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[drf:1545] Re: 日本学術会議講演会(1/30)感想
- Date: Tue, 2 Feb 2010 16:03:34 +0900
古賀先生、皆様
名前が出ましたので、はばかりながら、、、
長尾館長は、Googleが何をしようがNDLはNDLで電子化を推進するんだ、
という感じでしたね。今後何年か以内にKindleなど比べ物にならないくらい
使い勝手のいい読書端末が開発されるはずだともおっしゃってました。
いかにも工学系の先生らしい、技術の進歩で明るい未来をといった感じの
ビジョンがまぶしかったです。
> *龍澤武氏(東アジア出版人会議理事・元平凡社編集局長)の講演
> 書籍・出版の公共性は今後いかに担保されるか、という点を考えたい。
> 日本の大手出版社も著作権者も「私権」としてGoogleに反対しているに
> 過ぎないのではないか。Google+フェアユースの導入によって学術出版
> (人文書)が壊滅するのは明らか。「読書する公衆」の存在なしに出版の
> 公共性はあり得ず、日本の大学にも市井にも「読書する公衆」の姿はない。
> むしろ、日本国内に数多く存在する公共図書館で人文書の購入を義務づけ
> させることが、人文書の再生を可能とする道である。
この人の主張をきちんと理解しているか自信がないのですが、グーグル・
ブックスが人文書の出版を壊滅させるというからには、人文書も電子ブック
になり得る、読者は電子ブックで満足してしまうに違いないと考えていらっ
しゃるわけですよね。であれば、人文書の電子出版のビジネスモデルを
提示して議論に付す、くらいのことがあっても良かったと思うのですが。
古賀さんがおっしゃるように、「紙の本が好きだ」という話に流れてしまった
ために電子ブックへの大きな流れをどう受け止めるのかという肝心な話が
議論されないままに終わってしまったという印象です。
これは後半の映像アーカイブについても同じで、「あえて過激な保守主義者」
がデジタル化よりフィルムそのものの保存を訴えるのは、面白いし、頷ける
のではありますが、やはり肝心の論点から目をそらすもののように感じました。
つまり、世界ではGoogleを筆頭に圧倒的に電子化が進展しているが、日本は
どうするのか?ということです。
確か上野先生だったと思うのですが、「情報鎖国」という言葉も出ました。が、
人が足りないとか予算が足りないという話に飲み込まれて、結局、なんだか
よくわからない結論になってしまったように思います。
栗山 正光
常磐大学人間科学部現代社会学科
〒310-8585 水戸市見和1-430-1
----- Original Message -----
From: "KOGA, Takashi" <tkoga @ xxxxxxxxxxxxxxxxxxx>
To: <drf @ xxxxxxxxxxxxxxxx>
Sent: Monday, February 01, 2010 3:10 PM
Subject: [drf:1534] 日本学術会議講演会(1/30)感想
> 皆様:
>
> 古賀@京大附属図書館です。
>
> 1/30に日本学術会議講堂(東京・乃木坂)にて開催された
> 同会議・社会学委員会メディア文化研究分科会主催の公開講演会
> 「世界のグーグル化とメディア文化財の公共的保存・活用」
> http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf/80-k-3.pdf
> に参加致しました。常磐大・栗山先生もおられましたが、
> 大学図書館関係者からの出席はあまりなかったようです。
> あとアーカイブ関係者(公文書館ではなく、研究者や「放送番組センター
> 放送ライブラリー」「日本脚本アーカイブズ」関係者など)も何人か
> 見かけましたが、参加者の多くはメディア社会学の関係者だった
> ように感じます。
> IRやOAに携わる立場から、この講演会の内容に考えさせられる点は
> 大きかったので、感想をまとめてみます。
> 以下、長文で、かつ、やや「爆弾発言」気味になってしまいますが
> ご容赦下さい(また、問題があればご指摘下さい)。
> #あと、栗山先生、ならびに参加された方々がおられましたら、
> よろしければフォローをお願い致します。
>
> 前半の「セッション1:世界のグーグル化と出版文化の公共性」は長尾真・
> NDL館長からの基調講演(NDLとしてのデジタル化構想の話が中心)を受け、
> 柴野京子氏(東大大学院・『書棚と平台』(2009)著者)によるGoogleブック
> 問題の論点整理、名和小太郎教授による同問題への分析がありましたが、
> 一番のポイントは以下のような好対照の発言だと感じました。
> 以下、私なりに要約します。
>
> *龍澤武氏(東アジア出版人会議理事・元平凡社編集局長)の講演
> 書籍・出版の公共性は今後いかに担保されるか、という点を考えたい。
> 日本の大手出版社も著作権者も「私権」としてGoogleに反対しているに
> 過ぎないのではないか。Google+フェアユースの導入によって学術出版
> (人文書)が壊滅するのは明らか。「読書する公衆」の存在なしに出版の
> 公共性はあり得ず、日本の大学にも市井にも「読書する公衆」の姿はない。
> むしろ、日本国内に数多く存在する公共図書館で人文書の購入を義務づけ
> させることが、人文書の再生を可能とする道である。
>
> *上野千鶴子教授(東大)のコメント
> 今や書物は伝統工芸品の道をたどっている。書き手としては「より多くの
> 人に読んでもらいたい」というのが本意で、メディア産業が壊滅しても
> 痛くもかゆくもない。「情報のみが公共財であり得るし、また公共財である
> べき」という考えに立てば、情報を扱うのは公共事業としてやるべき(より
> 良質の無償のサービスが有料のサービスを駆逐する方向で)。出版界にとっては、
> これからは出版とは区別された編集やプロデュースの比率が上がるはず。
> 「読書する公衆」にとってのコスト軽減のためにも情報の公共財化は一層進める
> べきであり、その観点での図書館の役割は重要。
>
> …という感じですが、私自身としては龍澤氏の発言に、どうにも「伝統的な
> 学術出版(社)の特権意識」が感じられてなりませんでした。
> 上野教授からは「今のところメディアのすみわけ(紙と電子)がコンテンツの
> すみわけとつながっているが、メディアの一体化はコンテンツのヒエラルキーの
> 崩壊を導く」という発言もありました。
> あと、前半のセッションで、司会(遠藤薫・学習院大教授)が「電子化の流れは
> 止められないとしても、登壇された方々は本という形状が好きではないですか」
> と発言されて、「本が好きかどうか」という方向に議論を持っていったのも
> いただけなかったです。遠藤教授の趣旨は「デジタル化によって消えてしまう
> (物理的・感覚的)情報があるのでは」という点にあったのですが。
>
> 後半の「セッション2:映像アーカイブとメディア文化財の活用」は、
> 岡島尚志氏による「あえて過激な保守主義者としての提言」ということでの
> 映画フィルム保存の話、またNHKアーカイブスにおける研究利用の取り組み
> (下記参照)
> http://www.nhk.or.jp/archives/academic/
> など、色々とうなずける点はありました。
>
> ただ全体を通じ、(メディア)社会学の立場としては、「どのような資料を確保
> し、研究の素材にするか」という観点が前面に出ており(「メディア文化財」
> という言い方もこれを反映しているかと思います)、「どのように研究成果を
> 発信するか」という議論は、上野教授を除いてあまり出てこなかった、
> という印象を持ちました。特に後者は若い研究者の方々にこそ発言して
> 欲しかったです。
>
> ともあれ、こうした事情を踏まえて「研究成果の発信・蓄積という観点での、
> 図書館から研究者への働きかけ」が必要になってくる、ということを感じた
> 次第です。
>
> 以上、長くなりましたがご参考になれば幸いです。
> 上記で分かりにくかった箇所、この講演会についてほかに知りたい点など
> ありましたら、お知らせ下さい。
>
> --
> ## 古賀 崇 KOGA, Takashi ##
> 京都大学附属図書館研究開発室 准教授
> Associate Professor, Research and Development Laboratory,
> Kyoto University Library
>
> 〒606-8501 京都市左京区吉田本町
> Yoshidahonmachi, Sakyo-ku, Kyoto 606-8501 Japan
> Tel: +81-75-753-2653 Fax: +81-75-753-2629
> Email: tkoga[atmark]kulib.kyoto-u.ac.jp
> Web: http://www3.kulib.kyoto-u.ac.jp/rdl/
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