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空間情報を用いた人の行動分析に関する研究

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.k13307
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Title: 空間情報を用いた人の行動分析に関する研究
Other Titles: A study of analysis of human behavior using geospatial information
Authors: 吉村, 暢彦 Browse this author
Issue Date: 25-Sep-2018
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 社会の問題の多くは、その存在に気付かれているわけではない。問題の発見は、解決への起点であり、もっと注視されるべきであろう。私たちの社会は人の行動から成り立っている。そのため、人の行動は、私たちの社会の問題に密接に関係する。人の行動を理解することは、問題の発見と、その本質的な理解に貢献する。最近、Global Positioning System(GPS)機能搭載のスマートフォンの普及や、公共交通乗車券のICカード化によって、人の行動が記録されるようになってきた。そのデータを利用し、防災や交通管理、観光、ビジネス分野等において、行動が理解されるようになってきた。従来行われてきたアンケートやインタビューも、GPS等と全く異なる手法であるが、人の行動を理解するという、共通の目的を持っている。これらを組み合わせることで、行動のより深い理解を目指すことができる。人の行動に関する空間情報(以後、行動情報)の研究は、2000年以降、増加した。行動情報の分析については、観光客等の訪問地の傾向や移動経路のパターン化といった対象者の行動を理解する研究や、移動導線の確認、景観の審美的価値といった対象地の理解に関する研究が行われてきた。さらに、これらを基にして、国立公園での不適切なレクレーション利用の発見、防犯対策の妥当性の確認等の問題の発見を試行する研究もあった。問題の発見に関する研究は、解決への起点となるものであり、様々なテーマで試行していく必要がある。本研究では、問題の発見についての研究の充実を目指し、管理者と受益者の間のミスマッチによる問題の発見の試行を目的とした。ミスマッチとは、組み合わせがうまくいっていないこと。適合していないことであり、管理者と受益者の間でしばしば問題となる。気づかれていない場合も多い。本研究で扱った行動は、景観写真の撮影およびスキー場におけるスキー滑走である。それぞれについて、これらの行動を理解する技術的な手法も開発した。景観写真の撮影については、写真共有サービスFlickrに投稿された位置情報付き写真を用いて、どこが被写地として好まれたのか(需要地)、さらに、需要地と同様の環境条件を持つ場所はどこか(供給ポテンシャル地)を推定する手法を開発した。需要地の推定には、撮影地点からの可視領域に基づくスコアを用いた。供給ポテンシャル地には、生物の分布推定に用いられるMaxentモデルを用いた。開発した手法は、アンケートやインタビューよりもコスト効率がよく、被写地を直接的に推定しており、ロバストな結果を得られるものであった。これを、北海道を対象地として適用した結果、土地利用区分に基づくと、森林、河川・湖沼、湿地・荒地と、農地や都市が好まれていた。特に、河川・湖沼が被写地として好まれていた。森林、河川・湖沼、湿地・荒地については、アンケートやインタビューによる既存の研究と整合性があった。農地については、日本人の好みを反映していたと考えられる。景観の需要地や供給ポテンシャル地の分布は、自然公園、特に国立公園に集中していたことがわかった。ただし、国立公園毎に、需要地や供給ポテンシャル地の面積や割合は異なっていた。自然公園法では、「すぐれた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与することを目的」としている。「すぐれた自然の風景地」は、景観価値の高い場所であり、日本において、景観価値は自然公園域の設定に密接に関係するものである。これに対して、設定された自然公園と、景観価値がマッチしているか、そうでないかを確認した。需要地の自然公園への集中から、自然公園が、「すぐれた自然の風景地の利用の増進を図る」という目的に調和的であることが分かった。また、供給ポテンシャル地の自然公園への集中は、需要地と同様の環境が、自然公園区域として保護されていることを示すものであり、自然公園が、すぐれた自然の風景地を保護するという目的にも調和的であることがわかった。今回は、自然公園法の目的と、設定された自然公園の間に、ミスマッチがあるとは言えなかった。スキー場におけるスキー滑走(ゲレンデ行動)を理解するために、コース間の選択行動(コース間行動)と、コース内の滑走の様子(コース内行動)の2つの視点から理解するフレームワークを提案した。ゲレンデ行動はGPSロガーを用いて記録した。対象地は、星野リゾート・トマムスキー場であった。コース間行動として、スキーヤーの、スキーコース、リフト・ゴンドラ、休息に関する選択行動や、コース内行動として、スキーコース内における滑走の様子を明らかにすることができた。さらに、スキーヤーの技術レベルやコースレベルの情報を加えることで、技術レベルによるスキーヤーの行動の違いや、コースレベルに基づく利用状況を確認することができた。星野リゾート・トマムスキー場では、初、中、上級といった技術レベル以上に、多様な行動を行うスキーヤーが存在することがわかった。また、同じ設定レベルでも、異なる特徴を持つコースがあることがわかった。一般的に、スキーヤーの技術レベルに合わせた、初級・中級・上級というコース区分をしており、初級(中級・上級)者は初級(中級・上級)コースを滑走しているはずという暗黙の了解がある。スキーヤーの行動に、技術レベル以上の多様さが存在したことから、好みに基づくスキーヤーの行動は、技術レベルによるコース管理とミスマッチを起こしていることがわかった。これは、結果として、スキー場は、スキーヤーそのものを技術レベルのみで把握し、スキーヤーの好みを把握していなかったことを示すものである。今回は、2つの事例(景観写真とスキーヤーの行動)をつくることができた。景観写真の撮影とゲレンデ行動の理解を進めることで、自然公園が景観の価値の高い場所を多く有していることや多様な行動をするスキーヤーが存在することが明らかになり、ミスマッチの有無を確認することができた。特に、ゲレンデ行動からは、問題となるミスマッチを発見し、問題解決につながる糸口を示すことができた。今回、問題の発見を始めから、意図していたわけではなく、2つの行動を、より理解しようとしたときに問題が見えてきた。ミスマッチは、今回の問題発見のヒントとなった。
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第13307号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 環境科学
Examination Committee Members: (主査) 教授 山中 康裕, 教授 渡邉 悌二, 教授 日浦 勉, 准教授 白岩 孝行
Degree Affiliation: 環境科学院(環境起学専攻)
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/71942
Appears in Collections:課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 環境科学院(Graduate School of Environmental Science)
学位論文 (Theses) > 博士 (環境科学)

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