經濟學研究 = The economic studies;第58巻第3号

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世代間階層移動性

佐野, 浩一郎

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/35110
KEYWORDS : 世代重複モデル;世代間階層移動性;割引率;外部効果;教育費用

Abstract

世代間階層移動性を分析するためには、個人が二つの側面で異質であることを想定しなければならない。これまでの研究には、各個人が学習(あるいは労働)能力において異なるだけでなく、親から相続する遺産においても異なると想定するものや、親から相続する知識やノウハウが異なると想定するものがある。そこでこの論文では、新たな要因として、主観的割引率の違いと親から受ける外部効果という二つの要因の組合せに注目する。割引率が高い個人ほど現在を重視するために、若年期に教育コストを払うことを嫌がる。しかし、親が教育を受けていれば教育に関する家庭内外部効果により、教育コストは少なくて済む。各個人は、教育コストと将来の賃金を比較して、教育を受けるか否か選択する。その結果、もし個人間の割引率の違いが小さいなら、割引率の高低に関わりなく、親の属性に基づき子の職業が決まる移動性の無い均衡が生じる。逆に割引率の違いが大きいなら、親の属性と関わりなく子の職業が決まる移動性の高い均衡が生じる。

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