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酸化LDL受容体LOX-1シグナルを介した腫瘍血管内皮細胞による好中球遊走促進とがん転移誘導 [全文の要約]

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Please use this identifier to cite or link to this item:http://hdl.handle.net/2115/85999
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Title: 酸化LDL受容体LOX-1シグナルを介した腫瘍血管内皮細胞による好中球遊走促進とがん転移誘導 [全文の要約]
Authors: 積田, 卓也 Browse this author
Issue Date: 24-Mar-2022
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 先進国の2大死因である「がん」と「循環器疾患」が相互に関連していることが疫学調査を中心に報告されており、その共通分子病態の解明は臨床的にも重要である。「腫瘍循環器学」は古典的にはがん治療に伴う心血管イベント発生に関する病態理解のための学際領域であったが、近年その定義を拡大し、両疾患の分子レベルでの共通性の解明を目指している。両疾患の病変部で共通して豊富に存在することが報告されている分子のひとつにBiglycan がある。Biglycan は低密度リポタンパク質(Low density lipoprotein: LDL)に対する強い結合能を有するプロテオグリカンの1種であり、アテローム性動脈硬化巣に豊富に存在することが報告されている。また我々は近年,高転移性腫瘍組織の血管に Biglycanが高発現していることを示している。Biglycan 発現亢進を起点にした血管壁への LDL の蓄積はアテローム性動脈硬化症の発症過程の最重要事項のひとつだが、その一方でがん悪性化との関連に関する報告はほとんど存在しない。したがって我々は悪性腫瘍組織内においても高度な LDL 沈着が生じている可能性を着想し、がんの転移過程における腫瘍組織へのLDL 蓄積の重要性を検証することを目的に研究を行った。がんの転移能の違いを評価するためのモデルとして転移能の異なるヒト悪性黒色腫皮下移植マウスモデルを使用した。まず、免疫組織学的解析を実施したところ Biglycan の発現が亢進している高転移性の腫瘍組織には豊富な LDL が含まれていた。加えて、高転移性腫瘍移植マウスでは血中の酸化 LDL が高値を示していたことから、高転移性腫瘍組織で LDLの酸化が亢進していると考えられた。興味深いことに、酸化 LDL の受容体のひとつであり、循環器疾患発症の重要分子として知られている Lectin-like oxidized LDL Receptor-1(LOX-1) が高転移性の腫瘍血管内皮細胞で高発現していることが新たに見出された。このことは、高転移性腫瘍血管内皮細胞が LOX-1 を介して周囲に豊富に存在する酸化 LDL を利用し、がん転移を促進している可能性を示唆していると考えられた。 なお、酸化 LDL 形成において好中球の重要性が知られている。そこで高転移性腫瘍組織中の好中球の蓄積と活性化の程度を観察したところ、高転移性腫瘍組織において顕著な好中球浸潤と活性化が認められた。さらに、好中球の遊走と活性化における LOX-1 の関与を評価したところ、 LOX-1 の発現は血管内皮細胞からの CCL2 分泌を介して好中球の遊走を促進することが明らかとなった。CCL2 の分泌は酸化 LDL 添加によって増強された。加えて、血管内皮細胞における LOX-1 の発現はがん細胞に対しても遊走促進的に機能し、その効果が CCL2 の受容体である CCR2 阻害処理により減弱されることが示された。最後に、腫瘍血管内皮細胞または腫瘍間質における LOX-1 発現が実際にがんの転移を促進するかどうかを検証するために in vivo での LOX-1 阻害実験を行った。1つ目の方法として、shLOX-1 安定発現腫瘍血管内皮細胞とがん細胞との共移植を実施して肺転移の程度を評価した。すると、LOX-1 をノックダウンした血管内皮細胞と共移植した際には、コントロールの腫瘍血管内皮細胞を共移植した際に認められた肺転移促進効果が減弱した。また、2つ目の方法として shLOX-1 発現アデノ随伴ウイルスの腫瘍内投与により直接的に腫瘍間質の LOX-1 発現を抑制したところ、同様に LOX-1 の抑制が肺転移を減少させる傾向があることが示された。以上の結果から、腫瘍血管内皮細胞における酸化 LDL/LOX-1 軸が好中球の誘引を介して高転移性の腫瘍微小環境形成につながっている可能性が示唆された。本研究の重要なポイントとしては、心血管イベントの重要なリスク因子である酸化 LDL/LOX-1 軸ががんの悪性化にも寄与しうることを示した点にある。担癌状態で生じた酸化 LDL/LOX-1 シグナル経路の活性化が、がん患者で認められる腫瘍随伴血栓症のような腫瘍関連心血管イベントを直接的に引き起こすかどうかは今後実験的な検討が必要ではあるものの、酸化 LDL/LOX-1 シグナルをターゲットにした治療戦略は、がん治療と同時に循環器リスクを軽減させうるという意味で有望な治療戦略となる可能性がある。今後の詳細な解析と臨床検体を用いたトランスレーショナル研究の推進が望まれる。
Description: この博士論文全文の閲覧方法については、以下のサイトをご参照ください。
Description URI: https://www.lib.hokudai.ac.jp/dissertations/copy-guides/
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第15023号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 歯学
Examination Committee Members: (主査) 教授 樋田 京子, 教授 北川 善政, 教授 飯村 忠浩
Degree Affiliation: 歯学院(口腔医学専攻)
Type: theses (doctoral - abstract of entire text)
URI: http://hdl.handle.net/2115/85999
Appears in Collections:課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 歯学院(Graduate School of Dental Medicine)
学位論文 (Theses) > 博士 (歯学)

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