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[drf:493] Re: [drf:492] SPARC Japan セミナー報告



杉田様

谷藤@NIMSです。いつもお世話になります。
昨日のSPARCセミナは聞く人の立場によって会得したことが違っただろうと
思いつつ、極力、客観的にレポートします。

ーーーーー
概要:
 人文社会、数学、物理工学の分野で、研究を本業とする三者から
 学術誌の将来について、研究成果発表の手段という観点から論じて
 いただいたもの。

対象:
 学術出版に関わる学会、企業、支援系独法、図書館、
 主体としての研究(者)

感想:
 理工系に偏りがちのSPARCセミナとしては、バランスがとれた、かつ、
 各界で現役研究者として活躍する大家の考えを直接聞くことができる
 よい企画・内容だったと思う。定常以上の参加者数や質問、会終業後に
 続いた質問からも、学術情報流通に関わる人達が、研究者の考えに
 大きな関心をもち、理解しようとしていることを表していたと思う。

 講演や質問が多岐にわたった中から、本主題「雑誌論文が研究成果
 発表の手段であるのはいつまでか」についてまとめるなら、
●土屋先生の講演
  雑誌論文は一つの研究成果発表の手段として有り続けるが、
  論文にならない研究成果(研究の過程で発生したインフォーマルな
  情報;実験方法、失敗実験、研究会・学会・授業などでの実会話
  に加え、podcastingやblogなどの表面化しつつあるものも含め)、
  および研究に至る過程などを総称した”研究活動”そのものが
  - 学術雑誌の多次元化に影響を与え、
  - 研究分野毎の異なりが明確に認識され、
  - コミュニケーションのための費用(投資)が学術出版の多くを占める
   時代は終わるだろう。
●行木先生の講演
  査読/非査読ジャーナル(定期刊行物という意味で紀要も含むと)の
  の混在が必要な数学分野において、日本の研究力および成果発進力
  は世界の中で相当の比率を占めている中、雑誌論文(紀要も含む)
  という発表手段は変わらないが、形態は徐々に変化するだろう、
●植田先生の講演
  学問の目的に立ち戻って純科学(知識、認識、抽出、体系化、法則化)、
  応用科学(+経験の蓄積、流通)をみれば、研究成果の発表手段として
  の雑誌論文は必要だし、特に日本から発信しつづけることは重要。
  (査読というものの立ち位置について、公平性(著者−編集者−査読者)
  が等高線である=peerの重要性についても言及し)、
  新しい時代の”学術誌”への意見として、どうすれば
  - よりよい質の論文を出版できるか
  - 教育や研究に大きな貢献ができるか
  - 学問におけるモノポリーを忌避できるか
  - 100年後に役立つジャーナル出版はありえるか、
  - 研究室や開発の現場に役立つ情報提供ができるか
  - 必要な情報を必要な読者に届けることが出来るか
  - 著者の無制限要求に応えることができるか
  といった投げかけを元に、新しい出版技術を活かした学術誌出版
  やビジネルモデルへの期待、日本人ならではの学会活動(という
  学術誌出版へのボランテイア+積極的な関わり、欧米への追従では
  なく)が担う役割は大きい、

以上を踏まえると、科学研究活動の”結晶”が”論文”(査読/非査読の
間の違いはあれ)として発表され、保存・社会流通することは必然として
残りつつも、その形態も含む流通モデルは現在変容しつつあり、今後、
分野/文化の違いを明確化していくと共に変容していくだろうという
ことに帰結したと思います。誰しも同じ将来像をイメージしているかも
しれませんが、イメージを具現化した形として、商業出版社が提示する
モデル(NPGのConnnotea:コミュニテイ形成、RSCのProject Prospect:
意味解析)は雑誌論文に関わる主体(研究者・出版者・・・)を牽引する
役目も果たしていることを認めつつ、関係する我々(日本人)が、
各分野の”無制限要求”に応えようとしつづけることによって、
分野特性に根付いた試行錯誤を経て、研究成果発表の(もしかしたら新種の)
手段が生まれてくるのだろうと納得しました。
(・・・だから、この業界は面白く止められない魅力があるのではないか、
とも思います)

ーー
参加できなかった皆さんにうまく伝わるとよいのですが。

谷藤幹子/NIMS



On Wed, 23 Apr 2008 08:45:21 +0900
SUGITA Shigeki <sugita @ xxxxxxxxxxxxxxxxx> wrote:

SS> 
SS> 北大 杉田です。
SS> 
SS> SPARC Japan セミナー「研究成果発表の手段としての学術誌の将来」が
SS> 昨日開催されたものと思います。残念ながら遠方のことで参加できませ
SS> んでしたが、出席された方おられましたらレポートぜひお願いします。
SS> 
SS> 少し前からDRFのウェブサイトにイベント情報のページを設けています。
SS> 主催者でも、情報をキャッチした人でもかまいません、国内のIR、OA関
SS> 連のイベント開催情報を書き込んでいきましょう。
SS> 
SS> http://drf.lib.hokudai.ac.jp/drf/index.php?Events
SS> 
SS> (国際版を参考にしています)
SS> http://www.earlham.edu/~peters/fos/conf.htm
SS> 
SS> -- 
SS> 杉田茂樹 <sugita @ xxxxxxxxxxxxxxxxx>
SS> 北海道大学附属図書館情報システム課システム管理担当
SS> http://eprints.lib.hokudai.ac.jp

NIMS 谷藤幹子
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