研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第10号

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話者は「ノダ」文の内容をどう捉えるか : 既定性の再考

中野, 友理

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/44604

Abstract

「ノダ」文の持つ特徴として,しばしば命題内容の既定性が指摘される。本稿では,この既定性が「ノダ」によって生じる意味特徴といえるのか,また「ノダ」文の持つ既定性が具体的に話し手によるどのような事態の捉え方を表すものであるのかを考察する。形式的,また認知的側面からの考察によれば,「ノダ」の表す意味とは,話者がある対象や事態を知覚した後に,さらなる認知活動を行ったことを表示するものと考えることができる。この検証として,「ノダ」文の使用に際して話者による一連の認知過程は想定可能であるか,また想定できない場合,その「ノダ」は話者のどのような認知状態の時に用いられ,どのような意味を持つと考えられるかということを考察した。結果として,話者による認知過程を想定できる場合は,話者がある事態を知覚判断した後にさらに疑問を持ち,それについて話者なりの答えを導くという認知活動がある。一方,認知過程を想定できない場合は,聞き手への伝達的用法として「ノダ」が使用されていると考えることができる。この「ノダ」の伝達的用法は,聞き手に対して話者自身の知識を伝えようとする状況において見られ,「ノダ」文の提示する情報について,話者が聞き手よりも判断したり管理したりする権限を持ち,逆に聞き手は話者から情報を与えられる側の立場であることが含意される。 「ノダ」の既定性について,本稿の結論は,文内容について話者による一連の認知過程が存在することであるとした。また,これを踏まえて「ノダ」の本質的な意味とは話者による一連の認知過程の存在を明示することであり,これまで聞き手への伝達場面において考察されてきた「ノダ」の意味は,本質的意味から生じる一つの用法として位置づけることができると考えられる。

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