北海道歯学雑誌;第33巻 第2号

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二段階口蓋形成術を施行した片側完全唇顎口蓋裂児における咬合関係の評価

澁川, 統代子;三古谷, 忠;松沢, 祐介;伊藤, 裕美;曾我部, いづみ;山本, 栄治;戸塚, 靖則;鄭, 漢忠

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/52452
KEYWORDS : 5-Year-Olds’ Index;Huddart/Bodenham index;口唇口蓋裂;二段階口蓋形成術;咬合関係

Abstract

北海道大学病院高次口腔医療センターでは,1995年からHotz床を用いた術前顎矯正治療と二段階口蓋形成術を組み合わせた治療プロトコールによる口唇口蓋裂治療を実施してきた.本プロトコールで治療を行った片側完全唇顎口蓋裂の咬合関係を前向き評価し,当センターの治療成績をこれまでに報告された国内外の他施設成績と比較検討した.対象は,1995年7月から2006年9月までに出生し,当センターに登録された片側完全唇顎口蓋裂の一次治療症例31例( 男児15例, 女児16例) である. 平均5.2歳において模型採得を行い,5-Year-Olds’ IndexとHuddart/Bodenham indexの2つの評価法を用いて乳歯列の咬合評価を行った.その結果,本プロトコールによる治療では,他の国内2施設に比べて将来的に顎矯正手術が必要になると見込まれる症例の割合は最も低く,上顎のcollapseは小さい傾向があった.当センターを含む国内3施設と欧州4施設との比較では,欧州4施設において矯正治療を要しない,もしくは要したとしても簡単な矯正治療で咬合状態が改善すると見込まれる症例の割合は高く,将来的に顎矯正手術が必要になると見込まれる症例の割合は低かった.これは手術方法の違いによる結果というよりは人種差,すなわち長頭型か短頭型かの違いによるものが大きいと考えられ,国際標準の評価法とされる5-Year-Olds’ Indexは異人種間の比較には問題のある可能性が推測された.当センターを含む国内3施設間ならびに欧州4施設間で5-Year-Olds’ Indexに大きな差はみられなかったことから,習熟度の高い術者が適切なプロトコールにしたがい治療すれば,口蓋閉鎖の時期や術式が異なっても比較的良好な結果が得られるのではないかと考えられた.

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