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西部北太平洋亜寒帯海域におけるプランクトン食物連鎖構造

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.11501/3168773

Title: 西部北太平洋亜寒帯海域におけるプランクトン食物連鎖構造
Authors: 品田, 晃良 Browse this author
Issue Date: 24-Mar-2000
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 海洋低次生態系において植物プランクトンにより光合成された有機物は、生食食物連鎖か微生物食物連鎖に取り込まれる。海洋の物質循環を明らかにするためには、上記の2つを含んだプランクトン食物連鎖構造を明らかにする必要があるが、西部北太平洋亜寒帯海域においてその全体像を捉えた研究はない。本研究は、北海道南東部釧路沖、北海道南西部恵山沖および臼尻沿岸域をモデル海域として、西部北太平洋亜寒帯海域におけるプランクトン食物連鎖構造を明らかにすることを目的とした。調査は、周年にわたりバクテリアからメソ動物プランクトンまで全てのサイズのプランクトン生物量の現存量を把握し、釧路沖と恵山沖ではマイクロ動物プランクトンの植物プランクトンに対する摂食速度の測定を行った。恵山沖ではさらにナノ動物プランクトンのバクテリアに対する摂食速度、およびメソ動物プランクトン群集のマイクロ動物プランクトンに対する摂食速度を測定した。最後に、生物量、増殖速度および摂食速度のデータを用い、釧路沖と恵山沖におけるプランクトン食物連鎖の炭素フロー図を描いた。全調査点で独立栄養プランクトン生物量の鉛直分布は、水柱が成層構造にある時には表層に主に分布し、鉛直混合期には鉛直的に均一になる傾向を示した。従属栄養プランクトンもほぼ同様な傾向を示した。釧路沖と恵山沖でプランクトン生物量の鉛直分布特性と水柱安定度との関係をさらに詳しく分析したところ、独立栄養プランクトンの鉛直分布特性のみ水柱の安定度と、従属栄養プランクトンの鉛直分布特性は、餌生物である独立栄養プランクトンのそれと有意な相関関係にあることが示された。この結果から、独立栄養、従属栄養プランクトンの鉛直分布は究極的には物理的要因である水柱の安定度により大きく決定されていることが判明した。独立栄養プランクトン生物量は海域により若干異なる季節変動を示した。即ち、釧路沖では春期と秋期に珪藻ブルームが観察されたのに対し、恵山沖では春期にのみ珪藻ブルームが観測され、臼尻沿岸では1997年には秋期ブルームが観測されたが、1998年秋期には観測されなかった。夏期には恵山沖と臼尻沿岸ではシアノバクテリアを中心とするピコ植物プランクトンのピークが観測されたが、釧路沖では観測されなかった。また、夏期に従属栄養プランクトンのバクテリアとHNF生物量が恵山沖、臼尻沿岸と比べ釧路沖で高い値を示した。海域間で独立栄養プランクトン生物量およびバクテリア、HNF生物量が異なる季節変動を示した要因として、夏期に恵山沖と臼尻沿岸に進入してくる高温、高塩分、低栄養塩濃度の津軽暖流水の影響が考えられた。また、マイクロおよびメソ動物プランクトンは全ての調査海域でほぼ同様な季節変動を示し、マイクロ動物プランクトンは珪藻ブルーム時に高い値、メソ動物プランクトンは春期ブルーム時に年間の最高値を示した。これら従属栄養プランクトン生物量の季節変動には、マイクロ動物プランクトンの摂食特性とメソ動物プランクトンの生活史が関係していると考えられた。マイクロ動物プランクトンによる植物プランクトンの摂食ロスは、海域によって異なる季節変動を示した。即ち、釧路沖では冬期にマイクロ動物プランクトンの摂食ロスが植物プランクトンの増殖ポテンシャルを上回るのに対し、恵山沖ではその様な傾向は認められなかった。この要因として、マイクロ動物プランクトンの種組成の違いが考えられた。恵山沖でサイズ毎の植物プランクトン摂食ロスを調べた結果、ピコ植物プランクトンに関しては全ての季節で増殖ポテンシャルと摂食ロスがほぼ釣り合っていたが、ナノおよびマイクロ植物プランクトンに関しては、夏期の水温上昇による増殖ポテンシャルの増加に伴い、摂食ロスを大きく上回る傾向を示した。冬期にはマイクロ植物プランクトンが効率良くマイクロ動物プランクトンへ摂食されていた。また、バクテリアの増殖ポテンシャルと摂食ロスはすべての季節でほぼ釣り合っていた。小型カイアシ類は従来珪藻等のマイクロ植物プランクトンが主要な餌料源と考えられてきたが、本研究の結果、マイクロ植物プランクトンの摂餌は春期ブルーム期に主として重要であることが判明した。実際、小型カイアシ類のマイクロ動物プランクトンに対する摂食速度は周年を通じてその代謝要求量を充分に満たしていることが示された。また、過去の文献よりデータを収集し分析したところ、ろ水速度とカイアシ類の全長の間に、Clearance rate=0.005・TL-0.169 (n=44,r=0.822,p<0.01)、の関係式を得た。ここでClearance rateはカイアシ類の無殻繊毛虫に対するろ水速度(ml indas-1 h-1)、TLはカイアシ類の全長(μm)を表す。以上の生物量、増殖速度および摂食速度を用い、釧路沖と恵山沖の炭素フロー図を描いたところ、両海域のプランクトン食物連鎖構造はほぼ同様な季節変動を示した。即ち、周年を通じて微生物食物連鎖が卓越し、春期ブルーム期にのみ生食食物連鎖の駆動が併存することが明らかとなった。周年を通して、微生物食物連鎖が卓越する点で東部北太平洋の食物連鎖構造と一致するが、微生物食物連鎖に対するバクテリア生産の寄与率は、本稠査海域が圧倒的に高かった。また、春期ブルーム期に微生物食物連鎖が稼働していると言う点で北大西洋の食物連鎖構造と類似したが、その稼働形態が若干異なり本調査海域にはマイクロ植物プランクトンからマイクロ動物プランクトンへの有機物伝達経路が存在した。また、本調査海域はメソ動物プランクトン生物量のピークが植物プランクトンブルームと一致し生食食物連鎖が稼働する点で特徴的であった。よって、本調査海域の春期ブルーム期のプランクトン食物連鎖構造は、北大西洋に比べて転送効率の良いことが示唆された。
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第5208号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 水産学
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/51659
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Submitter: 品田 晃良

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