地域経済経営ネットワーク研究センター年報 = The Annals of Research Center for Economic and Business Networks;第11号

FONT SIZE:  S M L

北海道・樺太・沖縄県の地方制度から明治地方自治体制の「自治」を考察する : 「会」,法人格,議決,地方費をめぐって

白木澤, 涼子

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/84873
KEYWORDS : 明治地方自治体制;北海道;樺太;沖縄県;内外地行政一元化

Abstract

戦前の北海道・樺太・沖縄県の地方制度は,府県制・市制町村制とは異なる地方制度であった。沖縄県は,府県制であったが「特例」であった。北海道は戦前において法人格を欠き地方自治体ですらなく,北海道会法・北海道地方費法は,市制町村制以前の府県会規則・地方税規則に対応するものであった。樺太は,同じ外地である台湾や朝鮮などとは異なり,明治地方自治体制の延長線上にあったが,「自治」そのものがなく単なる行政区であった。明治地方自治体制は「官治と自治と混淆する」ドイツの地方制度を模倣したものであったが,「自治」には歴史的段階と名誉職・地方費支弁による段階があり,両者は相互に関連し,各地方団体はその段階に応じて「自治」が付与されていた。北海道・樺太・沖縄県には「自治」の段階に応じて,それぞれ地方制度が設定された。1943 年市制町村制中改正法が制定され,北海道・樺太一級二級町村制が消滅するが,北海道・樺太の町村制の実態は以前と全く変わっていない。本稿では市制町村制が,市制町村制中改正法により北海道・樺太一級二級町村制をも包摂する体制に改変されたことで,北海道・樺太一級二級町村制の消滅ならびに内外地行政一元化が可能となったことを明らかにする。また樺太にとって内外地行政一元化とは,何であったかを考察する。1943年市制町村制中改正法と内外地行政一元化により再構築された地方制度は,従来の研究史で「逆行的」と評価されたものではなく,戦後の地方自治法に適合的であり福祉国家の「新中央集権」と親和性をもつものであったことを展望する。

FULL TEXT:PDF