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[drf:788] オタワ(カナダ)のCARL等4機関を訪問してきました。



みなさま

北海道大学附属図書館 野中と申します。


この度機会をいただきまして、「SPARC Digital Repository Meeting 2008」
参加後に,筑波大学附属図書館の金藤さんと共にオタワ(カナダ)の4機関を
訪問してきました。

(1)CARL(Canadian Association of Research Libraries)
 (カナダ版ARL。IRについてもカナダ全体のプロジェクトなどカナダの中で
 中心的な役割を行っている。)
http://www.carl-abrc.ca/about/about-e.html
http://www.carl-abrc.ca/projects/institutional_repositories/institutional_repositories-e.html

(2)オタワ大学(University of Ottawa)
 (最近IRをスタートさせた)
http://www.uottawa.ca/welcome.html
https://web5.uottawa.ca/dspace

(3)IDRC(International Development Research Centre)
 (日本におけるJAICAのような機関。助成した研究成果のIRを構築している
 。)
http://www.idrc.ca/en/ev-1-201-1-DO_TOPIC.html

(4)CISTI(Canada Institute for Scientific and Technical Information)
  文献供給センターとして有名なCISTI。上位組織であるNRC(National
  Research Council Canada)の研究成果を2009年1月からIRで公開予定。なお
  、IRへの搭載はマンデートポリシーあり)
http://cisti-icist.nrc-cnrc.gc.ca/main_e.html
http://cisti-icist.nrc-cnrc.gc.ca/media/press/nparc_e.html

訪問の全体的な目的としては
 1)カナダのIR状況を聞くこと(また日本の状況も伝える)
 2)私たちが携わっているプロジェクト(AIRway,SCPJ)の紹介。及び世界
     の目から見てこの2つのプロジェクトに対してどう考えるのかの意見を
     聞くこと。
の2つを主な目的として訪問してきました。

上記2つの目的のため、5つのプレゼン(日本のIR状況(NIIのCSI事業、
IRDB,JAIROの紹介及びDRFの活動の紹介)、北大、筑波のIR紹介、AIRway,SCPJ
の紹介)を持参し意見を伺ってきました。

<1.CARL>
*CARLの概要
 CARL所属機関は27機関。現在22機関でIRを運用中であり、4機関が準備
 中である。またCARL参加機関でIRのためのワーキンググループを結成してい
 る。また、CARLがIRに対して現在重要と考えていることは、
 1)IRの重要性を明確にすること。またそのためのCARLのプロジェクトの価値
   を明確にすること。
 2)IRへのコンテンツ搭載を向上させること。
 3)カナダのIRサービスに付加価値を加えること。
とのことでした。

*CARLのIRプロジェクト
 現在CARLでは4つのプロジェクトを行っている。
 1)Institutional Repository Advocacy Toolkit(作成して各機関へ配布な
   ど)
 2)Single-disciplinary Pilot Project(NIIのJAIROのような、カナダ内IR
   の横断検索サイト:通称カールハーベスタ)
 3)Usage Statistics(カナダ版IRDBのようなもの。)
4)CARLCore Metadata Profile: Phase Two(カナダのIRで統一的に使用でき
   るメタデータプロファイルの作成(junii2のようなもの)

*IRに対する助成金はあるか?
 CSI事業のようにお金を直接サポートするようなことは行っていない。IRに
 ついては上記のプロジェクトでAdvocacy Toolkitを作成配布したり、カール
 ハーベスタを作成したりといったことにお金を使っている。

*カナダ全体のIR担当者の育成は?
 日本におけるNIIのポータル研修のようなものはない。ただしワーキンググ
 ループ内で勉強会のようなことを行ったりしている。

*AIRwayについて
 興味をもってもらった。今回はカールハーベスタデータをAIRwayにハーベス
 トさせてもらうこと(カナダ内IRデータを一括でAIRwayに取り込む)の可能
 性を探ることも目的の一つであったが、今後連絡を取り合いながら情報交換
 させてもらうことになった。なおカールハーベスタは現時点でもOAI-PMHで
 データを吐き出すことは可能とのこと。またCARLCore Metadata Profileは
 2009年に完成予定であり,書誌事項を機械的に分割できる形で保管し
 ,OAI-PMHで吐き出せるようになるとAIRway対応できると伝えてきた。

*SCPJについて
 カナダにはSCPJのようなカナダに限定したSherpa/ROMEOのようなものはない
 。いいアイデアだと思う。カナダのいくつかの雑誌はSherpa/ROMEOにも登録
 されており、現在のところ緊急的にはカナダ版SCPJのようなものは求められ
 てはいない。

<2.オタワ大学>
*オタワ大学概要
 まだIRを立ち上げて日が浅い。現在は学位論文を主に登録している。IRの業
 務のみを行う選任職員はいない。カナダでは英語とフランス語のバイリンガ
 ルを考慮しなければならず、システムもその点を考慮しなければならない。
 現在Dspaceを使用しているが、バイリンガル機能についてはカスタマイズし
 て対応した。(興味があれば後でメールを送ってくれれば実現方法は教える
 とのこと。なお、やはりJAVAは難しく、JavaScriptで実現したとのこと。)

<3.IDRC>
 決して大きくない図書室,少ないスタッフであったが,OAへの意識は高か
 った。IRコンテンツも順調に登録しておりサーバも自主管理。小さいながら
 も継続的にIRを運用するよい例であると感じた。

<4.CISTI>
*CISTI概要
 NRC(National Research Council Canada)の下部組織の1つ。国立の科学情
 報図書館。DDSサービスで有名。またCISTIの一部門としてNRC Research
 Pressがあり,16誌の国際研究雑誌,書籍,会議録を刊行している。またこ
 れらはカナダの人々にはオープンアクセスで提供され,研究成果の提供につ
 いては経験が十分あり,意識が高い。

*CISTIのIR
 NRCの研究成果をIRにデポジットする。2009年1月からスタート予定。2006年
 から検討を開始した。NRCは20機関ありそれぞれの職員が登録をサポートす
 る。CISTIの職員2名が全体のマネージメントしている。またシステムも2
 名のフルタイム職員が対応。登録はパートタイム職員が行っている。登録に
 ついては著者自身が登録することも可能にしている。また、特徴としてアブ
 ストラクトは、英語の論文であれば、フランス語にも翻訳して両方を提供す
 る予定。研究者への広報や教育については、各機関からIRのためのグループ
 を作って検討対応していく予定。マンデートポリシーを広報することは当然
 必要であり、今後もトップダウン、ボトムアップの両方から周知していく予
 定。

*CISTIのマンデート
 フレキシブルマンデートである。研究者にIRへの登録を拒否している雑誌へ
 投稿するなとはいえない。出版社とは仲良くやっていき、WinWinの関係を築
 いていきたいと思っている。そのためフレキシブルに対応することも当然あ
 る。またマンデートポリシー採用の実現は、数人の職員で検討し、少しずつ
 上位部署へ説明していき、CISTIの委員会やトップにも理解してもらい最終
 的に国に認めてもらい実現することとなった。NRCは元々文献、研究成果の
 提供(特にカナダの人へ。国立なので)が使命であるため、上層部には理解
 されやすかったかもしれない。

*システム
 Teamsite(一般的なリポジトリ用の製品ではない)を使用。DDSシステムや
 Webページもその会社の製品を使用している。Dspaceなどを選択しなかった理
 由は、国の機関であり安定供給が求められる,また既に動いているシステム
 とも連動させたいため商用製品かつ同一会社にした。

*AIRway
 とてもよいアイデアである。メタデータも含め今現在では対応できないが,
 興味はあるのでよく資料を見て,また問い合わせする。

*SCPJ
 とてもよい。CARLなどと協議して検討してみたい。


<オタワ全体感想>

 カナダではだいぶはやい段階からCARL等でIR,OAの啓蒙活動が行われており
 ,そのためか今回訪問した機関はどこも研究成果の提供,また可視性アップ
 については意識が高かった。そのためIRへの理解度も高くAIRwayのような一
 見わかりにくいサービスについても理解をしてもらえた。

 またカナダではCARLが中心となってIRのプロジェクトを行うことによりIRへ
 の知識がだいぶ共有化されているようにも感じた。CARLはNIIのCSI事業のよ
 うな大胆なIRサポートは行っていないが,CARLのような国全体をリード,集
 約できる役割をもっている組織があることはIR構築にはとても重要であると
 感じられた。

 今回の訪問によって日本の現在の状況は世界をリードすることも可能なポジ
 ションにいると感じられ,今後はもっと情報発信し世界とより交わりながら
 IR事業を行っていく必要があるのかなと感じた。

以上


#訪問日時及び対応してくれた方々

(1)CARL:11/20 9:30-12:30
  Brent C. Roe(Executive Director)
  Diego Argaez(Research Officer)


(2)オタワ大学:上記CARL訪問時に一緒に。
  Sam Popowich(librarian)

(3)IDRC:11/20 13:30-15:30
  Barbara Porrett(Manager, Systems and Collections)
  Sachiko Okuda(Reseach Information Specialist)

(4)CISTI:11/21 10:00-12:00
  Alison Ball(Manager, NRC e-library)
  Naomi Krym(Business Development Officer)

また今回の訪問は,CARLのKathleen Shearerさん(CARL IRプロジェクト責任者
)に全てセッティングしていただきました。

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北海道大学附属図書館情報システム課
システム管理担当

               野中雄司
 
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