研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第12号

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言語的修復行動における他者開始について : 形式整理と分類基準を中心として

張, 玲玲

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/51971
KEYWORDS : 言語的修復行動;他者開始;形式整理;分類基準

Abstract

本稿では,構造上から修復行動の一部,いわば「修復開始」における他者開始という部分に限定して考察を行った。本稿は,他者開始について論じる前に言語的修復行動の主要組織について考察を行った上で,これまでの他者開始についての先行研究を踏まえながら,その問題点を指摘し且つ修正案を提出したものである。修復の概念についてこれまで様々な見方を提出されてきたのであるが,なかなか統一的な結論に至っていないようである。その原因はおそらく,「トラブルに対処するための装置」という従来の定義の曖昧さにあるのであろう。というのは,修復対象に当たるトラブルに対して明確な定義を決めなくては修復を明確に定義することも困難だからである。トラブルの性質に着目してその種類を大別した上で,修復行動を「構造と機能」という二つの方面から考察するものは管見の限りまだいないようである。そこで,本稿では,トラブルに対する「修復開始+修復実行」という修復構造における前者の一部に対して分析を行った。具体的に言えば,英語及び日本語における他者開始表現について整理を行った先行研究をまとめてみたところ,その中には①他者開始の一部しかない②分類基準が不明瞭であるといった二つの問題点が浮かんできた。そこで,①を解決するために,まず組織別に「他者開始・他者修復」(Other initiated Other repair,OIOR)と「他者開始自己修復」(Other initiated Self repair,OISR)という2種類に分けて開始形式を整理し,この2種類によって開始形式も全く異なることが発見されたのである。そして,②に対して,「トラブル源を特定する程度の強弱」という従来の基準では判断不能な例が数多く観察されたため,それを修正するために,話し手の「修復要請の意図明示性」という視点から「相手に課する労力」及びそれと正比例になっている「相手に課する修復労力」という提案を出し,従来の分類基準での順序付けにおける不合理なところを解決した。

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