研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第12号

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『論語徴』における「古言」に關する考察

趙, 熠瑋

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/51973
KEYWORDS : 論語徴;古言

Abstract

荻生徂徠(1666~1728)は江戸時代中期の儒學者、思想家、文學者であ る。徂徠の思想關係の著作をげると、主に享保二年に完成した『辨名』、『辨 道』と享保三年、五十三歳の頃完成した『論語徴』の三書がある。そのうち、 『論語徴』十巻は伊藤仁斎の『論語古義』に対抗した著作で、徂徠の經學の集 大成作と言える。この十巻の『論語徴』には頻繁に「古言」、「古語」という 単語が見える。文脈から判断すると、この「古言」、「古語」は徂徠の『論語』 注釋の根據に位置づけられている。この「古言」、「古語」を究明することが 本稿の目的である。 方法として、本稿は『論語徴』全巻の「古言」、「古語」に關係する章を取 り上げて精讀し、出典を確認し、典據別にまとめてグラフを作って究明する こととした。 その結果、この「古言」または「古語」とは、主に「先王の法言」を記述 している「六經」、つまり、『易』、『詩』、『書』、『禮』、『』、『春秋』、及び孔 子、孟子をはじめとする先秦諸子の著作、『史記』、『漢書』など漢代に完成し た歴史書や訓の書にその典據があることが確認できるのである。特に『禮 記』、『周禮』、『儀禮』と呼ばれる「三禮」と『論語』、『孟子』が圧倒的に多 い。徂徠は古文辭學という實証的な研究を通じて、彼が提唱した「先王の道」 を主張している。徂徠の理解では、「先王の道」を明らかにしようと思えば、 古語の字義、古文の文理に精通しなければならない。その理由は時代の推移 に隨って、世の中は言語を変え、言葉は「道」を変える。「道」を明らかにす るには古の言葉を知らなければならない。「道」が言葉に支えられている以上、 言語の歴史的変遷にも十分に意を払う必要がある。よって、徂徠は「六經」 や先秦諸子の書にある言葉を用例として使い、古代の言葉本来の意味を究明 しようとした。

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