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短波長光への暴露がMotion sicknessの感受性に及ぼす影響

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.k13193
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Title: 短波長光への暴露がMotion sicknessの感受性に及ぼす影響
Authors: 金, 京室 Browse this author
Issue Date: 22-Mar-2018
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 背景:Motion sicknessは,実際または仮現の動きに反応し,引き起こされる不快な状態であり,主な症状には吐き気,嘔吐,顔面蒼白,冷汗,めまい,眠気等がある.未だに明確な原因は不明であるなか,現在,最も広く引用されている仮説が感覚不一致説である.この説によると,視覚と前庭覚のように相違する感覚システムから入力された情報が,身体の現在の動きに関して不一致した情報を与えるときや,意図した動きによって過去の記憶に伴い期待された感覚フィードバックが,実際に生じたものと一致しないときにMotion sicknessが引き起こされるという.これらの発症機序において,扁桃体や海馬などの大脳辺縁系が関与している.技術の進歩による自己発光子機器は,VDT(Visual Display Terminals)症候群のリスクをもたらす.VDT症候群の主な視覚関連症状は,眼精疲労,ドライアイ,かすみなどがあり,さらに,酔い症状と似た症状である頭痛,めまい,軽度の吐き気なども呈する.VDT関連のドライアイを持つヒトにおいて,ブルーライトカットレンズを使用し,短波長光への暴露を制限することで,光散乱が防止され,視機能が改善されたとの報告がみられる.さらに,長波長光と短波長光に暴露されることで,偏頭痛患者が不快を感じる閾値がより低くなることが報告されており,その原因の一つとして,短波長光に敏感な内因性光感受性網膜神経節細(intrinsically photosensitiveretinal ganglion cells,以下,ipRGCs)の関連が挙げられている.ipRGCsは,光同調の概日リズム調整や夜間の松果体メラトニン分泌の抑制に関わる視交叉上核や腹外側視索前核のみならず,視索上核,腹側室傍核下部領域,内側扁桃体,外側手綱核,海馬へも投射する.短波長光に敏感であるipRGCsの神経伝達領域とMotion sicknessの発症機序に関連する大脳辺縁系領域(扁桃体や海馬)が一部共通しているため,ipRGCsを介して伝達される情報がMotion sicknessメカニズムに何らかの影響を与えるかもしれない.さらに,VDT症候群に短波長光が関与し,Motion sickness症状の一部が共通することも短波長光とMotion sicknessとの関連性を示唆する.目的:短波長光への暴露がMotion sickness症状を増強させるかを明らかにすることである.方法:対象は,健常成人28名(男女各14名,平均年齢± SD,25.96 ± 3.11歳)である.Motion sicknessを誘発する刺激として,0.4-0.6Hz範囲内で揺れる2種類の波刺激を用いた:短波長光を含む青波刺激(主な波長は460nm)と中波長光を含む緑波刺激(主な波長は555nm).すべての対象者は,2つの異なる期間(Period 1,2)を通し,両方の刺激に暴露された.対象者は,Baseline(4分)に続いて3回繰り返される同じ波刺激の暴露(各4分)を経験した.主観的な酔いの程度を調べるために,Simulator sickness questionnaire(以下,SSQ)が刺激提示間で測定された.さらに,Motion sickness症状と関連する胃腸系関連活動や心臓自律神経系活動を調べるため胃電図や心拍変動が刺激暴露中に記録された.各データの解析には線形混合効果モデルを用いた.結果:SSQの「吐き気」の下位項目においてPeriod,Time point,Colorの主効果が確認された.事後検定により,青波刺激を使用した課題では,刺激暴露の後半で「吐き気」スコアが上昇する一方,緑波刺激を使用した課題では課題後半での「吐き気」スコアの得点上昇は確認されなかった.胃電位活動関連の生理学指標であるnormogastria / tachygastria比は,Colorの主効果が確認された.normogastria / tachygastria比 の経時的変化から,青波刺激暴露時のnormogastria /tachygastria比は緑波刺激暴露時のnormogastria / tachygastria比より高い値で推移し,青波刺激暴露時のnormogastria /tachygastria比は暴露の繰り返しにより低下する傾向があることを示した.考察:青波刺激暴露時のSSQの「吐き気」スコアの増加,normogastria / tachygastria比の変化は短波長光による影響であることが推測される.またこれらの変化は,全Motion sicknessにおける胃腸系関連症状に関する項目で生じており,短波長光によって胃腸系関連症状が特異的に増強された可能性が示唆された.その原因は依然として不明だが,推定可能なメカニズムの一つに,短波長光と脳幹の嘔吐中枢との関係が挙げられる.短波長光が眼へダメージを与えるなどで扁桃体や海馬を介し,ストレス因子として脳幹の嘔吐中枢を刺激した可能性や,青波によって船酔いの記憶が想起され,不快な情報として脳幹の嘔吐中枢を刺激した可能性が挙げられる.結論:Motion sickness症状と関連する主観指標や生理学的指標の結果から,短波長光への暴露によりMotion sickness症状のなかでも胃腸系関連症状が特異的に増強されることを示した.
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第13193号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 保健科学
Examination Committee Members: (主査) 教授 浅賀 忠義, 特任教授 井上 馨, 教授 境 信哉
Degree Affiliation: 保健科学院(保健科学専攻)
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/70155
Appears in Collections:学位論文 (Theses) > 博士 (保健科学)
課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 保健科学院(Graduate School of Health Sciences)

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