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[drf:2899] 訳してみました: ポインダーOAインタビュー (ヤン フェルトロップ氏)



旭川 鈴木です。

リチャード ポインダーさんのブログから
ヤン フェルトロップ氏インタビューの回を紹介します。
「The Open Access Interviews: Jan Velterop」
http://poynder.blogspot.com/2012/02/open-access-interviews-jan-velterop.html

ヤン フェルトロップ氏は、Elsevier、Academic Press、
Nature、BioMed Central、Springerでの勤務経験があり、
またOA方面にも深く関わっている方で、この業界では
大変な重要人物のようです。
そういった大物が、学術コミュニケーションの将来について、
どう語っているのか、興味深いインタビューです。


#今回も国際WG添削サービスにばっちりお世話になりました。
#土屋先生、栗山先生、杉田課長ありがとうございました!


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オープンアクセスインタビュー: ヤン フェルトロップ氏

世界的な学術出版界でヤン・フェルトロップ氏は知名度が高い
「ベテラン」として知られています。しかし、「ベテラン」といっても、
新しいやり方に対して柔軟であることでも有名です。

彼は、1970年代中期にElsevierでそのキャリアを始め、続いて
他の Academic Press、Nature、Springer等、たくさんの一流
出版社で働きました。しかしながら、彼の同僚の多くとは違って、
フェルトロップ氏はいつも新しいアイデアや、新しいモデル、とり
わけインターネットによって可能にさせるアイデア・モデルを
意欲的に取り入れてきました。


1990年中頃にAcademic Pressにいた時に、フェルトロップ氏は
ビッグディールとして知られるようになるものの立案者の一人で
した。ビッグディールは電子ジャーナルの大きなコレクションを
「食べ放題」型の複数年契約で売るという仕掛けです。
ビッグディールは、今は不評になっていますが、学術出版の世界
における革命的な展開でしたし、現在の全体的状況において
重要な位置をもつものであることは変わりません。

2000年にフェルトロップ氏は、初の商業ベースのオープンアクセス
科学出版社であるBioMed Centralに参画しました。また、2001年
にブタペストに集まり、「すべての学術分野における研究論文を
インターネット上で自由に利用できるようにするための国際的策謀」
について議論した小人数のグループの1人でした。

そこで、ブタペストオープンアクセスイニシアチブ(BOAI)とBOAI
声明 --フェルトロップの示唆によれば、「オープンアクセスが事実と
して意味し、また意味すべきことを最も明晰かつ包括的に表して
いる」BOAI声明--、そしてそこで、まさにオープンアクセス運動が
生まれたといえるとフェルトロップは示唆しています。


オープンアクセス出版は、それに先んずるビッグディールと同様に、
当初は他の出版者から軽蔑されていました。しかし、2008年まで
には、それが将来のトレンドであることが明白となり、このことの
正しさは、その年の10月の Springerの BioMed Central買収に
よって裏づけられました。


新しいチャレンジを求めて弛むことなく、フェルトロップ氏はどんどん
と先へ進み、次には、情報過重の問題とデータの相互運用可能性
という問題にその畏怖すべき才能を注ぎ始めました。この目的の
ために、2009年にはコンセプト…ウェブ…アライアンス(概念ウェブ
機構)の創設者の一人となりました。この組織は、「空前の膨大な
量の学術的データ、専門的データが生み出されることに関連する
諸課題に積極的取り組む協力者集団」です。

現在フェルトロップ氏は、アカデミック・コンセプト・ナレッジ
(AQnowledge)社のCEOです。この会社は、「セマンティック・
ナレッジ・ナビゲーション」のためのツールを開発している新しい
会社です。とりわけ、「文献からオープンデータ情報源へのイン
ターフェースを経済的に持続可能なものにし」ようとしていると、
フェルトロップ氏は言います。


フェルトロップ氏の、伝統的な印刷出版からセマンティック・ウェブ
へ至る軌跡は、必然的に、学術出版とは何であり、いかにあるべ
きなのかということに関する彼のビジョンに影響を与えています。
今となると、そのビジョンは、出版界にいる彼のかつての同僚から
かなり隔たりのあるものとなっています。

例えば、1月の初めに、フェルトロップ氏は彼のブログにこう(※※)
書いています。「できるだけ冷静に見るならば、ピア・レビューは、
ジャーナルという形態で形を整えた出版をすることに関する唯一の
残った意味ある存在意義であると結論することも可能である。」
※※ http://theparachute.blogspot.com/2012/01/holy-cow-peer-review.html


次に彼が続いて提案したのは、伝統的な掲載前ピア・レビューは止め、
物理のプレプリントサーバ arXivを嚆矢とする「保証」(endorse)
モデルを採用すべきだという異端的な提案です。彼によれば、そう
することによって、研究コミュニティは、納税者が1年に30億ドル分
の余計な費用を節約させ得るということです。

彼の異端はそこで止まりません。学術出版の将来、さらに出版社
の役割に関して言えば、「科学コミュニケーションの進化は疑いも
なく進行するだろう、そしてそれは、伝統的な諸モデルの全面的
崩壊に至らないかもしれないが、そのような諸モデルは必然的に
変わると思う。結局のところ、ある種の恐竜の血筋だって、存続して、
それをわたしたちは、鳥と呼んでいるわけだよ。そして、鳥のなか
にも、とても魅力的なものいるよね。でも、それらは、進化の先祖
である恐竜より小さいじゃないか。ずっとずっとと小さいよ。」と
語ります。

要するに、もしフェルトロップ氏の学術コミュニケーションの将来に
ついてのビジョンが正確であるならば、出版社は、その役割が劇的
に減少するということを当然と考えることができますし、それに伴い、
収入に対して影響が現われ、その結果利益に対して明らかに影響
することになります。
「私は長い間、「出版社」という言葉は、いずれにせよ、そう呼ばれて
いる企業組織に対する誤った名称だと感じてきたんだ。」とフェルト
ロップ氏は言います。
「出版というのは、著者が実現できることだし、実際だんだん多くが
やるようになっている。しかも、自発的にね。出版社がやっていること
は、査読付きジャーナルのタイトルを論文にタグとして貼ってやって
いることにほかならない。」

それゆえ、物議をかもしているResearch Works Act (RWA)を
プッシュするという点で、出版社は深刻な判断の間違いを起こして
いると、フェルトロップ氏が見ていることは驚くべきことではありません。
RWAとは、昨年末に米下院に提出された法案で、アメリカのNIHが
導入したパブリック・アクセス・ポリシーに対抗するものです。
フェルトロップ氏は次のように述べています。
「知性が満ち溢れるこの業界が、なぜRWAのような最悪の社会対応
を始めたのか私は本当に理解できないんだ。」


フェルトロップ氏のこれら視点の詳細と、学術出版の他の側面に
ついてインタビューに掲載しています。ぜひご覧ください。
http://www.richardpoynder.co.uk/Velterop_Interview.pdf




-- 
鈴木雅子 <msuz @ xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx>
旭川医科大学教務部図書館情報課
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