必要がある。また、殺ダニ剤によるマダニ防除がマラウイで主に実践されている疾病管理法であるが、殺ダニ剤に対するマダニの抵抗性獲得が世界的に懸念されており、新たなダニ媒介性感染症の防除法を導入する必要がある。(主査) 教授 大橋 和彦, 准教授 今内 覚, 准教授 山岸 潤也, 准教授 中尾 亮, 教授 野中 成晃国際感染症学院(感染症学専攻)Hokkaido University2022-03-24engdoctoral thesisVoRhttps://doi.org/10.14943/doctoral.k15044http://hdl.handle.net/2115/8928610.14943/doctoral.k15044https://doi.org/10.1016/j.actatropica.2022.106413https://doi.org/10.3390/pathogens9050334https://doi.org/10.1017/S0031182022000464https://doi.org/10.1016/j.ttbdis.2020.101629https://doi.org/10.1007/s00436-020-06967-yhttp://hdl.handle.net/2115/86019vi, 126p.甲第15044号博士(獣医学)2022-03-2410101北海道大学https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/89286/1/CHATANGA_Elisha.pdfapplication/pdf4.11 MB2022-03-24