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[drf:2855] Re: SCOAP3 (Re: 訳してみました:APCの損益分岐点は600ドル?)



栗山さん、

> 私がプラス1000万と言ったのは、後で全額戻って来るという前提で、
> いったん拠出するという意味でした。最終的には今までと支出額は
> まったく同じになりますよね。
> もう一度、整理してみます。
> 
> ある雑誌の出版経費が3000万円だとします。
> これを今はA大学コンソーシアムが1000万円、B大学グループが1000万円、
> C大学が500万円、その他の大学が500万円、購読料を払って支えています。
> この3000万を拠出金を募ってオープンアクセス化することとします。
> A大学コンソーシアムは購読料1000万+拠出金1000万=2000万を払います。
> 出版社から拠出金分の購読料割引がありますので、最終的な支払額は
> 従来通り1000万円です。
> B大学グループは購読料1000万+拠出金1000万=2000万を払います。
> 出版社から拠出金分の購読料割引がありますので、最終的な支払額は
> 従来通り1000万円です。
> C大学は購読料500万+拠出金1000万=1500万を払います。
> 出版社から拠出金分の購読料割引がありますので、購読料はマイナス
> 500万となり、最終的な支払額は、従来通り500万円です。
> その他の大学は、オープンアクセス化しても契約解除できず、従来通り
> 500万を払います。
> 
> これで間違っていないでしょうか?
> これですっきり理解できますかね?>皆様

ちょっと違うような気がします。

現状: 出版経費     3000万円
     経費回収方法  出版社自身が購読料として図書館側から徴収

SCOAP3方式:
     出版経費     3000万円    
     経費回収方法  SCOAP3コンソーシアムが拠出金として図書館側から徴収して出版社に渡す

という違いです。図書館は今まで通りの金額(またはできればそれ以下)を支出
し、出版社は今まで通りの金額(またはできればそれ以下)を受け取ります。
SCOAP3モデルで示されているのはここまでです。(ただし、掲載論文比率に応
じて国別に割り当てがあるので、国としては今までより多く払うことになる場
合があるかもしれません。しかし、その可能性が高いのは米国ですが、その米
国分を図書館が賄えると判断したということですので、多分、そういうところ
はないのでしょう、高エネルギー物理学に限れば。)

「出版社から拠出金分の購読料割引」というのはあくまで図書館側が払いっぱ
なしにならないようにするための一方策にすぎないので、この点について出版
社が同意しているわけではなく、これからの交渉で決まる可能性があるところ
です。

ぼくが、「出版社から拠出金分の購読料割引」という安直な方策の可能性を指
摘したのは、「いちいち既存の支出額、掲載論文数なんかを計算していたら大
変でやっていられない」という意見に対して、そんなことしなくても、図書館
として辻褄をあわせるための対応方法が存在し得ることを示すためです。実際、
さまざまな国からのEOIの付帯条件には、各図書館の負担額が現行を越えないこ
ととすることが含まれています。この付帯条件が実現しないことになると、そ
の国はSCOAP3に参加することができないことになります。SCOAP3側としては、
その付帯条件を実現すべく出版者側と交渉することになっています。(しかし、
まあ、SCOAP3のサイトを今現在で見ていると、Latest newsの最後が、まだ

  22/09/2011, SCOAP3 tendering process has started

となっている(その前が日本のIOEの記事)きりっであることが不安ではあります
が(締切は10月19日で、さらに年内にqualified providerつまり結局多分現行の
出版者に対して2013年刊行分の契約に向けた金額提示を求める調達をするはず
だったのですが、、、))

いずれにせよ、SCOAP3は、図書館側から出版者側へ分野全体(本当は、高品質部
分のみ)として現在の金額程度の金の流れは維持しながら、それをSCOAP3コンソー
シアム経由とすることによってオープンアクセス化しようという企みなわけで、
図書館側と出版者側とをCERNがどのくらい上手に操れるかということがその成
功の鍵なわけです。つまり、CERNは他人の金をあてにして自分に関係ある分野
のオープンアクセス化を狙っているとも言えます。したがって、出版者にとっ
て得になるような結果になることはまずないと言ってよいだろうと思います。

土屋
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