研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第13号

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都市の育児援助システムにおける「子育てサロン」の機能

工藤, 遥

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/54087
KEYWORDS : 子育てサロン;育児ネットワーク;福祉コミュニティ

Abstract

子育て家庭の孤立や育児不安の拡がりを背景に,日本では「子育てサロン」 と呼ばれる地域子育て支援拠点づくりが全国的に進められている。地域に住 む乳幼児の親子が集う場である子育てサロンは,育児に関する情報提供や相 談等を行うフォーマルな子育て支援機関であるが,大都市では,母親同士が 「ママ友」等の育児ネットワークを形成し,インフォーマルな育児援助を交換 する場・機会としても機能している。 本稿では,少子化と核家族化が顕著な大都市である札幌市で実施した質的 調査をもとに,子育てサロンおよびその内部における母親同士の育児援助の 機能を,「子育てサポートシステム」の視点から検討した。この分析枠組みで は,乳幼児の母親の子育てを支える育児援助は,制度的支援と関係的支援の 2つのサポート構造と,3つのサポート機能(直接・間接・複合サポート) および2つのサポート側面(道具的・表出的サポート側面)でとらえられる。 制度的支援としての子育てサロンは,運営形態により,センター型,児童 館型,地域主体型,常設ひろば型に4分類できる。各類型の子育てサロンで は,保育や発達教育,リフレッシュ支援といったフォーマルなサポート機能 が異なっている。また,施設内部で母親同士が相互に行うインフォーマルな 関係的支援のサポート機能も,それぞれ異なる特徴や段階がみられる。 また,子育てサロンにおける集まりの一部では,母親同士の互助の進展と 並行して,育児ネットワークや小集団の形成がみられ,集まりの3つの段階 (coming,keeping,working)を経て,「支えあい」の福祉コミュニティへと発 展する可能性もうかがわれる。ただし,「子育ち」の視点に立てば,家庭内お よび子育てサロンの内部における第一・第二の母子孤立を解消し,子どもの 発達に重要となる性別・世代混成的なコミュニティを目指した子育て環境づ くりが望まれる。

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