經濟學研究 = The economic studies - 第74巻第1号

資本形式論の再構築

海, 大汎

Permalink :  http://hdl.handle.net/2115/92623
KEYWORDS : 経済の金融化; 市場経済; 資本形式; 金融取引資本; レント取得資本

Abstract

本稿は,原理論体系における従来の貨幣機能論の論理構造を批判的に検討し,その方法論的展開を相対化することで,資本形式論の新たな可能性を模索するものである。新たな可能性とは,商人資本的形式または金貸資本的形式のそれと同根の運動形式を,いわば市場経済的形態の資本として析出することである。それを通じて,現代資本主義における市場経済領域の肥大化・高度化と資本主義体制の地盤沈下現象を捉えうる原理論的視座を提示してみたい。そのためには,資本形式論の展開にとどまらず,貨幣機能論まで掘り下げなければならない。こうして,商人資本的形式を初発形態の資本運動として位置づけてきた従来の資本形式論のそれとはまた違う方法論的展開を見出すことができよう。本稿では,次のような構成で議論を展開する。まず第1節では,資本の出現とその展開をめぐる近年の議論に焦点を当てて検討し,その要点を批判的に吟味する。第2節では,第1節の考察を踏まえ,原理論・貨幣機能論の論理展開から貨幣の新たな機能を導き出すことで,商品買入の理路とは異なる資金融通の理路を模索する。第3節では,商品買入または資金融通から価値増殖運動を開始する運営主体にフォーカスを当てながら,債権債務関係にまつわる信用リスクを価値増殖の機会として捉える運営主体を市場経済的形態の資本の個別類型として析出する。最後に以上の内容をまとめながら,現代資本主義における経済の金融化について述べることで,本稿を締めくくることにする。


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