經濟學研究 = The economic studies;第64巻第1号

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適合性原則の意義 : 公法と私法の比較において

荻野, 昭一

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/56355
KEYWORDS : 適合性原則;自己責任原則;私法;公法;金融商品取引法

Abstract

金融商品取引における自己責任原則は,投資者の合理的な判断が可能な市場環境が整備されて始めて成り立ち得る。有価証券や金融商品取引が金融技術の進展やグローバル化に伴い,より高度・複雑化している現在においても,常に古くて新しい課題として存在しているものが,市場仲介者による勧誘販売規制であり,その中核に位置するのが適合性原則である。金融商品取引法上の適合性原則は,狭義の適合性原則と解されており,一般投資家への市場開放の中で,自己責任原則の妥当する自由競争市場での取引耐性のない顧客を,後見的配慮に基づいて市場から排除することによって保護することを目的としたルールとして位置付けられる。私法上の適合性原則に関する研究は多数みられるところ,公法上の適合性原則についてはほとんどみかけない状況にある。本稿は,平成17年最高裁判決において判示された私法上の適合性原則との比較において,金融商品取引法上の適合性原則の適用範囲についての論点を整理し,その上で公法たる金融商品取引法上の適合性原則の意義について考察したものである。

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