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放射光CTを用いたチタン合金の超高サイクル疲労に関する実験的研究

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.k13204
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Title: 放射光CTを用いたチタン合金の超高サイクル疲労に関する実験的研究
Other Titles: Experimental study of very high cycle fatigue in titanium alloy using synchrotron radiation CT
Authors: 吉中, 奎貴 Browse this author
Issue Date: 22-Mar-2018
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 機械・構造物の破損原因の大半は疲労であり,機械技術者にとって疲労破壊への対策は安全性確保の根幹をなす課題である.一方,近年では機器の高速化や使用期間の長期化に伴い,負荷繰返し数が 107回を超える超高サイクル域における疲労特性(超高サイクル疲労)の重要性が認識されるようになった.これまでに,超高サイクル疲労では材料内部を起点として疲労き裂が発生・進展し破壊(内部破壊)を生じることが報告されている.そのため,機械構造物の長期信頼性を確保するためには,この内部破壊のメカニズムを解明することが求められる.現在までに,内部破壊過程の詳細は明らかにされていない.これは主に X 線 CT のような一般の非破壊観察手法の分解能では内部き裂の観察には不十分であり,破壊過程の観察が極めて困難であることによる.一方,近年では大型放射光施設 SPring-8 に代表される第三世代の放射光施設の登場に伴い,極めて高輝度の放射光が得られるようになった.このような高輝度放射光により,放射光 CT と呼ばれる高分解能非破壊観察法が金属材料に対し適用可能となりつつある.本研究の目的は,放射光 CT をチタン合金 Ti-6Al-4V の超高サイクル疲労に適用し,内部破壊過程を直接観察により明らかにすることである.そのために,SPring-8 において疲労試験と放射光 CT を繰返し行うことにより内部き裂の発生・進展過程を観察した.また,試料内部の微小な結晶粒(平均粒径 10 µm)の可視化を試みた.本論文は 7 章からなり,各章の内容は以下のように要約される.第 1 章では,超高サイクル疲労に関する研究状況を整理するとともに,その発生機構の詳細を明らかにする上での課題として疲労破壊過程の直接観察が不可欠であることを指摘し,本研究の目的を示した.第 2 章では,実験条件を示すとともに,本研究で用いた観察系に関する説明を記した.第 3 章では,内部疲労き裂の発生・進展観察結果として,観察像および内部き裂の発生寿命・進展速度の計測結果を示した.具体的な実験結果は以下の通りである:内部き裂は観察視野内において多数発生したが,表面き裂は 1 つしか発生しなかった.また,内部き裂の発生寿命はき裂ごとに大きく異なっていた.き裂ごとにばらつきが認められたものの,内部き裂の進展速度は 10-10 m/cycle 以下であり,極めて低速で進展した.なお,き裂発生寿命は短いが,発生後ほぼ進展しなかったき裂がある一方,き裂発生寿命は長いものの,発生後急速に進展したき裂があるなど,き裂発生寿命とその後の進展挙動に直接的な関係は見られなかった.第 4 章では,第 3 章において取得した内部き裂の発生寿命および進展速度に対する考察を加えた.初めに,本供試材では材料内部の α 相におけるファセットと呼ばれる平坦面の形成を契機として疲労き裂が発生・進展することから,起点ファセット寸法を発生が確認されたすべての内部き裂について計測し,これと発生寿命・進展速度の間の関係を調べた.その結果,起点ファセット寸法と発生寿命・進展速度の間に有意な関係は認められなかった.この結果と,他の研究者らによる報告に基づき,発生寿命・進展速度のばらつきは起点ファセットとその周囲の結晶粒がなすクラスタとしての結晶学的特性の違いを主要因として生じると考察した.以上の結果から,低応力において内部破壊が主要な破壊モードとなる理由を危険体積の小ささに起因する表面き裂の発生しにくさと,内部き裂の進展速度の小ささから説明した.次に,内部き裂が低速で進展した理由についてき裂周囲環境に着目して検討を行った.ここで,内部き裂は大気から遮断された一種の真空環境中を進展すると指摘されている.そこで,種々の真空圧力(10-6 Pa,10-4 Pa,10-2 Pa,100 Pa,大気圧)における表面微小き裂進展試験を実施し,その結果を内部き裂と比較した.その結果,内部き裂の結果は 10-6 Pa や 10-4 Pa の特に真空圧力の低い環境における結果とよく一致した.このことから,内部き裂周囲に存在する気体量は極めて限定的であり,その影響により低速で進展すると考えられる.第 5 章では,内部破壊過程と組織の同時・非破壊観察の実現に向けた Ti-6Al-4V 内部の結晶粒の可視化に取り組んだ.そのために試験片寸法,観察系,イメージング条件の再検討を行った.さらに,一般の X線吸収を利用したイメージング手法に対し,位相シフトを利用することで高感度な撮像が可能である手法(位相コントラスト法)の適用を試みた.実験の結果,試験片寸法を 0.5 mm 程度以下まで小型化するとともに,位相コントラスト法を用いることで試験片内部の結晶粒を明瞭に観察することに成功した.また,予め内部き裂を発生させた砂時計型疲労試験片に対し観察を実施することにより,内部き裂と結晶粒を同時に観察した.また,放射光 CT による超高サイクル疲労研究を鉄鋼材料にも適用可能とするために,高強度鋼 SNCM439 内部の非金属介在物の非破壊観察を実施した結果を示した.第 6 章では,今後の展望として,内部破壊過程をより詳細に明らかにする上での検討課題を示し,各種の放射光実験技術(3D-XRD や結像法)を用いてこれらを解決するための方針について述べた.また,結像法については実際に Ti-6Al-4V に対してトライアル測定を行った結果を示した.第 7 章では,本研究の総括として,得られた成果とその意義を記した.
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第13204号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 工学
Examination Committee Members: (主査) 教授 中村 孝, 教授 佐々木 克彦, 教授 大沼 正人, 准教授 高橋 航圭
Degree Affiliation: 工学院(機械宇宙工学専攻)
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/73134
Appears in Collections:課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 工学院(Graduate School of Engineering)
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