研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第13号

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受容過程に生じたトラブルに 対処する修復について : フェイスに関わるものを中心として

張, 玲玲

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/54075
KEYWORDS : 受容過程;トラブル;フェイス

Abstract

本稿では主に会話の受容過程に生じたフェイスに関わるトラブルを取り上げ,フェイスワークに関する枠組みを提示した上で,それに対処するための修復方策及び修復組織について分析を行い,フェイスバランスに対する調整や修復の方略から,その裏にどういう語用論的原理が働いているかについて考えてみたい。本稿のデータは2種類からなる。一つは東京外国語大学で作成された『BTSによる多言語話し言葉―日本語会話1(2007年版)』に収録された会話資料であり,もう一つは『日本人母語話者による会話リソース』(2012年北海道大学文学部の学生の協力の下で収集した会話資料)である。まず,研究の出発点として,先行研究で指摘されたフェイス侵害行為に対する補償行為をよりマクロ的な視点から捉え直し,フェイスバランスの視点を確定した。指向性を持っているフェイス侵害行為とフェイス支持行為の4種類の作用力(①自己指向的FTA②他者指向的FTA③自己指向的FSA④他者指向的FSA)の下で,会話参加者間に存在しているフェイスバランスの均衡が失ったケースに注目した。会話参加者がフェイスバランスを維持するために行われた様々な方略を観察することを通して,その方略が一定のパターンで施される現象が見られた。そして,考察結果からみれば,会話参加者のあらゆる行動が両者間に存在しているフェイスバランスの均衡状態に影響を及ぼしうるため,話者が発話する際に,当面のフェイスバランスの状態及び相手の言動がそれに与える影響などをトータルした上で,そのバランスを維持する効果のある発話を選択しているというシステムが成り立っているのではないかという結論に至った。このシステムの適用範囲を検証するために,今後更に多くの会話例を収集して検討しなければならない。

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