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[drf:3628] Re:D論のPDFのセキュリティ



土屋先生

奈良女子大学の森下です。
お返事ありがとうございます。
おっしゃっておられること、理解できます。
が、実際問題、どのように対応するのかと考えると
そう簡単に話は進まないように思うのです。

博士論文の場合には、その公表が法令的に義務付けられていますので、その義
務を学位取得者が履行するだけです。なんらかの研究機関が、その責任におい
て著作物を公表するのは、別に法令的義務によるものではありませんので、当
然、権利者が公衆送信権の行使を主張した場合、つまり、自分だけが公衆送信
できると主張した場合には、それに従わなければなりません。公表が義務づけ
られているのに、公表できない内容を含む論文によって学位審査したのは、学
位授与機関の責任ですので、著者が「やむを得ない理由」を主張していると見
なして、論文の要約を公表するということになるでしょう。それだけのことで
す。

研究分野によっては、「画像の解析」自体が研究目的という場合も
ありますので、公表できない内容をメインにせざるを得ない論文も存在します。
そのような場合、「研究内容を選んだのは学位取得者や
学位授与機関の責任だから、公開できないのは仕方ない」というのは、
研究者の方にはお伝えしにくいです。

著者ご自身がパスワード云々とおっしゃった場合は
説得するもしくはリポジトリ規程等で対応することができますが、
画像の著作権者が言ってこられた場合はどうしようもないですよね。

いえ、学位規則を盾にして、対応することは可能です。それでも納得できない
場合には、訴訟してもらうしかないでしょう。その場合には、省令を出した文
部科学省もいっしょに訴えてもらうしかないですね。

研究者の方は、画像提供者にお願いをして公開している訳で、
画像提供者が「そんなにややこしいことを言ってくるなら、
画像の提供はしない」となってしまうと研究自体に支障が生じますよね。
なので、画像提供者に無理を言う訳にはいかず、
結局、不完全な要約をあげるしかないということになると思います。
なので、選択肢としては、それしかないのですが、
結局、研究者が意図していないにもかかわらず、
NDLでは公開できない博士論文が存在してしまうというのが残念です。

NDL側の技術的な問題については、理解できますし、パスワードや
セキュリティをかけた論文を収集することは、実際問題
難しいのだろうと思います。

そして、オープンアクセスの観点から言うと、「NDLだろうが、リポジトリだろうが、
どちらでも同じ。」なのでしょうが、例えば、利用者が
NDLでは、全ての博士論文を収集していると思って、
NDLのサイトにアクセスしたら、なくて残念・・・
という結果にはならないでしょうか?
リポジトリへのリンクもつけるというのも手かもしれませんが、基本的には
同じものが載っている原則のはずですし。
そういう意味で、残念です。

私は図書館の人としては未熟で、微力ではありますが、
利用者や研究者の役に立つ方向を模索したいです。

文科省が決めた通りの原則に従いつつ、
現状をどう、そこに近付けていくかということは
これから、図書館員全体で考えて行く問題ではないかと思います。
セキュリティの問題だけではなく、ファイルの規格等に頭を悩ませている
方も多いのではないでしょうか。

「こんなん悩んでます。」ということを、このメーリングリストや
なんらかの場で情報を共有できればいいなと思っています。

                       森下 映理
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