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[drf:520] Re: [drf:519] メールで全文を送る可能性
- Date: Wed, 28 May 2008 08:49:07 +0900 (東京 (標準時))
入江さん、
入江さんのアイディアは、図書館が利用者の依頼に応じて図書館資料の複製を
作りそれを利用者に渡すことは、著作権法31条によって、権利者に対する権利
制限があるので無許諾でできる(つまり、権利者はそのかぎりでは文句はいえ
ない)はずだから、目的、タイミング、分量について31条が定める条件を満た
すかぎりは、紙の複製物をつくっても、デジタルの複製物をつくっても同じだ
から、デジタルな複製物を作って、(公衆送信とは考えられない電子メール配
信によって)利用者に提供しても、31条の制限の範囲内だから権利者から文句
をいわれても気にすることはないということですね。
それはあくまで南さんの解釈にすぎないだろうと思いますが、そういう考え方
は可能であると思いますが、やはり筋の悪い話しだと思います。理由のひとつ
は以下のとおりです。
一般にFAX送信は公衆送信であるということになっています。この理論の背景に
ついてはよくわかりませんし、現代のFAXが所詮はスキン+遠隔プリントだと思
うとなんとも割り切れませんし、ともかくなんか変だなと思うのですが、とり
あえず、そういうことになっているとしましょう。メールにスキャンした画像
データを添付して送信することは、すくなくとも(できるだけ自分の成果を読ん
でもらいたいはずの)権利者の立場からは、FAX送信がいやな以上、もっといや
だということになるだろうと思います。これまでFAX送信については、原則と
して嫌う権利者(団体)と大学図書館との間に契約とか合意とかの手続きをおこ
ない(毎年更新)、大学図書館間が行なう利用者の依頼にもとづく複製とその提
供をFAX送信、メール添付、郵送などで行なうことについて文句をいわないし、
対価を請求しないということにしてもらってきました。そのときの条件の要点
は、最終利用者に電子的ファイルを渡さないということです。
ここで問題は、31条の権利制限規定があることを(違法でないはずだという理論
を構築することによって)盾にして、権利者の権利を侵害してもよいのかという
ことです。著者が公衆送信許諾をすればすむ話ですから、許諾をとればいいだ
けで、とれないのならば、それは著者が(不思議なことに)自分の成果物をあま
りたくさんの人に読んでもらいたくないと思っているはずですので、図書館が
無理して利用者の要望に答える必要はないのではないでしょうか。そういう利
用者には、著者を(可能ならば)紹介してあげて、そこから直接(紙であれ電子で
あれ媒体は問わずに)入手すればよいだけのことです。その手間は、公衆送信を
許諾しなかった著者の問題であり、図書館にとっては痛くも痒くもないはずで
すから、無理してそんなサービスをしないいいのではないでしょうか)。(著者
が権利譲渡をしていればたぶんその際に自分のために使うことは許されている
はずですし、譲渡をしていなければ、自分が許諾する権利を行使すればよいだ
けです。)図書館が、情報を求める利用者に対するサービスをする組織である
と同時に、情報を発信しようとする「利用者」に対するサービスをする組織で
もあるということは、機関リポジトリ構築の活動で次第に理解できてきたこと
ですので、あえて、読ませたくない著者のそういう権利を侵害しなくてもよい
のではないでしょうか。
つまり、利用者から依頼があるという理由で、著者がいやだといっていること
を図書館としてやるというのは、著作権法の解釈がどうであれ、ちょっとおか
しいのではないでしょうかということです。
土屋