北海道大学大学院教育学研究院紀要 = Bulletin of Faculty of Education, Hokkaido University;第117号

FONT SIZE:  S M L

嗜癖問題に直面した女性の困難と社会的制約 ; 回復過程とケア役割

保田, 真希

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/51044
JaLCDOI : 10.14943/b.edu.117.253
KEYWORDS : ケア役割;アルコール依存 (嗜癖);回復過程;社会的制約;女性

Abstract

 本稿では,女性が嗜癖問題(主としてアルコール問題)に直面した時の困難や回復過程の特徴を明らかにする。そのために,断酒会に所属する女性3 名,男性3 名に聞き取り調査を行った。その結果,嗜癖問題を抱えた女性の生活は,①嗜癖に直面して生じた葛藤や困難,②社会規範や役割,③家庭におけるケア役割や規範,の3 つによって制約されていた。本調査では,男女ともにインフォーマルネットワークの構築や繋がりがあった。女性は家族関係の修復や新たな家族関係を形成し,家庭の中にも外にも「親密圏」を形成していた一方で,男性は全員単身になっていた。男性が生活保護や年金で暮らす一方で,ケア役割を担った女性は,稼ぎ手役割を果たすパートナーがいることで,日々のやりくりができていた。全体を通してみると,女性はケア役割を担うことが嗜癖からの「回復」のきっかけとなると同時に,そのことが彼女たちの生活を制約するという2 面性を有していた。

FULL TEXT:PDF