応用倫理;第4号

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人間の健康と環境の健康

神崎, 宣次

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/51846
JaLCDOI : 10.14943/ouyourin.4.2
KEYWORDS : 人間の健康;環境の健康

Abstract

本論ではこれまで別個の領域として研究されてきた人間、環境、そして動物の健康といった問題に領域横断的に取り組もうとする保全医学という新しい領域について、環境倫理学の観点から検討を加えることを目的とする。そのため、まず第1節では環境危機の時代における「人間対自然」という対立的な構図から「人間と自然」という非対立的な構図への変化が環境思想においてどのように生じたかを説明する。このような見方の変化が生じてはじめて、人間の健康と環境の健康を関連したものとして論じることができるのである。続く第2節と第3節では、保全医学について概説した上で、ギフォード・ピンショーによる保全の議論から現在の保全医学に至るまでの保全思想の系譜を簡単にたどり、保全医学の構想がどのように生じてきたのかを明らかにする。第4節では領域横断性がもたらす研究上の問題点を指摘し、第5節ではその領域横断性のゆえに保全医学において生じうる倫理問題を検討する。そして最後に、人間の健康と環境の健康の両方を追求しようとするならば、環境の健康を人間の健康を追求するための前提条件や手段に還元することはできないと主張する。

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