北海道歯学雑誌;第32巻 第1号

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脳幹スライス標本における中枢ニューロンの生命力に対するポリエチレングリコールの作用

石尾, 知亮;平井, 喜幸;井上, 農夫男;舩橋, 誠

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/47226
KEYWORDS : 脳幹スライス標本;ニューロン;ポリエチレングリコール;細胞死

Abstract

本研究は,電気生理学的手法を用いた単一ニューロンの機能を調べる実験において広く用いられている脳幹スライス標本における各部のニューロンの経時的細胞死の詳細と,ポリエチレングリコール(Polyethylene glycol,PEG)投与による細胞死抑制効果について検討したものである.SD系雄性ラットを用いて舌下神経核,孤束核,最後野を含む前頭断脳幹スライス標本を作成し,30%PEG溶液中に1分間浸漬した後に細胞死のマーカーであるヨウ化プロピジウム(PI)を添加した人工脳脊髄液中で15,60,240分間培養し,直後に4%パラホルムアルデヒドにて回定した.凍結切片を作成し,niss染色を行った後,PI集積部位を蛍光顕微鏡下で同定して各部におけるニューロンの生存率を算出した.その結果,舌下神経核ニューロンの経時的生存率が孤束核および最後野のニューロンと比較して有意に低いことが明らかとなった.一方で最後野においては240分間培養群においても著名に高い生存率(約75%以上)を示した.また,PEG投与により舌下神経核ニューロンの生存率は増加し,統計学的に有意な増加が認められたのは,舌下神経核の60分間培養群,孤束核の60分間培養群および240分間培養群であった.PEG濃度の影響を明らかにするために,浸漬するPEG濃度を20,30,40%と変化させた際の各ニューロンの生存率について,PEGを投与しないコントロール群と比較したところ,20%PEG投与群および30%PEG投与群で有意に生存率が増加した.本研究の結果から,運動ニューロンは自律系ニューロンと比較して経時的な生存率が低いこと,PEGは運動ニューロンの経時的生存率を増加させ,その最適濃度は20%以上40%以下の範囲で,30%前後が至適濃度であることが示唆された.

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