經濟學研究 = The economic studies;第56巻第2号

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マーティン・イエニッケ「環境に優しい近代化 : 新たな展望」

吉田, 文和

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/16975

Abstract

体系的な環境技術の革新と普及という意味での「環境に優しい近代化」は,環境改善を成し遂げるための,飛びぬけて大きな潜在的可能性がある。一般に,近代化の市場論理と技術革新への競争が,世界的な環境の必要性の潜在的な市場と結びつくことで,「環境に優しい近代化」の大きな推進力となる。ところが最近,さらに新しい2つの要因が「環境に優しい近代化」の興隆に有利なものとしてあらわれる。まず第1に,「洗練された」環境規制の重要性がますますはっきりと示されつつある。第2に,世界的な環境政治のますます複雑な参画者の関係で,汚染者のビジネス・リスクが増大し,その後環境技術の革新への圧力が強まっている。このような有利な枠組み条件があるにもかかわらず,「環境に優しい近代化」の戦略は数多くの本来的な限界に直面している。これらのなかには,全ての環境問題に対しては技術的な解決が市場において入手できないこと,経済成長によって漸次的な環境改善が中和されてしまうこと(「Nカーブ」の矛盾),「近代化の敗者」による権力を基礎とした抵抗などがある。こうしたことを背景として,構造的な改革が不可欠のように見える。ここでは,環境技術の革新は移行期の管理あるいは環境に優しい構造政策によって支援されなければならない。後者は創造的で道は遠いが,「創造的な破壊」を避けるべきである。

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