研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第22号

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在日中国人分布の推移からみる華人社会の変容

翁, 康健

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/87868
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.22.l169

Abstract

本稿は,在日中国人の人口および出身地域,日本における居住地域の分布を整理したうえで,在日中国人分布の推移への分析を通じて,日本における華人社会の変容について足掛かりを見出すことに試みる。かつて,在日華僑社会の構成は,三江(江蘇,浙江,江西一帯),広東,福建,台湾などの出身者の老華僑が中心であった。彼らは長崎,神戸,横浜といった地域に集住していた。それに対して,1980年代から日本における中国人の新華僑(ニューカマー)が急増している。彼らの出身地は,従来の老華僑(オールドカマー)の出身が中国南部地域に集中していたのに対して,中国の全地域を含んでいる。現在の新華僑においては,東北三省(遼寧省,黒竜江省,吉林省)の出身者の割合が一番高い。多くの新華僑は東京圏(東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県)および大阪府に在住している。老華僑の特徴として,血縁,地縁を通じて,来日することが多かった。また生活様式は宗親会,同郷会といった伝統的な共同体の中で,在日生活を営んでいた。それに対して,現在新華僑の居住分布は変わっている。それによって,彼らの生活様式も以前と大きく変わっていることが予想される。従って,現在日本における新華僑(ニューカマー)がいかに生活の営みを図っているのかを考察することが一つ重要な課題となる。ただし,兵庫県在留中国人に限っては,現在も南部地域出身者の割合が高いため,かつて老華僑の生活様式がまだ存続しているかもしれない。従って,老華僑(オールドカマー)への継続的な考察も必要だと思われる。

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