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体幹姿勢の前額面における変化が着地動作における下肢関節バイオメカニクスに与える効果の性差の検討

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.k15170
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Title: 体幹姿勢の前額面における変化が着地動作における下肢関節バイオメカニクスに与える効果の性差の検討
Authors: 谷口, 翔平 Browse this author
Issue Date: 26-Sep-2022
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 1. 緒言  膝前十字靱帯(ACL)損傷は,スポーツ場面での発生が多いとされ,スポーツ外傷の中でも重症度が高い外傷の一つである.ACL 損傷後スポーツ復帰を目指すにあたって,ACL 再建術が行われることが多いが,スポーツ復帰までは平均 7.3 ヵ月を要し,またスポーツ復帰率は活動レベルが高いほどに低下することが報告されている.また,長期的に見るとACL 再建術を施行したとしても,変形性膝関節症への進行リスクが増大するとされており,予防の重要性が認識されている.  ACL 損傷は他者との接触のない非接触型損傷が約 7 割とされている.好発動作は片脚着地や切り返し動作といった片脚に負荷が集中する動作に多い.非接触型の損傷は他者との接触がな く,身体の動きの中で生じる膝関節への負荷によって発生するため,予防の余地があると考えられている.特に女性においては非接触型のACL 損傷は男性の 2~9 倍高い発生率とされており,女性におけるACL 損傷予防が特に重要視されている.これまで様々な ACL 損傷予防プログラムが考案され一定の効果を上げているものの,女性の ACL 損傷発生率は過去 10 年間高いまま維持していると報告されている.  ACL 損傷予防を考えるうえで,損傷メカニズムの解明は重要である.実際に ACL 損傷が発生した場面のビデオ解析や,屍体膝を用いた着地動作のシミュレーション研究などによって,膝関節外反負荷がACL 損傷メカニズムの重要な要素であると考えられている.前額面上の体幹姿勢は下肢関節バイオメカニクスに影響を与えることが報告されており,特に膝関節に対しては,動作時に支持脚側方向への体幹傾斜が大きくなることにより,膝関節外反負荷が高まるとされている.女性の ACL 損傷場面において損傷側への体幹側方傾斜が生じていることが多く,さらに男性の損傷場面と比較して,側方傾斜角度が大きいことが示されており,女性のACL 損傷メカニズムに体幹の側方傾斜が関与していると考えられている.女性の ACL 損傷場面において損傷側への体幹側方傾斜が特徴的である要因として,女性はスポーツ動作時に体幹側方傾斜を起こしやすいこと,女性は体幹側方傾斜姿勢において膝関節外反モーメントがより高まりやすいこと,が仮説として考えられた.よって本論文の目的は 1)スポーツ動作時の前額面上体幹姿勢の性差についてシステマティックレビューとメタアナリシスにより検討すること,2)体幹姿勢の前額面における変化が着地動作における下肢関節バイオメカニクスに与える効果の性差について検討することとした. 2. スポーツ動作時の前額面上体幹姿勢の性差に関するシステマティックレビューとメタアナリシス  スポーツ動作時の体幹傾斜角度の性差に関してシステマティックレビューとメタアナリシスを実施した.Pubmed,Web of Science,Cochrane Library の 3 つのデータベースを使用し,996 編抽出された中から適合基準に合致した 17 編の論文がレビューの対象となった.その内,数値データが入手できた 16 編に対しメタアナリシスを行いデータの統合を行った.対象とした動作課題は,片脚スクワット,切り返し動作,片脚着地動作の 3 課題であった.片脚スクワットに関しては,7 編の論文(男性 142 人,女性 129 人)をメタアナリシスに投入し,平均差は 1.67°で,男性が女性と比較して片脚スクワット時の体幹傾斜が大きい傾向にあったが,統計学的には有意な差ではなかった(P = 0.05,95%信頼区間:0 to 3.35°).切り返し動作に関しては,計 5 編の論文(男性 335 脚,女性 251 脚)をメタアナリシスに投入し,平均差は 3.90°で,男性が女性と比較して切り返し動作時の体幹傾斜が大きかった(P = 0.02,95%信頼区間:0.75 to 7.04°).片脚着地動作に関しては,計 4 編の論文(男性 93 人,女性 94 人)をメタアナリシスに投入し,平均差は 0.42°であり,片脚着地時の体幹傾斜に男性と女性との間に有意な差は認めなかった(P = 0.50,95%信頼区間:-0.79 to 1.63°). 3. 片脚着地動作における体幹傾斜が下肢バイオメカニクスに与える影響の性差について  健常男女各 18 名を対象に体幹姿勢に関して特別な指示を与えない条件(指示なし条件)と,体幹を垂直線から 15°側方に傾斜させた状態を保つ条件(体幹傾斜条件)の二条件で片脚着地動作を実施した.三次元動作解析装置と床反力計を用いて股関節と膝関節の角度とモーメントを解析した.二元配置反復測定分散分析(性別×着地条件)と,有意な効果が得られた項目に対しては post hoc test として Bonferroni 法による比較を行った.着地時の体幹傾斜角度は指示なし条件と比較し体幹傾斜条件で有意に大きく(指示なし条件:4.0 ± 2.2°,体幹傾斜条件:15.1 ± 3.6°, P < 0.001),性差は認めなかった(P = 0.56,95%信頼区間:-1.2 to 2.2°).膝関節最大外反モーメントは,体幹傾斜条件で指示なし条件と比較し有意に大きかったが(P < 0.001,体幹傾斜条件:0.09 ± 0.07 Nm/kg/m;指示なし条件:0.04 ± 0.06 Nm/kg/m),有意な性別の効果や交互作用は認めなかった.股関節最大外転モーメントに対して性別と着地条件の有意な交互作用が認められた(P = 0.021).男性は体幹傾斜条件で指示なし条件と比較して有意に大きな股関節最大外転モーメントを示したが(P < 0.01,95%信頼区間:0.05 to 0.13 Nm/kg/m),女性は二つの着地条件間で股関節最大外転モーメントの差を認めなかった(P = 0.36,95%信頼区間:-0.23 to 0.062Nm/kg/m). 4. 考察及び結論  スポーツ動作時の体幹傾斜角度の性差に関するシステマティックレビューにおいて,女性は男性と比較してスポーツ動作時の体幹傾斜が大きいという仮説を支持するエビデンスは得られなかった.支持脚側への体幹傾斜は女性と比較して,片脚スクワットでは有意ではなかったものの男性で大きい傾向にあり,切り返し動作では男性で有意に大きかった.女性は危険な姿勢である体幹の側方傾斜を避ける動作を行っている可能性が示唆された.片脚着地動作における体幹傾斜が下肢バイオメカニクスに与える影響の性差については,支持脚側への体幹傾斜の増大によって,男女ともに膝関節外反モーメントは増大した.膝関節外反モーメントに性差は認められず,男女ともに体幹傾斜を避けることは ACL 損傷予防において重要であると考えられた.一方股関節外転モーメントについては,男性は体幹傾斜に伴って増加したものの,女性は変化が認められず,女性における股関節内転筋の反応性低下を示唆しているものと考えられた.女性のACL 損傷場面において損傷側への体幹傾斜が特徴的である要因として,スポーツ場面において股関節機能の低下に伴い体幹傾斜の制御が十分に行えていないことが関係していると予想された.今後はよりスポーツ場面に近い環境セッティングにおいて体幹傾斜の性差を検討する必要があると考えられる.
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第15170号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 保健科学
Examination Committee Members: (主査) 准教授 寒川 美奈, 教授 遠山 晴一, 教授 近藤 英司 (北海道大学病院スポーツ医学診療センター)
Degree Affiliation: 保健科学院(保健科学専攻)
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/87156
Appears in Collections:課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 保健科学院(Graduate School of Health Sciences)
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OAI-PMH ( junii2 , jpcoar_1.0 )

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