研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第21号

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B.B.カードを利用した小学生に対する英語指導法 : 使用依拠モデルからの考察

泉, 瞳

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/84012
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.21.l89

Abstract

近年日本では英語教育の改革が進められており,その一環として英語が2020年度から小学校教育課程において5,6年生で教科化され,3,4年生では必修となった。しかし教授法に関しては,従来から行われているPPP型(presentation-practice-production)の演繹的指導が現在も主流であり,平易な項目から学習を開始し,徐々に難易度の高い項目を積み上げるものとなっている。PPP 型のような積み上げ型の指導法は,日本のような外国語環境では,学習した内容について,実生活での十分な言語使用経験が得られないため,基礎力が定着しないことが問題となっており,日本人の英語力が伸びない要因の1つと考えられている。 そこで本研究では,認知言語学が提唱する使用依拠モデル(Usage-based model)を基盤とした母語習得研究に着目し,PPP 型積み上げ式の指導法に代わるものとして,母語習得プロセスを援用した英語指導法について,観察に基づき考察を行った。複数の研究によると,言語習得は言葉の固まりから始まることが明らかになっている(Hakuta 1974, Tomasello 1992, 2003,Wong-Fillmore 1976,橋本2007,2008,2018)。観察した指導法でも,学習開始時から64の構文という「言葉の固まり」を言語材料として使用し,母語習得のプロセスに倣って豊富なインプットを与えることにより,外国語環境においても帰納的に英語を習得することが可能であり,固まりからの習得は第二言語習得でも有効であることが確認できた。従来からの積み上げ型とは逆の発想である「固まりから始める英語指導法は,児童の学習適性にかかわらず習得を容易にするものであり,そのための条件を提示する。

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