研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第22号

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陶淵明の詩文における「美色」について

熊, 征

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/87874
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.22.r21

Abstract

本稿では、現存する陶淵明の作品の中、「雜詩」其十二、「擬古」其七と「閑情賦」を取りあげて、陶淵明の詩文における「美色」の存在について考察を行った。まずは、陶淵明までの中國の詩歌における「美色」の描き方を整理した上で、三つの作品をめぐる先行研究を踏まえて、「美色」に託されている主旨について分析する。その結果として、三つの作品では視點や表現方法において異なる「美色」の描き方が見られるが、內面的な感情や品格の超俗性がその重點となっているという共通點が見られる。詩の主旨としては、單に女色や男色をうたうのではなく、超俗で高潔な人格への憧れを表わしていることを論じる。その中、「美色」は人格や物事のよさの象徵として使われていることを明らかにする。次に、三つの詩文に使われている「松」「雲」そして「音樂」などのモチーフの考察によって、それぞれの詩文がいかに「美色」の超俗性を表現しているのかを分析する。結論として、「閑情賦」や「雜詩」其十二というような外見的な美色を重點的に描寫している詩について、否定的な評價が下されたり、誤解が生じたりする理由は、主に詩の主旨や陶淵明の意圖が明確化されていないからであろうと考えられるため、本稿では、「美色」の超俗性を重視して描寫しているところから、「隱逸詩人」と言われる陶淵明が「美色」に託している「志」には隱逸への憧れが含まれる可能性があることを明らかにする。

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