經濟學研究 = The economic studies;第62巻第3号

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土地政策と公衆衛生政策 : アメリカ統治下フィリピンの開発

千葉, 芳広

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/52283
KEYWORDS : フィリピン;マニラ;アメリカ統治;土地政策;公衆衛生政策

Abstract

アメリカ統治初期フィリピンにおける土地と公衆衛生に関する政策を通じて, 開発がどのように進展したのかを考察している。その背景では, 1899年にフィリピン・アメリカ戦争が生じるなかで, マッキンレー大統領がフィリピン人有産知識階層の意向をくみ取り懐柔する意図をもって友愛的同化宣言を発していた。地方有力者も含めて土地所有を経済的基盤とするフィリピン人上層が多いなかで, アメリカは既存の土地所有を大きく変えることはできなかった。土地政策では, スペイン期の事業を継承する性格を強くして現地社会に大きく介入しえなかったのである。 しかしながらアメリカは, フィリピン・アメリカ戦争以降, 公衆衛生政策を通じてフィリピン社会に大胆な介入を行っていた。民衆を対象にして, 人種主義的発想の投影する公衆衛生が社会慣習の改良および市民教育の手段となっていった。同政策はマニラ都市社会において新たな社会インフラストラクチャーを形成する画期となっていたが, 病気を回避するためのさまざまな教育は, アメリカによる支配を正当化するオリエンタリズム的精神構造をフィリピン社会に植え付ける機会となっていた。

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