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[drf:345] DRFIC2008に想う



みなさま、

1月30日、31日の1日半にわたり、大阪大学吹田キャンパス銀杏会館をお借りし
て、DRFIC2008の会合を持ち、出席してまいりました。DRFは、たしかにNIIの
CSI事業の展開なしにはその出発は考えられないものではありますが、すでに
それを越えた展開となっていることを如実に感じさせるものでした。とくに、
海外からの講演者の招聘があったために、原則として英語を使った会議運営と
なったことは、主催者、参加者にとってはストレスでありましたが、なかなか
意味のある刺激になったように思います(教員としては、日本で開催した国際
会議は山ほど経験していますが、少数の海外招聘講演者がお客さまになるこ
とはあとを絶たず、今回のように最後まで積極的に会議そのものに参加される
ことは珍しいと思います)。

今回の会議に参加して感じたことを以下雑感として記します。みなさんからの
議論(参加された方からは「そりゃ違う」、されなかった方からは「よく意味
がわからない」というもの)の切っ掛けとなることが目的です。

1. (原則)英語でやったのはよかった。慶應入江さんとか小樽鈴木さんとかの
   裏切り者はいましたが、少数とはいえ海外からの人々を含めた「議論」が
   できたのは大変よかったと思います。「議論」と鍵括弧をつけたのは、ほ
   かもなく、多分、「外人」同士、日本人同士のものでない議論になってい
   たということです。

2. 機関のリポジトリということを考えたとき、機関リポジトリがその機関に
   所属する人の研究成果を対象とするものであることを考えると、「人」の
   同定が重要な意味をもち、どのような機関リポジトリ開発のコンテクスト
   でも、この問題に取り組もうとする時期になっているということを感じま
   した。たとえば、一旦は機関内で同定し、唯一識別子を付与できたとして
   も、その人が他機関に異動したり、身分を変えたりしたときに追跡するた
   めには、キャリアを一貫した同定、識別の方法が必要なわけですが、どの
   国でもその問題への取組みを喫緊の課題としているということが理解でき
   ました。

3. Sustainabilityということが話題のひとつではあったのですが、解の方向
   性は明白で

        ・ 機関としてのコミットメント
        ・ 定常コストの削減
        ・ 教員(研究者)との連携のありかた(「お願い」ではなくパートナーシップ)
        ・ 機関リポジトリ運営主体間の相互協力・連携の必要性

   あたりに収斂しているように感じます。

4. 収集したコンテンツの将来への保存の体制について考えておくことの重要
   性がちらちらと、しかし、いたるところで示唆されていたいたように感じ
   ました。しかし、保存ということを考えないまでも、現在の日本において、
   電子的資源(digital object)の管理をどのように考えるのかが議論できて
   いないことを痛感しました。DOIだからといって別にCrossRefだけがすべて
   ではないのにと思うばかりです。

5. Findabilityの問題(つまり、どうやって機関リポジトリにあるということ
   を知らせるか、いや、知らせる必要はなく、そこにどのようにナビゲート
   していくのか)が共通の問題であることがわかりました。われわれのところ
   にも、JuNii+とかCiNiiとか、AIRwaysとかがありますが、それらが本当に
   どの程度ユーザの役に立っているのかは不明です。

6. ポスター・セッションについては、ベスト・ポスター賞を設定したのです
   が、なんと1位は当日朝になってやっととどいた筑波大学斎藤さんほか
   (この「ほか」がやたらに多い)による、機関リポジトリ評価のための統計
   の標準化に関するポスターでした。あたりまえのことしか書いてなかった
   のですが、栗山さんが、"artisitcally best poster design"を選ぶのでは
   ないというアナウンスをされた効果か、高い評価を受けました。つまり、
   われわれは、ウェブによるコミュニケーションの可能性を信じつつも、そ
   の効果の評価方法を独自に作り、普及させることを重要性について思いを
   新たにしました。

7. 著作権の問題が世界どこでも問題になっていることについて納得するとと
   もに唖然ともしました。著作権についてありがちな誤解をいまだにもって
   いる人と会談したりして、有意義でした。

8. どうやってよいのかまったくわからないのですが、日本、韓国、台湾が似
   ているような似ていないような状況にあり、将来にむけてなんらかの対話
   が重要であると感じました。

9. 要するに、機関リポジトリはもはや(2002年と比べると隔世の感があります)図
   書館の付加的な機能ではなく、本質的な活動となったことは印象的でした。

10. 核融合研、アジ研など大学の外側の人々の話が大変新鮮でした。

11. 研究者コミュニティの形成という問題が前面で出てきてしまったようでし
    た。

とりあえず以上。