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有職文様における意匠生物の特徴(予察報告) : 四足動物の忌避と在来種の敬遠

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Please use this identifier to cite or link to this item:http://hdl.handle.net/2115/53591

Title: 有職文様における意匠生物の特徴(予察報告) : 四足動物の忌避と在来種の敬遠
Authors: 大舘, 大學 Browse this author →KAKEN DB
Issue Date: Jul-2013
Citation: 生き物文化誌学会 第11回学術大会, 平成25年7月7日, 東京都
Abstract: 奈良時代に唐から移入された文様を元に国風化した文様は有職(識)(ゆうしき、ゆうしょく)文様とよばれ、日本ではもっとも格調高い伝統デザインとされている。有職文様の定義と範囲は広くかつ曖昧であるが、ここでは主に宮廷や神道・仏教の儀礼や行事、場合によっては日常で使用される衣服等に付帯している伝統文様とする。現代では有職文様は、宗教関係や皇室関連の行事といった伝統的行事以外ではほとんど利用されていないが、グローバル化した現代日本の社会でも通用するすぐれた意匠である。有職文様が現代社会でも違和感が少ない理由の一つとして、輸入元である唐の文様の多くは、騎馬民族経由でシルクロードなどを通じて古代エジプト・オリエントやペルシャに起源を持つためである。そしてエジプトやオリエントから文様は西にも伝播し、ギリシャやヨーロッパに持たされた。つまり日本の有職文様と起源を同じくする意匠は汎ユーラシア的に分布しており(一部アフリカでも)、欧米圏やイスラム圏といった現代世界を席巻する文明圏でも有識文様の姉妹群の文様が流布しているのである。  ところで日本社会は、古来より現代に至るまで、中国文化であれ、西洋文化であれ、新たな文化を積極的に取り入れるとともに、やがて独自に展開させるという特性を持っている。唐よりもたらされた文様も当初は移入された意匠をそのまま利用していたが、平安時代以降、次第に国風化され、モチーフの取捨選択や独自の展開が行われ、有職文様が確立した。西はヨーロッパから東は朝鮮半島に至るユーラシアの多くの地域では龍(ドラゴン)や獅子(ライオン)、麒麟などの四足動物が重要な伝統文様のモチーフとなっているが、日本の有職文様では、四足動物のほとんどが排除され、圧倒的に多くの文様は植物や幾何学模様を基盤としている。同様に日本の伝統デザインである家紋のモチーフも、動物よりも植物や幾何学模様のほうが優占している。有職文様における四足動物の忌避は、平安時代以降の動物製品や肉食の忌避と軌を同じくした現象と思われる。四足動物忌避の理由は、ケガレの思想と関係があるかもしれないが、今回の調査ではそこまでは分からなかった。この少数派の動物の有識文様モチーフの中では、鳥類と蝶が主体となっている。そして植物や鳥類のモチーフには、日本在来種よりも外来種や外国産の種が多く用いられていることが分かった。藤(フジ)などを除き在来種をモチーフとする文様は神道関係の儀礼に用いられる例がほとんどである。有識文様は元々、外来の文様由来であることからこのことは当然とも言えるが、在来種を積極的に取り入れなかったという事実は、現代社会において国産品や日本人モデルよりも欧米からの輸入品や欧米人モデルをより高級とみなす風潮と類似している。このように有職文様の生物モチーフの分析は現代日本の精神文化の理解をする上でも興味深い対象である。
Description: 要旨の出典:『生き物文化誌学会第11回学術大会・東京大会 生き物文化誌学会創立10周年記念 プログラム・要旨集』p.30-31
Conference Name: 生き物文化誌学会学術大会
Conference Sequence: 11
Conference Place: 東京
Type: conference presentation
URI: http://hdl.handle.net/2115/53591
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Submitter: 大舘 智志

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