北海道歯学雑誌;第32巻 第2号

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アナターゼ型二酸化チタンが光処理機能化と骨髄由来間葉系幹細胞親和性に及ぼす影響

坂田, 美幸

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/48713
KEYWORDS : チタンインプラント;光処理機能化;アナターゼ型二酸化チタン;光触媒作用;骨髄由来間葉系幹細胞親和性

Abstract

チタンインプラントが生体内で機能圧を負担するためには,オッセオインテグレーションの成立が必須である.表面微細形状は骨形成に影響を与える重要な表面特性であり,一般的にrough surfaceは,smooth surfaceと比較して早期にチタンインプラント表面に骨を形成するとの報告が多く,広く普及している.また,紫外線(UV)照射により,チタンの骨芽細胞親和性および骨親和性が向上することが報告されており,このような効果の一因として,光触媒作用が考えられている.そこで,アナターゼ型二酸化チタン結晶を含む被膜により光触媒活性を高めた新規チタン表面を作製し,その表面特性および間葉系幹細胞に対する影響を調べた.鏡面研磨チタン(Pol),酸処理チタン(AE)およびAEにアナターゼ被膜を形成したチタン(An)を作製し,それぞれに対して暗所保管期間を設定した試料を準備して,表面構造の解析と光触媒活性を評価した.また,間葉系幹細胞を用いて,初期細胞接着を評価するとともに,リアルタイムPCR法にて細胞骨格関連遺伝子の発現を定量した.Anは試料作製直後から4週間超親水性を示した.ラマン分光法を用いてAn表面を分析し,アナターゼ型二酸化チタンが含まれていることを確認した.さらにメチレンブルー分解試験を行い,このアナターゼ型二酸化チタンには,高い光触媒活性があることを確認した.接着細胞数は,いずれの試料でも経時的に減少したが,AnはPol,AEと比べて接着細胞数が多く,経時的な減少率も小さかった.さらに,UV照射によりPol,AEでは試料作製直後と同程度まで細胞接着数が回復したのに対し,Anは試料作製直後と比較しておよそ30 %増加した.細胞骨格関連遺伝子の発現は経時的に減少したが,UV照射によりRas homolog gene family, member A(Rho A)ではおよそ40 %増加した.本研究から,アナターゼ型二酸化チタン結晶を含む被膜をチタン表面に形成することによって光処理機能化に伴い骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC)に対する親和性が増強したことから,骨親和性の極めて高いチタンインプラント開発の可能性が示唆された.

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