經濟學研究 = The economic studies;第63巻第1号

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金融商品取引法に基づく緊急差止命令の発令要件

荻野, 昭一

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/52839
KEYWORDS : 金融商品取引法;緊急差止命令;公益;投資者保護;エンフォースメント

Abstract

証券市場行政は「事前調整型」から市場メカニズムを補完する「事後チェック型」へと大きく転換したが,近年では,違法・不法行為の「事前予防型」への取組みも重視されてきている。こうした取組みの表象のひとつが,金融商品取引法192条に規定する裁判所による緊急差止命令制度の活用であろう。緊急差止命令制度は,昭和23年の証券取引法制定当初から規定されている制度であるが,この規定が初めて適用されたのは,平成22年の東京地裁による発令においてである。制定後60余年もの長い間,適用されなかったことからも「抜かずの宝刀」と称されていた。この緊急差止命令の発令要件は,抽象的・包括的な規定となっており,その解釈次第では,何人に対しても,あらゆる金融商品取引法違反が対象となり得るため,その適用範囲が拡大するとともに,極めて強力な権限として活用することが可能となる。他法,緊急差止命令の要件を抑制的に解釈する見解も有力である。本稿においては,緊急差止命令制度の趣旨・沿革,具体的適用事例を踏まえた上で,その発令要件について考察するものである。

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