研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第11号

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チャールズ・キーンによる『リチャード二世』の上演に見られる群集表現

杉浦, 康則

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/47877

Abstract

プリンセス劇場支配人チャールズ・キーンの演出理念,キーンによる『リチャード二世』の上演,そして上演に対する批評を概観する中で,歴史的に正確な上演を求めたキーンの舞台においては,歴史的に正確な群集が無秩序な運動を繰り広げた,ということが示される。このような群集を舞台に登場 させたことに加え,舞台と観客を結び付ける群集の作用が考慮されていないという点から,キーンによる上演はマイニンゲン一座の演出と同様,マックス・ラインハルトの群集演出のカテゴリーには含まれないものとして位置付けられる。 これらの演出家達に加え,更なる演出家達の活動を捉えることによって,他の位置付けも可能となる。自然主義の観点から論じられるオットー・ブラーム,プロレタリア演劇の指導者プラトン・ケルジェンツェフ,そして叙事的演劇の観点から論じられるエルヴィン・ピスカートルの活動からは,プロレタリアの現状を問題視し,解決しようとする群集演出の流れが見出される。そしてこの流れを捉えることによって,これとは逆に,社会の現状から切り離された物語を,劇場内で完結する形で上演する群集演出の流れが,キーン,マイニンゲン一座,ラインハルトの活動に見出される。 このように,ヨーロッパ演劇史において,歴史的正確さ,自然主義,叙事的演劇などの観点から論じられる演出家達を,ラインハルトの群集演出の観点から捉え直すことによって,ラインハルトの群集演出自体が新たに位置付けられる。

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