Index: [Article Count Order] [Thread]

Date:  Thu, 15 Mar 2007 23:17:20 +0900
From:  nami @ math.sci.hokudai.ac.jp
Subject:  [drf 0652] Re: エンバーゴについて

北大の行木です。

ちょっと乗り遅れましたが、一つ。

At Wed, 14 Mar 2007 00:46:13 +0900 (),
Syun Tutiya wrote:
> 
> だろうとは思います。もっとも、ほとんどの論文がプレプリントサーバで見ら
> れながら、高額の雑誌を出版、購読している物理学という奇妙な分野をみれば
> ことが単純でないことは明白です。

単純でない一面の理由は人事です。物理でも数学でも、ポスト一件の公募に百
人単位の応募があります。例えば、一年任期のポスドク公募だって海外からの
数十名を含め100人弱の応募があります。これは業績リストと推薦状がつきも
のですが、数百x数十の業績をいちいちチェックするわけにはいきません。そ
れで、一次選考は掲載ジャーナルで判断されることもある。一次選考で落ちれ
ば研究の質どころではないので、特に若手は必死です。シリアルズクライシス
の原因が論文の量にあるのなら、この情況が変わらない限り解決はないでしょ
う。

ほとんどの論文がプレプリントサーバに載っているかどうかは疑問ですが、
arXivが年間数万件として、Phys. Rev. には年間3万件の投稿があるそうです

"Experimenting with plagiarism detection on the arXiv" 

#3年前にarxiv.orgからハーベストを始めたころは26万件。今は40万件。
#arXivも盗作に悩んでいる。同じ号にこんな記事もあります。
#"Google to handle telescope data"

それでも編集委員や査読は無償ですから、北大の加藤さんのいう

At Thu, 08 Mar 2007 12:05:19 +0900,
Hiromichi KATO wrote:
> 
> でまあ、彼らの言い分の重要部分は、
>  ・ 自分たちのビジネスモデルが崩壊する → ピアレビューが崩壊する
>    → それでいいわけ?

これはありえない。出版社のビジネスモデルがおかしくなっても、必要とされ
る限り、査読というシステムは維持されます。少なくとも、数学と物理の理論
系はそうするでしょう。80年代、京大基礎物理研のProgressはトップジャーナ
ルでした。90年代に専門誌への移行が起きて、今や見る影もない。そういう事
情はどこかで解析できないものかと思います。

#Progressは何とCiNii? GeNii? にも入っています。
-
行木孝夫 (NAMIKI Takao)
北海道大学理学研究院数学部門 (Tel/Fax 011-706-4439)