北海道歯学雑誌;第31巻 第2号

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フッ素によるアルミニウムに依存したNa,K-ATPase活性の抑制

石川, 一郎;出山, 義昭;吉村, 善隆;鈴木, 邦明

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/45798
KEYWORDS : Na, K-ATPase;フッ素;アルミニウム;酵素活性阻害

Abstract

う蝕予防に使用されるフッ化物はその毒性が問題とされるが,急性毒性の機構に関しては不明な点が多い.そこで,動物細胞に普遍的に存在して細胞機能の調節に関与するNa,K-ATPaseに対するフッ素(F)の作用を検討した.材料にはブタ腎臓のミクロソームと精製したNa,K-ATPaseを用いて,種々条件下でのATPase活性に対するNaF及びKFの作用を調べた. 1. NaFはNa+とK+存在下のNa,K-ATPase活性を抑制したがK+非存在下のNa-ATPase活性を制御しなかった. 2. NaFとKFはNa,K-ATPase活性を濃度に依存して抑制し,50%阻害濃度(Ki0.5)は約1.4mMであった.0.25mMF存在下での活性抑制は約10%であり,2.5mMではほぼ完全に抑制された.FによるKi0.5はアルミニウム(A1)存在下でA1の濃度に依存して減少し,A1のキレーターであるdeferoxamine存在下では増加した. 3. 2.5mMのNaFあるいはKF存在下でプリインキュベーションした後に10倍に希釈してからNa,K-ATPase活性を測定すると約50%のNa,K-ATPase活性が不可逆的に抑制されたが,deferoxamine存在下では活性は抑制されなかった. 4. 7.5μM以上のA1が共存すると2.5mMF存在下の活性はほぼ不可逆的に抑制された.この抑制にはマグネシウム,カルシウム,マンガンなどの2価金属イオンの共存が必要であった.リンはFによる不可逆的な抑制に影響を与えなかった.以上の結果は,FによるNa,K-ATPase活性阻害にはA1と2価金属イオンが必要であり,FとA1の複合体は2価金属存在下でNa,K-ATPaseに不可逆的に結合して,ATPase活性を阻害することを示唆する.

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