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睡眠時無呼吸症候群⽤⼝腔内装置の装着感に関する研究 [全文の要約]

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Please use this identifier to cite or link to this item:http://hdl.handle.net/2115/81179
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Title: 睡眠時無呼吸症候群⽤⼝腔内装置の装着感に関する研究 [全文の要約]
Authors: 水野, 麻梨子 Browse this author
Keywords: 睡眠時無呼吸症候群
口腔内装置
固定型
分離型
ストレス
Issue Date: 25-Mar-2021
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome:OSAS)は,睡眠中に呼吸が弱くなる,あるいは停止し,体内の酸素濃度が下がり,睡眠が障害されることにより,日中の眠気や頭痛,集中力の低下などの症状により生活の質を低下させ,高血圧症や糖尿病,メタボリックシンドロームの発症に関与し,重症例では心血管障害や脳血管障害の危険因子となる全身性の疾患である.治療法の一つに,口腔内装置(以下OA)の使用がある.OAの治療効果については,多くの論文で一定の効果が示されているが,OAの形態に関するシステマティックレビューは報告されてきたものの,ある形態が他に比べて優位な形態であるという明確な結論は出ていない.装置の欠点の一つとして装着時の違和感や精神的負荷が挙げられる.その原因の一つとして,上下顎を完全に固定するタイプ(固定型OA)では,開口が完全に制限されることによる拘束感が考えられている.一方,開口運動が可能なタイプの装置(分離型OA)も存在するが,分離型OAでは上下顎の装置を繋げるコネクターを頬側に取り付ける必要があり,その突出感が上下固定型より大きな違和感を生じる可能性もある.しかしながら,これまで,OSASに対する口腔内装置に関するガイドライン(装置の作製に関するテクニカルアプレイザル:2020年版)においても,固定型と分離型で,実際にどの程度,装着感や装着による精神的な負荷に違いがあるのかについてのリサーチエビデンスはなく,情報は少ない.本研究の目的は,固定型OAと分離型OAそれぞれの装置に対する装着感,さらにそれらの装置装着による精神的ストレスの差異を明らかにすることである.被験者はボランティアの健常者9名(男性6名,女性3名,平均年齢 22.33歳(標準偏差,SD:1.34))であり,各被験者に固定型と分離型の両方のOAを製作した.被験者の条件として同意取得時において年齢が20歳以上,40歳以下の者とし,鼻呼吸が不可能な程度の鼻閉を有する者,口腔内や顎関節の状態が装置装着に適さない者(智歯を除く歯の欠損,重度歯周病,顎関節障害,著しい歯列不正,歯の疼痛,歯科治療中,脱離の可能性がある修復物),睡眠時ブラキシズム(歯ぎしり)を有する者,絞扼反射など口腔内の操作や装置への違和感が強く印象採得や装置装着が困難な者,レジンモノマーや金属,粘着テープに対しアレルギーがある者,その他,研究責任者が被験者として不適当と判断した者は除外した.OA作製にあたり,アルジネート印象材にて通法に従い印象採得後,歯列模型上で上下顎にそれぞれ厚さ1.5mmの熱可塑性シート(デュランプラス/1.5mm,ショイデンタル)を用いて全歯列を被覆するフレームを製作した.顎位は習慣性開口路上で約5㎜咬合挙上した位置とした.固定型OAでは上下のフレーム間を常温重合レジンで固定した.分離型では,咬合採得時の垂直的な顎位を維持するために,上下顎のフレームの臼歯部咬合面に咬合平面と平行にレジンを盛り,閉口時に均等に接触させるようにした.上下顎フレーム連結にはNKコネクターⅡ(モリタ)を用いた.NKコネクターⅡの断端は,上顎犬歯相当部,下顎大臼歯相当部頬側で常温重合レジンを用いてフレームに固定された.測定はOA非装着時,固定型OA装着時,分離型OA装着時の順にそれぞれ1晩ずつ,計3晩,被験者自宅にて,被験者本人が装置の装着や操作を行った.測定項目は,唾液αアミラーゼ活性,心電図R-R間隔,心理テスト(状態-特性不安尺度,STAI),睡眠の程度の自己評価スコア,使い易さの自覚スコアとした.3晩の連続,非連続は問わず,当日に飲酒や激しい運動が無く,8時間の睡眠時間を十分に確保できる日とした.入眠前に唾液αアミラーゼ活性の測定,睡眠中は心電図の測定,起床後に唾液αアミラーゼ活性の測定,STAI,睡眠の程度の自己評価スコアの記入を行った.2クール目は間に2週間空け,装置非装着時,分離型装置装着時,固定型装置装着時の順で同様の内容を行った.2クール全て終了した時点で,使い易さの自覚スコアを記録した.唾液αアミラーゼ活性,心電図R-R間隔,STAIでは結果の測定数値に個人差や施行クール間でばらつきがみられたものの,標準値から外れる程の変化は見られず,固定型,分離型間の有意な差も認められなかった(p>0.05).睡眠の程度の自己評価スコアについては,分離型OAに比較して固定型3OAの方が有意に低値であった(p<0.05).使い易さの自覚スコアについても,分離型OAに比較して固定型OAの方が有意に低値であった(p<0.05).本研究の結果からは,睡眠中のストレスを客観的に反映すると思われる項目(唾液αアミラーゼ活性,心電図R-R間隔)では,固定型,分離型間の差異は示されなかった.一方,主観的な要素の強い項目(睡眠の自覚,使い易さ)では,固定型に比較して分離型の方が優位であることが示された.前述のように,今回のOAの顎位は下顎前方位ではなく,被験者も実際のOSAS患者ではない.そのため,OSAS用OA装着によるストレス反応を完全に再現している訳ではなく,OSAS用OA装着が,OSAS患者にストレスを引き起こすものではないとの結論はつけられない.しかし,固定型OAと分離型OAの間での比較に関しては,明らかにストレス反応の差異を生じる程の違いを生じるものではない可能性が示唆された.今回差異の傾向が示された睡眠の程度の自己評価スコアと使い易さの自覚は何れも,被験者の主観的な評価項目である.使い易さの自覚には,装着感や好みが反映されている可能性が考えられる.また,睡眠の程度の自己評価スコアには,起床時の爽快感の他,入眠し易さなど就寝後から完全な入眠までの間の意識がある状態での感覚が反映されている可能性はある.そのため,装着感,ストレスという観点からどちらの形態のOAが優位かを考える上で,覚醒時における感覚は重要な要素であると考えられた.そのため,装置製作時に前もって覚醒時の患者の好みが判断できるようなシステムが存在すれば,就寝中のOAの装着感に関するトラブルも減少させることができるのではないかと考えられた.本研究では被験者の主観的な評価では分離型が優位であったが,OSASに対するOAに関するシステマティックレビュー(Ishiyama, H.,Int J Environ Res Public Health, 2019.)やそれに基づく診療ガイドライン(装置の作製に関するテクニカルアプレイザル:2020年版)で引用された2論文(Block,Am J Respir Crit Care Med, 2000, Zhou, J. J Oral Rehabil, 2012)では,患者の意向(その装置を使用したいかという質問)は固定型の方が優位とされている.しかし,それらの論文の分離型OAの上下連結のコネクターの種類は,本論文のNKコネクターⅡとは異なり,頬側への突出度は大きいものであった.また,本論文では,フレームの頬側の被覆形態は固定型と分離型で可及的の揃えたのに対し,それらの論文では固定型と分離型で異なっていた.これらの条件の違いもあることから,本論文の結果と単純に比較するのは難しい状況である.分離型OAには,上下歯列のフレームをコネクターで連結しない完全分離タイプのものもあり,形態の種類は多様である.そのため,今後は,分離型OAの形態の細分類での装着感やストレスの差異の検証も必要であることが示唆された.
Description: この博士論文全文の閲覧方法については、以下のサイトをご参照ください。
Description URI: https://www.lib.hokudai.ac.jp/dissertations/copy-guides/
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第14523号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 歯学
Examination Committee Members: (主査) 教授 山口 泰彦, 教授 横山 敦郎, 教授 舩橋 誠
Degree Affiliation: 歯学院(口腔医学専攻)
Type: theses (doctoral - abstract of entire text)
URI: http://hdl.handle.net/2115/81179
Appears in Collections:課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 歯学院(Graduate School of Dental Medicine)
学位論文 (Theses) > 博士 (歯学)

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