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Date:  Thu, 08 Mar 2007 12:05:19 +0900
From:  Hiromichi KATO <katze @ lib.hokudai.ac.jp>
Subject:  [drf 0607] Re: ブリュッセル宣言 適当翻訳

加藤@北大図です。

Masamitsu Kuriyama wrote:
> 加藤様
>> (前文超訳)
>> いろんな言い分を見てきたけども、我々が凄く頑張っているにも
>> かかわらずどれもいいかげんなので、ここ10年の経験に基づいて
>> 自分たちで宣言することにしました。
> 
> これは要するにセルフ・アーカイビング義務化反対の声明ですよね。
> 多くの出版社はセルフ・アーカイビングを認めているといっても、それを
> 大学や補助金団体が義務化して本当に100%OAが実現してしまっては、
> 自分たちのビジネス・モデルが崩壊してしまって困る、というのが本音
> なわけで。

はしょりすぎたな、と思うので少し詳しく訳しますと、
 今まであるいろんな言い分は科学的な根拠に乏しい、ビジネスへの
 理解に乏しいものであった。ゆえに我々は根拠に基づいて言う。
と言っとります。そりゃまあ実際にやってる出版社の言い分のほうが
(相応のデータを持ってるだろうし)説得力はありそうだな、とは
思いました。

でまあ、彼らの言い分の重要部分は、
 ・ 自分たちのビジネスモデルが崩壊する → ピアレビューが崩壊する
   → それでいいわけ?
じゃないかと。
一方、

Nature誌、Wikipedia的試みを断念
掲載候補の論文をオープンなレビューにかけてもらうというNatureの
実験が、参加者が少なかったために終了する。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0612/21/news027.html

なんていうニュースが流れたりして。彼らの論点はここにあるんで、
ホントにピアレビューが現状のままでないと崩壊するのかどうか、代替
手段はないのか、という点を詰めておかないと対等になれないだろうと
思います。

学術情報は、日用品や娯楽と異なり、代替不可能性が高いものですから、
根幹を握ったほうが勝つでしょうねぇ。

> 関連して、米化学会(ACS)が*セルフ・アーカイビング*に対して課金
> するAuthorChoiceを発表したそうです。
> http://pubs.acs.org/4authors/authorchoice/
> ハーナッドはさっそくこれに噛み付いて、こんなのに金を払うな、などと
> 言っています。
> http://listserver.sigmaxi.org/sc/wa.exe?A2=ind07&L=american-scientist-open-access-forum&D=1&O=D&F=l&S=&P=37337 

私、ハーナッドおじさんの言うことは大抵話半分に聞いておりまして。
というのは、彼は研究者であり、直接に研究者としての利益に結びつく
ことを企図して発言しており(本人もそう言ってたような)、学術情報
流通市場がいかにあるべきか、という視点でないからです。

これは立場上当たり前のことなんで、責める筋合いでなく、第三者が、
研究者の言い分も聞きつつ市場の適正な有り様を考えねばならんのだなぁ
とぼんやり思っております。

-- 
加藤 大博 :: KATO Hiromichi
mailto:katze @ lib.hokudai.ac.jp
北海道大学附属図書館 情報システム課 目録情報第一係
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