經濟學研究 = The economic studies;第58巻第3号

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単一欧州市場の脱神話化

安藤, 研一

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/35100
KEYWORDS : 欧州連合(EU);単一欧州市場;上からの統合;下からの統合;要素市場統合

Abstract

EUの下での地域経済統合は,域内市場の自由化,単一欧州市場を形成し,共通政策の策定実行,加盟国の拡大という「上からの統合」,並びに,企業を中心とする経済主体が対応する「下からの統合」の相互作用の中で進んできたてきた。「上からの統合」中心をなす単一欧州市場は,EU経済の活性化に寄与しながらも,未だ当初の目的を十分に実現できていない。欧州委員会は,域内市場の自由化の不完全さにその原因を求めるが,その特殊性についての十分な検討がなされていない。即ち,EUの統合が自由主義的方策に傾斜すること,その自由化の過程そのものの特性,そして,自由化された市場が,国民的制度との間で一定の補完緊張関係を持ちながら機能せざるを得ないことであった。資本主義経済において,市場が重要な役割を果たしてきたことについては疑いようもないところであるが,EUが構築しつつあるSEM,それは未完成なものであっても,国民的市場が単に地理的領域を拡大したものではない。

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