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[drf:1862] Re: 商業出版された図書のリポジトリ登録にあたっての出版社への許諾様式(ご教示お願い)
- Date: Fri, 25 Jun 2010 13:49:13 +0900
土屋先生
DRFのみなさま
山形大学の土屋です。
お世話になっております。
ご意見をありがとうございました。
この件は、どちらの見方に立つとしても、センシティブなところを含んでいま
すので、まったく違う見方をされる場合もあるだろうなあという予想はしてい
ました。
それで、以下私の私見ですが〜、とお断りしたところ以降は、もちろん各図書
館・関係者の方が各自に判断していただいていいところなのですが、さしあた
り事実として、出版契約は民事契約で、あまりに不当なものでなければ、どう
いう契約を結ぶかは当事者の自由で、いったんそういう契約が結ばれてしまっ
ていれば、後からコミットする図書館としては、それを前提として対処しない
といけないということは確認しておきたいと思います。
(出版契約で電子化については協議する、となっているのに、それを無視して
電子化することはコンプライアンスの観点から疑問があります)
ですから、オープンアクセスを時代の潮流ととらえるのならば、そもそも、著
者が(OAに関して)不当と思われる出版契約を結ばないでほしいと思いますし
、図書館側からそういうお願いが必要なのかもしれません。
ただ、シリアルズクライシス=グリーンロード問題の場合と異なるのは、日本
国内の著者が、日本国内の出版社から書籍を出版する場合のスキームの場合に
は、前者と比べると、不満というものはあまり聞いたことがなく、研究者個々
人は、むしろこのスキームに慣れ親しんでいて、大事に思っているのではない
かと考えられますので、対処のしかたもおのずから切り分けていかないといけ
ないのではないかなと思ってはいます。
それで、私の考えるやり方は、出版者側の意向に沿うだけで、OAの理念と乖離
しているというのは、それはそのとおりなのですが、現時点で遵法的に、関係
者に配慮しながらおこなうとこうならざるをえない、ということです。これが
理想ということではなくて、OAの意義がもっと浸透して、契約内容が見直され
るようになれば、当然別の方法があるだろうと思います。現場でもっと攻撃的
に先鋭的に動かないと現状は変わらないと言われれば、困ってしまうのですが
、そこまでの馬力はないです、というのが正直なところで、また、そういう私
と同じような立場の人に向けたアドバイスでもあったのでした。
とはいえ、商業出版社から出されたもので、絶版から相当年数経っているもの
でも、学術的有用性は損なわれない(人文・社会系については、経年により陳
腐化しないものが多い)というものは、多々ありますので、グリーンロードに
乗っかるだけだと、ついついカレントなものに目がいってしまう現状がありま
すが、IRに古いもの、書籍系を載せていくのは大事だと考えますし、出版社の
利害に影響を及ぼさない範囲から、まずは始めていったらいいのではないかと
思っているわけです。
Syun Tutiya さんは書きました:
>土屋さん、みなさん、
>
>一日の間に議論が進んでしまって、かつ、ほぼ終息しているようなので、わず
>かなコメントですが一応。
>
>ただしちなみに、「終息」点が以下であるということでいいですよね。
>
> もとが博士論文であれ、なんであれ、ともかく日本で書籍として出版
> されている著作物の権利は、著者にあるのが普通だから、著者が権利
> 行使して、機関リポジトリに掲載・搭載・アーカイブすることについ
> て出版社が文句を言うのは筋違いだが、(著者は出版者に本を出して
> 「もらう」という意識を前提とした)慣行として、一言断りをいれ、
> 出版者にも納得してもらって機関リポジトリに掲載・搭載・アーカイ
> ブするのがよい。納得してもらえないようだったら、控えるのがよい。
>
>さて、
>
>> さて、日本書籍出版協会のサイトに出版契約の雛形があります。
>> http://www.jbpa.or.jp/publication/contract.html
>> また、下記の著作権分科会 契約・流通小委員会の配付資料で「出版界におけ
>> る契約実態について」の調査結果を見ることができます。
>> http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/014/05092701/005.pd
>> 上記の雛形では、著者は出版社に電子的公開に際し優先的に使用することを許
>> 可するとしています。また、著者が独自に電子的公開をする場合は両者が協議
>> するとしています。
>
>ですが、日本書籍出版協会(書協)は(権利者団体でもないのに)著作権にうるさ
>いことで有名な団体ですので、彼らの主張は主張として聞いてはおくもののあ
>まりそのまま尊重すべきではないと思います。とくに、「著者は出版社に電子
>的公開に際し優先的に使用することを許可する」なんていうのは、勝手に言っ
>ているだけですから、気にすることはないでしょう。
>
>また、
>
>> では、この契約はいつまで有効なのかということですが、雛形では初版発行後
>> ○年間、以後どちらかから申し出がない限り、○年ずつ自動更新、となってい
>> ます。この○年間に何年が入るかということですが、「出版界における契約実
>> 態」によると、3年が最も多くついで5年となっています。また、自動更新さ
>> れる期間は1年間が最も多くなっています。
>
>については、多分「出版権」という著作権法で定義されている権利がからんで
>くると思うのですが、そこでは、「自動更新」どころか、3年経ては出版権の
>独占はなくなるという形で著者の権利としての複製権が確保されているので、
>権利保護という観点からは、こんな契約を結んじゃだめということなのだろう
>と思います。
>
>ところで、土屋さんの
>
>> 具体的な個々の出版契約を確認できなくても、おおむね上記のような内容での
>> 出版契約が結ばれていると想定して、対処するのがまずはいいだろうと考えま
>> す。
>
>というほどのことをする必要はなく、「機関リポジトリに載せるけどいいよね」
>と著者にひとこと言ってもらうという程度でいいと思いますし、
>
>> また、仮に契約が結ばれていなくても、上記のような契約は、出版社・著者の
>> 権利を守るために設定されているので、有無に関わらず同様の配慮をしたほう
>> がいいかと思います。
>
>には、どうしても、著作権者はあくまで著者であり、出版者には基本的にはな
>んの権利もないという前提から出発すべきということを申し上げたいと思いま
>す。書協の雛形は、著者の権利を踏みにじる(は、言いすぎだとしても)もので
>す。ですから、
>
>> それでですが、上記の中の自動更新というところは、実態上は増刷や再版を念
>> 頭に置いての条項だと思います。常に無条件で自動更新されてしまうのでは、
>> 著者のセルフアーカイブ権を含む著作権が不当に侵害されていると思わざるを
>> えないからです。
>
>というおっしゃる点のほうが大事だと思います。また、問題がすでに起きてい
>るのは、(今や昔の)増刷、再版ではなく、文庫化とか全集化というようなケー
>スであり、機関リポジトリ搭載もかなりそのような問題事例に近いということ
>だと思います。
>
>> なので、おおむね初版発行後3〜5年以降、または再版後1〜3年以降でかつ
>> 絶版になるまでは原則として出版社の許可が必要と考えていいと思います。(
>> 協議する、となっているので)
>
>いえ、不要です。そんな契約を結んでいる著者は普通いませんから気にしない
>でいいです。
>
>> 電子化条項は、昔の書籍にはもちろん盛り込まれていないでしょうけれど、そ
>> の有無によって、図書館として配慮するべき内容が変わることはない、という
>> ふうに考えます。(契約の有無と同じですね)
>
>図書館としては何も配慮する必要はありません。アーカイブするのは著者です。
>著者には、譲渡していないかぎり、権利が残っていますから、基本的に著者が
>権利を行使することは問題ありませんし、問題が起きても、それは著者と出版
>者との問題であり、図書館は関係ありません。
>
>> それで、問題はこの実態をふまえて、どう対応するかということです。
>> 個人的には、絶版後相当期間が経った書籍は、特に人文社会系分野では、貴重
>> なリソースであるにもかかわらず、人目に触れることが少なくなるため、積極
>> 的にIR搭載したほうがいいと思います。
>
>もちろんです。
>
>> しかし、著者・出版社に何らかの損害を与える可能性がある時点においては、
>> 慎重になった方がよいのではないでしょうか。
>
>そんなことはありません。図書館に責任は及ばないのですから、著者をけしか
>ければいいだけです。(いずれにせよ、「著者・出版社」と並べるのをやめま
>せんか。著者と出版者は契約をしないとそれぞれが勝手なことをして、相手に
>損害を与える可能性があるという関係ですので。)
>
>> また、「セルフ」アーカイブですから、著者の意向を尊重するのはもちろんの
>> ことですが、図書館として、著者と出版社の関係が悪化するようなことがない
>> ように、との配慮は当然必要だと思います。
>
>賛成ですが、それは著者と出版者との勝手な関係であり、学術成果物は万人が
>利用できるべきだという趣旨(オープンアクセス?)の観点からは、そんな関係が
>多少悪化しても機関リポジトリに搭載されているほうが人類の利益に貢献する
>はずです。長年かけて基盤(C)を何回かとって研究を積み重ね、成果公開費をとっ
>て本にした業績は、いわば、すでに費用は支払いずみですので、それ以上のコ
>スト回収はいらないはずです。博士論文にして然りです。したがって、著者は
>何も考えずに機関リポジトリに載せるべきです。(とはいえ、ぼくもそういうど
>うでもよい人間関係の観点から、自分のウェブサイトに載せていない業績があ
>るのは事実です。まあ、その人間関係はどうでもよくないということなのでしょ
>うね。)
>
>ただ、芝野さんのメールにあった奇特な出版者のことから思いつくのですが
>(というか、昔から考えてきたことで、今回、国立国会図書館の博士論文電子
>化に盛り込めなかったことでもあるのですが--どうせ、国立国会図書館の人は
>理解可能ではないだろうということに気づいてしまったので、、、)、博士論
>文出版サービスと機関リポジトリ搭載とを両立させることはできないのでしょ
>うか。「オンラインだとただで手にはいる」ということを前提にして、紙にプ
>リントして読むときに便利な形にするということの費用を(無理のない利益を
>上乗せして)請求することはそれほどひどいことではないだろうと思います。
>まあ、商売になるかどうかはわかりませんが、UMIの現在のサービスなんてそ
>ういうものではないでしょうか。
>
>土屋
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土屋 直之
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