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[drf:226] Re: ベルリン5(長文)
- Date: Tue, 23 Oct 2007 20:33:09 +0900
竹内先生、みなさま、
北大 杉田です。
詳細なレポートをありがとうございます。読み解いて、と思ううちに
日がたってしまいました。すみません。
(と申しつつまだまだ消化不良ですが)
非常に幅広い内容で、これだと機関セルフアーカイビングが話題とし
て取り扱われる割合も少ないのでしょう。
Sijbolt Noordaの項のカッコ内(竹内先生の感想)が、うなづけたり、
もっと詳しく聞きたく思ったりで、読みながら面白かったです。
それからKnowledge Exchange(KE)の「人材の交流」、どのような内容
なのでしょう、興味をひかれました。遥かにスケールの小さい話です
が、昨年、別の催しで、「IRの構築業務にあたっては近隣機関などの
間で、プロモーション活動、システム構築など、それぞれが得意な人
材を(共有する感じで)随時、交換、交流して、互いの業務を補完し
あっては?」というアイディアを聞いたことがありまして。
> #土屋先生と竹内の名前で行った報告は、まあ、10分と短かったし、質問の時間
> もなしで言いっぱなしでしたが、「さっき日本の同僚が言っていたように」とい
「言うなればジャパンは満足なんだけど…」
と締められていますが、読者の立場としてはそうなのだけど、著者の
立場からいうとまだまだなんでないでしょうか。
ちょっとへんな図を描いてみましたので、Wikiにあげておきます。
http://drf.lib.hokudai.ac.jp/drf/index.php?plugin=attach&pcmd=open&file=howaboutdissemination.pdf&refer=Repository
> 心にやっていることについては、どんどん発表しにいかないとダメだとは思いま
> した。いろんな人が何度も何度も言うとようやく彼らは理解すると思います。
はい、できるだけ露出していきたいですね。
Hiroya Takeuchi さんは書きました:
>
> 杉田さん、みなさま、
>
>> 反応などどうでしたでしょうか。それから全体の様子などお聞かせ頂けるとあ
>> りがたく思います。
>
> まず最初に会場のpadova大学のことからお話ししますが、ご存知のようにイタリ
> アでは2番目に古い大学で、ガリレオが教鞭をとっていたことでも知られていま
> す。大学はまちの真ん中、市役所のとなりにありますが、今回会場となったの
> は、Alma Magnaという大学の観光ツアーの対象になっているような古い講堂で、
> 座る場所を選ばないとエコーで何言っているのかわからない(エコーがなくても
> わかんないことが多いのですが)ような部屋でした。
>
> 参加者は、もちろん地元のイタリアが多いのですが、欧州の主要国からは誰かが
> 来ている感じでした。とくに、European Science Foundation、DFG、Max-Plank
> Gesellschaftなどが主催者に名前を連ねているせいだろうとも思いますが、各国
> の図書館関係者というよりもScience FoundationとかResearch Councilの関係者
> がたくさん来ていたように思いました。日本の場合にはこの手の会議にfunding
> agencyの人がほとんど出てこないのとは対照的です。この事実だけでもだれが
> Open Accessの議論をしようとしているのかということがよくわかります。そし
> て、欧州と言っても、イギリスは大陸諸国とは微妙に違う立ち位置にいるように
> 感じました。初日は200〜300の間くらいの人がいたと思います。もちろん最後の
> 方になるとだんだん減っていくのですが。
>
> Keynote Speakerは、Sijbolt Noordaという欧州大学連合のオープンアクセスの
> ワーキンググループのチェアでした。印象に残っている発言は、
> 「大学関係者はOpen Accessについていつも考えているわけではない」(日本も
> 同じ)
> 「学術雑誌のビジネスモデルとしては、Broadcasting model(つまり、享受者は
> 費用負担しないということ。これに対比されるのがsubscription model。)がよ
> い。その方がコストが下がる」(たぶんこれはEU諸国だから。アメリカと日本で
> は当てはまらないだろう。)
> 「雑誌の請求書は、図書館にではなく、教員のところに送ると教員の意識もかわ
> るのではないか」(日本は講座研究費で雑誌を買っていたけれども、教員の意識
> は何も変わっていない。)
> 「研究成果に対する市民によるアクセスを実現することが大事」(本当か?)
> 「新しい財源を見つけるためにロビーイングが必要」(これはその通り。)
> 「本というフォーマットは人文社会科学分野の一部では、まだ重要である。」
> (土屋先生によれば「重要ではないものだけが紙の形で残る。」)
> 関連コメントとして、Frederic Friend(UK)が、UKでは公的資金を受けた研究
> の1/3が利用可能ではないとの報告していました。11月にAccess to UK research
> といったようなタイトルで報告書が出るとのことです。
>
> それぞれの発表については、プレゼン資料がPDFになって公開されているので、
> ここでは述べません。以下いくつか印象であったことを列挙します。
>
> ・基本的に論文のOAの方法としては、既存の雑誌をBroadcasting modelに転換さ
> せてOA化すること(新しいOAジャーナルを創刊するということではありません)
> が主たる方策と考えられているようで、リポジトリはあくまでも従という印象で
> す。OAジャーナルへ投稿する場合には、JISCは支援するそうですし(日本でも科
> 研費で投稿料を支払うことは可能ですが、別にOAジャーナルへの投稿に限ったこ
> とではありませんね)、DFGもOA雑誌への支援を行っています(もちろん日本のJ
> -STAGEも、OA雑誌への支援をしていることになると思いますが。)Alma Swanの
> Closing Remarksでも、学会に働きかけて、350学会の380誌をOA化したと自慢し
> ていました。CERNの最近の動向をベースに考えても、まあそうかなという感じで
> す。
> ・OAのためのリポジトリについては、フランスも、ドイツのnational platform
> をもっているとのことですが、認知度はいまいちの模様。フランスは、OAに対す
> る図書館員の認知度も高くないとのこと。
> ・Berlin宣言がそもそもそういうものではあるのですが、人文社会科学関係のい
> ろいろな試みについての報告がありました。人文学の場合、例えば欧州全体をカ
> バーするreference indexを作ろうとしているようですが、固有の言語をベース
> にした研究が多いので、それを利用可能にするということの意味についてはよく
> わかりませんでした。言語の多様性という大きな問題を抱えつつも、欧州として
> のまとまりを出そうと苦労しているというのが印象です。
> ・不勉強で、Knowledge Exchange(KE)についてちゃんと知らなかったのですが、
> なかなか面白いことをやろうとしているようです。KEはデンマークのDeff、ドイ
> ツのDFG、英国のJISC、オランダのSURFがやっていて、人材の交流も含め、さま
> ざまな交流をする目的を持っています。大変興味深かったのは、multinational
> licensingについて、出版社と交渉中であるということでした。どれだけの国が
> 参加してのかわかりませんが(メンバーの4カ国だけ?)、EU全体で見た場合、
> 結構貧しい国もあるので、multinational licensingでそのような国が救われる
> のかどうかが見どころかと思いますが、国の状況が多様過ぎて難しい気がします。
> ・また、Romeoの後継プロジェクトについても、コンソーシアムを作って、メン
> テナンスと未調査の中小出版社についての情報を収集したい意図はある(けど金
> はない)ようでした。Romeoから日本の学協会にアプローチさせて、黒船方式で
> びっくりさせる手もあるとは思うのですが、CSIで調査している国内学会につい
> ての情報を提供するから、そっちのも自由につかわせてくれといった連携を持ち
> かけるのも一つの手であるような気はします。
> ・EU全体の政策ということを考えた場合に非常に面白いのは、OA推進派も出版社
> もEUの情報政策が、情報を活用してEUの競争力を高めるということをうたってい
> るのを理由にして、それぞれの立場を説明していることでした。つまり、学術出
> 版が産業として成り立っている場所での議論であるということで、この点が日本
> とは根本的に違うところです。これはある意味矛盾を含んでいるので、なかなか
> 悩ましい問題のようです。
> ・データの共有化ということも大きな話題ですが、米国の動きほど先に進んでい
> る感じはありませんでした。また、データの公開性について様々な現実と議論が
> あるようで、鳥インフルエンザウイルスについてのデータ共有で、WHOがデータ
> ベースへのアクセスを制限したことについておかしいとの意見などが出ていまし
> た。
> ・データの共有については、「質の保証はどうするのか?peer-reviewが必要」
> といった声も出ており、どう考えても科学データだけの査読なんてあり得ません
> から、論文と一体となった公開しかないように思います。OECDのGuidelineなど
> も含め、さまざまな試みがなされようとしている感じは非常に強く感じるのです
> が、まだまだ議論が整理されていないし、未解決の問題が多すぎるように思いま
> した。
> ・それにしても、JISCはよくまあいろんなことをやっているなという印象です。
> ちょっとしたことにでも柔軟にお金を出していろいろやらせていますね。そして
> その結果を公表する。うらやましい限りです。
>
> #土屋先生と竹内の名前で行った報告は、まあ、10分と短かったし、質問の時間
> もなしで言いっぱなしでしたが、「さっき日本の同僚が言っていたように」とい
> うような発言もある発表の中では聞かれたので、少なくとも部分的には理解され
> たのではないかと思います。ただ、日本のリポジトリ中心路線が支持されている
> かという問題はあるだろうと思います。いずれにしても、日本の大学図書館が中
> 心にやっていることについては、どんどん発表しにいかないとダメだとは思いま
> した。いろんな人が何度も何度も言うとようやく彼らは理解すると思います。
>
> ##今回の会議のポスターが会議サイトのトップページに載っていますけれが、
> これが印象的という声が休憩の時間によく聞かれました。だれのセンスかわかん
> ないですが、Open Accessの会議のポスターに教室の子ども、しかもコーカシア
> ンではない子をつかうってありかなぁ。。。
>
> 雑駁なメモで恐縮ですが、ご参考まで。ちなみに次回のBerlin 6会議の開催地は
> パリで会場はソルボンヌだそうです。サンミッシェルの交差点からリュクサン
> ブール公園に向かって歩いてすぐ左側ですね。安いホテルも周りにたくさんある
> ところですし、なんていってもカルチェラタンの真ん中です。行きたいなぁ。
>
> 竹内 比呂也
>
--
杉田茂樹 <sugita @ xxxxxxxxxxxxxxxxx>
北海道大学附属図書館情報システム課システム管理担当
電話番号:011-706-2524,ファクシミリ:011-706-4099
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