日本語・国際教育研究紀要 = Journal of Japanese language and international education studies;第25号

FONT SIZE:  S M L

外国人留学生の「異文化間能力」に対する意識の形成プロセス : 質的分析を通して見える社会・文化的な相互作用

鄭, 惠先;永岡, 悦子

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/85359
KEYWORDS : M-GTA;日本語力の重要性;人的ネットワーク;留学のメリット

Abstract

海外留学には、異文化の中で人間関係を構築していく異文化間能力が必要不可欠であり、また言語を通じた異文化交流の促進を目的とする外国語教育においても重要な課題となっている。本研究では、外国人留学生が必要とする異文化間能力について、日本の大学に在籍する留学生に対するインタビュー調査の結果をもとに、M-GTAを用いて質的分析を行った。その結果、【母国と日本の比較】【日本語学習への気づき】【ネットワークを作る・参加する】【必要とする異文化間能力】【留学のメリット】という5つのコアカテゴリが生成され、留学生が【必要とする異文化間能力】のカテゴリには、〈問題解決能力〉〈組織への適応能力〉〈日本人のコミュニケーションスタイルへの理解〉〈積極的な態度〉という4つの概念が生成された。中でも、【日本語学習への気づき】と【ネットワークを作る・参加する】は互いに連動しつつ、留学生の異文化間能力に対する意識形成にもっとも密接に関わっており、日本語力の上達とともにネットワークに主体的に参加できた成功体験が、日本留学に対する肯定的な自己評価につながっている。ただし、留学生活に対する態度と意識には、留学生の身分や国籍といった社会・文化的背景の影響も認められる。本研究で可視化された留学生の異文化間能力に対する意識の共有と理解は、外国人留学生のサステナブルなネットワーク作りへの支援に有効に活用できると考える。

FULL TEXT:PDF