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リン酸化プルランを用いた新しいインプラント表面改質の検討 [全文の要約]
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Title: | リン酸化プルランを用いた新しいインプラント表面改質の検討 [全文の要約] |
Authors: | 長本, 香菜子 Browse this author |
Issue Date: | 24-Mar-2022 |
Publisher: | Hokkaido University |
Abstract: | ブローネマルクが骨とチタンにおいてオッセオインテグレーションを報告して以来,現在までにインプラントは様々な改良がされてきた.インプラントの表面処理もその一つである.しかし,未だ十分な骨接合が得られずインプラントが早期に脱落してしまう症例も少なくない.また,ハイドロキシアパタイトコーティングでは埋入後コーティング材の剥離や,感染によりインプラント周囲炎が進行しやすいなど,それぞれ問題点を残している.さらに,現在の技術では十分なオッセオインテグレーションを得られずインプラント治療を断念しなければならない症例も多数存在する.そのため,十分なオッセオインテグレーションを獲得でき,チタンと骨との高い接着性,生体親和性をもつ表面形態,早期に骨置換される性質のコーティング材料などインプラント表面性状の改良が求められている.そこで,高い生体安全性をもち,動物実験において優れたオッセオインテグレ―ションを示したリン酸化プルランに着目した.しかし,リン酸化プルランの骨関連細胞に与える影響を細胞実験において調査した報告は少ない.本研究ではリン酸化プルランを用いた新しいインプラントの表面処理法の開発を目的に,リン酸化プルランを培養液に添加もしくは,チタン上に接着させ,細胞の増殖や分化誘導について評価した.また骨形成因子をリン酸化プルランに担持し,石灰化物の形成について評価した.Ti disk を研磨後,1%リン酸化プルラン溶液に 24 時間浸漬することで Ti disk にリン酸化プルランを接着し,得られた disk(リン酸化プルラン処理した Ti disk)を XPS にて評価した.細胞増殖試験では,MC3T3-E1(マウス由来骨芽細胞様細胞)をディッシュにて 1 日培養後,リン酸化プルランを 0.01%, 0.1%, 0.5%, 1%, 3%の濃度で添加した培地へと交換し 2 日培養した.また,リン酸化プルラン処理した Ti disk 上においては MC3T3-E1 を播種した後,2 日培養した.両者とも WST8 にて吸光度を測定し細胞数を評価した.石灰化誘導試験では,Saos-2(ヒト由来骨芽細胞様細胞)をディッシュにて 5 日培養し,その後リン酸化プルランを 1%の濃度で添加した石灰化誘導培地を用いて 1 週間培養した.また,リン酸化プルラン処理した Ti disk 上においては Saos-2 を 3 日培養後,石灰化誘導培地を用いて 2 週間培養した.両者ともアリザリンレッド溶液にて染色し,石灰化物を評価した.次に,担持機能の評価として,Ti disk を 0.2 μg/mL BMP-2 の溶液,0.2 μg/mL BMP-2+1%リン酸化プルランの溶液に 24 時間浸漬し,得られた disk 上において Saos-2 を 3 日培養後,石灰化誘導を行った.アリザリンレッド溶液で染色し,形成された石灰化物を評価した. 破骨細胞様細胞の形成に与える影響についての検討は,RAW264.7(マウス由来マクロファージ細胞様細胞)を数日培養後,RANKL 50 ng/mL とリン酸化プルランを 0.1%, 1%, 3%の割合で混合した培地へと交換し 6 日間培養した.TRAP 染色し破骨細胞様細胞を評価した.なおこれらすべての項目において,リン酸化プルランを培養液に添加する行程では,コントロールをリン酸化プルランを添加していない条件とし,リン酸化プルラン処理した Ti disk 上での培養行程においては,研磨した Ti disk を MilliQ に 24 時間浸漬した条件を Control Tidisk として用いた.リン酸化プルラン処理した Ti disk の表面を,XPS にて分析するとリン元素(P2p)由来の信号である 134 eV 付近にピークが見られ,リン酸化プルランが Ti disk 表面に接着したことが確認された.細胞増殖試験では,リン酸化プルランを培養液に添加すると濃度依存的にMC3T3-E1 の増殖が抑制されたが,リン酸化プルラン処理した Ti disk 上では増加傾向がみられた.石灰化誘導試験ではリン酸化プルランを培養液に添加した場合,石灰化物の形成が抑制された.一方で,リン酸化プルラン処理した Ti disk 上では,より密な石灰化物が disk全面に広がって認められ石灰化物の形成が増加した.さらに,リン酸化プルランの BMP-2担持機能については,BMP-2+1%リン酸化プルラン溶液に浸漬した Ti disk において,石灰化物の形成が増加し,広がりのある沈着として確認された.また,破骨細胞様細胞の形成への影響では,培養液にリン酸化プルランを添加すると,破骨細胞様細胞数は濃度依存的に有意に減少した.これらの現象は,リン酸化プルランによる分子やイオンの吸着に起因すると考えられる.Ti disk 表面に接着したリン酸化プルランは,培養液中における細胞に作用する分子や石灰化に必要な物質などを吸着させた後,Ti disk 表面に付着した細胞へと継続的に高濃度で供給したことにより,細胞増殖や石灰化が促進されたと考えられる.一方で,リン酸化プルランを培養液に直接添加した場合は,培養液中の細胞に作用する分子が浮遊するリン酸化プルランへと吸着されたため,ディッシュ底面に付着した細胞への供給量が低減し,細胞の増殖が減少したと示唆される. BMP-2+1%リン酸化プルラン溶液で処理した Ti disk 上で,Saos-2 の石灰化誘導を行うと,石灰化物の形成が増加した.これは,リン酸化プルランのリン酸基は水溶液中で負に帯電し,BMP-2 の等電点は 9 付近であり正に帯電することにより化学的に結合し,BMP-2 が機能を失うことなくリン酸化プルランに担持された可能性が考えられる.既存のハイドロキシアパタイトコーティングは,剥離した際にハイドロキシアパタイトが組織内で吸収しないため,長期残存し感染源になりやすいという問題がある.それに対し,リン酸化プルラン処理は,チタンと化学的に結合しているため,ハイドロキシアパタイトコーティングと比較し,高い接着性が期待でき,剥離したとしてもリン酸化プルランは速やかに吸収されるため,感染源にならないという利点がある.感染はインプラント治療にとって大敵であり,リン酸化プルラン処理は有用な処理法と考えられる. |
Description: | この博士論文全文の閲覧方法については、以下のサイトをご参照ください。 |
Description URI: | https://www.lib.hokudai.ac.jp/dissertations/copy-guides/ |
Conffering University: | 北海道大学 |
Degree Report Number: | 甲第15024号 |
Degree Level: | 博士 |
Degree Discipline: | 歯学 |
Examination Committee Members: | (主査) 教授 田村 正人, 教授 吉田 靖弘, 教授 北川 善政 |
Degree Affiliation: | 歯学院(口腔医学専攻) |
Type: | theses (doctoral - abstract of entire text) |
URI: | http://hdl.handle.net/2115/85997 |
Appears in Collections: | 課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 歯学院(Graduate School of Dental Medicine) 学位論文 (Theses) > 博士 (歯学)
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