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[drf:3630] Re: D論のPDFのセキュリティ



森下さん

> おっしゃっておられること、理解できます。
> が、実際問題、どのように対応するのかと考えると
> そう簡単に話は進まないように思うのです。

そうだろうと思いますが、べつに「簡単に話を進」める必要はないのです。と
くに土出さんもこの直前の投稿でたびたび指摘されていたとおり、公表の義務
を負うのは学位取得者であり、協力を求められているのは、学位授与機関であ
るので、その当事者がどう考えるかがなにより大事であり、図書館は、学術情
報の普及、流通の促進という観点から支援、助言するという立場だからです。
図書館が何かしようと思ってはいけません。しかしもちろん、当事者が、無知
ゆえに誤った判断をしようとするときには、専門家の立場から適切な介入をす
ることが求められているのだと思います。

> 研究分野によっては、「画像の解析」自体が研究目的という場合も
> ありますので、公表できない内容をメインにせざるを得ない論文も存在します。
> そのような場合、「研究内容を選んだのは学位取得者や
> 学位授与機関の責任だから、公開できないのは仕方ない」というのは、
> 研究者の方にはお伝えしにくいです。

画像解析の対象は、たんなる数値列なので、問題は生じるはずもありませんが。
かつ、ここで「お伝えしにくい」という気持ちがわかりません。本人に責任が
あるときに、本人の責任であることをお伝えするのは専門家としての義務だと
思います。

> 研究者の方は、画像提供者にお願いをして公開している訳で、
> 画像提供者が「そんなにややこしいことを言ってくるなら、
> 画像の提供はしない」となってしまうと研究自体に支障が生じますよね。
> なので、画像提供者に無理を言う訳にはいかず、
> 結局、不完全な要約をあげるしかないということになると思います。

それはわかりません。研究目的の提供はそうとうケチな人でもやってくれます。
ともかく理由はなんであれば、公表できないならば、やむを得ず公表できない
のですから、公表しないだけのことで、別に気にすることはありません。要約
は、(画像を含めた)全文でないからという意味で不完全であるということであ
れば、たしかに不完全ですが、それでも学位は取得され、その根拠である学位
論文の内容は公表されているので、(芸術作品が学位授与条件の一部を構成す
るような場合は別にして)まったく誰も困りません。

> なので、選択肢としては、それしかないのですが、
> 結局、研究者が意図していないにもかかわらず、
> NDLでは公開できない博士論文が存在してしまうというのが残念です。
> NDL側の技術的な問題については、理解できますし、パスワードや
> セキュリティをかけた論文を収集することは、実際問題
> 難しいのだろうと思います。
> そして、オープンアクセスの観点から言うと、「NDLだろうが、リポジトリ
> だろうが、どちらでも同じ。」なのでしょうが、例えば、利用者が
> NDLでは、全ての博士論文を収集していると思って、
> NDLのサイトにアクセスしたら、なくて残念・・・
> という結果にはならないでしょうか?
> リポジトリへのリンクもつけるというのも手かもしれませんが、基本的には
> 同じものが載っている原則のはずですし。
> そういう意味で、残念です。

この気持ちはまったく理解不可能です。NDLのサービス対象は、国会議員と一
般国民です。この人々の多くは学術的情報には、恒常的には関心を持ちません。
それに対して、大学図書館を中心とする学術図書館は、研究者、学生をサー
ビス対象とすることから、学術的情報の生産と流通に関心をもち、その向上を
促進する役割を担っています。したがって、大学図書館がちゃんと仕事をすれ
ばいいだけの話で、NDLは、けっきょくは保存のlast resortであるにすぎませ
ん。

> 私は図書館の人としては未熟で、微力ではありますが、
> 利用者や研究者の役に立つ方向を模索したいです。

ということであれば、大学図書館の方としては、一般国民ではなく、学生と研
究者のことだけを考えればいいと思います。

土屋
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 2013年4月号(39号)を発行しました!

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