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[drf:789] SPARC Digital Repositories Meeting 2008 (2日目)報告



drf-MLのみなさま

こんにちは,大阪大学の土出です。
やや出遅れてしまいましたが,SPARC meeting 2008 2日目(11/18)の様子につい
てご報告します。

○9:00AM-10:30AM The Policy Environment
#このセッションはタイトルから分かるように,大枠のお話です。

・SPARC Europe の話(Prosser, David : SPARC Europe)
scholarly communication がpublic policyから受けるインパクトは大きい。
EUは2000年に「the most competitive and dynamic knowledge driven 
economy by 2010」という声明を出している。
ウェブの発達によって、研究者自身は共同しやすくなっている。
 #E-scienceについても言及。(ヨーロッパの状況はBerlin6の方で…)
オープンアクセスにつながるようなポリシーの数は次第に増えていっていると
のこと。またオープンアクセスを支えるものとして,ベルリン宣言の存在があ
る。2006/01から、UKもfundを受けたオリジナルリサーチペーパーはPMCへ
(the welcome trust, UK)。7つのうち6つのカウンシルが成果論文をリポジト
リで電子的フリーアクセスにするように求めている。
大事なことは,
助成者と大学経営者とが、OAの重要性を解って、その義務化(?)にむけて合
意する事を促進する。
助成者は出版コストを研究コストのなかにおさめること。
経営者はリポジトリを研究と学習を支える鍵となる道具であることを認識する。
来年はきっとOAの論文が増える。。

・日本のIRを取り巻くポリシーについて(千葉大学土屋先生)
4年前の発表を引いて,日本の状況がこの4年でどのように変わったか,を説明。
リポジトリの数は増え,JAIROや共同リポジトリなどの試み,リエゾンライブラ
リアン的考えが登場した。政府へのロビー活動、助成は結局4年経っても出てい
ない。
「ポリシーがない」というのが日本のポリシー(ここで聴衆席より笑い)。どん
なコンテンツ、どんなアプローチも可。
CSIの助成で、図書館コミュニティーに新しいカルチャーがやってきた。(助成
は限定的ではあるが、あるということは大事)しかし、「OA」は未だに「外国
(よそ)のこと」。なんか大事そうだけど、何かすることは別に。。という感じ
に取れる。
日本で欠けているところ:国際協働,経験の共有,情報交換,標準化,インフラ
についての議論…を埋めていく必要がある。
# 土屋先生の発表はユーモアたっぷりでかなり受けていました(その後の質疑で
も)。

・アメリカの連邦政府機関によるリポジトリとファンド研究に対するオープンア
クセスについて
(Bonne Klein: U.S. federal government repositories and public access to 
grant research)
U.S. federal government repositories には,CENDI, Science.gov, 
WorldWideScience.org の3つがある。それぞれの紹介。(日本語ではカレントア
ウェアネスなどの参考記事もあります)
連邦では実にたくさんの助成研究がある。政府機関、教育機関、公共housing、
NPOなど,様々な機関が1000以上の助成を受けている。
GAO(the US Government Accountability Office) の調査によると,助成を受けた
ものはリポートを助成機関のウェブサイトに乗せるべきか?という問いに対して,
53%が「はい」,22%が「いいえ」と答えている。


○10:45AM-12:15PM Campus Publishing Strategies
# 個人的にはこのセッションが会議を通して一番盛り上がっていたように感じま
した。

トロント大学より,PKP(Public Knowledge Project) の事例報告。カナダの21大学
で,OJS, OCS, Metadata Harvester, Lemon8-XMLなどの仕組みを共有している。
Open Monograph Systemなども開発予定。
http://pkp.sfu.ca/?q=ojs
図書館がPublishing に関わることについてのキーワードとして,low engagement, 
systematic sharing, テストと展望、リスクと不完全性の回避、持続性、誰と協働
するか…などを挙げていました。

カリフォルニア大学より,eScholarship publishing servicesの報告。
2002年にIRができ,25,000の学術ペーパーが収載され,700万のフルテキストダウ
ンロードがあった。が,ワーキングペーパー,フィールドノート,会議録などは言
及されていなかった。(このことを"lack of visibility incentive"だといってい
ました)IRをプラットフォームにした出版サービスを開始。カリフォルニア大にお
ける出版ニーズを調べた。分校がたくさんあるので,出版物も多い。
http://repositories.cdlib.org/escholarship/
UC Press のPublishing Services  
http://ucpressjournals.com/publishingServices.asp
Mark Twain Project Online  http://www.marktwainproject.org/
なども紹介。

Macalester Collegeより,「小さな大学におけるIRの意味について」報告。2005.3
にIR立ち上げのための体制づくりをしたが,IT部門との協力が重要であった。
コンテンツを増やすために,promotorとなってくれる教員をゲット,受賞した論文
をすかさずくれるようお願い,学内出版物やOA誌に載った教員の論文収集,
Academic Programとの連携,などを行った。	
IRの意味合いとしては,大学のショーケース,キャンパス出版物の保存,教員業績
の可視化,著作権・知財・OA・新しい形の出版などといった学術コミュニケーショ
ンについての教育の機会,などを挙げていました。あと「学生へのプロモートも大
事」と。学生は将来研究者になるので。
DigitalCommons@Macalester
http://digitalcommons.macalester.edu/

質疑では,facultyのニーズを組むこととpromoteに関連してリエゾンライブラリア
ンの重要性が指摘されたり,大学出版と図書館との「文化」(毛色という感じでし
ょうか?)の違いについて議論があったりしました。図書館とIT部門との関係につ
いても,たとえばIRをITと協力してするのがいいか,もしくはOutsourcingのほうが
効率がいいか,など,フロアとプレゼンテイターとの間で議論がなされていました。


○12:45PM-1:45PM Luncheon Keynote
Bob Witeck, CEO, Witeck-Combs Communications

リポジトリもただ漫然とやっているのではだめだ,というような,"それでいいのか"
的なアプローチで,担当者を励ますような内容だったように思います。。お昼ごはん
を食べながらスピーチを聴くのはなかなかハードでした。。すみません。
(みなさまフォローくださいませ)


○2:00PM-3:30PM  Marketing Practicum
Economics/ Comparative Lit/Biology/Anthoropology などのジャンルにわかれて各丸
テーブルに着くと,それぞれキーパーソン(Deanみたいな人)のプロファイルが渡さ
れます。その人に対してリポジトリpromoteをどんなアプローチでするかをテーブルご
とに議論し,発表するというもの(プロファイルの役柄の人が設定されて実際にやり
とりをするわけではありません)。ポータル研修の共同討議に少し似ているかも。日
本勢は固まって座っていたら「Economy」の席で,経営学の教授でYahoo!のVice 
President and Research Fellow という人へのアプローチを考えることとなりました。
プロフィールやコメントの紙と,具体的に考えるべき設問の書かれた紙があり,設問
の方を埋めていって最終的にStatementを作成する,という非常に順序立てたやり方で
した。


○3:45PM-4:45PM Closing Keynote
David Shulenburger, Vice President for Academic Affairs, NASULGC

2日間の討議を踏まえ,現在のリポジトリを巡る様々な現状,たとえば出版,学術情報の
流通,OA,その他について述べた上で,さらにリポジトリのために7つのステップがある
と提言(すみません,書きとめ忘れました)。academic goal の設定が必要,とも。
締めの言葉: "keep on good work."

最後に,主催者のSPARC,(及び共催のSPARC Europe, SPARC Japan)から閉会の辞。

印象に残ったこと
どのセッションでも質疑がわりと多く出て,活発に議論しようという姿勢がはっきりして
いました。発表者がちょっとでも面白いことを言ったら声を出して笑おうという感じなど
も含め,意図を持ってコミュニケーションを積極的に行う意識が強く感じられました。
SPARCのExecutive Director の Heather Joseph さんは,颯爽として気さくなとてもかっ
こいい女性でした。

以上,過不足,誤り等ご指摘ください。>ご一緒した皆さま


ちなみに今回の出張は,drfから会議出席者が5名,うち4名は会議終了後に二手に分かれ,
北米及びカナダの機関・大学を訪問しました。
先にご報告のあった,筑波大金藤さん・北大野中さんがカナダへ,金沢大川井さん・大阪
大土出が北米へ,という具合です。
(SPARCmeeting の報告は以上です。北米編につづく。)


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土出郁子(TSUCHIDE Ikuko)

附属図書館学術情報整備室
(電子コンテンツ担当)
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電話内線:2061