經濟學研究 = The economic studies;第57巻第4号

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J.N.ケインズとA.マーシャル -方法論的関係についての一考察-

成田, 泰子

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/32400
KEYWORDS : 経済学方法論;ケンブリッジ学派;歴史学派;帰納法;演繹法;理論研究;事実研究

Abstract

従来,ケインズとマーシャルの経済学方法論に関する立場は同一のものであると捉えられる傾向にあった。しかし,そうした通説的な,考え方に対して異論を唱えたのがコースであった。 本稿ではコースが提起した二つの論点を中心に,経済学方法論に関するケインズとマーシャルとの見解を比較検討し,実際,両者の間に方法論的立場の相違があったのかどうかを考察した。そして,どちらの論点においても,両者の間に考え方の相違がないことを明らかにした。 さらに,本稿では,マーシャルの「経済学の現状」において議論されている様々な論点の中で,マーシャルとケインズの見解が一致している点が多々あることを見出した。この論点は,イギリス歴史学派が古典派経済学批判を繰り広げる際の論点に対応するものであり,当時のイギリス経済学の再構築にとって重要な論点であった。そうしたマーシャルの見解とケインズの見解が一致しているということは,根本的に,両者の方法論的立場は同一のものとみなしうるであろう。 以上のことから,ケインズとマーシャルとの間に,コースが主張するような方法論的立場に関する相違があったとは言えない,と結論づけることができる。

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