* 北海道大学大学院教育学院博士後期課程(学校教育論講座・生徒指導論) 北海道大学大学院教育学研究院 紀要  第 115 号  2012 年 6 月 17 【キーワード】北海道夕張市,「地方の地方」,地元志向,地元つながり 目 次 Ⅰ はじめに  1.本稿の目的  2.本稿の分析視角   (1)「地元つながり」に関する先行研究   (2) 夕張における若者の「地元つながり」 Ⅱ 調査対象・方法  1.調査対象と方法  2.調査対象者のローカル・トラック   (1) 夕張高校卒業者の主な進路   (2) 夕張で暮らす若者の主な3つのローカル・トラック Ⅲ 地元内/外における地元つながり  1.地元への根づきの違い  2.地元内におけるつながり   (1) 町内会の青年会のつながり   (2) 会社の同僚,職場との関係(余暇・相談等)・メロン農家の青年部つながり     (a) 会社の同僚との関係,職場での関係(余暇・相談等)     (b) メロン農家の青年部つながり   (3) 家族との関係  3.地元内/外における友人関係―夕張高校の同級生を核とした「地元つながり」  4.趣味の活動を通したつながり  5.小括 Ⅳ 地元で暮らす若者の地元志向―オピニオンより  1.地元で暮らすようになってからの志向性  2.先輩として地元で働こうとしている若者に伝えたいこと  3.これからの夕張をどのようにつくっていきたいか Ⅴ おわりに  1.夕張における若者の「地元つながり」  2.地元つながりにおける「t タ イ ie」と「t タイイング ying」  3.地方都市における高校の役割 “地方の地方”における若者の「地元つながり」 夕張高校OB・OG調査を基に Youths' “Local Ties” in “a Local in a Local” Based on the Investigation for the Graduate of Yubari High School Rena KUBOTA 窪 田 玲 奈 * 18 Ⅰ.はじめに 1.本稿の目的  本稿の目的は,北海道夕張市に定着している若者を対象とした質的な実態調査から,①地 方都市において若者はどのような社会関係(=「地元つながり」)を築いているのか,②地元 へ定着している若者の地元志向はどのようなものなのかを明らかにすることである。そこか ら③地方都市における高校の果たす役割について考察する。  特に,①の「地元つながり」に焦点を当てることとする。従来の「地元つながり」で対象と されてきた若者と異なり,都市や地元を浮遊する若者ではなく,働き手として地元に根づき, 地方都市において,「日常の普通の生活」を送っている若者を対象としていることが本研究の 特色である。そして,北海道の地方都市の中でも,人口減少が著しく,財政再生下に置かれ ている「地方の地方1」の町における「ローカルなノン・エリート2」の若者を対象としている点 も特徴である。昨今,全国の若者の移行の困難に焦点を当てた研究が増えてきているが,地 方と都市の就業構造の違い,地域間格差へ目を向けた研究は極めて少ないのが現状である3。 また,地域社会学や社会教育の研究の中でも,過疎化の進む地方都市における地域と若者と いう視点は存在するものの,地域における若者,定住をしている若年層の実態について焦点 化されていないのが現状である。  筆者が調査対象とする若者が暮らす夕張市は,北海道の空知地方に位置する。空知地方は 炭鉱で栄えた町が多く,閉山後は主たる基幹産業が衰退し,地域経済の疲弊が著しい地域で ある。特に,夕張市は財政再生下の自治体として,全国に一躍名を馳せることとなった4。夕 張市の人口は,炭鉱が栄えていた当時は10万人を超えていたこともあったが,今はその10分 の1ほどに過ぎない。2011年11月末の時点で人口は10,608人(5,843世帯,男性4,979人,女性 5,629人)である。財政破綻の前から人口は漸減していたものの,2007年の破綻後の人口減少 率は以前よりも大きくなっている5。夕張市は,2007年3月6日に,財政再建団体に指定され, 平成18年度~平成36年度までの18年間が計画期間として設定され,赤字解消額は353億円と された6。財政再建(再生)下において,市の事業は大幅に縮減されることとなった。現在も 財政再生計画の下,粛々と返済計画が進められている。  「『夕張市財政再建計画』で公共サービスを『全国最低水準』に設定させることは,ナショ ナルミニマムを限りなくその水準近くまで切り下げるための実験ともなる。夕張を国の自 治体解体モデルにしてしまうか,それとも夕張を,今後に予測される地方財政破たん地域の 民主的再生モデルとするか。そのどちらの道を歩むかが,問われている。」という保母(2007, p. 30)の指摘にあるように,夕張市は地方自治体として厳しい局面を迎えている。そのため, 地元における雇用は限られたものとなり,そのことが若者を市外へ出ることへと向かわせて いる。また,財政破綻による市の内/外からの町のイメージの低下,生活面での不便さなど も市外への流出へと拍車をかけている。そのような中で,地元に定着し,生活をしている若 者の実態に焦点を当てて考察することとする。 19“地方の地方”における若者の「地元つながり」 2.本稿の分析視角 (1)「地元つながり」に関する先行研究  まず,「地元つながり」に関する先行研究として,実態に基づいた質的な研究を見ていく7。 上間(2007)は,沖縄の青年会に所属し,エイサーに取り組む若者を対象とし,ギデンズの再 帰的自己形成を念頭に置きつつ,伝統の再創造という観点から若者の姿を描いている。再創 造の過程で,逸脱文化の秩序への組み込みと共に,自己表出できる空間の創造の実態を明ら かにしている。芳澤・上間(2008)は,沖縄の若者の置かれている厳しい雇用情勢の実態と共 に,上間(2007)でも触れられているエイサーに取り組む青年会の存在が彼らの「防波堤」と なり,相互扶助的なネットワークとして機能している点について述べている。不安定ながら も,「金はないけど生きていける世界」を地元のネットワークが可能にしているというのだ。  新谷(2007)は,首都圏でストリートダンスに興じるフリーターの若者を対象としたフィー ルドワークを行っている。彼らの実態から,「地元つながり」文化の発見をしている。「地元 つながり文化」の特徴として,場所の共有,時間感覚,金銭感覚の3つを挙げている8。そし て,互いの資源を共有し「何とか生きていく」若者の姿が描かれている。また,新谷(2007) は,T. パーソンズの用語を基に「道具的機能(instrumental function)」と「表出的機能 (expressive function)」という機能について述べている9。フリーターをしつつストリートダ ンスに興じることは,道具性における見通しの低下を意味するが,表出性を満たし,実存面 での支えになっていく。新谷(2006)は,若者の生き方を考える時に,道具性だけでなく,表 出性へ目を向けることの必要性を説いている。  これらの研究では,エイサーやストリートダンスといった文化活動が,若者にとって実存 の支えとなっていること,沖縄のように相互扶助ネットワークが多く見られる地域といった 特徴が見られ,ノン・エリートの若者の生活を捉える際に重要となる指摘を行っている。し かしながら,都市における浮遊層や地元における相互扶助ネットワークを「防波堤」として いる者らの「地元つながり」をエイサーやストリートダンスといった,特別な場における活 動から捉えているため,「地元つながり」の中でも学校や家庭外における空間・文化活動を 通した,限定的な関係が見えてくるに留まる。また,新谷(2007)は,地元に残る非移動志向 の若者の「地元つながり」文化は,場や時間を共有することで,主観的には表出性と道具性 の両方の機能を果たしているが,長期にわたってそれが可能になることを意味しないとして いる。つまり,「地元つながり」文化の中に表出性と道具性の両方を求めても,長期的に見る と,後者の道具性における見通しは低下すると捉えているのだ。そこで,本稿では,仕事・ 職や家族形成,友人関係といった「普通の生活」を営む中での「地元つながり」に着目するこ とで,「表出性」を含みつつ,地元で生活を送ることを可能とする,「道具性」を伴う「地元つ ながり」が浮き彫りとなるのではないかと考える。また,日常生活における地元への根づき や場所感(観)を考察することも可能となるだろう。そこで,本稿では,「普通の日常生活」を 営む中で育まれていく関係性,地元の生活の中で「つ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ くられつつあるもの」としての「地元つ ながり」に目を向けることとする。  次に,地方における若者の実態調査に基づく先行研究を見ていく。本稿では,「地方の地 方」である北海道夕張市を対象とするが,青森県の若者を対象とした研究として李・石黒 (2008)を挙げることができる。李・石黒(2008)は,新谷(2007)の「地元つながり文化」に触 れつつ,青森県の若者の地元志向について述べている。新谷(2007)の報告にある都市部の 20 若者同様,青森県の若者の地元志向も総じて高い10。そうした状況の中,「地方においては景 気動向も,労働市場も,依然として厳しい状況が続いている。地方で地元にこだわることは, 都市部よりもはるかに高い失業のリスクを冒すことにつながる。(中略)それでもなお地元に いたいと考えるのはなぜか。」11という問題意識から,その要因の分析を行っている。李・石 黒(2008)は,分析結果から,非移動志向で,地元内の交友関係の多い者は,新谷(2007)のい う「道具的機能」,「道具性」を伴わない傾向にあり,そのことが地元外における就業チャンス から若者を遠ざける要因となっていると見ている。そのため,就業構造の問題を意識しなが ら,地方の若者の地元へ定着する要因を明らかにしている点で李・石黒 (2008)の研究の意 義は大きいが,非移動志向の若者の地元への根づきの実態については考察が見られない。ま た,「地元内交友に代わるなんらかの人間関係を提供しながら,若者たちの職場への適応を進 めていくのが現実的である」と提起している。  このように,李・石黒(2008)や新谷(2007)は「地元つながり」を「道具的機能」,「道具性」 を伴わない,非移動志向へと向かわせるものとして捉えており,地元志向の若者は,「表出的 機能」,「表出性」による実存の充足を理由に地元に留まる傾向にあると論じている。それに 対し,本稿では,新谷(2007)の言う「道具性」を伴った市外への流出が多い中,地元に根づ いて暮らしている若者の実態に焦点を当てる。夕張で暮らす若者達は,生活を二の次にし て「表出性」を満たす「地元つながり」を理由に地元に留まるという選択ができるとは言い難 い。そのため,夕張で暮らす若者の,地元を「出る/出ない」という実態から「表出性」と「道 具性」の区分で評価することは限定された見解であると言える。夕張市は,求人数が全国的 にも低い北海道の中でも「より地方」にあり,市は財政再生下にある。それでも,地元に根づ いて暮らしている若者達の生活の中に見られる「地元つながり」,そこから形づくられていく 「地元志向」について考察する。 (2) 夕張における若者の「地元つながり」  本稿では,多くの者が市外へと流出していく中12,地元で就労するというローカル・ト ラック13を歩んだ若者達の実態調査を基に,地元における「つながり」が日常生活を通して, どのように「つくられつつあるのか」という観点から「地元つながり」を考察する。  中西(2005)は,「ローカル・トラックの潜在的可能性に着目し,可能性を現実性に転化さ せるためには,生活のリージョナリズム(生活・労働における地域単位の自立構想)をシステ ムとして維持しうる『社会経済』の実現が不可欠である。そしてこの意味では,社会的自立 像組みかえの一環に『社会経済』構想の具体化が含まれていなければならない。」と述べてい る(p. 248)。この提言は,若者全般の生活圏について言えることであるが,地域経済の衰退 する地方都市においてはなおのこと,「社会経済」の構想をどう具体化し,「生活のリージョナ リズム」をシステムとして確立することが可能かという課題は非常に大きなものである。具 体的に「社会経済」の構想の具体化を行うには,まず,実際の若者達の生活圏がどのようなも のなのかを捉える必要があると筆者は考える。そこで,本稿では,夕張で暮らす若者の生活 圏を実証的に分析することで,「地方の地方」における若者の日常生活の中において,つくら れつつある「地元つながり」を描き出す。  (1)で述べたように,「普通」の若者が「普通の日常生活」を送る中で育んでいく「地元つな がり」を考察する際に,地縁や血縁,職のつながりなど,偶発性や必然性を含む関係のつな 21“地方の地方”における若者の「地元つながり」 がり「t タイ ie」と,自分自身の意識で意図的につながっていこうとする関係性のつながり「t タイイング ying」 の2つの側面に着目する。ゆえに,本稿では,「地元つながり(tie)」を大きく3つのつなが りから分析する。1つ目は,「地元内におけるつながり」として,「町内会」,「仕事」,「家族」 の関係から見る「地元つながり」である。2つ目は「地元内/外における友人関係」,とりわ け,夕張高校の同級生を核とした「地元つながり」である。3つ目は,「趣味の活動」を通し たつながりである。これら3つの「地元つながり(t タイ ie)」を,家族形態,雇用形態を基にした 分類表を基にして,地域への根づき方と共に分析していく。そのうえで,さらに「地元志向」 から,地元である夕張をどのように受け止め,地元とどうつながっていこうとしているのか (t タイイング ying)を見ていく。夕張の内/外を超えて展開されている「地元つながり」は,多くの若者 達にとって,どのような内実を持っており,どのように展開されているのか,彼・彼女らに とってどのような存在として受け止められているのかを見ていくこととする。 Ⅱ 調査対象・方法 1.調査対象と方法  次に,本稿の調査対象と調査方法の概要について説明する。調査対象については以下のと おりである(図表1)。 図表1 調査対象について  インタビュー調査は調査時間と仕事に対応した3つの調査票を用いて,半構造化した形で 行った14 。複数の調査者がいる場合は,メインで質問をする者を1人設定して臨んでいる。 *2010年8月25~27日の3日間で実施 夕張高校出身のOB・OG調査 対象者17名(男性12名、女性5名)下表参照 調査対象者の職場 対象人数・性別 調査者・調査時間 ID 番号 R 園 (特別養護老人ホーム) 5名 男性 2名、女性 3名 1~2名 20分~50分 ①~⑤ S社(市内・A地区に位置 する製造業の企業) 3名 男性 2名、女性 1名 2~3名 1時間程度 ⑥~⑧ I 社(市内・A地区に位置 する製造業の企業) 3名 男性 2名、女性 1名 1名 ⑨、⑩は1時間程度 ⑪は 20~30分程度 ⑨~⑪ メロン農家の経営者 ・後継者 6名、男性のみ 2~4名 1時間半~2時間強 ⑫~⑰ 22 図表2(フェイス・シート)  図表2(フェイス・シート)では,性別,年齢,出生家族,創出家族,学歴,現在の雇用が正 規雇用か非正規雇用か,仕事の職種,収入,住む場所の変遷について,IDごとに整理してあ る。なお,ID番号は,分析の際に便宜上割り当てたものであることを了承されたい。年齢構 成は,高校卒業後2年目の19歳の者から35歳の者までと幅があるが,20代前半から半ば過ぎ ID 性別 年齢 出生家族 (高3時で質問) 創出家族 学歴 正規/ 非正規 職種 収入 住む場所の 変遷 1 男性 26 父,兄,自分 (二男) パートナー,自分 (2人) 夕張高校→K介 護福祉学校 正規職員 介護福祉士(事務的 な仕事もする・R園) 23万円/月 夕張 → K町 → 夕 張 → T市(夕張へ 通勤) 2 男性 21 父,母,姉,自分 独身 夕張高校→K介 護福祉学校 臨時職員 介護福祉士 (R園) 18万円弱/月 夕張(専・K町には 通学) 3 女性 21 父,母,姉2人,自 分(末っ子) 独身 夕張高校→K介 護福祉学校 正規職員 介護福祉士 (R園) 14万円/月 (天引き後) 夕張(専・K町には 通学) 4 女性 25 母,弟, 自分(長女) 独身 専門学校の 介護科中退 → N 館でホームヘル パー2級取得 パート (資格 を取れば正規 になる可能性 あり) ホームヘルパー (R園) 12万円/月 (出勤数により 異なる) 夕張 → M市 → 夕張 (N館の時は R市へ通い) 5 女性 29 父,母,妹,自分 (長 女) パートナー,自分 (2人) 夕張高校→K介 護福祉学校 正規職員 介護福祉士 (R園) 320万円くらい /年 夕張 (専・K町には 通学) → S町(夕張 へ通勤) 6 男性 27 父,母,兄,弟,自 分(二男) 独身 夕張高校 契約社員 マシンオペレーター (S社) 13万円/月 夕張 → Y市 → い ろいろ転々 → 夕張(B市に通勤 →市内企業へ) 7 女性 35 父,母,自分 (長女) パートナー,自分 (2人) 夕張高校(入学 時は夕張南高 で,卒業時に統 合により夕張高 校・商業科に) 正規職員 管理事務(S社) 18万円/月+ ボーナス18× 2×2 夕張 → B市 → 関西→ 夕張 8 男性 21 父,母,弟,自分 (長 男) パートナー,自分 (2人) 夕張高校 正規職員 マシンオペレーター (S社) 17~18万円/ 月 夕張 → S町(夕張へ 通勤) 9 女性 28 姉,弟,母,祖母,自分 (長女は札幌) 独身 夕張高校 正規職員 事務職(I社) 19万円/月 夕張 10 男性 19 父,母,弟,自分 (長 男) 独身 夕張高校 正規職員 事務職(I社) 低いとわかって いるので明細を 見ない 夕張 11 男性 23 父,母,弟2人 (大学 4年と中学2年),自 分 独身 夕張高校 正規職員 溶接工(I社) 240万円/年 夕張 12 男性 27 父,母(5年前に他 界),兄,姉,自分 (二男,末っ子) 夕張高校→大学・ 酪農学部の 農業経済学科 メロン農家・ 経営者 メロン農家 組管の3,4割 で今は組管が 1700より低い 夕張 → T市(大学) → 夕張 13 男性 28 祖父,祖母,父, 母,弟3人,自分 (長 男) パートナー,娘, 自分(3人) 夕張高校 メロン農家・ 後継者 メロン農家 15万円/月 夕張 14 男性 27 母,自分(二男) (長男は札幌) 独身 夕張高校→短大・ 環境農学科 メロン農家・ 後継者 メロン農家 言えない 夕張 → F市(短大) → 夕張 15 男性 24 父,母,祖母,姉3 人,自分(長男) 独身 夕張高校 メロン農家・ 後継者 メロン農家 15万円/月 夕張 16 男性 22 父,母,弟,妹,祖 父,自分(長男) 独身 夕張高校 メロン農家・ 後継者 メロン農家 組管が4000万 くらい? 夕張 17 男性 23 父,母,姉,妹2人, 自分(長男),祖父, 祖母 独身 夕張高校→短期 大学 メロン農家・ 後継者 メロン農家 組管が2600万 くらい? 夕張 → B市 → 夕張 パートナー,自分 (2人) 23“地方の地方”における若者の「地元つながり」 の者が大半である。  フェイス・シートでは,家族構成を出生家族(18歳の高3時),創出家族(創出家族を形成 している場合はその構成)の2つに分けて整理してある。対象者の学歴は,全員夕張高校の 卒業生である15。その後は,専門学校や大学に進学している者,すぐに就労している者がい る。雇用先については,正規雇用・非正規雇用かの区分,職種,収入16について挙げている。 また,夕張市外に一度出てからUターンしている者もいることから,住む場所の変遷につい ても整理した。 2.調査対象者のローカル・トラック (1)夕張高校卒業者の主な進路  夕張市の財政破綻は,地域経済の衰退にさらなる拍車をかけ,夕張で暮らす子ども達の保 護者の経済状況にも影響を与えている。さらに,子ども達の暮らし,進路選択にも影響して きている。夕張高校への調査の際には,お昼休みに食べる昼食を用意することすらできない 子もいるという話であった。また,年収が200~300万円台という家庭が普通で17,市役所に 勤めている保護者でも給料が大幅にカットされているために,かなり厳しい状況にある。さ らに,リーマンショック以降の不況による影響から,数少ない地元企業への就労の道も狭き 門となっている。  夕張市にある高校は現在,夕張高校の1校のみである(各学年2クラス)18。交通機関の関 係で,近隣の市町村への通学が難しいという地理的な問題もあり,中学校と高校の間で入試 による輪切りが起こらないため,都市型とは異なる,多様な学力の生徒を含みこむ形での進 路多様校となっている19。卒業後の進路は,大学・短大への進学,専門学校への進学,就職が 毎年大体3分の1ずつとなっている。就職志望者のうち,3分の1が地元企業,3分の2が 札幌や千歳などの市外の企業に就労している20。そのため,地元に残るという進路を歩む者 は,夕張からK町にある専門学校へ通う者,地元企業に就労する者,車の免許を取得し近隣 の市町村に通う者となる。高校卒業後もずっと夕張で暮らすという者は,全体としては少な いと言える21。  進学資金を確保できないという問題が年を追うごとに深刻化している中でも,夕張高校側 としてはできることなら進学をという外向きの進路指導をしている。その背景には,内向き の気質の高校生への配慮と共に,高卒労働市場の厳しさがある。単純化された労働,離職率 の高さ,雇用条件の悪化などに見られるように,就職はある程度リスクを負わなくてはなら ない進路になってきている。そのため,半分社会に出る形で,専門学校・短大・大学に行っ てもう少し視野を広げたうえで選択していく方がベターだと考えているのだ。高校側の進路 指導もあってか,地元への愛着は非常に強いものの,生徒の多くが高校卒業後に夕張市外, 特に札幌へ出ていく。そのような中で,夕張市において最も高い教育機関である「高校」を 通して育まれる「地元つながり」は非常に大きな存在であると言える。 (2)夕張で暮らす若者の主な3つのローカル・トラック  次に,夕張で暮らす若者のローカル・トラックの概要について説明する。夕張に残って暮 らしている若者のローカル・トラックには,(1)地元企業への就職,(2)介護施設への就職, (3)メロン農家の後継,と大きく3つのルートが見られる22。以下は,夕張市内で就労する者 24 の主な3つのローカル・トラックの流れを図式化したものである。 3つの主なローカル・トラック  (1)の地元企業への就職の場合,精密部品や道路関係の製品といった特殊需要のある企業 が市内にはいくつかあり,高校生やUターン者にとっての雇用の場となっている。(2)の介護 施設への就労の場合,多くの者が,夕張の近郊にある公立の介護福祉系の専門学校を卒業し, 介護福祉士の資格を取得してから就労している。この専門学校は,夕張から通学可能な場所 に位置しており23,公立で学費負担が少なく奨学金も充実している。高齢化率の非常に高い 夕張において,介護施設の存在は,若者にとっての貴重な雇用の場となっている24。(3)のメ ロン農家の後継・経営者は,実家がメロン農家を営んでおり,長男であるため,もしくは長 男が家を出ており,二男ではあるが後継しているケースである。後継ぎをしている自身以外 のきょうだいが,進学しているケースが少なくないことから,進学する経済的余裕はあるも のの,家を守るために夕張に残っていると思われる25。メロン農家に生まれた女性の場合,後 を継ぐというより,家の手伝いをするという形で残っているケースがあるが,本調査では間 接的にしかわからなかった。 図表3 調査対象企業について  次に調査対象の企業について触れる(図表3参照)。R園は夕張市のA地区26にある特別養護 老人ホームである。法人全体としての人員は117名(男性32名,女性85名)と,市内では比較 的規模の大きな職場である。今回調査対象としたR園の介護職員の人員数は全体で72名(男 性22名,女性50名)で,女性の比率が非常に高い。20代の若年層になると,男性の比率の方 が高くなっており,近年は男性が増加傾向にある。正規雇用の割合は117名中62名(男性25 名,女性37名)で,約53%,臨時職員の雇用の割合は117名中55名(男性7名,女性48名)で約 (2)夕張市内の 老人介護施設 夕張高校 卒業 K介護福祉学校 (K町) (1)夕張市内の 企業に就労 (3)メロン農家 経営者・後継者 市外で就職した 後 U ターン 短大・大学へ進学し てから U ターン 介護福祉士等 の資格取得 事業内容 従数員業 企業名 R園 92名(法人全体では117名) 特別養護老人ホーム S社 205名 精密部品の製造並びに販売 I社 43名 道路関連の製品の製造並びに販売等 25“地方の地方”における若者の「地元つながり」 47%となっている。今回の調査対象者5名(①~⑤)中2名が臨時職員(②)とパート(④)で ある。  S社は,夕張市のA地区に位置し,従業員数は205名で,夕張では規模の大きい企業であり, 高校卒業後にすぐに就労する者も多い。主に,精密部品の製造並びに販売を行っている会社 で,全国規模の親企業の部品を扱っている。今回の調査対象者は3名(⑥~⑧)である。  I社も全国規模の親企業がある上で,生産を担っている会社である。全国規模では約40億, 北海道ブロックでは約8億の売上高を計上している。夕場工場には調査時点で43名が勤務し ており(全国で180余名),そのほとんどが地元採用である。従業員の平均年齢は40歳となっ ているが,ここ数年は若年者の雇用を積極的に行っている。夕張高校卒業者の採用率が非常 に高い。今回の調査対象者は3名(⑨~⑪)である。  (3)のメロン農家については,Ⅲの仕事つながりにおける青年部のつながりで,詳しく触 れることとする。今回の対象者は⑫~⑰の6名である。  本稿では,以上のように,3つのローカル・トラックを歩んでいる夕張の若者を対象にし て考察していく。 Ⅲ 地元内/外における「地元つながり」 1.地元への根づきの違い  最初に,「地元つながり」の分析を行うために,家族形態と雇用形態をクロスさせた結果を 見ていく(図表4)。ここで家族形態と雇用形態について触れるのは,「家族」,「仕事」という 夕張に根づく大きな背景となっている要素から,地元への根づき方と地元でのつながりにど んな関係性があるかを明らかにするためである。家族形態で単身や出生家族に含まれる独身 の者は,これから先,夕張市外へ移動していく可能性を含みこんでいる。それに対し,創出 家族や三・四世代家族の者は,夕張で暮らしていく,雇用先を夕張から変えないという者達 である。また,雇用形態が正規雇用であるか,非正規雇用であるかも,仕事から離れる可能 性,生活基盤の安定の面から見ていく必要がある。メロン農家の場合は地元への根づきが非 常に強い職業と見ることができる。  図表4の横軸の家族形態は,単 身(一人暮らしをしている世帯), 出生家族と共に暮らしている世帯, 創出家族(結婚して家族をつくって いる者。),三・四世代家族(祖父・ 祖母,父・母,きょうだい,自分, 配偶者,子ども。調査対象者が創 出家族を形成している場合と独身 の場合がある。)の4つに分類した。表の縦軸の雇用形態は,企業,介護施設に就労している 者を正規/非正規の2形態,メロン農家を1つのカテゴリーとして,3つに分類した(⑫が 経営者で,その他の者は皆後継者である)。 単身 出生家族 創出家族 三・四世代家族 正規職員 ⑪ ③,⑩ ①,⑤,⑦,⑧ ⑨ 非正規職員 ④ ②,⑥ ⑭ ⑫,⑬,⑮,⑯,⑰ 家族形態 × 雇用形態 家族形態 雇 用 形 態 メロン農家 図表4 家族形態と雇用形態による分類表 26  さらに,家族形態と雇用形態か ら(図表4参照),Ⅰ~Ⅴの4つの類 型に整理することができる(図表 5)。4つに分類する理由は,地元 への根づき方の違いから,社会基 盤の強度,それがどう地元つなが り,地元志向に影響しているかを 見る必要があるからである。4つ の類型ごとに調査対象者①~⑰を 分類したのが,図表5である。家族 形態で三・四世代に分類している ⑨は,市内の企業で就労している 正規職員なので,4類型ではⅡに分類した。同様に,出生家族に分類している⑭は,メロン 農家の後継者であるため,4類型のⅣに分類した。  次に,4類型の特徴を見ていく。類型Ⅰは単身で一人暮らしの者で,正規・非正規雇用を 含む。4類型の中では一番脆弱な社会基盤の下での生活となっている。類型Ⅱの者は,出生 家族と共に暮らしているため,類型Ⅰに比べると安定していると言える。しかしながら,2 名は非正規雇用であり,正規雇用でも年齢の若い者が多く,家族と暮らすことで何とか生活 できているという側面もあり,その点不安定である。類型Ⅲの者は,創出家族を形成してお り,全員が正規雇用である。類型Ⅲの4名は,子どもがおらず,共働きである。そのため,二 人で働いて何とか生活できているとも考えられるが,家族を形成できる余力がある点,4類 型の中では比較的安定している層と言える。類型Ⅳのメロン農家の者は,生産組合の青年部 を中心とした非常に強い仕事上のつながりがあり,皆,家族と共に生業を営んでいる。三・ 四世代家族も多く,経済的にも,仕事のつながり,地域のネットワークの側面から見ても,4 類型の中では最も安定した層であるということができる。  では,夕張で暮らすというローカル・トラックを歩んでいる者の「地元つながり」はどの ようなものなのだろうか。以下で,地元内/外における社会関係のつながり,すなわち「地 元つながり(t タイ ie)」を見ていくことにする。その際に,Ⅰ~Ⅳの類型ごとに「地元内における つながり」,「地元内/外における友人関係」,「地元内/外における趣味の活動」の3つの観点 (Ⅱの(2)参照)から考察していく。 2.地元内におけるつながり (1) 町内会の青年会のつながり  1つ目の観点は,「地元内におけるつながり」である。その中で,まず,町内会の青年会の つながりを挙げることができる。地元における青年会27は,類型Ⅳのメロン農家の方全員が 所属して活動している。類型Ⅱの⑨28はC地区29に小さい頃から住んでおり,父親がメロン 農家をしていた関係もあり,参加している。町内では,お祭りを催したり,地区ごとで緊急 時(台風,家族が倒れた際など)には助けあったりと結束が強い。メロン農家の方々の地域コ ミュニティにおけるつながりは非常に強いことがわかる。⑨以外の類型Ⅰ~Ⅲの者のインタ ビュー結果からは,地域の町内会への参加は見られず,地域におけるその他の活動について 地元への根づき― 弱 + 社会的な安定度― 低 地元への根づき― 強 + 社会的な安定度― 高 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ メロン農家で家族が三・四世代 ⑫,⑬,⑭,⑮,⑯,⑰ 単身、正規・非正規雇用含む ④,⑪ 出生家族に含まれる若い方, 正規・非正規雇用含む ②,③,⑥,⑨,⑩ 創出家族を持つ方を中心とする ①,⑤,⑦,⑧ 図表 5  根づきの違いによる4類型 27“地方の地方”における若者の「地元つながり」 の話も出てこなかった30。  ⑨は,自分達が小さい時に,今の自分と同じくらいの年齢の若い方々が,様々な行事を催 してくれたことが記憶に残っており,自分達が成人して地元にいるのなら,今度は自分達が 催す側になることを,「自然の伝統」であると語っている。また,メロン農家を営む若者は, 自分達若い者らで取り組まないと成り立たない(⑭),夕張を盛り上げていけたら(⑯)と考 えている。 ⑨,⑭,⑯の以下のインタビュー抜粋部分参照(下線部は筆者による。以下同様。)  これらのインタビュー内容から,メロン農家を営んでいる者(類型Ⅳ),メロン農家の多い 地域(C地区やD地区など)では,地域を担うという意識を地元での暮らしの中で持つように なり,現在は,自ら担っていくという能動的な姿勢であることがわかる。 (2) 会社の同僚,職場との関係(余暇・相談等)・メロン組合の青年部つながり (a) 会社の同僚との関係,職場での関係(余暇・相談等)  次に,地元内におけるつながりの中で,会社の同僚,職場との関係について見ていく(図表 6)。④,⑩,⑪は,仕事,職場を通した社会関係が他の者に比べて薄い31。また,一度外に出 て戻っている(④),一度は外に出てみたかったという想いがある(⑩,⑪)といった形で,地 元へ定着しているものの,地元への根づき感,地元志向が小さい。他の者は,比重の違いは あるものの,皆,会社の同僚との関係が見られる。  ここで,会社の同僚,職場との関係を,類型Ⅰ~Ⅲを基に,職場ごとに考察していく。①~ ⑤は,介護施設のR園に勤めている者であるが,皆同じ夕張高校の出身で,④を除いて,K町 にあるK介護福祉学校の出身である。そのため,同期入社をしている者が毎年何名かいる32。 (⑨ 28 歳・女性,I 社・事務職・正規雇用) 「町内の地元の,青年会で,一緒にいろんな活動というか,何だろう,町内の盆踊りとか, 最近だったら。町内行事,お祭りだったりとか,小学校の運動会とか。」「それが自然の 伝統じゃないですけれども,みんなそれぞれ成人になって,地元に,実家にいるんであっ たら,その青年会に所属して,町内の行事だったりとか,そういうのに手伝ってというか, みんなで町内を盛り上げていこうじゃないですけど,うん。」 (⑭ 27 歳・男性,メロン農家後継者) 「青年部入ってからですかね。いろんな行事に顔出すようになったじゃないですか。した ら,何でこの行事があるのかとか,意味なり何なりを,考えたり,先輩から教えてもらっ たりしたときに。まぁ,いろいろ思うときはありますよね。…まぁ,なんですかね,う ちらがやんないと,成立しない部分があるんですよね。やっぱり,若い力っていうか,まぁ 自分達で言うのもあれですけど。」 (⑯ 22 歳・男性,メロン農家後継者) 「やっぱ,青年部っていったら若いんで,やっぱ協力できることは協力して,夕張盛り上 げていけたら,それはそれでいいと思うんで。一番動ける時だと思います。」 28 今回の調査対象者の中では,②と③が同期で,仕事について相談し合うとのことだった。① と④は,地元の吹奏楽部のOB・OG会に所属しており,年に数回夕張高校を訪問している。 このように,高校の同級生,先輩,後輩に同僚が当たるため,アットホームな雰囲気がある。 ①,④,⑤は,職場に家族・親族(それぞれ,兄,母親,兄の配偶者)がいる。  夕張において,介護施設は就労場所として大きな受け皿となっており,R園の企業規模は市 内でも比較的大きいためと思われる。同僚に家族・親族がいることが,福祉職に就くきっかけ になっていたり(①,④),何かあった時の相談相手になっていたりする(⑤)。介護職という非 常に厳しい仕事を続けていく上で,同じ職場に,夕張高校や専門学校のつながり,家族・親族 の存在があることは,若者にとって非常に心の支えになっているのではないかと思われる。  市内企業のS社に就労している3名は,会社の同僚と職場外での余暇を共にしている(⑦, ⑧のインタビュー内容抜粋部分参照)。また,内2名は就労時に,小学校時代からの幼なじみ で高校時代の同級生の方(⑥),家族(⑦)の縁故で入社している33(⑥のインタビュー内容抜 粋部分参照)。⑧は同じ職場に父親がおり,就職してからはよく仕事の話をするようになっ たと言う。 図表6 地元における仕事と職のつながり ID 性別 年齢 仕事・職のつながり 4 女性 25 同僚(同じ高校)。母親が同じ施設(現在の職場は母の紹介)。 11 男性 23 あまりない様子。 2 男性 21 同僚(同じ高校・専門学校出身多し。ID:3は同期。同期は5人。)同じ介護職の友人 (K町の施設)。 3 女性 21 同僚(同じ高校・専門学校出身多し。ID:2は同期。同期は5人。)介護士つながり・市外(B市など)。 6 男性 27 契約社員(正規職員の方も)。同僚(高校の同級生,小学校からの幼なじみ,彼の紹介で現職に)。 9 女性 28 正規職員(職場の先輩。男性が多い。事務所内に他に2名女性,30代の方。いろいろ相談。) 10 男性 19 あまりない様子。会社外に元同僚がいる(地元の中・高が一緒の先輩で,たまに連絡)。 1 男性 26 同僚(同じ高校・専門学校出身多し)。兄が同じ職場。 5 女性 29 正規職員(同じ専門学校),介護主任の方(親族・兄の配偶者)。 7 女性 35 同僚,正規職員(高校の先輩・後輩),配偶者,兄も同じ職場。 8 男性 21 正規職員。(高校の先輩・後輩。)同棲中の彼女。同僚と3人でアコースティック系のバンド活動。父親も同じ会社。 12 男性 27 青年部のつながり。月1回支部会。Uターン時に同期の農家の方はいなく,2年後に ID:14(幼稚園から高校まで一緒)の方が就農。ID:14,隣の家の3つ年下の青年部の 方とよく遊ぶ。経営者なので歳がすごい上の人の集まりにも行く。 13 男性 28 青年部のつながり(地元の学校の先輩・後輩。後継者はM農が多く,夕高は少ない。) ID:12の方は高校で1個下の学年。就農当初の支えはM農出身の同期の方。青年部 で春・秋に2回ずつ勉強会。 14 男性 27 同じ地区の農家の方々。同じ地区の青年部の人とは月1回は支部会。農協でのサッ カーつながり。ID:12の方と仲がよい(幼稚園から高校まで一緒)。余暇は青年部の つながりに偏っていない。 15 男性 24 青年部のつながり(先輩,後輩)。研修会は2か月に1回,支部会は月1回。同級生で 同時期に就農した方が3人(支え)。同じ地区の農家同士。 16 男性 22 青年部のつながり(先輩,後輩。夕高,M農出身。)はなくてはならない。特に同期の 方は就農時の支え(保育園から中学まで一緒,M農出身,高卒後にすぐ就農)。地区 ごとで,鹿対策などを一緒に行う。農協ではサッカー。 17 男性 23 青年部のつながり(先輩,後輩。夕高,M農出身。大学進学Uターン者。)同期には大学 を卒業してからUターンして来た方(保育園から高校まで一緒)がおり,今年(2010年)から就農。 周りに若い人は多い。近隣の農家の方々。 Ⅳ メロン農家で家族が 三・四世代 類型 Ⅰ 単身,正規・非正規 含む Ⅱ 出生家族に含まれる若 い方,正規・非正規雇 用含む Ⅲ 創出家族を持つ方を 中心とする 29“地方の地方”における若者の「地元つながり」 以下の①,④,⑤,⑥,⑦,⑧のインタビュー内容抜粋部分参照  市内企業I社に就労している3名のうち,⑨は職場に同じ事務職をしている女性が2名い て,何かあった時には相談できる相手として挙げている。「30代の。ね,いろんな人生の経験 を自分よりしてるのでやっぱり,いろんな部分で相談に乗ってもらってます。」と語ってい る。⑩,⑪はあまり職場におけるつながりが見られなかったものの,⑩は,元同僚で夕張高 校の先輩に当たる人とたまに連絡を取り合っている。非常にアットホームで気さくな方の多 い会社だが,余暇は職場外の地元の友人と過ごす傾向にある。  以上のように,R園,S社,I社に勤める若者は,同僚に夕張高校,専門学校の同級生,先輩・ 後輩がいて,顔見知りが多く,安心して働くことのできる環境にある者が多いことがわかる。 また,同僚と職場外での余暇を過ごすか否かには個人差があるようだが,余暇における関係 がある場合,就労してから何年か経っている者が多いことがわかる。これは地元の同級生が 進学している場合に,専門学校,大学などの学生時代を経て,就職した後に,日常的に行き来 するのが難しいためではと考えられる。また,家族や親族が同僚にいることは,進路形成の (① 男性・26 歳,介護福祉士・正規雇用) 「(兄が)元,ここの R 園の現場で働いてまして,同じ進路なんですけど,その兄の姿も 見てまして,あ,いい仕事なんだなと思いまして,それで迷いなく,ずっと追っかけて きたみたいな感じですけど。」 (④ 女性・25 歳,ホームヘルパー・パート) 「(前職の)まぁ仕事辞めることになって,今母親がここで,働いてるんですけど,ちょっ と施設長さんと相談してくれて,で,こっちに,ちょっと何ですかね,じゃあこっち来 てみますか?ってことで,一応こちらに入るっていう事になったんですよ。」 (⑤ 女性・29 歳,介護福祉士・正規雇用) 「私のですね,兄の嫁が,あの一緒に働いてるんですよね。介護主任として。(同じ職場っ ていうことで?)はい。なので,相談は,大体その兄嫁と,ですね。」 (⑥ 男性・27 歳,S 社・マシンオペレーター・契約社員) 「(S 社への入社は)知り合いの方に。(高校の友人だったりします?)そうですね。(これ は先輩とか)うーんと,一応先輩なんですけど,先に会社に入ってたので,先輩にあた るというか。」 (⑦ 女性・35 歳,S 社・管理事務・正規職員) 「(普段よく一緒に遊ぶのは)やっぱり,この会社の人になりますね。」「(年齢は)少し上 くらいですね。(何人くらいで遊ぶんですか?)あぁ,そうですね。もう奥さんがいるので, (夫婦でっていう)そうそう,夫婦で遊んだり。あと,女の子だけとか。はい。4,5人 くらいですかね,いっつも。」 (⑧ 男性・21 歳,S 社・マシンオペレーター・正規職員) 「同じ会社の仲間の人と。ご飯食べに行ったり,飲みに行ったり。やっぱ高校の時には当 然飲みなんて行けないんで。働いてから,こう,みんなで仕事終わった後に飲み会を開 いてとか,そういうのすごい楽しいし,それでも,けっこう仕事の悩みあっても,やっ ぱり先輩後輩で相談しあって,悩みを打ち明けたりとか。…けっこう歳は離れてるんで すけどね。」 30 決め手となっていたり,何かあった時に相談できる相手であったりと,仕事を続けていく上 での支えになっていると言える。 (b)メロン生産組合の青年部つながり  続いて,地元内におけるつながりのメロン生産組合の下にある,青年部のつながりを見て いく。類型Ⅳに分類したメロン農家の経営者,後継者は全員青年部に所属している。年齢層 としては,18歳~38歳くらいまでの青年層となっており,30代後半になると,青年部から生 産組合に所属するようになる。青年部では,定期的に勉強会や研修が開かれ,メロンの栽培 技術が先輩から後輩へと継承されている。「夕張メロン」という全国的に有名な作物をつくっ ているということに,皆非常に高い誇りを持っている。また,青年部を通して,市の主要な 産業であるメロンづくりを営む上での心構えがしっかりと形成されている。  青年部におけるつながりは,仕事面だけではなく,普段の余暇を過ごす仲間としての関係 性でもある。繁忙期には,朝早くから遅くまでの仕事で,休日もなしで働かなくてはならな い中,生活時間,仕事の都合上,メロン農家以外の友人とのつき合いを頻繁に行うことは難 しい。そのような中で,青年部の存在は,若いメロン農家の方々のつながりを構築する機能 を果たしている(⑬,⑯,⑰のインタビュー抜粋部分参照)。  メロンづくりの仕事の勝手がなかなかわからない中で,同じくメロンづくりを営む若い人 が身近にいるということは,彼らにとって非常に大きな意味を果たしている。そして,「(1) 町内会の青年会の活動」で述べたように,地域におけるボランティア活動,各種お祭りへの 参加などを通し,地域への貢献を行っている。主要な産業の担い手であるという意識と共 に,地域へのまなざしも涵養されている。類型Ⅳのメロン農家の者にとって,生産組合にお ける青年部の存在は,生業であるメロンづくり,日常の余暇等,生活に深く結びついた関係 性であり,独特のつながりが形成されていることがわかる。 (⑬ 男性・28 歳,メロン農家後継者) 「(農家の仕事を始める時に)支えになったのは,高校は違ったけど,そのM市の高校に行っ たんですけど,僕唯一,同期が一人しかいないんです。夕張に。同級生が夕張に。同級生が, 農家をやってる同級生が一人しかいないので。まぁ,彼が支えになったというか。まぁ, 何でも話せますし。何ですか,競争心っていうか,同期なんでやっぱり,同期には負け たくないっていう。…にもなりますね。」「小も中も高も違うんですけど。…青年部入って, その人も高校卒業してすぐ入ってきたんで。農業高校卒業して。」 (⑯ 男性・22 歳,メロン農家後継者) 「青年部っていう,やっぱ同じものをつくってるっていう。ので,一番学べる場だと思っ てるんで。やっぱ,なくてはならない,ものだと思いますね。こう身近に同じ,近い歳 がいるっていうのは,やっぱこういう仕事してるんで,その,同級生だった人とかもやっ ぱ遊ぶってなるにしても,タイミングとか時間も合わないわけで。やっぱ一番,活動するっ ていうか,一緒にいるってなったら,やっぱその,一緒に農家やってる人って。そうい う人がいなかったら,やっぱ精神的にも,やっぱ参っちゃうと思いますね。」 (⑰ 男性・23 歳,メロン農家後継者) 「農家,やろうと思ったのも,ちょっと周りに若い人多かったんで。いろいろな支えにな るかなぁって思ったり。ですかね。」 31“地方の地方”における若者の「地元つながり」  以上,「地元内におけるつながり」の(1),(2)より,Ⅰ~Ⅲの類型に分類した多くの者は, 仕事を通してのつながりはあるものの,それが地域とは結びついていないことがわかる。R園 は,高齢者のケアを担う介護職であるため,夕張に根づいた仕事であり,高齢者の生活を懸 念する声などは挙がったものの,夕張の地域性を職場でのつながりから見いだすことはでき なかった。また,S社,I社は市内の雇用の場としては大きな役割を果たしているが,特殊な 需要のある製品は夕張ならではのものではなく,やはり,夕張の地域性を職場での仕事,つ ながりから見いだすことは難しい。その中で,メロン農家の地域への根づきは極めて強く, 堅いものであると言える。  職場の同僚との関係,仕事上のつながりは,類型Ⅱ,Ⅲ,Ⅳで様相は異なるものの,確認 することができた。市内の企業に就労している者の仕事つながりは,高校時代の同級生や先 輩・後輩,家族・親族の関係など,地元と何らかの関わりがあるつながりであり,かつ,職場 や仕事が同じであることによって構築されている。類型Ⅳのメロン農家は,青年部という農 家特有の組織によってつながっている。いずれも,余暇のつながりが仕事つながりと重なる か否かには個人差が見られるものの,日常生活を営む上で,仕事,職場のつながり,青年部の つながりは若者達にとって,共同性や支えとしてのつながりの1つとなっている。 (3) 家族との関係  次に,地元における家族との関係性について見ていく。家族構成,家族の居住場所,職業 について,家族形態と雇用形態から分類したⅠ~Ⅳの類型ごとに整理すると図表7のような 結果となった。皆,親やきょうだい,祖父母のいずれかが夕張市内に居住している。 図表7 地元における家族とのつながり ID 性別 年齢 4 女性 25 11 男性 23 2 男性 21 3 女性 21 6 男性 27 9 女性 28 10 男性 19 1 男性 26 5 女性 29 7 女性 35 8 男性 21 12 男性 27 13 男性 28 14 男性 27 15 男性 24 16 男性 22 17 男性 23 父,母(共にメロン農家),弟(B市で大学生),妹(夕張高校在籍),祖父,自分(独身)。D地区で メロン農家。 父,母,姉(本州),妹2人(B市で就職,短大生),祖父,祖母,自分(独身)の8人家族。D地区で メロン農家。 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 父,母,弟(高3),祖母,自分。みんな夕張で同居。独身。 父,母,弟2人(B市で大学生,中2),自分(独身)。現在は夕張で一人暮らし。 父(夕張,すぐ近くの別宅,メロン農家),母(5年前に他界),兄(B市),姉(E市),自分(既婚)。 D地区でメロン農家。創出家族:配偶者(妊娠中),自分。 母(メロン農家),兄(B市),自分(独身)。父は小1の時に事故死。D地区でメロン農家。 7人家族。父,母,祖母,姉3人,自分(独身)。みんな同居・D地区でメロン農家。 母(夕張),弟(M市),市内に祖父母。自分は一人暮らし。 父,母,妹は夕張・A地区。長兄と二男は既婚・別居(夕張)。相談相手=同僚の兄嫁。 ID:5は彼氏とS町で同棲中。 父,母,兄,弟,自分。みんな南清水沢で同居。 父(他界),母(夕張),兄(夕張で勤務)。創出家族:配偶者(夕張北高出身),自分。夕張在住。 父,母,弟(高3・夕高),自分。ご家族は夕張。S町でパートナーと居住。すぐに相談できるのは親。 父(小6の時に事故死,メロン農家),母,姉(B市),弟(関東),自分(独身)。C地区で母,祖母と同居。 家族(出生家族+創出家族) 父,兄は夕張。創出家族:配偶者(高校の同級生,B市で仕事),T市在住。 父,母,姉,自分。みんな同居。祖父母はB市,もうワンペアの祖母は他界,祖父は夕張市内の ケアハウス。 父,母,祖母,姉,長女(夕張でメロン農家・地区は不明),二女(B市)。自分もメロン農家の手伝い。 彼氏はB市。 単身,正規・非正規 含む 出生家族に含まれる若 い方,正規・非正規雇用 含む 創出家族を持つ方を 中心とする メロン農家で家族が三・ 四世代 類型 8人家族。祖父母,父,母,弟3人(二男は既婚。一緒にメロン農家。配偶者と子供2人),自分(長男)。 創出家族:配偶者,自分,娘。三男・四男以外はみんなで同居。A地区でメロン農家。 祖父母は他界。  自分以外のきょうだいが夕張の外に出ている,またはこれから進学や就職で外に出る予 定である場合,自分自身は夕張に残っているケースが多く見られる(③,④,⑨,⑪,⑫,⑬, ⑭,⑯,⑰)。このケースでは,類型Ⅰの単身の者は,家族のことと自分のことを切り離して 現在は考えているが,家族のこと(経済要因など)が進路形成に影響を与えていると思われ る。類型Ⅱ,Ⅳの場合,地元で家族と一緒に生活していて,進路形成時に家族のことを気に かけている者(⑥,⑨,⑩),そのために残っている(③,⑨,⑬,⑮,⑯)・戻っている者が多 い(⑥,⑫,⑭,⑰)。また,同居,別居34を含めて,夕張に家族全員が残っている,もしくは, 職場が夕張である場合,地元への志向性が肯定的な語りになっている者が多い(①,②,⑤, ⑥,⑦,⑧,⑩,⑮,一部のきょうだいが残っているケース③,⑬)。  家族との関係性を見ていくと,調査時よりも前の時点で,親が亡くなっている者(⑨,⑭), ケガをしたり(⑬),倒れたり(⑮,⑯)といった形で,家族に何らかの大きな出来事が起こっ ている場合,家族を守っていく,自分がしっかりしなくては,という意識を強めている者が 多い(インタビュー内容抜粋部分参照)。家族を気にかけて地元に残るという選択を取って いる者の他,地元で暮らしていく中で,意識を強めている者もいる。 以下,インタビュー内容一部抜粋  また,親や祖父母の夕張での生活を気にかけて夕張に残っている者(③,⑨,⑩),戻って いる者(⑥,⑭)もいる。家族のことを気にかけているケースの中には,進学費用を懸念し て,地元で就職する道を歩んでいる者(⑧,⑩),比較的学費が安く,地元から通学して資格 を取得した後に,夕張で自立できる介護職を選んでいるケース(②,⑤)もある。(③,⑥,⑧, ⑨,インタビュー内容抜粋部分参照。) 32 (⑬男性・28 歳,メロン農家後継者) 「子どもが好きだったんで,保育士になろうと思って。だけど,父親が,昔足をケガをし てて。で,まだ弟もまだ農家やりたいって言ってなかったんで。家継がないと大変かなぁ と思って。」「僕がやらないと,父親の代で,家が潰れるっていうのもありましたし。… トラクターってわかります?大きな土をこう,耕す,機械なんですけど。それに足を巻 き込まれて。」 (⑭男性・27 歳,メロン農家後継者) 「(短大卒業後)就職して3年目くらいの時に転勤の話があったんですよね。それで,今だっ たらその,K 社もその,転勤の先も通えないわけじゃなかったんですけど,朝の家の手 伝いの仕事ができなくなるんで,それがちょっと,家がまわんなくなるなぁって考えて。」 「中学卒業した時は,兄貴ももう,4つ上なんで,夕張出てて,俺が出てったら母さん一 人になるのもありますし。」 (⑮男性・24 歳,メロン農家後継者) 「分岐点…いや,なんか,親父が倒れた時かな。」 (⑯男性・22 歳,メロン農家後継者) 「何年か前,父さんがちょっと体の状態があんまりよろしくない。まぁ,そういうのもあっ て,自分がちゃんとやらなきゃなというのを思い知らされた,時ありましたね。」 33“地方の地方”における若者の「地元つながり」 以下,インタビュー内容一部抜粋  類型Ⅲの創出家族を形成している者は,⑦を除いて3名とも(①,⑤,⑧)市外で家族と離 れて暮らしている(T市,S町)。創出家族形成者は,市外に住みつつも,夕張での仕事はそ のまま継続して市外から通勤している。①,⑤,⑧は,しかしながら,家族・親族との関係性 を維持している。また,⑦を含めて,類型Ⅲの者は,地元とほどよい距離を置きつつも(置い たことがありつつも),夕張に根ざした志向性を持っている。ほどよい距離感があり,地元に 絡めとられていない自由な解放性が担保されていることが,却って夕張への想いを肯定的な ものにして,家族とも良い関係を築けていると言える(①のインタビュー抜粋部分参照)。  類型Ⅳのメロン農家の者は,やはり後継するに際して「夕張メロン」というブランドを守 (③女性・21 歳,R 園・介護福祉士・正規雇用) 「やっぱ札幌にも出たいなとは思ったんですけど,やっぱ家。(実家に)夕張メロンの農 家なんで,手伝ったりしたいなぁっていうのも。」 (⑥男性・27 歳,S 社・マシンオペレーター・契約社員) 「やっぱり,親もそんなに元気じゃない方なんで。二男ではあるんですが,自分がしっか りして見ていかなくてはだめなのかなとは思いました。」 (⑧男性・21 歳,S 社・マシンオペレーター・正規雇用) 「若干その,学費がかかるっていうのはあったんですけど。一応弟1人いて,自分が長男 なんで。まだ先,後に控えてるんで。働いて,まず働いてみて。…(弟が)夕張高校3 年で。(ちょうど3年生なんですね?)今,いろいろ専門学校行きたいとか言ってたので。 まぁ,そういうことになるだろうなぁと思ってたんで,その時は。だから,働いてみたいっ ていうのもあったんで。」 (⑨女性・28 歳,I 社・事務職・正規雇用) 「やっぱりその,父の死だと思うんですよね。小学6年生の時の。父の死が。それがなかっ たら,もしかしたら夕張に残ってなかったかもしれないし,うん,それが大きな多分分 岐点だと,自分の中では思いますね。(お姉さんは)3つ上なんで,あたしが 18 だから 21 ?高校3年生の時は 21 歳かな。」 (①男性・26 歳,R 園・介護福祉士・正規雇用) 「4 年前ぐらいまでは,就職した時は夕張にいたんですけど,それから,それこそ夕張の 破綻ありましたよね。財政破綻のすぐ後に,それこそ結婚もありましたし,それで,やっ ぱり夕張出ようということで。…結婚するにあたって,妻の方が,B市で仕事をしてい たもので,一緒に住むためにということで,私が夕張を出たんですよ。(じゃあ,破綻によっ て)もうそうですね,税金の方はガバっと上がりますし。それで,まぁ,いい機会だな と思って夕張を出ました。」「一度離れると,よく見えたり,悪く見えたりって。客観的に。 そうですね。そういう経験はできるかなと。…夕張を一回離れて,けど夕張は夕張でい いところもほんとにね,見ていただいてわかる通り,自然にあふれているというか,夜 なんかもすごい静かですし。まぁ,環境のいいところなんだなぁと思いますね。」 34 り,メロンづくりを絶やさないために家を継いでおり,家族への想い,家族とのつながりが 非常に強い35。また,①でも触れたように,地域への貢献意識も強く,夕張に根ざした生活を 家族と共に営んでいる。出生順位と後継の相関関係36はあるものの,長男が家を出て,二男が 後を継いでいるケースもある。本調査では,6名中,4名が長男(⑬,⑮,⑯,⑰)で,2名が 二男であった。長男の者は,長男であるため家,家の仕事を守らなくてはという意識を強く 持っている(⑯,インタビュー抜粋部分参照)。二男の2名(⑫,⑭)は,一度進学して夕張に 戻ってきており,兄が継がないなら自分の家がなくなってしまう(⑫),母一人では仕事がま わせなくなるのではという想い(⑭)で,自らの考えで後継している(⑫,⑭のインタビュー 抜粋部分参照)。また,親は進路形成時において,夕張の市外に出てもよいと子どもに言い, 後継するように強く言っていないケースが多い。そのことが,却って自ら後継して,「夕張メ ロン」を守っていく,家の仕事,家族を何とか支えていく手伝いをしていこうという想いへ と,メロン農家の子ども達を向かわせている。 以下,インタビュー内容の一部抜粋  以上,(1)町内会の青年会のつながり,(2)会社の同僚,職場との関係(余暇・相談等)・メ ロン組合の青年部のつながり,(3)家族との関係から「地元内におけるつながり」を考察して きた。  (1)の町内会の青年会のつながりのある者は,ほぼ類型Ⅳのメロン農家の者に限られてい た。(2)の会社の同僚,職場との関係は,類型Ⅰの者以外は全員つながりがあった。市内企業 の場合,夕張高校の先輩,同級生,後輩が職場にいるため,安心して働ける職場環境にある。 (⑫男性・27 歳,メロン農家経営者) 「(戻ろうと思った理由は)それこそ,その兄が継がなかったから。で,姉ちゃんが婿取っ て農家やるわけでもないから。俺がやんなかったら家,ここがなくなるなぁみたいな。 だから,就職して,結婚して,なんか実家帰ってくるみたいな話とかがあるわけでしょ。 そん時に,あ,俺がここ継がなかったら,家がなくなるんだなみたいな。実家が,いず れなくなるんだなっていうのが,まぁ,なんかさびしいなぁっていうだけで戻ってきた んだ。」 (⑭男性・27 歳,メロン農家後継者) 「うちの母さんで3代目なんで,そういうのも考えました。(潰したくないみたいな?) そうですね。潰したくないっていうか,親が潰したくないって思ってるんじゃないかな とか。ここ全部引き払って出て行っちゃったら,俺がどっか出て,お盆とか正月どこに帰っ てくるのかなとか。そんな変な細かいこと考えました。」 (⑯男性・22 歳,メロン農家後継者) 「迷いはなかったですね。…その,なん,もう農家やる気っていうのはもうずっと前の時 からそういうの思ってたんで,別に何かやりたいっていうのは,なかったです。(その農 家をやる気だったっていうのは,もうずっと前からっていうことですか?)もっと小さ い頃から思ってた,それから変化はなかったですね。」「やっぱり自分が長男で,あった んで,それは,やるなっていう…そんな感じですかね。」 35“地方の地方”における若者の「地元つながり」 職場外での余暇を一緒に過ごす者も見られた。また,家族・親族が職場にいることが,職に 就くきっかけになっていたり,相談相手になっていたりするケースも見られた。(2)のメロン 組合の青年部のつながりは,類型Ⅳの多くの者にとって非常に大きな存在となっていた。栽 培技術の継承,「夕張メロン」という全国的なブランドの作物を扱うことの意識形成の他,余 暇を共に過ごす仲間としても青年部はつながっている。(3)家族との関係は,進路形成におい て,地元に残る,戻るということを考える契機として顕れている。家族のことを気にかけて, 家業を継ぐために地元に定着している者が少なくなかった。 3.地元内/外における友人関係――夕張高校の同級生を核とした「地元つながり」 図表8 地元内/外の友人関係  次に,2つ目の観点である「地元内/外における友人関係」を,地元内・地元外の余暇・趣 味のつながりを通して見ていく。図表8は地元内・地元外における友人関係の有無を,類型 Ⅰ~Ⅳごとに,IDを使ってまとめたものである。  図表8の通り,Ⅰ~Ⅳの類型のほとんどの者が地元内に友人関係がある。特に,高校の元同 級生が友達であるケースが多い。Ⅰ~Ⅲの類型の者にとっては,高校の同級生とのつながり が大きなものとなっている。類型Ⅰの2人(④,⑪)は,地元内で関係性が閉じているのに対 し,Ⅱ,Ⅲの類型の9名は,地元内の友人関係の他,ほぼ全員が地元外の夕張諸学校の同級生 と今でもつながっていることがわかる。その背景としては,車の免許を全員が取得している こと,市外にいる友人はほとんどB市に集中しているため,行き来が可能で,比較的関係性 を維持しやすいことの2点が考えられる37。  地元内における友人関係では,高校の元同級生との関係の他,会社の同僚,メロン生産組 合の青年部との関係が見られた(図表8,図表9参照)。  また,地元内に残っている高校の同級生と遊ぶ場合,市内ではなく,市外,特にB市やY 市,Z市など市外に一緒に出て遊ぶということが多い(⑮のインタビュー内容抜粋部分参照)。 そのため,地元内で完結しない関係性となり,消費や場所の移動を含み込んだ形で余暇を過 ごす者が多いと言える(図表10参照)。 無し 高校の 元同級生 内会社の同僚 ・生産組合青年部 無し 夕張諸学校 の同級生 同級生(専・短大・ Ⅰ 単身,正規・非正雇用含む ④,⑪ ④,⑪ Ⅱ 出生家族に含まれる若い方, 正規・非正規雇用含む ③ ②,⑥,⑨, ⑩ ⑨ ②,③,⑥, ⑨,⑩ ③ Ⅲ 創出家族を持つ方を中心 とする ① ⑤,⑧ ⑦,⑧ ①,⑤,⑦,⑧ Ⅳ メロン農家で家族が三・四世代 ⑫,⑭,⑮, ⑯ ⑫,⑬,⑭,⑮, ⑯,⑰ ⑬,⑮ ⑫,⑭,⑯ ⑫,⑭,⑰ ②,⑥,⑨,⑩ ②,③,⑥,⑨, ⑩ ⑤,⑦,⑧ ①,⑤,⑦,⑧ ⑫,⑬,⑭,⑮, ⑯,⑰ ⑫,⑭,⑯,⑰ 有 有 ④,⑪ 地元内の友人関係の有無 地元外の友人関係の有無 大学の友達等) 36 図表9 地元内/外における余暇・趣味のつながり 以下,インタビュー内容の一部抜粋 ID 性別 年齢 余暇・趣味つながり 4 女性 25 高校の同窓生・吹奏楽部で一緒だった子(女性・小中は別)と仲がよい。メロン農家の出身で,戻ってきて手伝い。 11 男性 23 一緒に遊ぶのは地元の人3,4人で,夕張で働いている。男性。友人の就職先の後輩もいる。相談相手でもある。夕張の好きなところは地元の友人がいるところ。 2 男性 21 高校の同級生だった地元の友達(男性)。卒業後にK町の介護施設に就労した子と仲がよい。 3 女性 21 高校時代・専門学校時代の同級生(B市)。夕張には1人か2人しかいない。 6 男性 27 小学校からの幼なじみ(現在の職場を紹介してくれた同僚の男性)。よく集まるのは,小さい頃からの同級生5,6人(同僚,K町のサッシ会社,旅行会社,I鉄工勤務,専門学校生)。 9 女性 28 地元の友人(同級生にはB市からのUターン者が多い。仕事を辞めて夕張で働いていたり,K町や M市に通っている方も。)小中高一緒,高校が一緒の子とバラバラ。同い年で同性の方々。 B市で遊ぶ。同じC地区の出身の幼なじみ(メロン農家・後継者多し)町内の青年部の行事を通した つながり。地元で薬局や老人ホームに務めている方も。 10 男性 19 高校の同級生(多くて3人くらい)。基本は男性,女性も。専門学校進学や就職で,一度市外に 出て地元に戻ってきてる子が多い。K町のパチンコ屋に基本は行く。B市かM市にカラオケ, ボーリング,冬にレースイに行ったりも。 1 男性 26 夕張出身の高校時代の同級生(男性,同い年の友達が主)。 5 女性 29 高校の同級生とは15人くらいで月に1回は必ず飲み会を開催。女性も男性も。地元のミニバレーボールチームに所属,年齢,性別はバラバラだが小中高が大体一緒,飲み会を開催。 7 女性 35 会社の同僚(夕張市内の高校の先輩・後輩)。夫婦同士や女の子4,5人で遊ぶ。 8 男性 21 高校時代の友達(市外に出てUターンしている方が多い)。I鉄工,H社というクリーニング, アルバイト,ダムに務めている方など。ご飯・飲みに行く。会社の同僚とも交流。職場の同僚と3人で アコースティック系のバンド活動。 12 男性 27 幼なじみ+青年部つながり。ID:14のメロン農家の方(幼稚園からの幼なじみ),隣の家の3つ年下の青年部の方と遊ぶ。 13 男性 28 青年部つながり。後輩が地区では弟だけ。先輩に飲みに連れて行ってもらう。地元にいる同級生は, 電気の配線の仕事,土木の責任者(就職して11年),パチンコ屋,ガソリンスタンドなどで働いてい る。 14 男性 27 高校の後輩(高校の同級生の幼なじみ・ビデオ屋)。ID:12の方とは幼稚園からの幼なじみ。ご飯を 食べに行ったり,家に行ったりする。バスケットボールを趣味でやっている(農家じゃない人ばかり)。 ID:16の方とは青年部と違うサッカーつながりあり。高校時代のバスケ部つながりは薄い。 15 男性 24 高校時代の同級生(高校のみ一緒)で夕張にいる方と遊ぶ。3人か4人,男性。今時期(8月末)とか なら週1くらいで遊ぶ。白石のラウンドワンまで行く(冬でも)。よく飲みに行くのは後輩(近所では ない)。 16 男性 22 青年部の若い人達。農家同士だと,時間など都合が一番合うのでどこかに休みは関係なく行く。 ID:13の先輩とは,一緒にバレボール。冬場はレースイでスキーのインストラクター。夕張に残って いる同級生で仲がいいのは,メロン農家をやっている方(小・中の同級生,M農出身の方,同期)と, シューパロダムで事務をしている方くらい。 17 男性 23 青年部つながり(先輩,後輩,同級生),特に近所の若い人たち。青年部でよりはただ単に遊びで交流。Y市やM市に食事へ。小・中と大体一緒。休みの日は何か別に問わず,いろいろと遊んでいる。 Ⅳ メロン農家で家族が 三・四世代 類型 Ⅰ 単身,正規・非正規 含む Ⅱ 出生家族に含まれる 若い方,正規・非正規雇用 含む Ⅲ 創出家族を持つ方を 中心とする ⑮(男性・24 歳,メロン農家後継者) 「遊びって言ったら,大体ボーリング行くのが多いかな。(ボーリングは夕張にあるんで すか?)いや,ない。B市のラウンドワンまで行く。(え?B市のラウンドワンですか? 友達ん家の近所だって)あそこまで行く。(車で)車で。もう,俺は,夜 19 時くらいになっ たら今は暇だけど,仕事終わって家にいるから。同級生の仕事が終わるのが遅かったり するから。そうなると,Y市とかM市でもボーリング場ないから,だからあっちまで行 かなくちゃならない。」 37“地方の地方”における若者の「地元つながり」 図表10 休みの日などに地元外に出るか  地元外における友人関係(図表11)は,B市にいる高校時代の同級生のところに夕張から出 て行って一緒に遊ぶというケースが多い(①,②,③,⑤,⑧,⑨,⑩,⑯,⑰。⑧,⑨のイン タビュー抜粋部分参照)。その他に,専門学校,短大,大学に進学している者は,進学先での 友人達と連絡を取り合ったり,遊んだりしている(③,⑫,⑭,⑰。⑭のインタビュー内容抜 粋部分参照)。 図表11 地元外での余暇・趣味つながり ID 性別 年齢 地元外へ出ること 4 女性 25 休みの日は,地元の友達とM市で食事,ドライブに行く。N市の方へ買い物,カラオケに行く。 11 男性 23 休みの日はB市かM市に買い物に行く。同窓会は100人中40人参加。 2 男性 21 K町で働いている友達とB市に遊びに行って,他の仲間と合流して遊ぶ。 3 女性 21 休みの日はN市やM市に行く。週1回か2回。彼氏もB市。 6 男性 27 土日はB市で買い物。キャンプや釣りもする。 9 女性 28 高校の同級生。休みの日はB市やM市など市外に出る。買い物やカラオケ,ドライブに行く。夕張市に住んでいる自分達がB市とかに出て,B市とかで買い物しながら遊ぶとかいう感じ。 10 男性 19 市外の友達とも連絡は取っているが,働いていて休みが合わない。半年に1回とか3,4カ月に1回 くらいしか遊びに行って泊まるとかはできない。B市かM市にカラオケ,ボーリングに行く。 基本は自分が車を運転。 1 男性 26 休みの日はB市近郊で買い物,バンドや吹奏楽の音楽活動。音楽系の団体の活動もある。(現在T市に在住) 5 女性 29 地元の高校の同級生とは15人くらいで月に1回は必ず飲み会を開催。休みの日はB市に買い物や 映画を観に行ったりする。友達の家に行ってカラオケに行ったり,同級生の男性が経営するB市の 飲み屋に行くことも。日曜日に遊びに行く。 7 女性 35 休みの日は,X市の道の駅やM市方面の大きなスーパーのあるところで野菜や日常品の買い物。冬場や面倒な時はK町で済ませる。B市の中心部は車の駐車のこともありあまり行かない。 8 男性 21 B市に行った人とも休みが合う時は,行ったり来てくれたりする。休みの日は基本的にB市やM市で買い物。 12 男性 27 休みの日は,M市,K町やZ市の方に買い物へ。 13 男性 28 髪を切りにB市に行くこともある。最近は,大きい街ではY市に行くことが多い。買い物など。 14 男性 27 仲のいい友達とは,B市に行って遊んだりするが,高校時代の同級生とはそこまでつるんでいない。 15 男性 24 遊びといえば大体ボーリングで,地元の友達とB市のラウンドワンまで行く(冬でも)。買い物だとM市やY市に行く(夏場の仕事後でも)。同窓会はB市で開催なので,仕事の関係で出席が難しい。 16 男性 22 同級生で仲がよい友達は大体B市にいるので,集まるとなったらB市。声をかける人が決まってきている。同級生が学生の時期はけっこうな確率でお盆やGWに集まっていた。 17 男性 23 市外の友人のところに行くのもたまに。農家の若い人同士でB市にボーリングに行く。趣味は車で,Y市の方にあるサーキット(広場)に遊びに行く。 Ⅳ メロン農家で家族が 三・四世代 類型 Ⅰ 単身,正規・非正規 含む Ⅱ 出生家族に含まれ る若い方,正規・非 正規雇用含む Ⅲ 創出家族を持つ方を 中心とする ID 性別 年齢 地元外での余暇・趣味つながり 4 女性 25 あまりない様子。 11 男性 23 ない? 2 男性 21 高校の同級生(男性)。K町で働いている友達とB市に遊びに行って,他の仲間と合流して遊ぶ。 3 女性 21 高校時代・専門学校時代の同級生はB市にいる。休みが合わず,2か月に1回くらいしか会えない。 メールや電話でやり取り。夕張出身ではない専門学校時代の友達もB市やH市。同性も異性も。先輩後輩 もB市。B市の友達には相談もする。彼氏もB市。 6 男性 27 ない?大分に行った漫才の相方との交流等不明。 9 女性 28 高校の同級生。夕張市に住んでいる自分達がB市とかに出て,買い物をしながら遊ぶ感じ。 10 男性 19 高校の同級生(男性,女性も?)。市外の友達とも連絡は取っているが,働いていて休みが合わない。 半年に1回とか3,4カ月に1回くらいしか遊びに行って泊まったりとかはできない(最近友達3人で B市の友人のところに泊まった)。 1 男性 26 夕張出身の高校時代の同級生(男性,同い年の友達が主。高校卒業と同時に全員夕張から出ている。)その友達は相談相手でもある。バンドや吹奏楽の音楽活動。音楽系の団体の活動も。(現在T市に在住) 5 女性 29 地元の高校の同級生とは 15人くらいで月に1回は必ず飲み会を開催(K町1人,B市3人ぐらい,H市 1人などけっこうバラバラ)。女性も男性も。高校のバレー部つながりの先輩,後輩とはお正月やお盆に 帰ってきたら連絡が来て会う。友達の家に行ってカラオケに行ったり,同級生の男性が経営するススキノ の飲み屋に行くことも。 7 女性 35 高校時代のバンド仲間(ガールズバンド)との絆が強く,卒業後は全国バラバラだが未だに交流があり,年末年始やお盆に集まる。相談相手でもある。 8 男性 21 B市に行った人とも休みがあった時は,行ったり来てくれたりする。 12 男性 27 地元外だと,大学時代の友達は行き来する距離ではなく,結婚式に呼ばれたり,電話やメールをたまにす るくらい。内容によっては,話しても害のない大学時代の友人に相談することも。 13 男性 28 高校のバレーボール部の仲間はメロンを買いに来てくれる。道内各地にいる。 14 男性 27 短大時代の友達はみんな農家だが,酪農,畑,米と扱うものが違う。未だにつながっていて,知らないこと を知っているので逆におもしろいと思っている。小中高時代の同級生は,未だに仲がいいとなると少ない。 お盆やお正月に帰ってきた時に遊ぶくらい。仲のいい友達とは,B市に行って遊んだりするが,高校時代の 同級生とはそこまでつるんでいない。 15 男性 24 B市など市外にいる友達とはほとんど行き来しない。お盆やお正月で帰ってきた時に遊ぶくらいで,夕張にいる自分達が行くということはほとんどない。 16 男性 22 同級生で仲がよい友達は大体B市にいるので,集まるとなったらB市。声をかける人が決まってきている。 同級生が学生の時期はけっこうお盆やGWに集まっていた。男性も,女性も。今でも連絡を取り合っている のは,小中高ずっとこう幼馴染だった同級生の親友(現在B市の消防学校)。実家が近いので,帰省時に会う こともできる。 17 男性 23 短大時代の友達,夕張の小・中・高時代の先輩,後輩,同級生と連絡を取ること・合うことはたまーに (お盆の帰省時など)。市外の友人のところに行くのもたまに。趣味は車で,Y市の方にあるサーキット (広場)に遊びに行く(短大時代の仲間がそこに来ているかは不明)。 Ⅳ メロン農家で家族が 三・四世代 類型 Ⅰ 単身,正規・非正規 含む Ⅱ 出生家族に含まれ る若い方,正規・非 正規雇用含む Ⅲ 創出家族を持つ方を 中心とする 38 以下,インタビュー内容一部抜粋  以上のように,夕張の若者の友人関係は,「夕張」で築いてきた関係を軸としつつ,現在の 関係性は,過去の関係性とは別の性質を帯びてきている。地元内で完結している者,地元内 から外へ出て余暇を過ごす者,市外へ出て行った者とB市で交流する者,進学先のつながり のある者,とそれぞれに,現在における「地元つながり(t タイ ie)」を構築している。 ID 性別 年齢 地元外での余暇・趣味つながり 4 女性 25 あまりない様子。 11 男性 23 ない? 2 男性 21 高校の同級生(男性)。K町で働いている友達とB市に遊びに行って,他の仲間と合流して遊ぶ。 3 女性 21 高校時代・専門学校時代の同級生はB市にいる。休みが合わず,2か月に1回くらいしか会えない。 メールや電話でやり取り。夕張出身ではない専門学校時代の友達もB市やH市。同性も異性も。先輩後輩 もB市。B市の友達には相談もする。彼氏もB市。 6 男性 27 ない?大分に行った漫才の相方との交流等不明。 9 女性 28 高校の同級生。夕張市に住んでいる自分達がB市とかに出て,買い物をしながら遊ぶ感じ。 10 男性 19 高校の同級生(男性,女性も?)。市外の友達とも連絡は取っているが,働いていて休みが合わない。 半年に1回とか3,4カ月に1回くらいしか遊びに行って泊まったりとかはできない(最近友達3人で B市の友人のところに泊まった)。 1 男性 26 夕張出身の高校時代の同級生(男性,同い年の友達が主。高校卒業と同時に全員夕張から出ている。)その友達は相談相手でもある。バンドや吹奏楽の音楽活動。音楽系の団体の活動も。(現在T市に在住) 5 女性 29 地元の高校の同級生とは 15人くらいで月に1回は必ず飲み会を開催(K町1人,B市3人ぐらい,H市 1人などけっこうバラバラ)。女性も男性も。高校のバレー部つながりの先輩,後輩とはお正月やお盆に 帰ってきたら連絡が来て会う。友達の家に行ってカラオケに行ったり,同級生の男性が経営するススキノ の飲み屋に行くことも。 7 女性 35 高校時代のバンド仲間(ガールズバンド)との絆が強く,卒業後は全国バラバラだが未だに交流があり,年末年始やお盆に集まる。相談相手でもある。 8 男性 21 B市に行った人とも休みがあった時は,行ったり来てくれたりする。 12 男性 27 地元外だと,大学時代の友達は行き来する距離ではなく,結婚式に呼ばれたり,電話やメールをたまにす るくらい。内容によっては,話しても害のない大学時代の友人に相談することも。 13 男性 28 高校のバレーボール部の仲間はメロンを買いに来てくれる。道内各地にいる。 14 男性 27 短大時代の友達はみんな農家だが,酪農,畑,米と扱うものが違う。未だにつながっていて,知らないこと を知っているので逆におもしろいと思っている。小中高時代の同級生は,未だに仲がいいとなると少ない。 お盆やお正月に帰ってきた時に遊ぶくらい。仲のいい友達とは,B市に行って遊んだりするが,高校時代の 同級生とはそこまでつるんでいない。 15 男性 24 B市など市外にいる友達とはほとんど行き来しない。お盆やお正月で帰ってきた時に遊ぶくらいで,夕張にいる自分達が行くということはほとんどない。 16 男性 22 同級生で仲がよい友達は大体B市にいるので,集まるとなったらB市。声をかける人が決まってきている。 同級生が学生の時期はけっこうお盆やGWに集まっていた。男性も,女性も。今でも連絡を取り合っている のは,小中高ずっとこう幼馴染だった同級生の親友(現在B市の消防学校)。実家が近いので,帰省時に会う こともできる。 17 男性 23 短大時代の友達,夕張の小・中・高時代の先輩,後輩,同級生と連絡を取ること・合うことはたまーに (お盆の帰省時など)。市外の友人のところに行くのもたまに。趣味は車で,Y市の方にあるサーキット (広場)に遊びに行く(短大時代の仲間がそこに来ているかは不明)。 Ⅳ メロン農家で家族が 三・四世代 類型 Ⅰ 単身,正規・非正規 含む Ⅱ 出生家族に含まれ る若い方,正規・非 正規雇用含む Ⅲ 創出家族を持つ方を 中心とする (⑧ 男性・21 歳,S 社・マシンオペレーター・正規雇用) 「今だったら,高速道路無料じゃないですか。Y市とかも無料なので,高速使ってすぐ行 けるんで。やっぱりあの,まぁ遊びに行くにも,B市に友達固まってるんで,そんなに遠い, 端から端までの距離じゃないんで。やっぱり近いから,それはやっぱり配置的にはいい んじゃないのかなと思います。」 (⑨ 女性・28 歳,I 社・事務職・正規雇用) 「どちらかっていうと私が出ることが多いかもしれないですね。夕張に来るっていうより かは。夕張に来てもらうんだったら多分,家,誰かの家じゃないと,その遊べるというか, 行けるような場所があんまりないので,それであれば自分たちが,夕張市に住んでいる 自分達がB市とかに出て,まぁ,B市とかで買い物しながら遊ぶとかいうのを,そうい う感じですね。」 (⑭ 男性・27 歳,メロン農家後継者) 「短大の友達とか,全部農家なんですよね。つながってるんですよ,今でも。それこそ, 網走だったり帯広だったり,いろんなところにいるんですけど。そうなってくると,み んな農家やってても,作物とか気候とか全然違うんで,ずれてるから,誰かが忙しいけ ど無理やり集まったりもしますけど。」 39“地方の地方”における若者の「地元つながり」 4. 趣味の活動を通したつながり  次に,3つ目の観点の「趣味の活動を通したつながり」見ていく(図表11,図表12参照)。 大きく分けて,音楽つながりとスポーツつながりの2つがある。音楽の場合,高校時代に吹 奏楽部に所属していた者が卒業後に高校のOB・OG会や市外の音楽団体に所属して活動して いる(ケース①,④)。  同僚とアコースティック系の バンドを組んで,市内/外のイ ベントなどで活動している(⑧ のインタビュー内容抜粋部分参 照)ケースもあった。また,未 だに高校時代のガールズバンド 仲間と連絡を取り合っている者 もいる(⑦のインタビュー内容 抜粋部分参照)。高校卒業後に お互いバラバラになって,お正 月やお盆の帰省時に会うくらい しかできないが,彼女にとって,学生時代の仲間の存在は非常に大きなものとなっている 。 以下,インタビュー内容の一部抜粋  スポーツつながりでは,地元のミニバレーボールチームに所属している者39(⑤),農協の サッカー(⑭,⑯),バレーボール(⑬,⑯),バスケットボール(農家関係以外。⑭)のつなが りを持っている者がいる(⑤,⑭のインタビュー内容抜粋部分参照)。この他に車関係の趣味 を持っている者もいた(⑰)。 以下,インタビュー内容の一部抜粋 (⑦女性・35 歳,S 社勤務・管理事務・正規雇用) 「(バンドを通して得たことは?)仲間の存在のありがたさですかね。はい。あと,なん ですかね,軽い友達じゃなくて,深いところでも繋がっていけるような,高校卒業して からでも付き合っていけるような仲間ができましたね。」 (⑧男性・21 歳,S 社勤務・マシンオペレーター・正規雇用) 「同僚の仲間で,自分入れて 3 人で,あの歌,歌って,いろんな各地のイベントで3人で トリオで歌ってやってて…アコースティックでやってて,で,CD とかもつくって,いろ んな人達に配って,目指せ 1000 枚っていう感じで。」 (⑤ 女性・29 歳,R 園勤務・介護福祉士・正規雇用) 「今,あのミニバレーって,柔らかいボールのバレーの,夕張でちょっとやってるんです けど,チームに入って。その関係で仲良くなった人と,なんか飲み会みたいの開いたり だとか,っていうのもありますし。もう年齢バラバラなんですけど。(えっと中学校の同窓, 無し 有 地元内 地元外 Ⅰ 単身,正規・非正規雇用 ⑪ ④ ④ Ⅱ 出生家族に含まれる若い方, 正規・非正規含む ②,③, ⑥,⑨,⑩ Ⅲ 創出家族を持つ方を中心 とする ⑦ ①,⑤,⑧ ⑤,⑧ ① Ⅳ メロン農家で家族が三・四世代 ⑫,⑮ ⑬,⑭,⑯,⑰ ⑬,⑭,⑯ ⑰ 趣味の活動の有無 図表 12 地元内/外における趣味の活動の有無 40  趣味のつながりがある者は比較的Ⅲ,Ⅳの類型に属する者に多いという結果となった。ま た,地元外で趣味のつながりがある者は,市外に住んでいるため可能なケース(①),工業系 の短大に進学して車関係のことを勉強しているケース(⑰)であった。  地元内/外における趣味の活動は,活動をしている者にとっては,日常の生活や仕事とは 別の側面をもった趣味の世界,交友関係の構築という面で非常に大きな比重を占めている。 しかしながら,全体で,趣味の活動を通したつながりのある者は半数程度で多いとは言えず, ほとんどが地元内で活動していることがわかった。また,地元内/外における趣味の活動 と,会社の同僚,職場との関係,高校時代の同級生とのつながり,地元外における余暇・趣味 活動をクロスさせてみた結果,⑧以外は,特に地元と強く関わっていないことがわかった40。 5.小括  ここで,「地元内/外における地元つながり」についてまとめてみよう。2.地元内にお けるつながり,3.地元内/外における友人関係,4.趣味の活動を通したつながりの分析 結果から,多くの者が夕張市内,夕張市外と地元の内と外を超えて社会関係を展開している ことがわかった。図表13は,地元内/外における社会関係のつながりを一覧にしたものであ る。表中の×は関係がほとんど見られない場合,△は少し,○はほどほどに,◎は非常に関 係性がある場合である。回答が得られていない場合,聴いていない場合は?としている。記 号の区分けは,インタビュー内容をコーディングした表から,筆者の判断で社会関係の強弱 を判断して行っている。 同級生だったりとかと会ったりってします?)中学校も一緒ですね。小中高が大体一緒 なので。」 (⑭男性・27 歳,メロン農家後継者) 「次行く⑯さんの家とかあの辺の奴もちょこちょこ会うんで。(青年部とは)違うつなが りでサッカーやってたり。」「バスケは,その全然関係ないところから俺誘われたんですよ。 農家じゃない人ばっかりなんですよね。それでやってるんで。だから,その青年部とか 農家のばっかりの付き合いだと世界が狭くなる気がするんで,だから,どっか別に,そ の世界っていうか,世界って言ったら大げさですけど,持ってたいと思う方なんで。」 41“地方の地方”における若者の「地元つながり」 図表13 地元内・外のつながり  これらを見ると,地元内で関係性が閉じている者,仕事や家族に比重が置かれている者, 余暇における地元外での関係性の多い者など,対象者それぞれの社会関係の築き方の傾向, 比重の違いがわかる。また,地元外に出ること(図表10参照)が全員に該当することが顕著 である。  このように,夕張における「地元つながり」に は地縁や血縁,職のつながりなど,自分自身の 力ではどうすることもできない側面含む関係 のつながり「t タイ ie」と,自分自身の意識で意図的 につながっていこうとする関係性のつながり 「t タイイング ying」の2つの側面が見られる(図表14参照)。 2つのつながりは,互いに交錯しており,前者 のつながりの中でも,何とかよりよい関係にし ていこうとする姿が,夕張の若者のつながりからは確認できる。また,自発的につながって いこうとする関係性の核に,夕張高校時代の同級生の存在を挙げることができる。卒業後に 関係性を維持することは,自分の意思によるものである。多くの若者達にとって「地元つな がり」は,夕張の内/外を超えて展開されており,夕張で暮らしてきた関係性が,今の暮らし を支える関係性へと変遷している。夕張の若者の「地元つながり」は,地元内で完結してい る関係性でも,地元外の消費社会に浸かりきっているわけでもなく,地元である夕張が常に 関係してくるものの,外への解放性を持った関係である。農村では,家意識や閉じたコミュ ニティ形成というイメージを抱きがちであるが,夕張の若者の実態からは,外へと開かれた 解放性を見ることができた。  本稿では,夕張に残る,戻るというルートを歩んでいる夕張高校のOB・OGを対象として 地元内 地元外 地元内 地元外 4 女性 25 × ○ ◎ × ○ × × × ◎ 11 男性 23 × × ◎ × × ○ ○ 2 男性 21 ○ △ ○ ○ × × × ○ ○ 3 女性 21 ○ ◎ ○ ◎ ○ ○ ◎ 6 男性 27 ○ ○ ◎ ○ ○ ? × ○ ○ 9 女性 28 ○ ◎ ◎ × ○ 10 男性 19 × ○ ◎ ○ × ? ○ 1 男性 26 ○ ○ × ○ ○ ◎ × ◎ ◎ 5 女性 29 ○ ○ × ○ ◎ 7 女性 35 ◎ ○ ○ × × ◎ × ○ ○ 8 男性 21 ◎ ◎ ◎ ○ ◎ × ○ ○ ◎ 12 男性 27 ◎ ◎ ◎ ? ○ 13 男性 28 ◎ ◎ ○ × ○ × ◎ ? ○ 14 男性 27 ◎ ◎ ◎ ○ ◎ × ◎ ? ○ 15 男性 24 ◎ ◎ ◎ × ? × ◎ × ◎ 16 男性 22 ◎ ◎ ○ × ◎ ? ○ 17 男性 23 ◎ ◎ ○ ○ × ○ ◎ ? ○ 地元内・外のつながり 類型 ID 性別 年齢 家族・親族 余暇 趣味 地域の つながり 同窓会 地元外に 出ること Ⅰ 単身,正規・非 正規含む Ⅱ 出生家族に含ま れる若い方,正 規・非正規雇用 含む 仕事・職 ◎ × × × × ○ × ◎ Ⅲ 創出家族を持つ 方を中心とする Ⅳ メロン農家で家 族が三・四世代 ◎ ◎ 地元つながり 社会関係 tie 地元志向 tying 根づき 図表 14 42 いる。彼・彼女らは,地元での家族との生活や仕事を通して,地元である夕張との向き合い 方に変化が起きている。また,全員が車の免許を持っており,余暇における外への解放性は 全員に見られる。そのことが,夕張の地理的な閉鎖性を切り拓く手段となっており,日常生 活を解放させる役割を果たしている。「地元を出たい」という気持ちが強く出た高校生への調 査結果と異なり,自分たちなりに,夕張での生活を形づくっていこうとしている姿を見るこ とができる41 。  特に,類型Ⅲ,Ⅳの者らは,地元外での余暇や趣味の関係が見られるものの,地元に根ざし たオピニオンを述べる者が多いという傾向がある。地元で家族を形成し,働く中で,地元と の向き合い方が変遷していると言える。類型Ⅳの地元志向のオピニオンから,地元への能動 的な意識や行動にはそれぞれ度合いが異なっているものの,否定的な地元観よりも,何とか していこうと考えている者が多いことがわかる。また,高校卒業後に社会に出て,夕張で暮 らしていく中で,地元観が肯定的なものへと変遷している者も見られる。これには,地域へ の根づき方や家族形成が関わっており,類型Ⅲ,Ⅳに分類した者は,とりわけ,地元志向の肯 定感が強く出ていることがわかった。そこで,次に,このような類型ごとの特徴,傾向がな ぜ生じるのかを地元への「志向」,「地元とのつながり(t タイイング ying)」から見ていくこととする。 Ⅳ 地元で暮らす若者の地元志向―オピニオンより  では,ここから,地元である夕張で暮らす若者の「地元志向」について見ていく。ここで も,Ⅲの図表4の地元への根づきの違いによる4類型(Ⅰ~Ⅳ)を基にしつつ考察していく。 地元での暮らしを通しての志向性の変化を3つの質問への回答から質的に考察する。 1.先輩として地元で働こうとしている若者に伝えたいこと  まず,「地域への教育」に関する設問の中で「地元で生活していこうとする若者に対して, 先輩としてどんなことを伝えたいですか?(どんな風に応援したいですか?)」と尋ねた回答 結果から,地元に対して抱いている志向性を見ていく(図表15参照)。  類型Ⅰの④と⑪は,地元で生活していくこと,仕事を見つけることの厳しさを伝えようと している。類型Ⅱの②,⑥からは,地元で生活していくことを勧めも否定もせず,その人が 望むのであれば,当人に任せるという姿勢が窺える。③は,「もし,夕張に残れるなら」と, もし可能であればいうニュアンスで語っている。⑨は,「どういう風にしていくのかってい うのをしっかり一人ひとりが考えておいた方がいいかなっていうか。自分達には何もでき ないって思うかもしれないんですけど」と,自分はこうしようとまでは言わないスタンスで 語っている。その点③と類似している。⑩は,元々市外に出たかったが,リーマンショック の影響もあり,それが叶わなかったという事情が反映した回答となっており,3年くらい地 元で頑張って考えた方がよいと語っている。また,地元が強みになると,離職,退学してく るUターン者の姿を見ていることもあり語っている。 43“地方の地方”における若者の「地元つながり」 図表15  類型Ⅲの①は,一度外に出て,他の場所を経験し,その後で夕張を客観的に眺めていいと ころを発見できるという語りをしており,類型Ⅱの⑩とちょうど反対の回答となっている。 ⑤は,厳しい中でも若い人が夕張に残って,人で潤っていくようにとなればと考えている。 ⑧は,地元の後輩に対し,「支えてあげたい」という気持ちを持っている。なお,⑦からはこ の設問に対応する回答が得られなかった。類型Ⅳの⑫と⑰は,自分が進学して一度外に出て いることも作用してか,一度は外に出ることを勧めており,類型Ⅲの①と類似している。⑬ は「自分のポジティブを分けてあげられれば」と語っており,類型Ⅲの⑧に近い。⑯は,「地 元で生活してくれるっていうのはほんと,ありがたいことですね」と,類型Ⅲの⑤のように 若い人に残ってほしいという気持ちを持っている。⑮は,比較的Ⅱ類型の者の考えに近い が,当人次第というよりは,その状況次第という性格の回答をしている。  類型Ⅰは生活の厳しさについて,類型Ⅱは全体として,当人の判断に任せるというニュア ンスでの語りが多く見られた。類型Ⅲと類型Ⅳは,地元に残ってほしい,地元に残っている 人を支えたいと考えている者が多い。また,一度出て外の世界を見てからUターンしてくる 【Q.地元で生活していこうとする若者に対して先輩としてどんなことを伝えたいか?】 ④「もうとりあえず今厳しいといえば,やっぱり就職活動で,就職先がないっていうのが厳しいと思う。 ⑪「やめといた方がいいよとしか言えないですね。利点がない。/ 夕張で一人暮らしとかはやめた方がいい。」 ③「こんな状況だけど,夕張でもいいところはあるし,夕張は。(自慢したいところは)夕張メロン。やっぱ,元気のいい ところとか。お祭りとかすごい楽しいし。うん。花火やったりとか。もし,夕張に残れるなら,どんどん活躍していって ほしいし。」 ⑥「後輩には,やっぱり夢ですね。将来のことを考えて進んでほしいっていうのが一番ですね。」 ⑨「どういう風にしていくのかっていうのをしっかり一人ひとりが考えておいた方がいいかなっていうか。自分達に は何もできないって思うかもしれないんですけど,/ 働く先がまぁね,ほとんどないし,そういうことも特に若い世代 の子たちがいろんな想いをというか,うん,考えて,訴えていかなくてはならないのかなとは思いますけど。」 ⑩「まぁ,まずは3年間くらいは一生懸命まず,仕事に慣れるまで一回頑張って,そこで一旦落ち着いてからですかね, 市外に出たりとか,自分のその,進路をそのどうしたいのか,ゆっくり3年間で考えた方がいいかなっと思うんですけ ど。地元逆に強みだと思うんですよね。」 ①「一度,夕張以外のところ,場所を見るのも勉強かなと。経験にはなるかなとは思いますね。/ ぜひ一度夕張を離れる ことをお勧めします。一度離れると,よく見えたり,悪く見えたりって。客観的に。そうですね。そういう経験はできるか なと。/ 夕張を一回離れて,けど夕張は夕張でいいところもほんとにね,見ていただいてわかる通り,自然にあふれてい るというか,夜なんかもすごい静かですし。まぁ,環境のいいところなんだなぁと思いますね。」 ⑤「子ども,地元にどんどん残って,地元で就職して,地元で子どもを産んで,で,少しでも夕張がね,人で潤っていく ようにしてもらえれば,ありがたいいかなぁと思いますね。あとは,就職先とかも夕張だと厳しいと思うので,かと 言って,福祉とかも給料安かったりしてね,大変だと思うんですけど,若い方にね,こういう福祉の仕事についてもら えれば,将来あるっていうか。今やっぱり,高齢,60 近い人達が就職して働いてるっていう現状も多いんでねー。若い 人がどんどん入ってきてくれれば,活気が出るかなぁと思いますね。」 ⑧「もし,同じ高校の子がこの会社に入ってきたら,そういうのも,どこの人たちよりも地元の後輩なんで,教えてあ げたい,支えてあげたいっていうのはありますし。」 ⑫「まぁ,一度外に出てみることをお勧めしますけど。まぁ,勉強で大学出てもいいし,仕事で外に出てもいいし。」 ⑬「まぁ,確かに夕張で仕事するのは厳しいと思うんですよね。やっぱり財政破綻してから。全てにおいて下回っている んで。前よりも。だから,何て言うんですかね。自分を強く持って,自分のポジティブを分けてあげられればなと。」 ⑭「夕張で暮らしてくって決めてるなら,どうしても不自由な面はあると思うんですよね。都会に比べて。ま,そういう こと全部,ひっくるめて,受け入れるっていうか。/ まぁ,地域貢献って言ったら大げさですけど,そういうことも全く しないわけにはいかない,いかない部分もあると思うんですよね。そういうこと,お互い,助け合いながらってことです かね。」 ⑮「他に出れて,うまくいかないっていうんだったら,地元に残って家族の面倒見ながらでも,やってってくれれば, いいんじゃないかなとは思うけど。(やっぱり若い方には,まぁ,夕張に残ってほしいなっていう想いってありますか? それともやっぱり,自分が出てきたいんなら,出てった方がいいって思いますか?)出てきたいなら出てった方がいい。 早くに出て,手に職付けてね,安定した方が。20 代後半になって,中途半端に出てくよりは。」 ⑯「もう,地元で生活してくれるっていうのはほんと,ありがたいことですね。どんどん高齢化になってきて,若い人 もほとんどいないんで。やっぱそれでその,若い人たちがどんどん夕張盛り上げていってほしいですね。/地域の活動 あるんで。まぁ,ボランティアっていう。積極的に参加してほしいですね。」 ⑰「ずっと地元にいるよりは,一回どっか出て,それから帰ってきても遅くはないかなとは思います。」 出所 ) 2010 年度・夕張高校のOB・OG 実態調査より作成 Ⅳ 類 型 メロン農家で家族が 三・四世代 Ⅰ 類 型 単身,正規・非正規含 む Ⅱ 類 型 出生家族に含まれる 若い方,正規・非正規 含む Ⅲ 類 型 創出家族を持つ方を 中心とする ②「やりたいことを,やったらいいと思います。」 44 ということも勧めている。どちらかというと,若い人を応援する姿勢と共に,市外に出るこ とも可能で,閉じているだけではないという根付きのあり方を見て取ることができる。 2.地元で生活するようになってからの志向性  次に,「夕張での生活について」の設問で,「学生時代と違い働くようになって,家族や地元 への向き合い方で何か変化はありましたか?」と尋ねた回答結果を見ていく(図表17参照)。 類型Ⅰの2名は,地元への意識は見られず,母親と職場が一緒なので顔を合わせて話すよう になった(④),高校を出してもらったことへの感謝(⑪)で家族の話が出たにとどまる。類 型Ⅱの者は,車が運転できることで,いつでもどこにでも行けるようになり,活動範囲が広 まったことを挙げている(②,③,⑩)。つまり,余暇を地元外で過ごすことができる=夕張 にいることが不利にはならないという感覚を持っていると見ることができる。それは,地元 とは直接的に向き合わない姿勢と言うこともできる。但し,③はメロン農家の出身であり, 家の手伝いをしたいという想いがあって夕張に残っている。⑨は,実家がメロン農家だった こと,現在も滝の上に住んでいることもあり,町内の青年会での行事に参加し,催し物の担 い手として幼なじみと一緒に活動するようになったと語っている。類型Ⅱの特徴としては, 余暇を地元外で過ごす傾向にあることと,家族の話が出てこないことである。  類型Ⅲの①は,仕事を始めてから,夕張のことをもっと知るようになったと言う。⑦は, 一度市外に出て就職し,夕張に戻って来て家族を形成しているケースである。彼女は,「夕 張の外に出たい」と若い人達の気持ちは自分もそうだったのでよくわかるが,学校の先生に は,夕張のいいところをどんどん教えて,悪いイメージをあまり伝えないでほしい,辛いば かりじゃないと語っている。昔と違い,むしろ外にいる者に対し,夕張をプッシュしてほし いという意識を持っている。また,一度外に出てから,客観的に夕張のよさを認識している 点,①とやや類似している(⑦のインタビュー内容抜粋部分参照)。⑤は車の運転ができると 便利,⑧は親との仕事の会話が増えたと,類型Ⅰ,Ⅱの者と重なる回答だったが,類型Ⅲの場 合,地元と向き合い,根づいたうえでの語りになっている。⑤の地元外への志向性は,地元 と向き合って,傍から見るほど不便ではない,というニュアンスと取れる。⑧も普段から家 族との会話が多く,④とは異なる。  類型Ⅳのメロン農家を営む者は,青年部(生産組合の下の組織,支部ごと,町内)を通した, 地域での活動を通して,自分達が地域の担い手として,町を盛り上げていこうと考えるよう になったという者が多く,類型Ⅱの⑨と類似している(⑫,⑬,⑭,⑮,⑯,⑰。他のインタ ビュー内容からわかったケースも入れ込んである)。夕張の主たる産業の担い手として,産 地を守ることと,町内の青年部の活動とはリンクしている。また,農家の方にとって,家族 は非常に大きな存在であり,仕事をするようになって話をする機会が増えている(⑬,⑮, ⑯)。メロン農家の場合,「夕張メロン」という作物を扱うことに対して,非常に高い誇りを 持っている。いかに自分らしいメロンをつくることができるのかという野望と同時に,「夕 張メロン」の品質維持のため,生産組合の青年部を通して,先輩から後輩へ,親御さんから子 どもへと,代々技術継承,意識の継承が行われている。そのため,非常に家を守っていくこ とに対しての自覚,土着性が強く,他の類型の者とは異なる部分がある。また,⑭は,地域 貢献へ興味を持つと共に,夕張の高校生に対し,高校側がどう地元の大切さを教えるか,そ して,どれだけの高校生がそのポイントを理解することができるか,といった語りをしてい 45“地方の地方”における若者の「地元つながり」 る。さらに,高校生の頃とは異なる地元観が出てきている(⑭のインタビュー内容抜粋部分 参照)。 図表16 【Q.家族や地元との向き合い方での変化は?】 出所 ) 2010 年度・夕張高校のOB・OG実態調査より作成 Ⅳ 類 型 メロン農家で家族が 三・四世代 Ⅰ 類 型 単身,正規・非正規含 む Ⅱ 類 型 出生家族に含まれる 若い方,正規・非正規 含む Ⅲ 類 型 創出家族を持つ方を 中心とする ④「まぁ,家族っていうか母親がやっぱり同じ職場なので,仕事の話とかはよくするようになった気がしますね。」 ⑪「家族には,高校卒業,出してもらった感謝を感じた。」 ⑤「高校の学生時代と比べれば,運転できれば,便利だなぁって思いますよね。」 ②「車ちょっとあるんで,いつでも,どこにだって行けますし。/すごいどこにでも行って,みんなで集まったりして, 今は今で楽しいですし,高校の時もそれはそれで,楽しかったし。」 ③「やっぱ,動く範囲が広まる。うん。でも友達とかもなかなか遊べないから。もう少し近くにいれば。/(やっぱり違 いとかってあります?遊びの行動範囲とか)あぁ,全然違いますね。」 ⑩「やっぱり車が運転できれば意外と便利っていうのはありますね。あと,自分のやっぱり稼いだお金なんで,やっぱ り家族に対してもちゃんと家賃とか,生活費とか払ってるんで,そういうところでやっぱりあの自分で稼いだ余った お金があるじゃないですか,そういうのがやっぱりあの自由になった部分は楽になりましたね。」 ⑧「今だったら(父親と)同じ会社なんで,家行ったら会話は,同じ会社なんで話が合うんで。その分,これがどうだった とか,仕事今忙しくて,来月はどうなるとか。そういう話,やっぱり,仕事の面でも会話は増えたなぁとは思います。」 ⑮「(家族でいけば)農家やり始めてからは,大体まぁ,俺が後継者で考えてやるようになってからは,まぁ,対等って 言ったらあれだけど,対等に話せるようにはなってきたかな。」 ⑰「(地元を盛り上げたい,貢献したいとかいう気持ちは?)あぁ,多少はあるかな。はい。あまり人が少なくならない ように。(働くようになってどんな点に責任を感じるようにはなりましたか?)やっぱ,メロンをつくって出荷するっ てことになるんで,変なものは出せないっていうのが一番ですかね。」 ①「学生時代よりかは,もっと夕張のことをもっと知るようにはなりましたね。それこそ車も持ったおかげであちこ ち走るようにもなりましたし。元々夕張の,私今この施設なんですけど,その前がその,坂上ってくる途中のデイサー ビスっていうところにいたんですよ。そこにいたもので,夕張隅々までお客様がいて,昔の話を聴いたりですとか,ほ んとなんか,あ,夕張の今までの歴史はいろいろあったんだなっていうことは,実感として働くようになってありま すね。」 ⑫「町内会の青年部っていうのもあって,まぁ,農協の青年部の人とメンバーは一緒で,沼ノ沢の人だけ抜粋されてる だけなんだけど。そっちの方で,町内会のお祭りん時に,今までは町内会のお祭り参加するだけだったのが,まぁ,焼 き鳥焼いてみたりとかが,獅子舞踊ってみたりとかがあるから,地元に参加してるけど。まぁ,盛り上げたいと思って 参加してるって言ってもいいんじゃないかとは思うけど。」 ⑦「できれば,今夕張は若い人って少ないですよね?で,どうしても,その夕張の企業じゃなくて,外にみんな出たい と思うんです。私もそうだったんで,気持ちはすごくわかるんですけど。ただその,授業の間とか学校の先生話してる かわかんないんですけど,その夕張のいいところはどんどん教えていってあげてほしいんですよね。その,暗いとか, 悪いイメージ,をなんかやっぱりあの,与えてあげてほしくないっていうか。自分は夕張にいるんですけど,やっぱり 生まれて育ったところなので。不便さはあるんですけど,でもやっぱりいいなって思うんですよ。まぁ,若い時はあん まりそういうの感じなかったんですけど。」 ⑬「農家やるようになってからは,まぁ,いろんなことを相談したりとか。家族に相談したりとか。そうですね,家族と 共に暮らしていかないとだめなんで。その,家族,どうやっていったら暮らしてけるっていう話をしたりだとか。です ね。(地元に対しての見方で変わったとかっていうのは)地元ではそれこそ,高校時代のその地元のそういうの(地域 の催しもの)にも参加したことがなかったので。地元ではこんなことやってたんだっていうのは,わかりましたけど。 夕張も頑張ってるな的な感じ。」 ⑭「地域貢献とか,やっぱり多少興味はありますね。…極端な話すれば,その親守れればいいっていうか。夕張市全体 っていうより,この家とかそういう感覚ですけど,やっぱり今は夕張が残って家内と,そのメロンのこともそうだし, 自分が子ども生まれて,学校なくなったら困るし。/青年部入ってからですかね。いろんな行事に顔出すようになっ たじゃないですか。したら,何でこの行事があるのかとか,意味なり何なりを,考えたり,先輩から教えてもらったり したときに。」 ⑯「やっぱ周り農家やってるって言っても,やっぱ高校とか,通ってた頃には全然知らなかった人達なんで,やっぱそ こから農家やることによって,その人達とも,こう自分って顔わかってもらって,まぁ,優しくしてもらってますけど 。/(地域貢献については?)そうっすね,やっぱ,青年部っていったら若いんで,やっぱ協力できることは協力して, 夕張盛り上げていけたら,それはそれでいいと思うんで。一番動ける時だと思います。/(父親とは)ほんと,ほんっと 話さなかったですね,高校の頃は。やっぱ自分メロンつくってく上で,メロンについて話も大体わかってきたので,や っぱその面で会話するようにはなってきました。」 ⑨「メロン農家をやってる子が多くて。C地区の同じ小学校から,幼なじみって言うんですか。メロン農家が多くて, 今もC地区町内のあの,青年会っていうのがあって,町内の地元の,青年会で,一緒にいろんな活動というか,何だろ う,町内の盆踊りとか,最近だったら。町内行事,お祭りだったりとか,小学校の運動会とか。そういう催しを青年会, C地区,同じね,C地区で育った若い青年会のメンバーでやってるっていうのはありますね。」 46 以下,インタビュー内容一部の抜粋 3.これからの夕張をどのようにつくっていきたいか  最後に,「日々の生活で感じていることについて」の設問で,「夕張の今後をどのようにつ くっていきたいと思いますか?」と尋ねた回答結果を見ていく(図表17参照)。この設問への 回答から,夕張に自分がどう関わっていこうとしているのか,現在,将来の夕張や自分,家族 のことをどう考え,受け止めようとしているのかを見ていく。  類型Ⅰの④,⑪は,特に意見が見られなかった。類型Ⅱの②,⑥,⑨は,自分が担っていく というよりも,若者が何とかして,現状を改善していかなくてはという意見を持っている。 その「若い人」,「若い子」の中に自分が含まれない語りになっているのが特徴である。③は, インタビュアーの促しで仕事に関する意見を述べているが,自発的には意見が挙がらなかっ た。⑩は,出生家族と同居しており,病院へ連れて行ってあげたいという想いや自身の経験 から雇用問題について述べている。 (⑦ 女性・35 歳,S 社勤務・管理事務・正規雇用) 「夕張の好きなところは,時たまうるさいって感じますけど,あの,近所づきあいがある ところっていうんですか?なんかあの,ちょっとしたことで困ってても,『あら,どうし たの?』っていう,なんかなんて言うんですかね。そういう付き合い。…自分も札幌行っ て,神戸行ってこう結局夕張戻ってきて,やっぱりその,肌で感じるなーんかそういう 時間の流れというか,なんかそういうのは違うので。」 (⑭ 男性・27 歳,メロン農家後継者) 「(18 歳の頃に比べて大人になった点は?)農家は働きたくなかったのに,今農家でいるっ ていうようなこととか。まぁ,そこ受け容れられるようになったこととか。…昔はそこ うち,そこ,上から先に登ってくんですけど,高いとこから夕張の町並みが見えるんで すよね。そこの,見える景色が昔はすごく嫌で。何もないし。嫌で嫌でしょうがなかっ たんですけど。今はそんな,悪くもなく見れるっていうか。」「不自由さがいいったらな んか,あれですけど。何でも近くにないから,いいっていうか。時間がゆっくり流れるっ ちゅうんですかね。」「やっぱり,地元の大切さとかも教えてほしいけど。それ理解する のも大変ですよね,高校生で。やっぱり,田舎だから出てきたいって感覚は自分にもあっ たから。そういうこと教えられても高校の時だったらウザく感じるんじゃないですかね。 どうなんだろう。いや,教えてもちゃんとポイントを理解する人がどれだけいるかです よね。そういうこと言っても。難しいですね,この問題は。一方的に押し付けても意味 ないですからね,その高校側が。学生がちゃんと理解してそれ実行するようにしないと。」 47“地方の地方”における若者の「地元つながり」 図表17 【Q.夕張の今後をどのようにつくっていきたいか?】 出所) 2010 年度・夕張高校のOB・OG実態調査より作成 Ⅰ 類 型 単身,正規・非正規含む Ⅱ 類 型 出生家族に含まれる 若い方,正規・非正規含む メロン農家で家族が 三・四世代 Ⅲ 類 型 創出家族を持つ方を 中心とする Ⅳ 類 型 ④「どのようにつくっていきたいと言われても私がやって成り立つものかっていう気もするんですが。」 ⑪「いや,特にないっすね。」 ⑰「できれば,今のままが続くような感じがいいです。」 ③「(何か目標とかありますか?)うーん,目標…うーん」 ②「僕が,つくるんですか?とりあえず夕張を,僕的に言うと,もっとみんなが帰ってきて,多分おそらく大学卒業しても, 戻って来ないんじゃないかなっていうのがあるんですけど。まぁ,そこはみんな戻ってきて,遊びまくる。(もうちょっと こう,若い人が増えたらいいなぁっていう)そうです。活性化させる。」 ⑥「今後だと,やっぱり若い人が中心になって,町を動かしてほしいなっていうところですね。(そのためにはどんなこと が必要だと思いますか?)うーん…やっぱり,何だろ…自分,とりあえずは,勉強というか,社会への勉強が必要なので, そういうことを学んでほしいなっていうのは。」 ⑤「こういう仕事柄ですけど,やっぱ福祉を重視していくような町にしていかないと,やっぱり高齢の方がもう本当主な ので,40,高齢化率40何%で,北海道1位で,夕張が。なってるくらいなんで,そこを利点としてというか,福祉を活かし た町づくりっていうのをやっていければいいのかなぁっていうのは,ありますね。」 ⑨「やっぱり若い子たちがね,少しでも残ってくれるようなというか,そのためには働くところ。今ね,ほんと少しずつ, ツムラさんとかも,来て~(?)その働き口というか,ところをもっともっと企業誘致をしていただいて,うん。やっぱり 残りたいっていう想いがあっても,働き口がなかったら,やっぱりどうしても出なきゃならないっていう子もいると思 うんですよね,中には。そこをまず,働く場所をたくさん,ってね。」 ⑩「やっぱりお年寄りが多いんで,やっぱりあの,病院とかですね,そういうところの環境とか,つくってほしいんですけ どね。やっぱりお年寄りの町なので。あと,交通が普段,もうちょっと確立してほしいですね。あと,就職の雇用の,少し増 やしてほしい。もうやっぱり全くないらしいんで,地元の。そういうところはもう少しつくってほしいと思いますね。就 職の雇用状況といいますか。」 ①「今は本当に高齢化も進んで,歩いていると,お年寄りの方ばっかりなんで,ほんとにお年寄りの方が生活しやすい環 境になればなと思います。それこそ買い物するところだって,家から歩いて何十分とかバスに乗らなきゃならない,病院 まで行くのも送迎バスがあっても自分で行けない人もいるっていうことで。(まだまだ不便だと)いやぁ,不便だと思い ますよ,僕は。」 ⑫「うーん…まぁ,方向性がイマイチ定まってないかなぁ,みたいな感じがするから。昔は,かん,炭鉱。で,炭鉱潰れて観 光だみたいな,キャッチフレーズできたけど,観光も,結局俺はだめだったんじゃないかなって思うから。でも,映画祭を 毎年まだ続けてたりとか。観光だって押してる市民と,いや,夕張って言ったらメロンでしょみたいな,2通りの方向性 が平行線たどってるような感じがするから。」 ⑮「夕張…は,とりあえず(どんな夕張にしたいとか)とりあえず,借金返すことだよね。/(青年部のボランティアについ て)要は,これだけ若い人がいるんだから,やれることはやった方がいいんじゃないかなっていうのと。やっぱ,こんだけ ね,交通手段がそんなにない,不便な田舎で,年寄りはずっとね,借金もあって,財政破綻もしてんのにいる人達だから, 助けてやりたいっていうのもあるし。」 ⑯「まぁ,前みたいに歴史村みたいな,ああいう客寄せっていうか,そういうものはしない方がいいっていうか。まぁ,無 理に何か大きいものをしようっていうことはしないでいった方がいいと思うんで。やっぱこんな感じで,いくのが一番 いいと思うんですよね。/そっちで(メロンで)アピールした方が,やっぱ夕張住んでもらうっていうのは,無理な話なん で。そっすね。イベントごととか,そういうやる分にはいいと思うんですけど。/まぁ,メロンつくってる側,なんで。この メロンが失敗,何か,メロンに何かあったらっていうと,メロン品質が悪いのが混ざり込んでメロンになんかこう,苦情 来たりとか,なんかひどくなったりしたらっていうのは思います。それで一気に夕張っていうイメージが落ちて,それだ けが夕張自体が,ほんとにひどくなると思うんで。」 ⑭「過疎化ストップしてほしいですよね。やっぱそうなってくとやっぱり職もないとだめだし,なんか残る魅力がないと。 残ってとは言えないんですけど。/18の人とかいきなり農家で働きにくるとかっていうのはすごく少ないんで,そこのA フーズとかもそうですけど,もっとちゃんとした母体っていうか,そういうの持った企業が入ってくると…そうなったら, 今度足りないところも出てくるでしょうけどね。住むところだったり。長い年月かけてですけど。(農業もずっと活性化っ ていうか,残っていってほしい。)そうですね。いや,でもそうなったら活性化につながると思うんですよね。人が出る,人 がいっぱい来るから。働く人もこっちに来てくれるようになるし。(買うようにもなるし)そうです。その若い人のお母さ んとかがこっちに来るようになるだろうし。全部につながってくると思います。」 ⑬「夕張の今後ですか。まず,あれですよね。莫大な借金が,夕張市にある。それをまぁ,何て言うんですか。市民が払って いくって,その返していくっていうことになってる,17年,18年でしたっけ。それくらいかけて払っていくっていうこと になってるので。それを何とか返しつつも,あの,自分のまずメロンを見つけて,まず自分家がしっかりしないことには。 やっぱり自分のメロンを確立して,他の人にいろいろ言えるような。先輩が僕にしてくれたような,人間になっていきた いですね。はい。夕張は変わるのかな。」 ⑧「今同じ会社の人と,同僚の仲間で,自分入れて3人で,あの歌,歌って,いろんな各地のイベントで3人でトリオで歌 ってやってて,で,けっこう地元の,今こう財政破綻とかなって,けっこうみんな元気ない状態なんで,イベントとかなっ たら,いろんな札幌とか,いろんな地方の人達がけっこう,支援してくれて。こないだ,はあの,夕張のマウントレースイ っていうところで,札幌だったり,帯広だったり,旭川だったり,いろんな昔からバンドやってる人たちが,いっつもだっ たら札幌,毎年1回ずつ札幌でやってたんですけど,今年からは夕張でやろうって言って。地元の人に元気与えようって 言って。…やっぱり音楽で,夕張元気ないから,いろんなイベント参加して,いろんなところに人呼べたらなぁっと思う んですけど。」 ⑦「もっと人が集まることをしたいんですよ。やっぱ,財政破綻した年1年くらいは,いろんなイベントをしたりとかして ね,芸能人の人呼んだりとかして。なんか映画祭もそうなのかもしれないですけど,なんか盛り上がってたんですよね。夕 張,夕張って,テレビでもやってたんですけど。そんなの1回で済んじゃったら,それで終わりなんですよ。…だから具体 的には,高速道路からも入れて,夕張の普通の道路ね,からも入れる大きい,具体的に道の駅とかをつくってしまって,そ こで,夕張でつくったメロンもそうですけど,野菜だとか,そういうのを夕張でしかないようなものを売ったりとか。で, 夕張って温泉だってあるので,ちょっと足湯つくったりとか。そこにちょっと温泉とか施設もつくったりとか。あと,子 どもが,遊べるようなところがあると,家族で来てくれたりするんじゃないかなと思うんで。でも,すごくお金のかかる ようなものじゃなくて,ちょっとした,なんかだったりとか。…1回来たら終わりじゃなくて,何回でも足を運びたくな るようなものをつくったりとか。」 48  類型Ⅲの4名は,⑦を除き,3名が夕張市外に居住している。だが,夕張に対して,自分が 担っていこうという能動的な姿勢を見て取ることができる。①,⑤は,福祉職に就いている ことから,お年寄りの生活の不便さ,福祉について意見を述べている。⑦は,「人が集まること をしたい」と述べ,お金をかけなくてもできるような,施設,イベントについて語っている42。 ⑧は,会社の同僚3人とバンドを組み,夕張内/外で活動をしており,夕張を盛り上げてい けたらと考えている。  類型Ⅳのメロン農家の者は,「夕張メロン」を生産する担い手としての意識が非常に高く, これからの夕張についても,メロンづくりについて述べている者が見られた(⑫,⑬,⑯)。 また,夕張市の財政再生を意識し,⑬,⑮は借金返済について語っている。また,⑭は過疎 化をストップするために,長い年月はかかるが,雇用先となる企業の母体の必要性,そこで 働く者の生活の場の整備,雇用確保からの生活の循環の可能性について意見を述べている43。 ⑮は,高齢者に対し,「財政破綻してんのにいる人達だから,助けてやりたいっていうのもあ るし。」と述べており,青年部でのボランティア活動について,若い人達にできることはやっ た方がよいと考え,実際に活動している。類型Ⅳは,本文中のⅢでも述べた通り,生業が地 域とつながっているため,非常に土着性が強く,夕張メロン,夕張市を背負っていくという 姿勢が見られる。  類型Ⅳ以外の者で,夕張の中での地域に関する諸活動をしている者は,類型Ⅱの⑨,類型 Ⅲの⑧44に留まった45。地域における活動の他,地元内における余暇・趣味,高校時代の同級 生,地元外における余暇・趣味において,夕張のための活動について分析したものの,イン タビュー結果からは,特に活動が見られなかった。その分,余暇や趣味における消費,遊び など,地元外で過ごす傾向が強く表れた。特に,同僚との関係,職業を通した関係性のない 者,自治組織(町内会)のつながりがない,類型Ⅰ~Ⅲに属する者にその傾向が強く見られ た。類型Ⅳの者も,他の類型の者と比べると頻度は低いものの,消費性向,地元外で過ごす 傾向が見られた。  2009年に実施した夕張高校の3年生を対象とした調査(アンケートとインタビュー)から は,地元への愛着は総じて高いものの,全体の8割を超える者が夕張の外に出たいという希 望を持っていた。また,自分が離れた後の夕張について何とかしたいという考えを持ってい る者が少ない一方で,夕張に残る家族や地元のことを気にかけるという結果が出た46。  本稿で,対象とした夕張高校のOB・OG調査からは,地元への志向性の変遷を見ることが できた。彼・彼女らの多くは,地元での生活を通し,決して否定的ではない地元観を持ち, 能動的な意識を持つようになっている。特に類型Ⅲ,Ⅳの者は,地元に根ざしたオピニオン を述べる者が多かった。全員が車の免許を持っており,地元外にでる傾向が見られる点は, 高校生調査に見られた地元志向と重なるところがあるものの,OB・OG調査からは,それと は異なる地元観を確認することができた。地元で生活していく中で,何とかしていこうとす る意識,自分達なりに夕張での生活を形づくっていこうとする姿を見ることができる。それ らの意識は,現在進行形で形づくられていくものであり,「つ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ くられつつある」地元とのつな がり(t タイイング ying)である。 49“地方の地方”における若者の「地元つながり」 Ⅴ おわりに  ここまでで,夕張高校のOB・OGを対象としたインタビュー調査を基に,夕張で暮らす若 者の「地元つながり」について考察してきた。以下で,インタビュー調査の分析結果から明 らかになったことを整理していく。 1.夕張における若者の「地元つながり」  まず,夕張における若者の「地元つながり」であるが,本稿では,「普通の若者」の「普通の 日常の生活」の中で育まれている関係性,地元の生活の中で「つ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ くられつつあるもの」として 「地元つながり」を考察した。主に,会社の同僚・職場,メロン農家の青年部,家族,友人関 係,余暇・趣味という観点に,地元への根づきの違い,地元内/外という区分を含ませて考 察した。  仕事におけるつながりでは,会社の同僚との職場外でのつながりには個人差があるもの の,メロン農家の青年部のつながりは非常に強いということだ。「夕張メロン」という全国的 なブランドを扱っていくという誇り,栽培技術の継承の他,余暇におけるつながりも見出す ことができた。また,青年会を通し,地域貢献も行っている。  家族との関係では,類型Ⅰの者は,家族のことと自分のことを切り離して考えており,類 型Ⅱ,Ⅳの者は,進路形成時に家族を気にかけている者が多かった。類型Ⅲは創出家族を形 成し,家族とは離れて暮らしており,そのことが地元を客観的に考える余裕と地元への肯定 感を生み出していた。類型Ⅳの者はメロン農家で,自分の家,「夕張メロン」を守るために後 継しているため,家の仕事,家族を何とか支えていこうとする姿勢であった。  また,仕事,家族,友人関係,趣味のつながりには,地元への根づきによる違いが見られ た。Ⅰ,Ⅱ類型の者に比べ,Ⅲ,Ⅳ類型の者は,地元内におけるつながりが強い。また,地元 への志向性に関する語りでは,地元に根ざしたオピニオンを述べる者が多かった。  そして,最も「地元つながり」において顕著なのは,夕張高校の同級生を核とした「地元つ ながり」である。調査対象者の全員が夕張諸学校時代の同級生,とりわけ,夕張高校の同級 生との関係を未だに維持している。その関係性は,夕張の地元内だけでは完結せず,地元外 に出て行った友人と行き来するといった,外へと開かれた関係性である。地元内/外を超え る夕張高校の同級生とのつながりは,昔のままではない「現在の関係」として形づくられて いる。また,今なお「形づくられつつあるもの」として存在している。地域,仕事や家族と異 なり,自分自身の意識で意図的に維持している関係であり,彼・彼女らの生活における「表 出性」を満たす大きな存在であると言える。  このように,夕張で暮らす若者達は,地元「内/外」,「都市/田舎」という二値区分を超え る生活を送り,現在の関係性を構築している。類型Ⅰ~Ⅳの者全員が,地元内/外が折り重 なるような生活を送っている。余暇や趣味において,皆,地元外へと出ることがあり,その ことが,日常生活の外への広がりを可能にしている。これは,「地元つながり」の地元内/外 におけるつながりとも関係し,彼・彼女らの実存の支えとして非常に大きな役割を果たして いる。また,都市にいなくても,車による移動により,都市における消費や遊びを享受する ことができている。夕張で暮らす若者は,地元における就業において,家族のことなど,何 らかの構造的な要因から進路選択を行っている者が少なくない。しかしながら,構造的な要 因に規定される「地元」から抜け出る,非日常の空間を各々が形成しており,そのことが地元 50 での生活を可能にしていると見てとることができる。「定住」しつつ「移動」しながら生きる ことが47,地方都市においては可能な時代であることが,地方の若者を見る際に重要であると 言える。 2.地元つながりにおける「t タイ ie」と「t タイイング ying」  筆者は,本稿において,「地元つながり」を「t タイ ie」と「t タイイング ying」の2つの側面から考察した。前 者の「t タイ ie」は,仕事や家族,友人関係などの社会関係という切り口から分析する際には,その 時すでにある「つながり」ということになるが,社会関係としての「地元つながり」はこれま でに,つくられてきた関係性であり,これからもつくられていく関係,関係の中でつくられ ていくという様相も帯びている。よって,分析レベルでは静態的な捉え方となっているが, 生成的な側面もあると考える。そこで,「つ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ くられつつある」現在進行形の地元志向,地元と のつながりを「t タイイング ying」と捉えて考察した。本稿では,地元を「つくっていこうとしている」活 動に加え,あえて顕在化していない思考の段階にある志向性も「tying」として捉えることと した48。「t タイ ie」と「t タイイング ying」は分離できるものではなく,互いに交錯して,重なりのあるものであ る。(図表18)。  本稿で対象とした,夕張で暮らす 若者達の実態からは,社会関係とし ての「t タイ ie」を通して,「夕張高校の同 級生を核としたつながり」を見るこ とができた。また,その「t タイ ie」が地 元での生活の支えとして機能してお り,その生活の中で,地元への肯定 的な志向性が生まれている。先輩と して地元で働こうとしている若い人 に伝えたいこと,地元や家族との向 き合い方の変化,今後の夕張について,といった地元志向に関する設問への回答から,地元 で暮らすようになってからの地元志向が変遷していることがわかる。彼・彼女らの語りから は,地元を引き受けるという受動的な姿勢ではなく,能動的に地元を受け止めていこうとい う姿勢を窺うことができる。  夕張は「財政破綻」をした町として,地元内外の住民に認識されている。そのことが,地元 で就労して生活していくというローカル・トラックの道を意識の上でも縮減させている。し かしながら,夕張で暮らす若者の実態調査から見えてきたのは,地元でも何とか生きていこ うと現実を組み替えていこうとする若者達の姿であった。本稿では,Ⅲの2(3)の「家族と の関係」の中で触れるに留まったが,進学費用の問題,家の後継,親のケガや病気,死などが 背景となって,夕張に残っている場合が少なくない。何らかの引き受けを含みこんでの進路 選択であり,決して楽観的な生き方ではない。しかしながら,地元で生活していくというこ とを,ネガティブに捉えてはいない側面が本調査からは見えてきた。そのことと,「地元つな がり」に見られる「つくられつつある」関係性は深く関わっていると言える。  中西(2005)が述べるように,ローカル・トラックの潜在的可能性を現実性に転化させる には,「社会経済」の実現を考える必要があると筆者も考える。本稿で考察の対象とした夕張 つくられてきた・ つくられていく 社会関係 tie つくられつつある 志向性 tying 社会関係 志向性 + 地元つながり 図表 18 地元つながりと地元志向の関係 51“地方の地方”における若者の「地元つながり」 で生きる若者の生活圏からは,若者達の地元での日常生活において「つくられてきた・つく られつつある」関係性としての「地元つながり」を見ることができた。そして,「地元つなが り」の中核にあるのは,夕張高校時代の同級生とのつながり「t タイ ie」と,そこからつくられつつ ある「t タイイング ying」である。 3.地方都市における高校の役割   夕張において,高校は夕張高校の1校であり,「地域における灯台49」の役割を果たしてい る。現在,北海道の地方都市では統廃合が進んでおり,1学年2クラスより少なくなった時 点で統廃合の対象とされ,地元における存続運動が起こっても,廃校になるケースが多い。 しかしながら,地方都市において,高校の果たす役割は,受験学力を伸ばすことだけではな いことが,夕張の若者達の実態調査からは見えてきた。地元で生活を続ける者にとっても, 夕張の外に出て行く者にとっても,高校時代の仲間は,かけがえのない存在であり続けてい るのである。また,夕張では,職場における先輩・後輩が夕張高校のOB・OGであるケース が多く,若者が就労する際に,安心して働ける場を提供してくれているという側面もある。  最後に,「夕張高校への期待」として,インタビューへの回答から得られたオピニオンを参 照して締めくくることとする。オピニオンとしては,市内で唯一の高校の存続を願う声が多 かった(①,③,⑫,⑬,⑭,⑮,⑯)。以下に,⑦のオピニオンを挙げておく。  従来の「地元つながり」に関する研究では,地元への根づきについての考察が行われてこ なかった。しかしながら,夕張で暮らす若者の実態からは,地元への根づき,地元で暮らす 中でつくられていく関係性を確認することができた。その「地元つながり」の中核には,夕 張高校の同級生の存在があった。夕張で暮らす若者達は,エイサーに取り組んでいるわけで も,ストリートダンスに興じているわけでもない,「普通」の若者である。彼・彼女らの「地 元つながり」の「t タイ ie」のつなぎ目の役割を果たしているのは,夕張高校の存在である。雇用 の潜在性に目を向け,住宅等のインフラ整備を整えることができ,税負担などの生活上の不 安を解消することができたなら,地元志向の強い若者達は,地元へ残る/戻ることができる のではないだろうか。そのことも踏まえた上で,ノン・エリートの存在を鑑み,地方都市に おける後期中等教育の役割について,再考していく必要があると筆者は考える。 (⑦ 女性・35 歳,S 社勤務・管理事務・正規雇用) 「できれば,今夕張は若い人って少ないですよね?で,どうしても,その夕張の企業じゃ なくて,外にみんな出たいと思うんです。私もそうだったんで,気持ちはすごくわかる んですけど。ただその,授業の間とか学校の先生話してるかわかんないんですけど,そ の夕張のいいところはどんどん教えていってあげてほしいんですよね。その,暗いとか, 悪いイメージ,をなんかやっぱりあの,与えてあげてほしくないっていうか。自分は夕 張にいるんですけど,やっぱり生まれて育ったところなので。不便さはあるんですけど, でもやっぱりいいなって思うんですよ。まぁ,若い時はあんまりそういうの感じなかっ たんですけど。今思うんで,うん。悪いイメージをあまり言い伝えないでほしいというか。 辛いばかりじゃない,っていうのは思います。」 52 注 1 小西(2005)は,今後の日本社会における青年のライフコース変容はどうなるのかという議論の中で,「特 に『ノンエリート』層,しかも地方のその層においてより不安定化の度合いが強くなる。グローバリゼー ションや新自由主義的改革のインパクトがより激しい“地方の地方”では,もうすでに『フリーター』にな ることさえ困難な状態にある」(p. 237)としている。このように,青年を捉える際に,地方都市の中でも, さらに地方に位置する,「地方の地方」に目を向ける意義は大きいと考える。 2 「ノンエリート」については,小西(2002),中西・高山編(2009)参照。 3 高山(2009)も「青年/若者」研究における「地域差に対する無関心」について述べ,「『若者』論の大半は依 然として,『移行』の困難や不安定雇用の問題を日本のどこでも一様であるかのように論じがちである。」 (pp. 248-49)と指摘している。 4 自治研中央推進委員会編(2007),保母・河合・佐々木・平岡(2007)参照。 5 浅川(2011)ならびに夕張市のHP中の夕張市の統計,人口推移,夕張市の月別人口世帯数調参照。 (http://www.city.yubari.lg.jp/contents/tokei/jinko/suii/pdf/tsuki.pdf) 6 国立社会保障・人口問題研究所(東京)の推計に基づき,再建計画の終了時の夕張市の人口は約7,300人と 見込まれているが,働き手の流出加速は一切考慮されていない。実際には,推計の2倍のペースで人口が 減り始め,計画初年度から誤算が生じているという。(『北海道新聞朝刊』2008/03/04, 1ページ参照)なお, 2010年に入り,財政再生の計画期間は平成41年度までの21年間(実質17年間),赤字解消額が2011年度より 322億円と公表されている。 7 昨今,「地元つながり」,「地元志向」として,グローバリゼーションとの関わりで述べられているもの(鈴木 2006,浅羽 2008,土井 2010,轡田 2011)が増えているが,いずれも実態調査とは離れたところで論が展開 されている。また,「ジモト」という意識の中での純化されたつながりに着目されているものが多い。夕張 市外に出ている者を対象とする際には,大きく関わってくる論であるが,本稿では,地元に定着している 若者を対象とすることから,地方の実態を視野に入れた論を参照することとする。 8 1つ目の場所の共有は,学校や家庭とは異なる共通のたまり場を有していること,2つ目の時間感覚の共有 においては,職業よりも仲間との時間が優先され,ダンスの時間,その後の時間の共有がなされているこ と,3つ目の金銭感覚の共有は,その場で金を持っている者が食費や家賃を負担し,それを皆当然と思っ ている感覚である。(新谷2007, pp. 232-36) 9 新谷(2007)は,進路選択プロセスにおける学校外の場の機能について述べる中で,「なんらかの目的をも ちながら,生活手段を得ることを可能にする機能」を「道具的機能」,「情緒的安定をはかっていくことを可 能にする機能」を「表出的機能」としている。そして,「個人の側がそれらの機能を意識的,無意識的に求め るものを表す場合にそれらを『道具性』,『表出性』とする。」とし,「表出性は,居場所感といってもよい。」 としている。(新谷 2007, pp. 246-47) 10 「地元のことがとても好きだ」に対して,「あてはまる」「ややあてはまる」と回答している者がおよそ8割 に上っている。 11 「地元に豊かな交友関係を築くことは,若者たちに離れがたさを生むのだ。しかし,すでに述べたように, 就業という意味では,その離れ難さがリスクとなるのである。逆に,地元の外に人間関係を築くことは, 地元から出るという選択肢を現実的なものにする効果がある。」「地元外交友は,特定の地域へのこだわり を生むよりも,むしろ『どこでもいい』というフットワークの軽さを生むのである。地元に限らない人間 関係を築くことができる,できた若者たちは,特定の場所にこだわらずに働く場に移動していく力を持つ のだと言える」と述べている。李・石黒(2008),pp. 162-164 53“地方の地方”における若者の「地元つながり」 12 土井(2010)は「地元の文化や人間関係の影響力が低下したことによって,かつて若者たちを地元から押し 出していた要因(プッシュ要因)は消えていった。」とする。また,「さまざまな大型商業施設が地方に整備 されることによって,彼らを都会に引き込んでいた要因(プル要因)も消えていった」と述べている。し かしながら,土井のいう「地方」とは,都市の郊外や,ある程度人口の多い地域を想定していると考えられ る。地元流出は多いものの,地理的な構造要因から流動性が低い夕張のような「地方の地方」の地方都市 においては,消費性向が見受けられるものの,そこには場所の移動が含み込まれ,進路形成においても,北 海道で一番大きな都市であるB市への憧憬が非常に強く表れている。夕張においては,地方から都市への 「プッシュ・プル要因」が消失せず,昔とは形を変えながらも存在しているのである。 13 「ローカル・トラック」については,吉川(2001)等の先行研究を挙げることができる。だが,本稿では,中 西が,「自立を支える『社会経済(social economy)』構想」の中で述べている「職業的ローカル・トラック (生活圏と切り離されぬ就業を安定して確保できる回路)」(中西 2005)という意味で用いる。本稿で対象 としている調査から見られたローカル・トラック,「地方の地方」に当たる夕張の若者の地元での生活につ いて,拙著(窪田 2011)も参照されたい。 14 本調査は,筆者の他,2010年度の北海道大学教育学部・教育社会学調査実習を履修した学部生,TAの院生 の協力の下,事前にインストラクションを実施した上で実施した。なお,本調査は,日本学術振興会科学 研究費補助金(基盤研究C)(研究課題「地方ノンエリート青年の社会的自立と進路指導・キャリア教育の改 善に関する研究」),研究代表者・浅川和幸,研究課題番号22530904)に基づいて行った。 15 ⑦のみ,入学時は夕張南高校で,市内の高校の統廃合により,卒業時には統合後の夕張高校となっている。 ちなみに,当時は,普通科と商業科があり,⑦は商業科の出身である。 16 収入については,対象者に「天引きされる前の収入を教えてください。」と尋ねて返ってきた回答内容を載 せてある。そのため,年収の場合,月収の場合,ボーナスについての記載がある場合と統一されていない が,回答内容をそのまま記載することとする。 17 2009年8月実施の進路指導教員の方への聴き取り調査から。家庭の暮らし向きについては,保護者への調 査は行っていないため,正確な年収については把握できていない。中小零細事業者の実態については,川 村・河西の調査研究ノート(2009)から窺い知ることができる。 18 2009年8月実施の進路指導教員の方への聴き取り調査から。高校は将来的には1間口(クラス)となると 予想されている。ただし,地元の高校生が100%で,交通網の関係上,近隣の町への通学が困難な地域があ るため,廃校は免れて,K高校のキャンパス校となるのではないかと考えられている。 19 中学校卒業者のうち,1割近くの生徒は,M市やB市等の市外の進学校へと進学する(メロン農家の跡を 継ぐという生徒で,近隣の農業高校へ進むというルートも若干見られる)。その場合は下宿や送り迎えな ど,何らかの形で地理的な問題をクリアしている。基本的には市外への通学は,公共交通機関の関係上難 しい。 20 2009年8月実施の夕張高校の進路指導教員へのインタビュー調査より。リーマンショック以降は,夕張市 内,夕張近郊での求人が減少し,道外で就職せざるを得ない者も出てきている。 21 夕張高校の生徒の進路については,筆者の修士論文を参照されたい。(窪田 2009) 22 ①の地元企業には,今回の調査対象以外にも,地元に根づいた企業,非正規雇用の比率が比較的高い企業, コンビニやガソリンスタンド,運輸業などのサービス業を担う企業がある。今後他にもいくつかの企業で 調査を行う予定であるが,本稿では限られた事例からの実証にならざるを得ない。本稿で対象とするS社 とI社は,夕張高校の進路指導教員の方への聴き取り調査(2008年)から,高卒後,市内で就職する場合の ケースとして紹介してもらった企業である。また,(3)のメロン農家の経営者,後継者になるというルート 54 には,I市にある農業高校を卒業してすぐに就農するというケースも多いが,今回は夕張高校のOBに限っ ている。 23 夕張は地理的な事情から,市外へ通学できる高等学校以上の教育機関は,K町にある介護福祉学校のみで ある。他の学校に進学する場合,イコール市外へ出ることを意味するため,経済要因が大きく進路に影響 する。 24 高校在学中から,ホームヘルパーの講座を受講して資格を取得し,地元で3年間働いて介護士の資格を取 得しようと考えている高校生もいた(2009年実施の夕張高校3年生の実態調査より)。介護施設としても, 高卒後すぐに就労してくる若年者を受け容れ,先輩社員が育成できるかどうか試みているという。 25 夕張高校の進路指導教員の方によると,高校の生徒の中でも,親御さんの経済状況によって,経済的な格 差があるという。年収200~300万円という家計の家が多い中,メロン農家の家計は比較的裕福とのこと だ。 26 文中の「A地区」は,夕張の地名である。現在,夕張では市役所などのある「本庁」地区よりも「E地区」と いう地区に人口が集中してきている。「A地区」は,夕張高校が位置し,市営住宅もある,比較的人口の多い 地区である。 27 青年部とは別に町内会ごとに形成されている組織。メロン生産組合の下にある青年部と構成メンバーは重 なるが,メロン農家以外の地域の若い方々も含まれている。 28 フェイス・シートに対応した調査対象者のID番号を以下,「①」というように,①~⑰まで表記する。 29 文中の「C地区」とは,夕張市内にある地区名で,メロン農家の多い地域である。 30 メロン農家以外の者でも,地域における活動は一部見られる。①と④は高校時代に吹奏楽に所属してお り,吹奏楽部のOB・OG会に所属していて,年に数回夕張高校へ行くことがある。また,⑧は同僚とアコー スティック系のバンド活動をしており,地域を盛り上げていきたいと考えている。 31 ④,⑩,⑪は,他の者に比べると,仕事,職場を通した社会関係が薄く,地元内の友人との関係が濃い,地 元内で閉じた関係性を築いている(図表13も参照されたい)。そのため,地元にいる友人の存在が,彼・彼 女らにとっては比重として重く,大切な存在となっているのではないかと考えられる。 32 介護職は従来,女性の占める割合の高い仕事とされてきた。R園でも,年輩の方は女性の占める割合が高い ものの,若い層では男性の比率が上がってきている。(2010年夕張高校OB・OG調査のための,R園への予備 調査の聴き取り調査より。) 33 ⑦は,兄の縁故で,システム入れ替え時にアルバイトとして入り,1年後に正規職員となっている(高校生 の時にもS社でアルバイトをした経験がある)。そのため,⑥も契約社員から正規職員になることができる 可能性がある。年に5,6人は正規職員として採用(おそらく非正規・契約社員から)になるとのこと。 34 ここでの家族との別居とは,市内で創出家族を形成して,自分やきょうだいが親とは別居しているケース, 市外で同棲,結婚して暮らしているケースのこと。 35 一般に,古くから農村社会に対し,閉鎖的で,閉じたイメージを抱きがちであるが,夕張の場合は,比較的 解放性が高い。そのため,通常使われる家父長制の下での「家意識」や「家制度」といったものと,夕張の メロン農家の方々に見られた「家意識」とは異なる点,留意する必要がある。 36 「農村」,「非大都市圏」の性格の強い地域における若者の「地元志向」において,出生順位との関係性を 扱ったものとして,冨江(1997)の研究がある。氏の分析結果からは,出生順位が「地元志向」を規定して いるという仮説が検証されている。調査は,滋賀県の高校生を対象としており,進路選択と「地元志向」の 関係について分析されているので参照されたい。 37 この他に,携帯電話の普及も背景として考えられる。2009年7月に行った夕張高校の3年生への調査で 55“地方の地方”における若者の「地元つながり」 は,携帯電話の所持率が9割を超えており,メール等の使用が見られた。2010年のOB・OG調査では,メロ ン農家の方にのみ,パソコンにおけるインターネットの仕事上の使用について尋ねた。その結果,ほとん ど利用しないとのことであった。(ちなみに,2010年8月末の段階では,ADSLのみで,光回線は夕張では 通っていなかった。)携帯電話の果たす連絡・情報ツールの役割は,地方都市における社会関係の維持,構 築のためには,かなり重要なものと考えられる。特に夕張の場合,炭都としての歴史とも関係するが,縦 に長く居住地域が広がっており,同じ夕張市内といえども,車を使わないと行き来が難しい,または,時間 的に交通機関の縛りを受けるという側面がある。地方都市における若者のメディア利用に関しては,本稿 の課題の範囲を超えるため,指摘するに留める。 38 ⑦の方は,趣味としては活動していないものの,高校時代のガールズバンドとのつながりが未だにある(み んな全国バラバラに所在しているため,たまにしか集まれない)。地元内では,同僚と一緒に遊ぶことが多 いが,何か相談がある時は,バンド仲間にするという。また,高校時代に築いたこのバンド仲間は,「深いと ころでもつながっていけるような,高校卒業してからでも付き合っていけるような仲間」と語っている。 39 ⑮の方は,高校時代のバレーボール部の仲間とも未だにつながりがあり,お盆やお正月などには集まって いる。 40 クロスした結果の詳細については割愛する。 41 窪田(2009)参照。 42 彼女は,インタビュー内で「道の駅」の構想を述べているが,これは実際に夕張市内に設けられることに なった。 43 夕張は,炭都として栄えた後,炭鉱が担っていたインフラ整備を市が全面的に引き受けたという歴史があ る。その中には,市営住宅の整備も含まれており,市民の半数以上という極めて高い割合の者が入居して いる。市営住宅の集約など市政が展開するようだが,未整備の面が多いと言える。生活の基盤となる住宅 等のインフラ整備は,今後の人口減を鑑みて,人口回復のための非常に重要なポイントである。この点に ついては,浅川(2011)を参照されたい。 44 今回の調査結果では,余暇・趣味において,夕張を盛り上げていこうと考えて行動している者は類型Ⅳを 除き,⑧に限られた。 45 ①,④は高校の吹奏楽部のOB・OG会に所属し,年に何回か夕張高校を訪問しているが,頻度としては低 く,「これからの夕張」をつくりあげるという側面は確認できないので,ここでは取り上げない。 46 窪田(2009)参照。 47 この発想は新原(1997)から得た。新原は「ホモ・モーベンス」という言葉を使っている。 48 本稿で分析した「地元志向」がそのままイコール「tying」というわけではなく,地元への志向性の一部分と して考察している(tying>地元志向)。地元への志向性については,今回の調査で全面的にお話を聴くこ とができたわけではないため,今後の調査でより考察を深めることができたらと考える。 49 2008年に行った,進路指導担当教員へのインタビュー調査の中で出てきた言葉である。 【参考文献】 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