研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第11号

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品詞的側面から見た動物のメタファー(英文)

田部, 千絵子

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/47874

Abstract

メタファーとは,言語の特殊技法ではなく,日常言語や我々の思考や行動の奥にまで存在しているものだとLakoff and Johnson(1980)が指摘してから,様々なメタファー研究が盛んに行われてきた。その中でも近年注目を集めているのが,コーパスデータに基づくメタファー研究である。実際の言語 使用に基づくこの研究方法は,言語的直観に基づく伝統的なメタファー研究とは異なる研究結果や,これまであまり注意が向けられてこなかった特徴を明らかにするなど,メタファーの新しい側面を見せている。 コーパスデータに基づくメタファー研究の一つとして,品詞的側面からのメタファー研究がある。その中で,名詞のメタファーは実際の言語使用のなかでは主要ではないという,伝統的な見解とは反対の指摘がなされた。この指摘は,根源領域と目標領域の間で品詞転換が起こるのかという問題にも発 展して議論がなされている。 その具体的な研究として挙げられるのがDeignan(2006)である。Deignanは,調査対象を動物のメタファーに絞り,それらの品詞別頻度や,領域間での品詞転換について言及した。しかし,hound,weasel,squirrel,hare,ferret,apeは名詞のメタファーを全く持たず,領域間での品詞転換は完璧に起こっているというDeignanの指摘に疑問が生じたため,本稿ではそれらの語(apeは除く)の調査を再度行った。Corpus of Contemporary American Englishから得られたデータより,主に以下の3点が明らかになった。 1.Deignan(2006)の指摘とは異なり,字義通りの意味と比喩的な意味の間に完全な品詞転換はみられず,ある程度の品詞の相続はみられた。 2.目標領域内の動詞のメタファーは,目標領域内の名詞のメタファーから,〝行為者からプロセス"という関係に基づくメトニミー的拡張によって生まれた。 3.メタファーが持つ,根源領域内の対象との類似性のタイプがメタファーの品詞の頻度に影響を与える。 以上のように本稿では実例に基づいた調査を行い,品詞という側面からメタファーの分析を行った。

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