日本語・国際教育研究紀要 = Journal of Japanese language and international education studies;第26号

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意見述べ発話時の気づき支援は語彙的多様性に影響を与えるか : 中級クラスでの実践をもとに

佐藤, 淳子

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/89084
KEYWORDS : 気づき;意味生成;教育的介入;語彙的多様さ

Abstract

第二言語での発話時の「気づき」と習得の関係は、アウトプット仮説(Swain 1985)を発端に考察されるようになったが、従来の研究は正しいインプット、もしくは理想化された母語話者のインプットを入り口、アウトプットを出口とするコンピュータ・メタファーで習得プロセスを捉えるパラダイムに立っており、話者の言いたいことありきの発話時に起こる「気づき」にはあまり関心が寄せられてこなかった。本研究は、この種の「気づき」、すなわち言いたいことはあるのにうまく言えないこと、または言いたいことと実際に言えることのズレを、学習者自身が具体的に把握できるような教育的介入を行うことにより、学習者の発話にどのような変化が現れるかを、語彙的多様さに着目して報告するものである。調査は日本の大学で日本語を学ぶ中級レベルの留学生9名の協力を得て行なった。あるテーマについて事前準備や辞書等外部リソースなしに即興的に意見述べを行い、その直後に言いたいことを言うために必要な語や表現を調べる時間を設け、その後再度同じテーマで意見述べをしてもらった。その結果、(1)本調査で行ったような介入を行うことにより多様な語彙使用を促すことが期待されること、(2)学習者自身の気づきは中級後半から上級レベルと考えられる項目が多いこと、(3)気づいてメモにとった項目がすぐに使用されるかどうかには個人差が大きいこと、が示唆された。

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