研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第13号

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現代中国蔵伝仏教の復興にみられた若年層の役割

熊, 晋

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/54089
KEYWORDS : 世俗化;化身ラマ制度;若年層トゥルク;神聖性

Abstract

蔵伝仏教は,中国のチベット地区を基盤とする独自に発展してきている仏 教流派である。中国国内では蔵族,モンゴル族などの少数民族を主体とする 信者が数多く存在し,海外ではアメリカや北欧にも大きな影響力を持ってい る。モダニゼーションとグローバリゼーション過程により,世俗化(secularization) は世界中の宗教に発生しつつあり,蔵伝仏教も例外ではない。一方, 20世紀50年代に,ダライ・ラマ(the Dalai Lama)14世が逃走して以来, 蔵伝仏教の伝統権力構造が破られ,パンチェン・ラマ(the Panchen Lama) は中国政府が認定する唯一の蔵伝仏教の最高権力者になる。この点について 中国国内外には激しい論争が行われている。 蔵伝仏教において,トゥルク(tulku,活仏)は信者の精神的支柱とされて いる。トゥルクは化身ラマ制度により認定されるため,候補者は幼年期から 目立った才能と霊力を表現することにより,神聖性と正統性を確保,「転生霊 童(the reincarnated child)」という身分を認定できる。彼らは従来,年齢以 上の霊力により蔵伝仏教に神秘性を被り,蔵伝仏教の維持と伝播に重要な役 割を果たしているとされる。化身ラマ制度の主体である若いトゥルクは,合 理精神を主流思想とする現代社会と向き合うために,如何に行動すれば神聖 性を維持できるかを検討する必要がある。 本文は先ず,社会学経典理論と歴史資料を踏まえ,新聞記事,メディア報 道を考察,蔵伝仏教がいかなる社会環境に位置するかを分析する。そして, パンチェン・ラマ11世を代表とする蔵伝仏教の若年層に注目し,彼らがこの ような社会環境に面して如何なる方法により政教関係を協調させ,大衆輿論 に対応するかを検討する。最後に,このような行動から窺われた蔵伝仏教の 発展モードを検討し,世俗化社会における蔵伝仏教復興の特徴を明らかにす る。

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