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[drf:3343] Re: リポジトリのコンテンツの再利用について



小野さま、力石さま、みなさま、

小野さん:
>>  多くの機関リポジトリに
>> 「本リポジトリに保管されているアイテムはすべて著作権により保護されています。」
>>  あるいはこれに準じる文言が書いてありますが、
>>  たぶん、これだと、
>>  再頒布、授業利用等は著作権法の最低ラインに従わざるを得ない、
>>  という理解でよいのでしょうか?
>>  別のリポジトリに機関側で再デポジットしたりすることも難しいのでしょうか?
力石さん:
> どういう条件で、著作者からの許諾(一部譲渡)を受けているかに
> よるかと思います。
> 他機関リポジトリでの公開まで含めて許諾を得ていれば
> そのまま他機関リポジトリに転載することもできるでしょうが
> そうでない場合には、転載は難しいでしょう。

ぼくの理解している原則論を述べさせてください。Repositoryへのdepositとい
うのは、著者が、自分の著作物に関する権利を行使して自分のサイトまたは所
属機関、関連分野などの適切なサイトに登載(deposit)とすることです(実際の
作業を図書館がやったとしても)。著者が自分の論文の著作権を掲載雑誌に譲渡
し、譲渡を受けた出版者が掲載した論文についてこのような権利をもつのは、
譲渡の際に、この権利について留保しているか、権利者となった出版者がこの
権利の行使を著者に対して認める契約があるからです。

したがって、「本リポジトリに保管されているアイテムはすべて著作権により
保護されています。」という場合の「アイテム」の著作権は、譲渡後のことな
ので、出版社が所有していると考えられますので、小野さんのおっしゃるよう
に、「再頒布、授業利用等は著作権法の最低ラインに従」うことになると思い
ます。つまり、著者はdepositすることを認められ、権利者である出版者はそ
の結果無料で閲覧されることについてはおそらく想定していますが、それ以上
の利用については想定していないと考えられるので、それ以外について何もで
きません。

したがって、著者が出版者に権利譲渡した結果として論文の出版が行なわれる
場合には、その論文の機関リポジトリへの登載について力石さんのおっしゃる
「著作者からの許諾(一部譲渡)を受けて」という状況は生じにくいと考えま
す。もちろん、この「著作者」が「著作権者」である場合には、それは譲渡を
受けた出版者のことですから、著者が自己の権利を行使したのではなく、機関
リポジトリが権利者=出版者から許諾を受けて登載してることになりますが、出
版者から許諾を受けて登載しているところは少ないと思います(「グリーン誌だ
からOK」という論理は、上述を端折った表現です)。もちろん、インターネット
ができる前に権利譲渡しているときには、この留保ないし著者への便宜提供の
項目はないので、著者自身が出版者に許諾を求める必要があるわけですが、ま
あ、そこまでは要求されることはないでしょう。そもそも、合併や廃業で権利
の所在が不明確になっていることですし。

このような状況があり、たとえば最近のGOALリストなどでの、機関リポジトリ
登載著作物をCC-BYで公開することをめぐる議論が生じているわけです。もちろ
んCC-BYで公開といっても、著者が著作権者であれば、CC-BYにできるのですが、
自分が権利をもたない著作物については何を言っても無意味なので、図書館が
出版者のところまで行って、CC-BYで公開することを許諾しろと言うべきだとい
う議論になります。出版者はまあ普通はそんなのはいやだと反応することにな
るでしょう。

また、図書館が「著作者(=著者=著作権者)からの許諾(一部譲渡)を受けて」、
論文を機関リポジトリで公開していることは、ちょうど、「出版者が著者(=著
作権者)からの許諾を受けて」出版するのと同じことですから、著者がそれを
CC-BYで公開すると宣言すればそれだけのことです。「一部譲渡」の場合は、
具体的にどの権利の譲渡を受けているかに依存すると思います。

これでいいんですよね、森さん。

土屋
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 2012年10月号(33号)を発行しました!

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