北海道大学大学院教育学研究院紀要 = Bulletin of Faculty of Education, Hokkaido University;第140号

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「精神障害を生き抜くとはいかなることか」を多様性にひらく : 第4報 梅宮さんへのインタビューから

松田, 康子

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/86263
JaLCDOI : 10.14943/b.edu.140.155
KEYWORDS : 多様性;精神障害;生き抜く;質的研究;Differences and diversity;Mental health issues;Trauma;Extreme states;Survival;Qualitative research

Abstract

本論は,「精神障害者は病や障害をいかに生きているのか」という研究の主幹となる調査の一端を報告するものであり,第4報となる。本研究は,精神障害を生き抜く“梅宮さん”の生きられた経験に学ぶ事例報告である。方法は,非構造化面接を用いたインタビュー法を用いた。本研究は,一人一人のユニークな「生きられた経験」を聴きとり,「多様性を認め」合うケアの視点,ケアの担い手として応答せずにはいられない物語の発見を研究目的としている。梅宮さんは,医療・病気が信念を貫き難くし,生活保障制度が絆の歴史を断つといった只中に身をおきながらもなお,ケアの担い手として家庭を守り生きていた。再発とは,自身をケアすることの失敗や成り立ち難さという物語の結果と片付けられがちであるが,そうではなく,彼はケアの担い手の鑑のような物語を生きていた。梅宮さんの物語は,むこうみずな自己犠牲でもなく,心理教育の不徹底という物語でもなかった。梅宮さんは常に誰かをケアし続ける物語を生きる力強い勇気と,再生し応答し続けるプロセスに身を置く大切さを私に教えてくれた。

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