研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第13号

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A. モナストゥイルスキイ 「エレメント詩No.2.アトラス」読解

生熊, 源一

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/54068
KEYWORDS : A. モナストゥイルスキイ;エレメント詩No2アトラス

Abstract

1970年代のモスクワでは、非公式芸術と呼ばれる文化がアンダーグラウンドで育っていた。その代表的存在として「モスクワ・コンセプチュアリズム」という潮流が挙げられる。この「モスクワ・コンセプチュアリズム」においては、ジャンルを越境するパフォーマンス・アートと呼ばれる活動がしばしば行われていた。  本論考が取り扱うのは、「モスクワ・コンセプチュアリズム」において中心的な位置を占めていたアート・グループ、「集団行為 Коллективные действия」(1976-)の前史を担う作品である。このグループのリーダー、詩人かつ芸術家アンドレイ・モナストゥイルスキイ(Андрей Монастырский, 1949-)の初期作品「エレメント詩 №2 アトラス Элементарная поэзия №2 Атлас」(1975)を分析することによって、1970年代モスクワにおけるパフォーマンス・アート発生のひとつの様相を捉えたい。  「アトラス」は紙媒体で発表されたものであるが、一般的な文芸作品とは一線を画したものであり、マラルメの『骰子一擲』を彷彿させるような、ページの空間性を最大限に利用したものである。ここでは文字、図形、数字などが自由に配置され、これらの諸要素によって無数の結節点が生じている。ここから物語的意味を読み取ることは不可能に近いが、その代わり各要素の機能や構造自体が読者による読解の対象となる、実験的な作品となっている。 この作品が作られた時期は、モナストゥイルスキイが詩からパフォーマンスへと移行しようとしていた過渡期である。そのためこの作品の諸特徴は、後の「集団行為」のパフォーマンスにおいても展開されていると推測される。本論考は、「集団行為」のパフォーマンスにおいて展開されるテーマの萌芽が「アトラス」で呈示されていたのではないかという仮説に基づき、両者の連続性を確認するものである。

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