經濟學研究 = The economic studies;第56巻第2号

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「資本の商品化」論に関する批判的一考察 (唐渡興宣教授記念号)

岡部, 洋實

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/16971
KEYWORDS : 資本の商品化;株式会社;擬制資本;株価;資産

Abstract

本稿は,宇野弘蔵の「資本の商品化」論(原理論で資本家的理念として説かれる「それ自身利子を生む」資本としての株式会社と,段階論で具体的に解明される株式会社という二つの規定)をめぐる議論の検討を通して,原理的な問題提起を行なったものである。 宇野に対しては,生産過程の包摂という産業資本の特質に着目した岩田弘氏の的を得た批判がある。しかし,配当(宇野)あるいは利潤(岩田氏)を利子率で資本還元して株価=擬制資本を導くのは,株価が様々な投資意図により不確定に変動する点を軽視することになる。他方,山口重克氏の「競争論」的立論では,調達動機をもつ資本と資本所有からの利潤のみに関心をもつ資本とでは資本結合のメリットが対称的でなく,また,個別資本の貨幣資本循環は元来短期的であることから,氏のいわれる出資関係は成立しにくいのであって,理念を強調した宇野の難点の解決とはならないのではないかとの疑問が残る。 信用を産業資本の遊休貨幣資本の商品化として説いた宇野において,「資本の商品化」に積極的な意味があったのか。また,原理論は,土地・株式といった収入をもたらしうるもの=資産を,労働生産物と同様の価値物(商品)とする資本家的な観念の根拠を説明しうるものであるのか,どう説明するのか。いずれも検討の余地の多い課題である。

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