DRFの皆様
北海道大学の小坂です。長文にて失礼いたします。
OR2007参加のため米国サンアントニオにおります。
本日をもって会議の全日程が終了しましたので、内容・感想等報告させて
いただきたいと思います。
なお、英語聞き取り上の理解不十分・誤解等のため、以下にお伝えする
内容には不正確な部分があるかもしれません。大変恐縮ですが、その点
お含みの上ご容赦いただければと思います。幸い、村上先生が包括的・
詳細な速報をされていますので、私の方は印象に残った点やその他会議
の様子等を少しでもお伝えできればと思います。
<1月23日(火) OR2007 初日>
User Group Sessions 1〜4で、小坂は全てDSpaceに参加。
印象に残った内容など:
・DSpaceのサポート体制は今後も継続される。
・DSpace 2.0を開発中。DSpace 1もその間、展開を継続。
・"Manakin"という新機能(外観のカスタマイズ等が可能)の1.0がリリ
ースされた。このManakinについては複数のセッションで言及があり、
2日目のSession 6で詳しく紹介がある予定。
・Session 3 "Introducing New Services with DSpace" が興味深かった。
(概要)リポジトリを構築したが投稿してくれる教員はわずかだった
→「サービスとしてのリポジトリ」に方針を転換。最近始めた
Publishingサービスは教員・図書館双方にメリットがある。
(教員:低コスト、著作権保持。図書館:関連資料をコンテンツとして
リポジトリに取り込みやすい)
プレゼン: http://smartech.gatech.edu/handle/1853/13171/
<1月24日(水) OR2007 2日目>
午前はUser Group Sessions 5〜6で、小坂は初日同様DSpaceに参加。午後
から全体が集合し、Opening Keynoteの講演とPlenary Sessions 1、夜は
Poster Sessionが行われました。
本日印象に残った内容など:
・Manakinを使うと、従来のJSPの枠組みでは大変または不可能だったよう
な、インターフェースのカスタマイズが容易にできる。例えばitems,
collections, communities, repotisoryに対してコンテンツのスタイル
(theme)を設定可能。また、例えばfolioの各ページの画像ファイルを
サムネイル表示→full-size JPEG表示、といったことも可能。
デモ: http://handle.tamu.edu/1969.1/2490
・千葉大・高野様の発表がありました。CURATORの概要や最近の展開
(overlay journals、e-Science data)について、また日本のIR事情や
DRFについての言及もあり、参加者の反応もよく興味を引く内容で大変
良かったと思います。
・Poster Sessionは、非常に面白かったです。36枚の出展の中から参加者
の投票で"Best Poster"が選ばれ、$200の賞金が贈られるというもの
ですが、その効果もあってか? 直前に行われた"Minute Madness"
(参加者を呼び込むための、各ポスターについて1分間の宣伝の時間。
PPT1枚使用可)もみな張り切っていました。Session本番では、興味の
あるポスターについて個人的に質問して説明を受けたり、情報交換した
りできたのが良かったです。
・参加者の方から、HUSCAPのCitationフィールドが巻号、ページ等に分割
格納されていることについて質問がありましたので、AIRwayへの展開等
を目的にそのように改造したということをお伝えし(村上先生、通訳を
ありがとうございました)、関連資料等をお渡ししました。HUSCAPの
メタデータ詳細画面のプリントアウトを手にされていましたので、
会議前から興味を持っていただいていたようです。
<1月25日(木) OR2007 3日目>
本日はPlenary Sessions 2〜5と、最後にSPARCのオープンアクセスについ
てのプレゼンが行われました。
印象に残った内容など:
・"An ethnographic study of institutional repository librarians:
their experiences of usability" は、研究者、図書館員が文献をIR
(DSpaceとEprints)に登録する過程を詳細に観察した研究の紹介。
結論として、ユーザーからのフィードバック、入力するメタデータの
質についての検討、usabilityについての図書館員の意識向上、等が
必要である。
・"The BibApp: Enabling rapid repository population" が非常に興味
深かった。デモでは、顔写真付きの「ある研究者のページ」があり、
citationについて以下のような情報を参照できるようになっていた:
1. 共著者と件数のリスト
2. 研究トピックと件数のリスト
3. 公表媒体(掲載誌名等)と件数のリスト
さらに、この1〜3を分析して得られた(?)以下を参照可:
4. 共著者マップのようなもの(研究者同士を矢印で結んだ図)
5. 年代をスライドするつまみのようなものが画面上にあり、それを
左右に動かすと、その年のトピックが大きさ別に表示される
6. SHERPA/RoMEOの色別比率の円グラフ
参考: http://code.google.com/p/bibapp/
<1月26日(金) OR2007 最終日>
OR2007最終日の本日は、Plenary Sessions 6と、Closing Keynoteの講演
でした。
印象に残った内容など:
・後半の発表2件:eSciDoc(学術情報コミュニケーションのための新しい
プラットフォーム)、ChemXSeer(化学研究用のWebポータル)、および
Closing Keynoteにおいて、「学術研究を進める上では"data"が重要」
という内容が共通して述べられていました。データをリポジトリの対象
として考える時の参考になりそうです。
・早くも「Open Repositories 2008」についての案内がありました。
英国Southamptonで、2008年4月1〜4日に開催されるそうです。
http://openrepositories.org/2008/
・Closing Keynote "e-Science and Scholarly Communication" は
・図書館コミュニティと協調して作業したい点(抜粋):
−相互運用可能で高水準なサービス、ワークフロー、ツールの開発
−相互運用可能なリポジトリや学術出版の新たなモデルの開発への寄与
なお、その「相互運用性」の一環でしょうか、Office 2007における
ドキュメントはXMLベースのファイル形式になる、との言及もあり。
<最後に:全体の感想など>
参加前は、リポジトリの運用面の話や事例報告が会議の内容の中心と思っ
ていたため、想像以上にシステム的な話が多く苦労しましたが、世界各国
でリポジトリに取り組んでいる人々がこれほど大勢いることに刺激を受け
ましたし、色々な面で大変勉強になりました。
今回の出張に際しお世話になった皆様、また一緒に参加させていただいた
皆様に、この場をお借りしてお礼申し上げます。
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小坂 麻衣子 (Kosaka Maiko)
北海道大学工学研究科・情報科学研究科・工学部
総務課図書閲覧係 (情報科学研究科図書室)
E-mail: kosaka @ lib.hokudai.ac.jp
Tel: 011-706-6515 Fax: 011-706-6516