加藤さん、栗山さん、みなさん、
> ・図書館界でさえ,従来の出版ビジネス・モデルから
> 脱却できていない?
その通りです。というか、「従来の出版ビジネス・モデル」から脱却する必要
があるのかというのがみなさんの感覚なのではないでしょうか。『大学図書館
研究』は基本的に講読料モデルのコスト回収です。講読料は、製作コストと編
集コストですが、加藤さんのご指摘のように、編集コストは大学図書館員のボ
ランティアになっており(基本的に学会誌刊行と同様に時間の対価請求なしに専
門的知識・技術を提供するという意味での「ボランティア」(無報酬兼業ってい
うやつですね、日本の公務員世界なら))、製作コストは学術文献普及会という
財団法人における製作のコストです。財団法人ですから、ここでも利益はでて
いないわけです。この財団法人から国公私立大学図書館協力委員会に売上の一
部が還元されることになっていますが、これは、著作権料と考えるべきでしょ
う。この著作権は、本来著者に帰属していたものを、契約して国公私立大学図
書館協力委員会ないし『大学図書館研究』編集委員会に譲渡してあるのだろう
と思います。これは、水産学会とBlackwellとの関係と本質的には同じです。
国公私立大学図書館協力委員会は、著作権料を放棄することはできますが、そ
のことによって無料になるわけではなく、製作コストの回収は続くことになり
ますから、オープンアクセスにはなりません。オープンアクセスにするために
は、大学図書館が出版費を負担すればよいわけですし、それは実際に購読の形
で行なわれていますから、金を出す名目がかわるだけのことではあります。
> > 私も個人的には、『大学図書館研究』は紙をやめて、OAの
> > 電子ジャーナルに変わるべきだと思います。
> > 今、この雑誌の財政基盤はどうなっているのか、どなたか
> > ご存知ではないでしょうか?
そうなるとよいのですが、電子ジャーナルにしてもOAにできるわけではありま
せんので、図書館が講読料という形ではなく、出版賛助金として金を出せばオー
プンアクセスは不可能ではありません。ただし、その場合の理由づけは大学に
よっては案外難しいでしょう。
> 土屋先生が丁度事務室にいらしたので,その話を少し
> したのですが,個人的には各大学図書館の本館クラスで
> 1〜2セット程度の供託金を出せば,OA化も可能なように
> 思います。
「供託金」と言ったかは記憶がないのですが、このことの意味は、以上のとお
りです。また、『大学図書館研究』を大学図書館のそとのひとに是非読んでも
らいたいという強い意志がどこかにないと、オープンアクセスにしたいと動き
はでないと思います。
> とはいえ,最後は発行・発売の学術文献普及会も絡んでくる
> とは思うので,すんなりはいかないとは思いますが。
ということも重要で、実際の製作工程はかなり普及会にまかせきりですから、
そのノウハウに依存していると思います。この状況も、日本の学会誌刊行の場
合と同じで、ある種の「癒着」のようにもみえるのですが、まさにそれだから
こそ、このところ科学研究費補助金の成果公開促進費における一般競争入札化
の問題と同じ構造が存在することになります。要するにOA化は、理屈の上では
金の流れと名目の問題にすぎないので、不可能ではないのですが、慣行に依存
しているために、なかなかそこから逃れられなければならないという強い意志
がどこからも生まれないということなのだと思います。
土屋