研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第21号

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F. H. Bradleyの自己実現の概念

白水, 大吾

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/84030
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.21.l217

Abstract

本論考は,F. H. Bradleyの倫理学思想をどのようなものとして理解すればよいのか,その手掛かりとなる解釈を示そうとする試みである。まず,私たちはBradley倫理学の中心概念である自己実現という考えを巡って,道徳的な自己実現においてはどのような自己が実現されるか,という問いに対するBradleyの解答を探る。そこで見出されるのは,私たちの自己はその本質において普遍的であり,道徳的な自己実現とはこの普遍的な自己の実現に他ならない,という考えである。次に,T. H. Greenの倫理学における自己実現の概念を概観し,Bradleyのそれと比較する。すると,Greenの倫理学には良心という概念が不可欠であること,およびそれは,Bradleyの倫理学とは違って,規範的な指示を与えようとするものであることが見出される。Bradley倫理学の非規範性はHegelの哲学理解と共通している。しかしながら,実際にはHegelの哲学のうちにもある種の規範的なテーゼを読み取ることができる。そのことを確認したうえで,最後に,やはりBradleyの倫理学のうちには規範的テーゼが存在しないことを主張し,その事実をいかに解釈すべきか,その示唆を与える。

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