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[drf:207] Re: [drf:206] 図書館施設でない研究所の複写機の理解(NIMS)



谷藤さん、

> 図書経営で不案内なことが起きましてお尋ねします。 お題は
> 
> 「研究所の現行の夜間・休祭日の図書室利用に際し、
> (司書がいない状況下で)コピー機による文献複写利用を
> できるようにすることに法的問題があるか」
> ということです。

本当は、千葉大の森さんに返事していただくことなのですが、今日は出張中な
のでぼくが代わりに。

基本的に、図書館が著作権法31条の制限規定によって無許諾無報酬で複製する
ためには、その図書館が「著作権法施行令第一条の三による施設」であること
が必要です。普通の研究所の図書室は、一般に開放されていないので31条の制
限は利用できませんが、物材機構では「所蔵資料を一般公衆の利用に供する」
を追加してクリアしたということですね。

しかし、複製の主体が図書館であれば、図書職員が利用者の依頼に応じて複製
することができるけど、図書職員がいないときには本人がやるしかないので制
限規定が使えないという問題が生じるというわけです。これを回避するには、

> b. 法的な問題がある場合に備え、(図書エリアからはずれる)地続きの事務室に
>   コピー機を置き、司書がいない時間帯はそちらを使って貰う。

によって、31条ではなく、30条の私的目的の複製で対応しようとするというこ
とだと思います。実は、これは、「横浜市立図書館方式」と呼ばれる大変筋が
悪いものです。概要は、

http://www.weblio.jp/content/%E8%A4%87%E5%86%99

の記述を信じてかまいません。

そこで大学図書館では、このウェブページにもあるようにガイドラインを明示
して著作権団体と協議し、基本的な同意(厳密には、「同意したとは言えない
が文句はいわない」という程度)をいただいています。

このことを根拠として、大学図書館ではセルフ式コピーを利用者が実施するこ
とについて、ガイドラインを遵守する限りでは、図書館による31条の制限規定
による無許諾無報酬の複製であると大方の権利者に認めていただいているとい
う認識をもち、そのように運用しています。

さて、物材機構の場合ですが、

> 夜間・休祭日の図書室利用には、職員カードで入退室管理をしていますが
> 肝心のコピー機を不使用(電源を抜く)としているため、研究生活に不便があります。
> これを改善するべく、以下2案を考えています。
> 
> a. コピー機を不使用(電源を抜く)ことをしない。
> b. 法的な問題がある場合に備え、(図書エリアからはずれる)地続きの事務室に
  コピー機を置き、司書がいない時間帯はそちらを使って貰う。
> 上記いずれの場合も、盗難・不正利用の抑止力として、IPカメラを設置する。

a.はたんなるサービス向上ということだと思います(まあ、待機時電力云々は
あるかもしれませんが)が、b.については、筋が悪い(要するに、脱法行為であ
る)という認識が横浜市立図書館問題を通じて、図書館界の共通認識であると
思われるのであまりおすすめではないだろうと思います。

となると、対応は2つ可能です。

        1. 一応、一般利用によって31条図書館となってはいるが、休日夜間の
           セルフサービスの複製については、許諾を求めて、著作権使用料を
           払う。(多分、包括許諾になると思いますので、1枚2円というお安
           いお値段です)

        2. 大学図書館がやったように、「休日夜間のセルフサービスの複製」
           の実施方法についてガイドラインを定め、権利者の理解を求めて、
           そのような複製も31条の範囲内のものとして実施する

まだ森さんあたりに他の方策があるかもしれませんが、とりあえずはこれかな
ということで、大学図書館における対応の経緯をご紹介いたしました。

土屋