經濟學研究 = The economic studies;第60巻第2号

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A.C.ピグー経済学における租税論の位置 : 厚生経済学の応用という視点からの考察

山本, 崇史

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/43918
KEYWORDS : 厚生経済学の応用;厚生経済学の命題の不調和;租税の公平性;所得税と相続税;累進税

Abstract

ピグーの経済学は,実際には多岐に渡っており,少なくとも三つの領域,つまり厚生経済学,産業変動論,及び財政論から成ると考えられる。第三の領域であるピグーの財政論は,彼の経済学を理解するためには欠かせない領域であるが,必ずしも詳細に研究が行われてきたとは言えない。本稿では,財政論の一側面である租税論,特に『厚生経済学』初版で研究された租税論を考察する。そして考察を通して,以下のことを明らかにする。第一に,ピグーは租税負担の最小化,換言すると,経済的厚生の最大化を求めつつ,厚生経済学第一命題と第二命題を現実の租税理論や政策に適用しようとした。特に所得税や相続税が適度な税率の下で課せられるならば,厚生経済学第一命題と第二命題との間の「不調和」が発生しないこと,つまり租税の公平な賦課と国民分配分の規模の維持・拡大とが両立可能であること,を主張した。第二に,ピグーは資本蓄積を阻害しない租税,及び累進税を主張した。前者は,貯蓄がそのまま投資に至るという考えをピグーが抱いていたことを物語る。また後者は,租税の均等犠牲が比例税ではなく累進税によって達成されるとピグーが理解していたことを示す。

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