DSpace Collection: 2010-12-09
http://hdl.handle.net/2115/44486
2010-12-09
2024-03-29T08:49:30Z
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1920年代アメリカの消費論 : 女性経済学者ヘーゼル・カーク
http://hdl.handle.net/2115/44489
Title: 1920年代アメリカの消費論 : 女性経済学者ヘーゼル・カーク
Authors: 生垣, 琴絵
Abstract: 20世紀初頭のアメリカでは, 都市部での豊かさを背景に生活水準を規定するものとして消費を捉え研究する動きが始まった。その一つが女性経済学者ヘーゼル・カーク(Hazel Kyrk, 1886-1957)の消費論である。 本稿では, カークが主著 A Theory of Consumption (1923)で, 当時の心理学や社会学などを応用して消費を探求するとともに, 消費者を消費=選択を行なう主体として位置づけ, 消費が構成する生活水準を検討し, 到達すべき高い生活水準とそのために必要な「賢明な消費」, すなわち, 消費者と消費の質的向上(消費の倫理)を説く主張であったことを示す。それは, 現実の消費生活の視点を経済学批判の足場とし, 既存の経済学とは異なる視点から消費者に着目し, 独自の消費経済論を提示する試みでもあった。カークは生涯, 消費の問題に取り組み, 経済主体としての消費者の活動に注目し続けた。彼女自身はあくまでも経済学の問題として消費を論じたが, それは, 家政学分野の消費研究の発展も促した。同時にその成果を受け継ぐ多くの女性研究者たちを育てたことは, カークが果たした大きな貢献の一つであった。
2010-12-08T15:00:00Z
生垣, 琴絵
20世紀初頭のアメリカでは, 都市部での豊かさを背景に生活水準を規定するものとして消費を捉え研究する動きが始まった。その一つが女性経済学者ヘーゼル・カーク(Hazel Kyrk, 1886-1957)の消費論である。 本稿では, カークが主著 A Theory of Consumption (1923)で, 当時の心理学や社会学などを応用して消費を探求するとともに, 消費者を消費=選択を行なう主体として位置づけ, 消費が構成する生活水準を検討し, 到達すべき高い生活水準とそのために必要な「賢明な消費」, すなわち, 消費者と消費の質的向上(消費の倫理)を説く主張であったことを示す。それは, 現実の消費生活の視点を経済学批判の足場とし, 既存の経済学とは異なる視点から消費者に着目し, 独自の消費経済論を提示する試みでもあった。カークは生涯, 消費の問題に取り組み, 経済主体としての消費者の活動に注目し続けた。彼女自身はあくまでも経済学の問題として消費を論じたが, それは, 家政学分野の消費研究の発展も促した。同時にその成果を受け継ぐ多くの女性研究者たちを育てたことは, カークが果たした大きな貢献の一つであった。
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J.S.ミルと歴史学派
http://hdl.handle.net/2115/44488
Title: J.S.ミルと歴史学派
Authors: 佐々木, 憲介
Abstract: 1870年代から20世紀初頭にかけて, イギリスにおいても歴史学派と称される一群の経済学者が現われ経済学上の有力な潮流となった。歴史学派は古典派の理論的・演繹的方法に対して歴史的方法を対置し, 古典派の方法論をさまざまな角度から批判した。しかし, 古典派を代表する経済学者の一人であったJ.S.ミルは, その『論理学体系』においてすでに歴史的方法について語っており, それ以外にも歴史学派のものとされる主張を展開していた。はたして, ミルの経済学方法論はイギリス歴史学派とどのような関係にあったのか。クリフ・レズリーは, ミルとリカードウとの違いを強調したが, 歴史学派の多くはむしろ両者の共通性に注目した。ミルは, 経済学の原理に関してはリカードウ派の立場を堅持しており, 新しく示された観点は観点の提示に留まっていて歴史研究の先駆的な業績があったわけではなかった。そのような意味で, 歴史学派にとってのミルは旧学派の一員であった。しかし, 実践的な意味では, ミルの学説は社会改良主義への突破口の一つになった。何人かの歴史学派がミルを評価したのはむしろこの点であった。
2010-12-08T15:00:00Z
佐々木, 憲介
1870年代から20世紀初頭にかけて, イギリスにおいても歴史学派と称される一群の経済学者が現われ経済学上の有力な潮流となった。歴史学派は古典派の理論的・演繹的方法に対して歴史的方法を対置し, 古典派の方法論をさまざまな角度から批判した。しかし, 古典派を代表する経済学者の一人であったJ.S.ミルは, その『論理学体系』においてすでに歴史的方法について語っており, それ以外にも歴史学派のものとされる主張を展開していた。はたして, ミルの経済学方法論はイギリス歴史学派とどのような関係にあったのか。クリフ・レズリーは, ミルとリカードウとの違いを強調したが, 歴史学派の多くはむしろ両者の共通性に注目した。ミルは, 経済学の原理に関してはリカードウ派の立場を堅持しており, 新しく示された観点は観点の提示に留まっていて歴史研究の先駆的な業績があったわけではなかった。そのような意味で, 歴史学派にとってのミルは旧学派の一員であった。しかし, 実践的な意味では, ミルの学説は社会改良主義への突破口の一つになった。何人かの歴史学派がミルを評価したのはむしろこの点であった。
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資本主義における自立の論理と不均衡(3) : 労働価値説の意味(スミス価値論再考)
http://hdl.handle.net/2115/44487
Title: 資本主義における自立の論理と不均衡(3) : 労働価値説の意味(スミス価値論再考)
Authors: 岡部, 洋實
Abstract: 生産価格を「資本家的理念」とすることに対して問われるのは, それと社会的再生産との関係である。そのためには先ず, 価値法則の必然性把握が問われるが, それについては, 論証手続きに難点を残したマルクスに比べて, アダム・スミスの方が巧みであった。 いわゆるスミスの支配労働価値説は, 無階級社会での等労働量交換が, 階級社会では成立しないことを示す。これは, 従来の学説史評価と異なり, 経験的証拠に欠ける等労働量交換を回避しつつ, 労働と価値とを強く関連付けるものであり, 労働力再生産の見地からの労働価値説であったといえる。この点で, スミスの理論的貢献は大きい。 しかしスミスは, 商品は労働生産物であるとしながら, それと購買力という価値概念との関係を明確にしなかった。他方, マルクスは, 価値を労働凝固性にみることで, 剰余価値の根拠を解明した。購買力と労働凝固性は, 相容れないものではない。購買力は, 商品交換が労働交換であることに基づいており, 社会的再生産を維持する労働配分を実現する。そして, 社会的再生産の維持は剰余を含めた等労働量交換を必然としないのである。(未完)
2010-12-08T15:00:00Z
岡部, 洋實
生産価格を「資本家的理念」とすることに対して問われるのは, それと社会的再生産との関係である。そのためには先ず, 価値法則の必然性把握が問われるが, それについては, 論証手続きに難点を残したマルクスに比べて, アダム・スミスの方が巧みであった。 いわゆるスミスの支配労働価値説は, 無階級社会での等労働量交換が, 階級社会では成立しないことを示す。これは, 従来の学説史評価と異なり, 経験的証拠に欠ける等労働量交換を回避しつつ, 労働と価値とを強く関連付けるものであり, 労働力再生産の見地からの労働価値説であったといえる。この点で, スミスの理論的貢献は大きい。 しかしスミスは, 商品は労働生産物であるとしながら, それと購買力という価値概念との関係を明確にしなかった。他方, マルクスは, 価値を労働凝固性にみることで, 剰余価値の根拠を解明した。購買力と労働凝固性は, 相容れないものではない。購買力は, 商品交換が労働交換であることに基づいており, 社会的再生産を維持する労働配分を実現する。そして, 社会的再生産の維持は剰余を含めた等労働量交換を必然としないのである。(未完)