經濟學研究 = The economic studies;第64巻第2号

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ライツ・オファリングをめぐる制度整備と既存株主の利益保護

荻野, 昭一

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/57550
KEYWORDS : ライツ・オファリング;新株予約権無償割当;資金調達;資本市場;会社法

Abstract

株式会社によるエクイティ・ファイナンスは,資金需要と市場環境に即応して,迅速かつ機動的な株式発行ができることが重要となる一方で,既存株主の保有する株式の持株比率や経済的価値に影響を与える可能性があることから,既存株主の利益保護のための要請も強く求められる。ライツ・オファリングは,株式会社がすべての株主に対して譲渡可能な新株予約権をその持分割合に応じて無償で割り当て,その権利行使を受けて新株を発行するという増資手法である。第三者割当増資や公募増資によって既存株主の利益を損なうような事例が多発したことを契機として,一連の制度整備を伴い,新たな資金調達手段として選択肢に加わった。しかしながら,ライツ・オファリングは,必ずしも我が国資本市場において十分に周知性のあるものとはみられていない。それは,これまでに実施された事例の中に,既存株主の利益に配慮したとはいい難いものが多数みられるためである。本稿は,このような問題意識の下に,ライツ・オファリングをめぐる一連の制度整備の状況を整理した上で,実際に行われた事例を踏まえ,ライツ・オファリングが既存株主の利益に配慮した資金調達手段として適合しているかについて論考したものである。

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