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[drf:1823] Re: 国会図書館による学位論文デジタル化について



中村さん、

> その同意書に大学のリポジトリと国会図書館の電子図書館の両方について
> 公開の許諾を得るのが得策と考えて,国会図書館に
> 「これまで大学から国会図書館に冊子体を1冊ずつ提出してきたが,
> 今後は電子データを提出することになるのかどうか」を
> 問い合わせましたところ
> 「電子データではなく冊子体を提出してくれ」
> とのことでした。

学位論文を大学から国立国会図書館への送付を行なっているのは、昭和50年の
文部省大学局長(当時)通知によるもので、それまで文部省に送付していたもの
の宛先を国立国会図書館にしてほしいという依頼がその通知の内容です。した
がって、厳密にいえば、法令上の義務ではありません。法令上の義務は、ご指
摘のように、文部科学省令である「学位規則」によって「学位取得者」による
「印刷公表」です(「できないとき」に関する但し書きはあります)。また、学
位授与大学を論文要旨、審査記録を公表する義務があります。したがって、そ
う考えれば国立国会図書館に何も送る必要は法令上ありません。また、公的機
関(独立行政法人に準じる府立大学は含まれるはず)のウェブ資源は、昨年度の
国立国会図書館法の改正によって、国立国会図書館が定期的にアーカイブして
いますので、とくの送付しなくても保存上の懸念はなくなったといってよいと
思います。

しかし、多くの大学で、この国立国会図書館への送付をもって「印刷公表」義
務を学位取得者がはたしたと見なすようにしているところが多いようです。そ
うなると、国立国会図書館がいうように「冊子体」を送るしかないのかもしれ
ません。この状況を打開するためには、「学位規則」を変更するか、昭和50年
の通知をなんらかの形で修正する通知を出すかのどちらかしかありません。文
部科学省情報課にはその趣旨を伝えてありますが、なかなか高等教育局に対し
て正式の働きかけをしてくれてはいません。有川九大総長が主査である学術情
報基盤作業部会でも問題にはしていますが、まだ具体的な成果が出ていないの
が実情です。これ以外にも、今回のデジタル化について、1990年以前はどうす
るの? 2000以降はどうするの?という問題もあり、これらについては、「大学
図書館と国立国会図書館の連絡会」という枠組み(大学図書館側は、国公私立
大学図書館協力委員会が対応)で議論をしていくことにはなっています。

以上、一応公式的な情報のかぎりでの説明です。

土屋
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