DRF皆様 村上先生へ
ガイドブック教育現場の著作権,法学書院,では,p.58-
なぜ試験問題に利用してよいのか,について説明がありましたのでお調べしてみました。
ご参考にしてください。
まず,試験問題関係の条文はズバリ下記のとおりです。これが主たる対象かと思います。
(試験問題としての複製等)
第三十六条 公表された著作物については,入学試験その他人の学識技能に関する
試験又は検定の目的上必要と認められる限度において,当該試験又は検定の問題と
して複製し,又は公衆送信(放送又は有線放送を除き,自動公衆送信の場合にあって
は送信可能化を含む。次項において同じ。)を行うことができる。ただし,当該著作物
の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害する
こととなる場合は,この限りでない。
営利を目的として前項の複製又は公衆送信を行う者は,通常の使用料の額に相当
する額の補償金を著作権者に支払わなければならない。
著作物は利用する前に許諾を得るべきだが,試験問題は,学力や能力の試験や検定の
問題となるため,その性質上,事前に著作権者から許諾を得るのは無理であるため,
というのが法の趣旨です。
要件をまとめてみれば,次の五点です。
公表された著作物であること。
著作権者の利益を不当に害さないこと。
出所の明示。
試験の目的上必要と認められる限度で。
試験または検定の問題として複製,または公衆送信すること。
(注意)営利を目的とした模擬試験などでは,無償にはならない。
インターネットで試験を送信することも遠隔授業や遠隔試験でも一定の要件ならば可能。
p.78-
著作権法上の「試験問題」として許される範囲は,
東京地判平15.3.28.判例1834号p.95
童話作家が創作した童話が教科書に掲載された後,それが小学校テスト業者の出版物にも
掲載された場合には,著作権法上36条にいう「試験問題」としての複製されたものとは
いえず,著作権法32条の「引用」にもあたらないとして,テスト業者に対し出版差止め,
損害賠償の支払いが認められた事例。
だいたいこのような感じであることがわかりました。
リンチ(Clifford A. Lynch)の定義「大学とその構成員が創造したデジタル資料の管理や
発信を行うために,大学がそのコュニティの構成員に提供する一連のサービス」
だとするなら,「試験問題」が見えない社会というのはまったく困ったもので,
機関リポジトリの中に掲載されても不自然ともいえないようには思います。
しかしながら,当方見聞録2005.04.28
「赤本」は著作権侵害か?
http://nortom.no-blog.jp/blog/2005/04/post_dacc.htmlより下記引用
「赤本と言えば,大学別に編集された過去の入試問題集の通称です.
受験生にとっては,この赤本が重要なアイテムとなります.
しかし,その赤本の価値が低下する可能性が出てきています.
というのは,一部の作家や学者が,自分の著作物を無断で転載されたとして,
損害賠償を求める訴訟が起こされたのです.
以前から,この過去問以外にも,様々な教材で同様の訴訟が起こされていて,
ついに赤本まで来たということになります.
....
作家の権利として,著作権は必要です.これは明らかです.
しかし,商用目的,教育目的,学術研究目的等,
その目的によって著作権の有効範囲を決めるべきではないでしょうか.
現在は,それは著作権を保有する者の裁量で決まることが多いと思いますが,
やはり,法律で明確に決めておくべきだと考えています.」
この方の言われるように,法律でもう少し明確にしてもらわないと現場では困ります。
大学は一体誰に断って入試問題をオープンにしているのか,と電話があっても回答
できないことになります。「赤本」は利益を得るために団体の出版で,それなりに
機能して来たことはありましょうが,著作権意識の強化の波で槍玉になったのですが,
著作権者の利益を不当に害さないこと,試験の目的上必要と認められる限度,とか
を考慮すれば,公的機関だから大学は問題なし,とは思えません。
教材はまだ大学関係者のものなので,さすがに訴訟まではいかないかもしれないですが,
試験問題が,ぽちぽち機関リポジトリ内にあると,短絡的ですが,芸術家一般を敵に
回していくような気もします(不用意に刺激して,機関リポジトリ活動を誤解される
などないか)が,いかがなものでしょうか。
藤田
Yuko Murakami さんは書きました:
>DRFのみなさま
>
>教育著作権研修が開講されます。
>http://www.nime.ac.jp/KENSYU/category03.html
>
>メディア教育センター主催で、OCWが視野に入っています。
>
>内容は基礎的なものと思われますが、
>講師の尾崎先生に個別の扱いの
>質問ができるよい機会ですので、
>ご関心の方はぜひ。
>
>村上
>
>--
>Yuko Murakami <murakami @ nii.ac.jp>
>National Institute of Informatics
>
400-8510甲府市武田4-4-37
TEL055-220-8064 Fax220-8793
h-fujita @ yamanashi.ac.jp
山梨大学教学支援部図書課資料情報グループ
係長:藤田 洋(PHS 7181)