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[drf:176] Kurtz (2007) in Japanese (OAは天体物理の被引用を増加させない)



Dear Michael,
Thank you for your permission!

みなさま、

北大 杉田です。Michael J. Kurtz氏から、

 Michael J. Kurtz, Edwin A. Henneken.
 Open Access does not increase citations for research articles
 from The Astrophysical Journal
 http://arxiv.org/abs/0709.0896

の抄訳・公開の許可を頂きましたので以下につけます。
図等はオリジナル(http://arxiv.org/pdf/0709.0896)をご覧ください。





   Open Accessは、The Astrophysical Journal掲載の研究論文への
        引用を増加させることにはならない

               (原文)
   Open Access does not increase citations for research articles
          from The Astrophysical Journal
        by Michael J. Kurtz, Edwin A. Henneken
           (Submitted on 6 Sep 2007)
          http://arxiv.org/abs/0709.0896

【抄録】
我々は結果としてThe Astrophysical Journal掲載の論文におけるOpen Access
の利点がないということを証明する。

【イントロダクション】
Lawrenceは、インターネットで公開されている研究論文は、そうでない論文よ
りも高い引用率を示していると2001年に初めて発表した。
その仮定は、引用が多ければ、多くの人が論文にアクセスしたり読んだりする
ことができるということからで、2004年のHarnadとBrodyの分析で強調された。
彼らは、arXivに搭載された、またはされていない物理系論文を使用し、arXiv
に搭載されている論文がより引用されていることを見つけた。
Kurtz等は、その効果について3つの原因を調査した。Early Accessにおいては、
arXiv搭載論文は雑誌掲載版よりも数ヶ月前に利用可能なため、より多く引用
される。Quality Biasにおいては、優良な研究者がarXivを使用する傾向にあ
るか、または、研究者が自らの自信の論文を公開する傾向にある。
そして、Open Accessにおいては、インターネット上に無料で利用可能となっ
ていることによって、より多くの人々がarXiv搭載論文を読むことが可能となっ
ており、これによってより多く引用される。
Kurtz等は、astrophysicsの論文については、Early AccessとQuality Biasが
すべてであるということを見つけた。Open Accessの効果については、何も見
つけることができなかった。astrophysicsのような資金の潤沢な分野において
は、研究論文を書くような人たちは皆、論文にフルでアクセスすることができ
るからであると、彼等は説明している。
違った方法論を使って、Moedはsolid state physicsの論文を研究し、非常に
似たような結論に至った。The Southamptonグループは、Brody等の分析を検証
し、Kurtz等の説明やMoedの結論に対してもっともらしい議論を投げかけ、
Open Accessには優れた効果があるとの主張を再び言及した。
Openなアーカイヴに論文を著者自身がオンラインで搭載するという行為が、搭
載されていない著者や論文にくらべて、可能なbiasを作り出している。
我々は、このbiasを持たないデータセットを見つけた。1997年、オンラインの
Astrophysical Journalは完全なOpen Accessジャーナルであり、予約購読の障
害は存在していなかった。1998年1月1日に予約購読を導入した。1997年と1998
年のAPJ掲載の論文の引用を比較してみると、結果的にOpen Access効果が存在
していないことを示すことができる。

【データ】
我々は、Smithonian/NASA Astrophysicsデータシステムのcitation database
より抽出した、1997年と1998年のThe Astrophysical Journalにて出版された
論文の引用記録を使用した。データは、年とarXivサーバーに搭載されている
かどうかによって、4つのカテゴリーに分割されている。1997年では、965論文
がarXivに搭載されており、1408論文が搭載されていなかった。1998年では、
1243論文が搭載されており、1105論文が搭載されていなかった。
The Astropysical Journalは、フルのオンライン版を持つ最初のメジャーな学
術雑誌である。1997年中盤には、オンライン版は冊子体版よりもADSを通して
より読まれていた。
The Astrophysical Journalは、1998年1月1日に、読者に予約購読を要求する
アクセス制御を導入した。その時から、36ヶ月たたなければ、予約購読者しか
論文を読むことができなくなった。

【分析】
図が示しているのは、1997年にarXivへ搭載されたもの、されないもの、1998
年にarXivへ搭載されたもの、されないものという4つのサブセットに対する引
用履歴である。最も明白な効果は、arXiv搭載論文は非搭載論文に対して約2
倍の引用率を示していることである。次に我々は、1998年arXiv搭載論文は、
1997年搭載論文に比べて、引用率のピークがより早いということに気づいた。
そして、グラフの下の方の2ライン、APJジャーナルの1997年・1998年arXiv非搭
載論文についてであるが、これらの2つのサブセットは、思いつ
くself-archiving biasの複雑な要素を除外したOpen Accessの効果を比較する
のにほぼ完全なサンプルをあらわしている。どちらもarXivでself-archiveしな
いという選択をした著者の論文であるが、1997年の方は完全なOpen Accessであ
り、1998年の方はアクセス制御されたものである。
図が示しているように、2つのカーブはそれぞれほぼ完璧に重なり合っている。
2つのセットには、引用履歴において特に顕著な違いは見受けられない。特に
1997年論文がOpen Accessで1998年論文がそうではないという出版後の最初の
36ヶ月においては、顕著な違いが見受けられない。どのタイムピリオドにおい
ても、これら2つのデータセットのカウントにおいて、顕著な違いは見受けられ
ない。
これが示しているのは、Astrophysical Journalでは、EAやSB効果から独立した
Open Accessの引用優越がないということである。

【議論】
2001年Lawrenceによって初めて明らかにされた、著者のself-archivingを通して
オンラインに公開される論文の大きな相違点の存在は、我々の図も含めて繰り返
し検証され、確立されてきた。Kurtz等により提示された問題は、すべてまたは
一部のこの相違点がself archiveされた論文は予約購読なしに無料で利用可能と
なっていて、self archiveされていない論文は有料であり予約購読料が必要である、
というコスト構造の違いによって起こるものなのかどうか、ということである。
ここに我々が最終的に示すのは、The Astrophysical Journalにおいては、引用の
相違にはコスト構造は関係ないということである。

-- 
杉田茂樹 <sugita @ xxxxxxxxxxxxxxxxx>
北海道大学附属図書館情報システム課システム管理担当
電話番号:011-706-2524,ファクシミリ:011-706-4099
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