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Date:  Thu, 12 Jul 2007 17:16:47 +0900
From:  SUGITA Shigeki <sugita @ lib.hokudai.ac.jp>
Subject:  [drf 0933] 説明会質疑応答(7/11北大) (Re:  Re: 	説明会質疑応答(7/5北大))

北大 杉田です。

難波さま、はじめまして。

11日に別の部局の会合でお話しをしてきましたので、また質疑の内容を
ご紹介します。

> 研究者は多くの場合、論文を発表した後も、もう少し実験データを補った方が
> 良かったのではとか、別の計算方法もあったのではとか色々と考えるものです
> が、それは次の機会に活かすべきで、発表してしまった論文をやたらと修正す
> べきではないと思います。

途中、ちょうどこのへんの話題もありました。


教員:ACS(アメリカ化学会)の投稿論文については(HUSCAPに)送るのは、どうです
   か?

シス:先程申しあげた(機関リポジトリに論文の搭載を認めている出版者の)94%には
   (ACSは)入っておりません。[教員一同、笑]
   こちらはACSが多いですか?

教員:まあ、多い。

シス:ACSとか日本化学会などはちょっと強硬なポリシーを持っています。
   出版されたものは、出版社に権利があるというわけで。
   ただ、追加料金を払えば、大学のWEBサイトでも公開してもよい、自分のホームペ
   ージでも公開してもよい。それで、その追加料金というのが20万円から30万円です。

教員:ひとつ。最終稿を出しますよね。ということは、出版社が、特にエディターが最後
   手を入れるんですよ。文章をダーっと書いていきますよね。ってことは、出版され
   たものと違う文章がある可能性がある。

シス:そうですね。

教員:で、それをどこに出版されたというのは書くんですよね?

シス:はい。

教員:どのジャーナルの、どのページに書いてあるという。
   そうすると、変なことを考えると、たとえば、ここの部分を自分は言いたかったけ
   れど、「削除しろ」と言われて削除された部分があるんですよね。[教員一同、笑]
   それを、研究者が意図的に、そこが自分の主張だから、主張してその部分を復活さ
   せてpublishしたみたいなかたちにすると、別の論文になるはずなんですよ。

シス:そうですね。

教員:そうすると、要するに、倫理の問題が出てくるだろうと。[教員一同、笑]
   非常にこれ、おそらくまだないんだろうと思うんですが、(研究者が)そういうふう
   に意図的にHUSCAPを使うことが考えられますよね?

シス:そうですね。理学部でも、おひと方、それを心配されている先生がいます。
   で、小さい紫色のちらし(当日配布した「北海道大学学術成果コレクション」の
   パンフレット)の中でですね、査読のプロセスを……
   HUSCAPでは、最終的にaccseptされた段階のものをお寄せくださいということ
   にしておりまして、ただ、そこから何か、新しい知見をねじ込んだとかいうことは、
   ちょっと図書館のほうでは、今のところ、チェックしていない…

教員:できないですよね。だけど、このHUSCAPという仕組みで私、非常にいいなと思っ
   て。で、これ、どう考えても、おそらくみんなが受け入れてくれる制度になって、
   残っていくんだろうと思うんだけど、もし、これが何らかの致命傷を受けるよう
   なことが起こるとすると、今みたいな部分だなあ、と。

シス:たとえば、新しいことがわかったとか、新たな実験成果が得られて、それを別の、
   もう一本論文を出す方向にはいかないですかね?

教員:いやいや、もう一本を出すには、データが… だって、そこに別の論文があるか
   ら、それと同じ論文あるいは似たような論文はなかなかもう出すわけにいかないん
   ですよ。それくらいやっぱり何年か、かかる。
   ところが、ほかから同じような論文が先に出てきた、っていうケースが非常にある
   と思うんですよ。で、うちはそれを入れてなかった。だけどデータは持っていた。
   そうすると、(論文が)出た…… そうすると……

シス:それは、ほんとうは入れたかったのに…

教員:だって、投稿してほんとうに載るまでに、何ヶ月もかかるんですよ。
   ところが競争していると、学会等で発表していると、「あ、同じことやってる所ある
   じゃない」ということがしょっちゅうあって、しかも、大事なデータを向こうが出
   していて、いろいろ懇親会で聞くと、
   「俺も出したよ、と。Accseptになったと。同じくらいだと」
   「自分たちは、そのデータを入れてない、持っているけど」、というようなときに、や
   っぱり相当、研究者の心理として、そういうものを入れたがるんですよ、みなさん。
   だから、そうなったときに、そのHUSCAPの制度が、そういう事前の、完全に
   publishされたjournalの何とかの何ページとだ言っているのにも関わらず、「違
   うんじゃないの?」というのが出てきたときに、非常に危険だなと…… 世の中か
   ら批判を受ける可能性があると。
   だったら、どうするかというと、HUSCAPが批判を受けないようにするには、
   その、「そういうのを一切書き換えていません。」と、ひとこと、そこのところにク
   リックする、確認する項を入れると、今度はその部分は個人の責任になるんですよ。

シス:なるほど。

教員:HUSCAPの責任でないからね。そういうことが起こった時に、HUSCAPはそのこ
   とをちゃんと確認して、本人の確認のサインではないけれど、「私は何も加えていま
   せん」というところにチェックしないと、とかいうの、やっておくと、HUSCAP
   には影響受けなくて、個人の問題になるから、倫理問題はね。そうすると、だいじ
   ょうぶだなあと。

教員:だから、今の「最終稿」ですね、「最終稿」が必ず「最終稿」だよということが、は
   っきりしていないと。 「最終稿」と出版社が出していても、HUSCAPに出して
   いるものが最終稿とはちょっと違うものを出しているということがわからないわけ
   だから。

教員:特に文法とか、そういうの直されるんですよ。結構、文章がね。

教員:それは、ほとんど文章のなかみでしょう。

教員:それは問題ないけれど、意図的にパッと入れたりするケースが出てたら、倫
   理的な問題として、HUSCAPに影響するといけないので、そこのことを考
   慮されて、何かひとつワンステップ入れられたら、私はいいんじゃないかと
   いう意見なんですけど。

シス:ありがとうございます。
   今のところ、外向きには、校正レベルの違いだけありますということを言っている
   んですが……

教員:それはそれでいいと思います。

教員:それはもう、みなさん見たら、わかるからね。

教員:意図的にやる方は、時にダメージを受けるから、ダメージを受けないような防衛策
   を少し検討されたほうがいいということです。

シス:あの、一方でもうひとつ、われわれが思っているのは、紙で出る論文とは違って、
   こういうサービスであれば、論文のもとになった生実験データとかあわせて載せて
   おくことができるという、それはそれでメリットがあるのでは、と。

教員:ああ、それはやるほうがたいへんですよ。

教員:それで公表になってしまう……

シス:それは出したくないものですか?

教員:サプルメンタル・インフォメーションというかたちで今、よくありますけれども、
   それは公認したかたちですから。それに、上にまだ付け加えるとなりますと、
   また新たな成果を付け加えるかたちになりますから、論文の範囲が広まります。

教員:それから、別の論文にしないと。今度は盗作になるよ。自分の論文の二重投稿にも
   なる。

教員:どんな問題が?

教員:倫理的に大きな問題になりますよ。

シス:それは、何か、分野によるんですか?

教員:いや、それは世界中同じ。二重投稿は絶対だめ。

シス:あ、すみません。

教員:それから、盗作も絶対だめ。

シス:その点は、なるほどそうだろうと。

教員:で、当然なるでしょう。変えたり出したりすると。

シス:もし、論文に付随するような、元になったデータなどいっしょに公開したいという
   意向は、分野によってあったりなかったりするんですか?

教員:あります。あったりなかったりして、化学では、結構、アメリカのさっきのだめっ
   ていってた94%くらいの所は、そういうのをむしろ何十ページも作らなければなら
   ない。論文は1ページ2ページだけど。そっちのほうが何十ページと多い。その資
   料はべらぼうに大きいですよ。

シス:それは紙にも印刷?

教員:電子ファイルで。紙ではない。

シス:電子ジャーナルの脇にポンと置いている感じですかね。

教員:そうですね。

教員:リンク先が書いてある。

教員:本文とその生データと、それから公表しないレフェリーだけへの測定カードという
   のがあります。

シス:なるほど。ありがとうございました。

教員:はい、検討してください。

教員:その「著者最終版」のやつなんですけれども、普通は最終版は、ダブルスペースと
   かあって、いろいろ出版社の制約があって、それまでは見にくいかたちになってい
   て、やっぱり見やすいかたちのためには、多少自分なりに加工しなければならない
   こともありますけど、そういう面では、別に構わない?

シス:はい。

教員:それと同じ体裁になっていなければ?
   それから、実際どこに投稿したかというページ数を最終原稿の中に入れておいたほ
   うがよいと思うんですけど、その場合、ページ数とjournal名を入れるのは、どん
   なかたちで?

シス:まず、体裁の問題ですが、ダブルスペースが出版社へ提出したものと違うからとい
   って、目くじらが立てられるわけでは、多分ないと。もし、これが見にくいだろう
   と思えば、先生がたのほうでとっていただいて、こちらに送ってくださる先生もい
   らっしゃいます。たくさん。
   あと、例えば、行番号がついているのを取ってくださるとか。
   ただ、図書館のほうでは、いただいたものをそのまま、まちがいがあるといけませ
   んので、その場合は手を入れずに、単純にPDFにいたします。
   なので、先程のような、内容を改変するとかというのでない編集は、もしやってく
   ださるのであれば、それは図書館のほうでは歓迎いたします。

教員:むしろ、出す側としては、最近はフォーマットが決まっているんです。
   ほとんどpublishされるのと同じようなスタイルで、最初の原稿をつくっちゃうん
   です。そうすると、これは原稿なのか、publishされたものなのか、ほとんど区別
   がつきません。それでもいいの?

シス:われわれに、あくまでそれは先生の原稿だと言われれば、区別つかないです。
   ページ数は入っているのですか?

教員:ページ数が入るときは、ちょこっと入る。で、ページ数も、電子版は、もうページ
   数なしで出すんです、最初。そして、publishされたら、ページ数は後から入る。

シス:私が想像していたのは、原稿の段階で、図表が別にあって……

教員:いえ、全部入っています、中に。全くpublishされるものと同じかたちで最終稿で
   す。

シス:ほう。では、ここに図を置きたい、ここに表を置きたいとはめ込んだ状態が最終稿?

教員:そう。ほとんどpublishされるのとおなじ原稿を出版社に持って行く。
   だから、ほとんど区別がつかない。

教員:テンプレートというのがあって、もう出版されるページのかたちがあって、われわ
   れはその中に全部埋め込んで出すんですよ。ですから、そのテンプレート自身に雑
   誌社のjournalの名前とかみんな載っているんじゃないの?

教員:title、second authorとか住所も全部出ちゃう。入っていないのはページ数だけ。

シス:どうしましょう(笑)

教員:それを束ねてそのまま……

教員:アメリカ化学会とかね、ドイツとか、イギリスの場合はそうなっていて、チェック
   しないですよ。それが、彼らの防御策かもしれないですよ。
   こういうことをやるのを、防御するかも… それはわかりません、わかりません。

シス:なるほど。今のところの、現在の図書館のやりかたとしては、そういうものもあく
   まで、その書式にしたがって先生が書いた、先生の原稿だと思って、そのまま入れ
   ています。ページ数がないのも。
   先程、出版されたjournalの情報とか、ページ数の情報等は、原稿とは別のところ
   に、画面上にわれわれ図書館員の手で、「これは何というjournalの何巻」と。
   で、DOIという論文番号も記録しておりまして、見る人は、「これは著者の原稿だ
   けども、感心したから引用したい。だから、ほんものに当たりたい」という時は、
   クリックすれば、電子ジャーナルにとべるようにリンクもつけてあります。

教員:かなり近寄ったものになっていることは、事実なんですね?

シス:はい。それもジャーナルによりますか?

教員:かもしれない。Elsevierとか、プライベートな国際雑誌はそうではないですか。
   それとわれわれが、HUSCAPに載せるプロセスですが、新しい論文を出したとき、
   どういうふうになるんでしたっけ?

シス:先程のメールアドレス(repo @ lib.hokudai.ac.jp)に、原稿ファイルをぽんと送って...

教員:僕らが送らないと始まらないんですね?

シス:そうなんです。ただ一方ではですね、私どものほうで、HUSCAPが育っていく最
   初の段階ということで、Web of Scienceを毎週検索して、北大の先生がどこにどん
   な論文を出しているか…….

教員:ああ、そして「(論文を)出してください」ってメール来てましたよね?
   最近は来ませんよね?

シス:先生は最近、論文書かれて…… [一同、大爆笑]

教員:論文、僕は出してますよ。[一同、大爆笑]

シス:すみません。やっているつもりなんですけれども……
   (メールが)来ないですか?

教員:来ない。

シス:ひとつにはですね…

教員:あ、そうか。ACSとかそういうの……

シス:出版社の方針が、だんだんわれわれもわかって来つつあるので、「ACSはだめだ
   なあ」と思ったら、ACSについてはやめて…

教員:ああ、なるほど。

教員:あと、ひとつ問題になるのは、会議資料。先程、どれがターゲットになっているか
   っていうのがありましたよね? (説明会スライドの)10番のやつで。
   それでたとえば、学会発表資料。これ、公表しますよね。学会では予稿集もつくっ
   てますけど。だけど、これはいわゆる世界中の発表した、発表論文を集めた一覧表、
   例えば、SciFinderとか、ああいうのには学会のやつは載らないんですよ。
   特別のやつは載りますよ。例えば、アメリカの化学会のなんとかは、それはもう公
   に発表したことになるんだけれど。
   で、そういう普通の日本国内の学会で、たとえば英語で書いて、予稿集つけても、
   Chem. Ab(Chemical abstruct) なんかには出さないようにしているんですね。
   それは改めて、われわれは論文としてきちんと直して、発表できるんですよ。
   していいんですよ。そうすると、これ(HUSCAP)に載ると、もう出せなくなるん
   ですよね? だから、われわれが、論文が減る...んですよね。
   そういう問題がある。

シス:そういうのは、HUSCAPには出さずにおいたほうがよろしいかと……

教員:ということですよね?

教員:あの、これ、PDFに変換しないで送るように、ということがありましたけれど、
   よくわからないんですけれども、ふつうの原稿をPDFにすると、特に図の入ってい
   るところなんか、ずれるたりするんですよ……

シス:ちょっと私どもの説明が不足だったかもしれないですが、先生方のほうで、これで
   公開したいというかたちのPDFにまでして送ってくださるのが、いちばんありがた
   いです。

教員:日本語でもいいんですか?

シス:日本語でもいいです。

教員:それはタイトルに英語の題を付ける必要まであるんですか?

シス:ないです。

教員:付けるのは可能?

シス:可能です。

教員:日本語だけなら日本でしかアクセスできないけど、英語のタイトルをつけたら、ア
   クセスはできるんですか?

シス:それは、和文のジャーナルに載せた論文に、新たに英語標題をつけるということで
   すか?

教員:いいえ。例えばっていう話なんですけれども。

シス:……ちょっとこれまで例がないです。

教員:和文雑誌でも英文アブストラクトはよくつきますよね?

教員:よく、list of publication つくるときに、日本語の雑誌のタイトルを英語に直して、
   リストつくってだしていますよね? いやいや、こまかい話なんで…

シス:はい、はい。

教員:私は、さっきの倫理問題がいちばん大きいんじゃないかなあと思いますので。

教員:すいません。これは、過去の原稿については可能ですか?

シス:図書館としては大歓迎です。強く、過去のまでぜひお願いしますということまでは
   言っていないのですが、くださるのは大歓迎です。
   ただ、過去のっていうのは、紙でしか残っていないとか抜刷しか残っていないので
   ないかということが多いのではないかと想像するんですが、どんなものでしょう?
   原稿とか残っていますか?

教員:スキャナでPDFに読み込むということは可能。

教員:本は?

シス:本もお受けしたいと思います。ただ、本の場合はですね、先生方から、「これ、何と
   いう本の第何章に書いている」と送ってくださることが時々あるんですけれど、
   出版社に聞くと、彼らは本が商売で原稿料を払ったりしているので、割と断られる
   ことが多いです。だから、お送りいただいても、「すみません、だめでした」という
   結果になってしまうことが結構多いです。

教員:それはこちらで調べる必要はないわけですね。

シス:はい、図書館のほうでお調べします。ただ、そういうことで、調べた結果、せっか
   くお送りいただいても、だめでした、ということがありますが、それはあらかじめ
   申しわけありません。

教員:二つあるんですが、ひとつは、これはひとつひとつの収録されたやつにパーマリン
   クはつくんですか?

シス:パーマリンクはつきます。

教員:それから、確か日本化学会は、リポジトリには認めないけれども、個人が自分のホ
   ームページに載せることは、認めている? ですよね。確か。お金払えば…..

シス:個人は… えっと、うーん…

教員:個人のところに載せるのはOKと。
   それで、そこ(個人のホームページ)に原稿があるわけにはいかないんですか?

シス:決めごとだと思うんですけれども、いまのところ、そのやりかたはやっていないで
   す。というのも、図書館として先生方の書かれたものを、図書館の資料として持っ
   て、伝えていくということも、これのひとつの内容で、ひとつの大きな役割みたい
   なものと思っています。だから、もの自体を保管していくということを前提として、
   いまのところやっています。そういう例を聞くと、それも考えてもいいかなと。

教員:利用者がどこからどう探してくるかという意味から言うと、それがあったほうが、
   個人のホームページで個人で行けるのであれば、それで探し当てられるわけなので…

シス:そうですね。


ここで時間切れで終了してしまいました。
説明10分、質疑20分。質疑の時間が楽しいです。
「先生、最近論文書かれてますか?」と聞いた相手が、あとで
聞いてみたら部局長先生でした。冷や汗。

-- 
杉田茂樹 <sugita @ lib.hokudai.ac.jp>
北海道大学附属図書館情報システム課システム管理担当
電話番号:011-706-2524,ファクシミリ:011-706-4099
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