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視覚および聴覚のフィードバック練習による動的バランスの学習効果に関する研究

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.k13195
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Title: 視覚および聴覚のフィードバック練習による動的バランスの学習効果に関する研究
Authors: 長谷川, 直哉 Browse this author
Issue Date: 22-Mar-2018
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 【緒言】立位バランスの改善を目的とする練習方法として感覚フィードバックを用いた練習が一般的に行われている.感覚フィードバックには主として視覚・聴覚・体性感覚が使用されており,その効果は多くの先行研究で示されている.しかし,用いる感覚の違いによって効果を比較検討している研究は少なく,特に姿勢バランス課題において比較検討した研究は筆者が知る限り見当たらない.従って,本研究の目的は動的バランス課題の一つである周期的な動作における視覚フィードバック練習と聴覚フィードバック練習の学習効果の違いを比較検討することとした.【方法】被験者は,健常若年者18名であり,無作為に聴覚刺激をフィードバックに用いた9名(聴覚群)と視覚刺激をフィードバックに用いた9名(視覚群)に割り当てられた.被験者は,床反力計上に裸足で立ち,前後方向に移動するターゲットと自身の足圧中心(COP) を一致させる前後の姿勢動揺課題を30秒間行った(実験課題).ターゲットは被験者のCOP最大移動距離の前方80%から後方70%を周波数0.23Hzの正弦波で移動するようにLabVIEWソフトウェアを用いて作成し,各周期の前後の変曲点でのみビープ音とモニター上の点を表示した.フィードバック練習課題ではターゲットとCOPとの間の距離の情報を各群に合わせたフィードバックで与えた(聴覚群:スピーカーからの音,視覚群:モニター画面上の黄色い円).また,視覚フィードバックと聴覚フィードバックの感覚量はStevens’power lawを用いて同等になるように調節した.課題はフィードバック練習課題を計40施行行い,実験課題は練習前(pre-test),20施行終了後(mid-test),練習後(post-test),3日目(retention) の計4回行った.また,動作開始時の影響を取り除くために,1施行7周期から最初の1周期を除外した6周期を解析対象とした.また,床反力計を使用してCOP位置を算出して指標として用いた.【結果】pre-testの全ての指標で群間(聴覚,視覚)の有意差はみられなかった.ターゲットとCOPとの間の距離の平均(Dave) については,実験課題間で主効果が認められたが(p < 0.05),群間の主効果や交互作用は認められなかった(p > 0.05).聴覚群ではpre-testと比較してmid-test,post-test,retentionでターゲットとCOPとの間の距離の標準偏差(DSD) が有意に減少したが(p < 0.05),視覚群ではpre-testと比較して他の実験課題で有意差は認められなかった(p > 0.05).また,mid-testとretentionにおいて,聴覚群は視覚群よりも有意に小さな値を示した(p < 0.05).ターゲットとCOPとの間のcoherenceも同様に,聴覚群ではpre-testと比較してmid-test,post-test,retentionで有意な増加を示したが(p < 0.05),視覚群ではpre-testと比較して他の実験課題で有意差は認められなかった(p > 0.05).また,mid-test,post-test,retentionにおいて,聴覚群は視覚群よりも有意に大きな値を示した(p < 0.05).さらに,聴覚群において,pre-testからretentionへのDSDの変化率とcoherenceの変化率との間には有意な負の相関が示された(r= -0.70,p < 0.05).【考察】pre-testでの群間比較でDSDやCoherenceに有意差がみられず,retentionでは聴覚群と視覚群との間に有意差が認められた.さらに,両指標において,聴覚群ではpre-testとretentionとの間に有意差がみられ,視覚群では有意差がみられなかった.従って,周期的な動作課題において,聴覚フィードバック練習は視覚フィードバック練習よりも姿勢バランスの学習効果の時間的な側面と空間的な側面の両方を向上させたと考えられる.多くの先行研究において視覚フィードバック練習は視覚刺激に対する依存を増加させることが示されている.また,Ronsseらは,両手の協調運動を用いて視覚フィードバック練習では視覚刺激に対する依存が強まり学習効果が認められなくなったが,聴覚フィードバックを用いた練習の場合には聴覚刺激に対する依存は徐々に弱まり,フィードバックのない条件で利用される固有受容感覚システムの統合が促進され,学習効果が高まることを明らかにした.したがって,本研究で用いた周期的な動作を用いた動的バランス課題においてもRonsseらの上肢課題と同様に,聴覚フィードバックの方が視覚フィードバックよりも運動学習に有効であったと考えられる.【結論】本研究は随意的に荷重を移動させる動的バランス課題を用いて聴覚フィードバック練習と視覚フィードバック練習の学習効果の違いを比較検討し,視覚フィードバック練習では動的バランス制御の学習効果が得られにくいが,聴覚フィードバック練習では動的バランス制御の学習効果を得られやすい可能性が示唆された.つまり,聴覚フィードバック練習によって,より有効な学習効果が期待できる可能性が示唆される.また,本研究は動的バランスにおける感覚フィードバック練習の基礎的なエビデンスや理論的な展望を提供するだけでなく,スポーツやリハビリテーション領域における視覚フィードバックの依存性を防ぐ手掛かりを与えると考えられる.
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第13195号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 保健科学
Examination Committee Members: (主査) 教授 境 信哉, 教授 浅賀 忠義, 准教授 寒川 美奈
Degree Affiliation: 保健科学院(保健科学専攻)
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/70172
Appears in Collections:学位論文 (Theses) > 博士 (保健科学)
課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 保健科学院(Graduate School of Health Sciences)

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